「自動車業界の大手」と聞くと、多くの方はトヨタ自動車を真っ先に思い浮かべるのではないでしょうか。
実際には、売上高が数兆円規模の完成車メーカーや部品メーカーが複数あり、利益率や得意な地域、事業の広がりは企業ごとに大きく異なります。近年は、業界の勢力図を塗り替えるような大型の再編も相次いでいます。
この記事では、自動車業界の主要企業を、売上高ランキング、分野別の主要企業、各社の特徴と強み、海外企業との比較、再編・M&Aの動き、企業を見るときのポイントという順で整理します。
自動車業界の売上高ランキング

国内の主な自動車関連企業を、2026年3月期の売上高で並べると次のとおりです。完成車メーカーに加えて、大手部品メーカーのデンソーとアイシンも含めています。
トヨタ自動車が2位以下を大きく引き離しています。
※各社の決算短信・決算発表・報道をもとに作成。いずれも連結で、トヨタ自動車は営業収益、本田技研工業・スズキ・デンソー・アイシン・SUBARUは売上収益。二輪・金融など自動車以外の事業も含みます。
トヨタ自動車の2026年3月期の営業収益は50兆6,849億円で、日本企業として初めて50兆円を超えました。2位の本田技研工業の2倍以上の規模です。
ただし、ランキングを見るときは事業範囲の違いに注意が必要です。本田技研工業の売上収益には二輪車やパワープロダクツ、金融サービスが含まれ、トヨタ自動車も金融事業を持っています。部品メーカーは完成車メーカーを顧客とするため、同じ売上高でも意味合いが異なります。
また、売上高が大きいからといって、利益も大きいとは限りません。同じ期に日産自動車は5,331億円の最終赤字、本田技研工業は4,143億円の営業赤字となりました。
部品メーカーに目を向けると、デンソーの売上収益は7兆円を超え、マツダやSUBARUといった完成車メーカーを上回っています。完成車メーカーだけでなく、部品メーカーにも国内有数の大企業がある点は、就職・転職先を考えるうえで押さえておきたいところです。
分野別の主要企業

自動車業界とはの記事で紹介した分類に沿って、分野ごとの代表的な企業を整理します。
完成車から部品まで、分野ごとに主要企業の顔ぶれが異なります。
※代表的な企業の例です。分類は目安で、取引関係は企業ごとに異なります。
完成車メーカーでは、トヨタ自動車がダイハツ工業を子会社に持つほか、スズキ、マツダ、SUBARUとも資本提携を結んでいます。トヨタを中心とした緩やかなグループが、国内市場で大きな存在感を持っているのが特徴です。
Tier1の大手には、完成車メーカーのグループから生まれた企業が多くあります。デンソーとアイシンはトヨタグループの中核企業で、トヨタ自動車以外の完成車メーカーとも取引しています。
商用車では、いすゞ自動車と、日野自動車・三菱ふそうトラック・バスを傘下に持つARCHIONが主なプレイヤーです。物流を支えるトラック・バスは、乗用車とは顧客も求められる性能も異なり、独自の市場を形づくっています。
主要企業の特徴と強み

