「プラント業界の大手」と聞くと、日揮HDや千代田化工建設の名前を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
実際には、三菱重工業やIHIのような重工メーカー、JFEエンジニアリングや日鉄エンジニアリングといった鉄鋼メーカー系、ごみ処理プラントに強いカナデビアやタクマなど、得意分野の異なる企業がひしめく業界です。売上高の大きさだけでは、各社の立ち位置はつかめません。
この記事では、プラント業界の主要企業を、売上高ランキング、分野別の主要企業、各社の特徴と強み、海外企業との比較、再編の動き、企業を見るときのポイントという順で整理します。
プラント業界の売上高ランキング

主要企業のプラント関連の売上高を並べると、次のようになります。重工メーカーと鉄鋼メーカー系は、会社全体ではなくプラント関連の事業セグメントの数字です。
専業は連結売上高、重工・鉄鋼系は関連セグメントの売上収益で比べています。
※各社の決算短信・決算説明資料より。三菱重工業はエナジー、川崎重工業はエネルギーソリューション&マリン(船舶を含む)、IHIは資源・エネルギー・環境の各セグメント。JFEエンジニアリングはJFEホールディングスのエンジニアリング事業、日鉄エンジニアリングは日本製鉄のエンジニアリングセグメント(セグメント間取引を含む)の売上収益。
トップは、ガスタービンなどの発電設備を手がける三菱重工業のエナジーセグメントで、2兆円を超えます。EPC専業では日揮HDの7,452億円が最大で、千代田化工建設、東洋エンジニアリングが続きます。
ランキングを見るときは、事業範囲の違いに注意が必要です。三菱重工業のエナジーセグメントには発電機器の製造・販売が、川崎重工業のセグメントには船舶事業が含まれます。同じ「売上高」でも、中身は会社ごとに大きく異なります。
また、プラントは受注から売上計上まで数年かかるため、1年の売上高は数年前の受注の結果でもあります。2026年3月期は日揮HDが前期比13.1%減、東洋エンジニアリングが34.2%減と減収になった一方、千代田化工建設は8.1%増、カナデビアは5.7%増でした。
EPC専業以外にも、カナデビアやJFEエンジニアリングのように、専業大手に並ぶ売上規模を持つ企業があります。環境・インフラ分野を持つ企業は国内の公共案件が多く、海外のエネルギー案件が中心の専業系とは業績の動き方が異なります。

分野別の主要企業

プラント業界とはの記事で紹介したEPCの分類に、環境プラントを加えて代表的な企業を整理すると、次のようになります。
成り立ちによって、得意とする分野が分かれています。
※各社とも複数の分野を手がけており、分類は主な強みによる目安です。
専業系は、LNGや石油化学など海外の大型プロセスプラントが中心です。メーカー系と環境プラントの各社は、国内の自治体向けのごみ処理施設などにも強みを持っています。
重工系は、自社でつくるタービンやボイラなどの機器を核に、発電所全体を手がけられるのが強みです。分野ごとに競合の顔ぶれが変わるため、同じプラント業界でも、ある分野ではライバル、別の分野では協力相手という関係も珍しくありません。
大型案件では、複数の企業が共同企業体(JV)を組んで受注することもあります。専業系が設計と全体管理を担い、重工系が基幹機器を納め、工事会社が施工を担うといった分担で、各社の強みを持ち寄る形です。
主要企業の特徴と強み