ここからは、主要企業の特徴を個別に見ていきます。決算の数字は、いずれも2026年3月期のものです。同じ完成車メーカーや部品メーカーでも、稼ぎ方や抱えている課題は大きく異なります。
トヨタ自動車
国内最大の完成車メーカーで、ダイハツ工業と日野自動車を含むグループの2025年の世界販売は約1,132万台と、6年連続で世界首位を守っています。
強みはHVを中心とした電動車の幅広さで、HEV・PHEV・BEVを合わせた電動車の販売は504万台と初めて500万台を超えました。営業利益は3兆7,662億円と前期から21.5%減ったものの、国内の企業の中では突出した水準です。
本田技研工業
四輪車に加えて、大規模な二輪車事業を持つのが特徴です。二輪車の販売台数は2,210万1千台で、四輪車の338万7千台を大きく上回ります。
一方で、同期はEV関連の損失1兆4,536億円を計上し、上場来初の最終赤字となりました。EV戦略の見直しが、今後の大きな焦点です。
日産自動車
売上高は12兆79億円で、前期から4.9%減りました。当期純損失は5,331億円と、前期に続いて大きな赤字となっています。
2024年12月には本田技研工業と経営統合に向けた検討を始めましたが、2025年2月に基本合意書を解約しました。現在は自力での経営再建を進めています。
スズキ
売上収益は6兆2,930億円で、過去最高を更新しました。主力のインド市場で販売が伸びたことが大きく寄与しています。
営業利益率は約9.9%と、国内の完成車メーカーの中で高い水準です(決算から算出)。軽自動車と小型車を軸に、インドなどの新興国で強い地盤を築いているのが強みと言えます。
デンソー
トヨタグループの中核を担う国内最大級の自動車部品メーカーで、売上収益は7兆5,399億円と過去最高でした。
電動化や電子制御の部品に強く、営業利益は5,525億円と前期から6.5%増えています。米国の関税や部材費の上昇がありながらも、合理化と操業度の改善で利益を伸ばしました。
アイシン
2021年4月に、アイシン精機とアイシン・エィ・ダブリュが統合して発足した大手部品メーカーです。トランスミッションなど、駆動系の部品に強みを持っています。
売上収益は5兆1,177億円(前期比4.5%増)、営業利益は2,287億円(同12.7%増)と、増収増益を確保しました。エンジン車向けの駆動部品から電動車向けへの転換が、課題であると同時に成長の機会でもあります。
海外の主要企業との比較

世界に目を向けると、日本の自動車メーカーは販売台数で上位を占める一方、EVの分野では海外勢との競争が激しくなっています。
規模では日本勢が上位にある一方、EVでは中国勢が伸びています。
※出典:nippon.com、トヨタ自動車の発表を伝えた報道、Yahoo Finance(BYD)、各社決算。
販売台数では、トヨタグループの約1,132万台に対し、フォルクスワーゲンは約898万台、現代自動車・起亜は約726万台でした。規模では日本勢が世界トップの座を守っています。
一方、中国のBYDは2025年にEVとPHEVだけで約460万台を販売しました。HVに強い日本勢と、EV・PHEVで規模を伸ばす中国勢という構図が、今後の勢力図を左右すると言えます。
部品の分野でも、ドイツのボッシュやコンチネンタルといったメガサプライヤーが世界規模で開発を進めています。デンソーやアイシンは、これらの企業と世界の完成車メーカーの受注を競い合う立場にあります。
商用車の分野では、ドイツのダイムラートラックがARCHIONに25%を出資しています。国内の再編にも海外の大手企業が深く関わっており、勢力図は国内だけで完結しなくなっています。
再編・M&Aの動き

自動車業界では、ここ数年で大型の再編が相次いでいます。電動化やソフトウェア化に必要な投資が膨らむなか、単独で戦うより規模を大きくしたほうが有利だという判断が背景にあります。主な動きを、部品・グループの再編と完成車メーカーの再編に分けて整理します。
部品・グループの再編と、完成車メーカーの再編の2つに分かれます。
※各社の公表資料・報道をもとに作成。日立Astemoは現在Astemoに社名を変更しています。
部品メーカーの統合
2021年1月、日立オートモティブシステムズと、ホンダ系のケーヒン、ショーワ、日信工業の4社が統合して日立Astemo(現Astemo)が発足しました。系列の枠を越えた統合として注目を集めました。
同じ年の4月には、トヨタグループのアイシン精機とアイシン・エィ・ダブリュが統合し、アイシンが発足しています。電動化に向けて開発の重複をなくし、投資を集中させるねらいがあります。
トヨタグループの再編
2026年3月には、トヨタグループによる豊田自動織機の株式公開買付け(TOB)が成立し、同社は非公開化されることになりました。買付総額は約5兆9,000億円と報じられています。
グループ内の株式の持ち合いを見直し、経営の自由度を高める動きとして、日本企業同士の買収で過去最大級の案件になりました。
完成車メーカー・商用車の再編
2024年12月、本田技研工業と日産自動車は経営統合に向けた検討に関する基本合意書を結びましたが、2025年2月に解約し、統合は実現しませんでした。三菱自動車工業も、両社との協業のあり方を検討していました。
商用車では、日野自動車と三菱ふそうトラック・バスが経営統合し、持株会社のARCHIONが2026年4月に事業を始めました。ARCHIONには、ダイムラートラックとトヨタ自動車がそれぞれ25%を出資しています。
就職・転職で企業を見るときのポイント