主要企業のうち代表的な会社について、事業の中身と強みを見ていきます。
日揮ホールディングス
日揮HDは、国内最大級のEPC専業グループです。2019年10月に持株会社体制へ移行し、海外案件を日揮グローバル、国内案件を日揮が担っています。2026年3月期の売上高は7,452億円、営業利益は353億円でした。
強みはLNGプラントをはじめとするエネルギー分野の実績です。触媒やファインセラミックスなどの機能材製造事業も持ち、EPCより利益率の高い事業を併せ持つ点も特徴です。同期の機能材製造事業のセグメント利益率は13.5%でした。
千代田化工建設
千代田化工建設は、LNGプラントに強いEPC専業です。2026年3月期の売上高4,939億円のうち、LNGプラントが58.4%、海外が71.1%を占め、海外のLNG案件への集中度が高い会社です。
2019年に三菱商事の支援を受けて同社の連結子会社となりましたが、2026年1月には、三菱商事が持つ優先株式を2026〜2028年に償還する方向で合意し、あわせて同社を連結子会社から持分法適用会社に移す方針が示されました。同期の営業利益は821億円と大きく伸びています。
東洋エンジニアリング
東洋エンジニアリングは、石油化学や化学・肥料プラントに強いEPC専業です。2026年3月期の受注高1,758億円のうち、海外が1,285億円を占めています。国内でも化学・肥料や医薬・環境分野の案件を受注しており、同期の国内受注は473億円でした。
同期はブラジル向けガス火力発電案件の収支悪化で、売上高1,829億円、営業損失190億円となりました。大型案件のリスク管理の難しさを示す例と言えます。
三菱重工業
三菱重工業は、ガスタービンなどの発電設備を主力とする重工メーカーです。2026年3月期の連結売上収益は4兆9,741億円で、そのうちエナジーセグメントが2兆539億円を占めます。
同期の連結受注高は7兆6,536億円で、エナジーセグメントなどで増えました。自社製の基幹機器とプラント建設を組み合わせられるのが、専業系にはない強みです。
JFEエンジニアリング・日鉄エンジニアリング
鉄鋼メーカー系の2社は、製鉄所の設備で培った技術を土台に、環境・エネルギーやインフラへ事業を広げてきました。JFEエンジニアリングの2026年3月期の売上収益は5,997億円で、4年連続の過去最高となっています。2027年3月期も6,200億円と、過去最高の更新を見込んでいます。
JFEエンジニアリングは同期の受注高も過去最高の8,361億円で、洋上風力発電用のモノパイル(基礎)などの案件を進めています。日鉄エンジニアリングも、日本製鉄のエンジニアリングセグメントとして同期の売上収益3,944億円、事業利益231億円を計上しました。
カナデビア・タクマ
カナデビア(2024年10月に日立造船から社名変更)とタクマは、ごみ焼却発電などの環境プラントの大手です。カナデビアの2026年3月期の売上高6,452億円のうち、環境事業が5,052億円と大半を占めます。一方、同期の営業利益は前期比54.8%減の121億円で、機械・インフラと脱炭素化のセグメントは営業損失でした。
タクマの同期の売上高は1,656億円、受注高は3,330億円でした。自治体向けごみ処理プラントのEPCとアフターサービスが売上の約半分を占め、完成後のメンテナンスでも安定して稼ぐビジネスモデルです。

海外の主要企業との比較

世界のプラント市場では、欧米の大手エンジニアリング会社が強い存在感を持っています。主な企業と日揮HDを比べると、次のとおりです。
売上規模だけでなく、事業モデルにも違いがあります。
※各社の決算発表より。通貨が異なるため、円換算はしていません。
通貨が異なるため単純には比べられませんが、欧米の大手には日揮HDを上回る売上規模の企業が並びます。日本勢は、LNGなど特定分野の技術力と実績で世界と競っていると言えます。
事業モデルにも違いがあります。フルアは受注残の多くを実費精算型が占め、テクニップ・エナジーズは技術・製品・サービス事業を収益の柱の一つに育てています。日本勢にとっても、建設以外の収益源をどう育てるかが共通の課題です。
なお、海外の競合には韓国や中国のエンジニアリング会社も含まれますが、この記事では決算を確認できた企業に絞って比較しています。
再編・M&Aの動き

プラント業界では、この10年あまりの間に事業統合や社名変更、資本関係の見直しが続いてきました。主な動きを年表で整理します。
2014〜2019年、2020〜2024年、2025年以降の3つの時期に分けています。
※各社の発表・決算資料より。主な動きのみを掲載しています。
大きな流れとしては、大型案件のリスクを背景にした再編と、脱炭素・環境分野への事業シフトの2つがあります。三菱重工業の火力事業の統合や、千代田化工建設への三菱商事の支援は前者、日立造船のカナデビアへの社名変更は後者の例と言えます。
タクマによるIHI汎用ボイラの子会社化のように、周辺事業を取り込んで事業の幅を広げる動きも見られます。資本関係は今後も変わる可能性があるため、志望企業の最新の開示は必ず確認しておきたいところです。

就職・転職で企業を見るときのポイント

プラント業界の企業を比べるときは、売上高の大きさだけで判断しないことが大切です。次のような指標もあわせて見ておきたいところです。
決算短信や決算説明資料で確認できる項目です。
利益率と業績の安定性
EPCの業績は、大型案件の出来によって大きく振れます。2026年3月期は、東洋エンジニアリングが営業赤字となる一方、千代田化工建設は営業利益を大きく伸ばし、営業利益率は約17%(売上高と営業利益から算出)に達しました。同じEPC専業でも、年度によって明暗がはっきり分かれます。
1年分の業績だけでなく、過去数年の利益率の推移と受注残高を見ると、会社の安定性がつかみやすくなります。決算説明資料には案件ごとの状況が書かれていることも多く、あわせて目を通しておくと安心です。
海外比率
千代田化工建設のように売上の7割以上が海外という会社もあれば、国内の自治体向けが中心の会社もあります。海外比率が高い会社では、海外駐在や長期出張が多くなる傾向があります。
語学を生かして世界で働きたいのか、国内で腰を据えて働きたいのかによって、選ぶべき会社は大きく変わります。
事業の集中度
LNGなど特定分野に強い会社は、その市場が好調なときには大きく伸びますが、発注が止まると影響も大きくなります。複数の事業を持つ重工メーカーや、保守で安定収入がある環境プラント大手とは、リスクの性質が異なります。
セグメント別の売上高や受注の内訳を確認し、どの分野に依存しているかを把握しておくと、入社後のキャリアもイメージしやすくなります。職種ごとの働き方は技術営業・FAEや購買・調達の記事も参考になります。
まとめ
- プラント関連の売上高では三菱重工業のエナジーが最大、専業では日揮HDが最大
- 専業系・メーカー系・重工系・環境プラントで、得意分野と競合が異なる
- 2026年3月期は千代田化工建設が大幅増益、東洋エンジニアリングは赤字
- 欧米の大手は規模が大きく、技術事業や実費精算型契約で収益を安定させている
- 企業選びでは売上高だけでなく、利益率・海外比率・事業の集中度を見る
プラント業界の全体像はプラント業界とはで、市場の推移はプラント業界の市場規模と動向で、企業の階層や商流はプラント業界の構造で詳しく解説しています。
関連する職種や技術の記事は、プラントエンジニアリングの業種ページからあわせてご覧ください。
出典
- 日揮HDの業績:インベストーク「日揮ホールディングス、2026年3月期は営業利益353億円・純利益418億円で大幅増益」、持株会社体制:日揮ホールディングス「新グループ経営体制に移行」
- 千代田化工建設の業績:千代田化工建設「2026年3月期 決算短信」、優先株式:三菱商事(2019年)、三菱商事(2026年)
- 東洋エンジニアリングの業績:東洋エンジニアリング「2026年3月期 決算短信」
- 重工・鉄鋼系のセグメント業績:三菱重工業「2026年3月期 決算短信」、IHI「2026年3月期 決算短信」、川崎重工業「2025年度決算説明資料」、JFEホールディングス「2026年3月期 決算説明」、日本製鉄「2026年3月期 決算短信」、三菱重工業「三菱パワーを三菱重工に統合」
- 環境プラント大手の業績:カナデビア「2026年3月期 決算短信」、カナデビア「商号変更のお知らせ」、ログミーファイナンス(タクマ決算説明)
- 海外企業の業績:Saipem「Preliminary results for the fourth quarter and financial year 2025」、Fluor、Technip Energies

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