企業選びでは売上高の大きさに目が行きがちですが、次の3つの視点もあわせて確認すると、会社の実像がつかみやすくなります。
利益率を見る
売上高が大きくても、利益率には大きな差があります。2026年3月期の営業利益率は、スズキ、トヨタ自動車、デンソーが7%を超えた一方、マツダ、SUBARU、日産自動車は1%前後にとどまりました。
同じ業界でも、利益率には10倍以上の開きがあります。
※各社の2026年3月期決算の売上高(営業収益・売上収益)と営業利益から算出。本田技研工業は営業赤字のため除いています。
利益率は、為替や関税、一時的な損失にも左右されます。1年分だけで判断せず、数年分の推移を確かめておくと安心です。
海外比率と地域の偏りを見る
日本の自動車メーカーの多くは、販売の大半を海外で稼いでいます。たとえばSUBARUの2026年3月期の連結販売台数89万6千台のうち、海外は79万3千台と約9割を占めます(決算から算出)。
どの地域への依存度が高いかによって、関税や為替、現地の景気から受ける影響は変わります。地域の分散は、会社の安定性を見るうえで大切な視点です。海外比率が高い企業では、海外拠点とのやり取りや出張の機会も多くなり、語学力が求められる場面も増えます。
事業の集中度を見る
1つの事業や1社の取引先に依存しすぎていないかも、確認しておきたい点です。本田技研工業のように二輪車など複数の事業を持つ企業もあれば、四輪車に集中する企業もあります。
部品メーカーであれば、取引先の構成や主力製品が電動化でどう変わるかを確かめることが大切です。決算資料や統合報告書で事業別・地域別の売上を見ておくと、入社後の働き方もイメージしやすくなります。

まとめ
- 2026年3月期の売上高はトヨタ自動車が50兆6,849億円で首位、本田技研工業、日産自動車が続く
- 完成車メーカーのほか、デンソーやアイシンなど売上数兆円規模の部品メーカーもある
- 営業利益率は約1%から約10%まで開きがあり、売上規模と収益力は一致しない
- 日立Astemo、アイシンの発足、豊田自動織機の非公開化、ARCHIONの始動など再編が続く
- 企業を見るときは、利益率・海外比率・事業の集中度をあわせて確認したい
自動車業界の基本は自動車業界とは、市場の数字は自動車業界の市場規模と動向、サプライチェーンと利益構造は自動車業界の構造で解説しています。職種の詳細は機械設計やソフトウェア・組込みのページもご覧ください。
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出典
- トヨタ自動車の決算:Car Watch「トヨタ2026年3月期通期決算、営業利益は3兆7662億円で増収減益」
- 本田技研工業の決算:Car Watch「ホンダ、2026年3月期通期決算」
- 日産自動車の決算:日産自動車「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
- 世界販売台数:nippon.com「トヨタが6年連続で自動車販売世界トップ」
- ホンダ・日産の経営統合検討:本田技研工業「日産自動車とHondaとの経営統合に向けた検討に関する基本合意書の解約について」
- ARCHIONの始動:ARCHION・日野自動車・三菱ふそうトラック・バス「プレスリリース(2026年4月1日)」(その他の企業の数値は各社の決算発表による)

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