「センサー」と聞くと、多くの方は昔からある当たり前の部品だと感じるのではないでしょうか。実際、工場の設備には何十年も前からセンサーが組み込まれてきました。
それでも近年、センサー・計測はあらためて注目を集めています。その理由は、センサーそのものの進化に加えて、測ったデータを集めて分析し、人手不足や品質、脱炭素といった経営課題の解決に生かせるようになったことにあります。
この記事では、センサー・計測が注目される背景を、社会や市場の変化、歴史と進化、従来のやり方との違い、導入のメリット、課題と注意点という順で整理します。
センサー・計測が注目される背景

センサー・計測への関心が高まっている背景には、製造業を取り巻く複数の変化が重なっています。まずは市場の広がりを数字で確認しておきましょう。
電子情報技術産業協会(JEITA)の調査では、2024年のセンサー出荷金額は2兆2,075億円で前年比110%となりました。JEITAは、AIの普及にともなうAIサーバー向けの需要拡大と、世界的なDX(デジタル技術による変革)の推進が成長を後押ししたとしています。
スマートフォン向けが最大ですが、自動車や産業用途も大きな市場です。
※JEITA「センサ・グローバル出荷実績(2023・2024年)」より。国内外66社の出荷実績で、主な4用途を抜粋しています。
産業用は1,910億円で、全体に占める割合は約9%です。金額は大きくありませんが、工場の自動化や品質保証を支える、代わりのきかない用途と言えます。ここからは、製造現場でセンサー・計測が求められる理由を4つに分けて見ていきます。
人手不足と技能継承
2026年版ものづくり白書によると、製造業の就業者数は2024年の1,046万人から、2025年には1,033万人へとわずかに減少しました。2002年と比べると若い就業者が減り、高齢の就業者が増えている傾向も示されています。
熟練者が音や手触りで感じ取っていた設備の異常や品質の変化を、センサーで数値として捉えられれば、経験の浅い人でも判断しやすくなります。人の感覚に頼っていた判断をデータに置き換えることが、技能継承の手段として期待されています。
品質要求の高度化
自動車の電動化や半導体の微細化などにより、部品に求められる精度は年々厳しくなっています。抜き取り検査だけでは不良の流出を防ぎきれない場面も増え、全数を測って記録する体制が求められるようになりました。
また、不具合が見つかったときに、いつ、どの設備で、どんな条件でつくられたかをさかのぼれるトレーサビリティも重視されています。製造条件を自動で記録するセンサーは、その土台となる存在です。
製造条件のデータがそろっていれば、問題の影響範囲を絞り込めるため、回収や再検査の規模を小さく抑えられます。品質問題が起きたときの損失を小さくするという意味でも、計測の価値は高まっています。
脱炭素とエネルギー管理
カーボンニュートラルに向けて、工場のエネルギー使用量を減らす取り組みが広がっています。しかし、どの設備がいつ、どれだけ電力を使っているかがわからなければ、効果的な対策は打てません。
電力計や流量計、温度センサーで設備ごとのエネルギーを見える化することが、省エネの第一歩として位置づけられています。測ることで初めて、ムダな待機電力や空気漏れといった改善の余地が見えてきます。
エネルギーの見える化は、コスト削減にも直結します。取引先から製品ごとのCO2排出量の報告を求められる場面も増えており、正確な計測データはその根拠としても使われます。
データ活用とDXの進展
IoT(モノのインターネット)の普及で、センサーのデータをネットワークで集め、クラウドやAIで分析できるようになりました。センサーは、制御のための部品から、データを生み出す入り口へと役割を広げています。
設備の故障を事前に察知する予知保全や、工場全体をつなぐスマートファクトリーも、すべては正確なデータの取得から始まります。その意味で、センサー・計測はDXの最前線にある技術と言えます。

センサー・計測の歴史と進化

製造現場の計測は、人の目と手による測定から始まり、機械式のスイッチ、電子式のセンサー、そしてネットワークにつながるセンサーへと進化してきました。
機械式、電子化、つながるセンサーの3つの段階に分かれます。
※段階の区切りは目安です。現在の工場でも、各時代の技術が組み合わせて使われています。
機械式の時代
かつての計測は、ノギスやマイクロメーターを使った人の手による測定が中心でした。設備の制御には、物が当たると接点が切り替わるリミットスイッチが使われ、圧力や温度は針で示す計器を人が見回って読み取っていました。
機械式のスイッチは構造がわかりやすい反面、接点の摩耗で寿命が限られるという弱点がありました。
計器の値を読み取って紙に書き写す作業も多く、読み間違いや転記ミスが起こりやすいという課題もありました。
電子化の時代
転機となったのが、接点を持たないスイッチの登場です。オムロンは1960年の大阪国際見本市で「無接点近接スイッチ」を発表しており、触れずに検出できる電子式センサーの時代が始まりました。
その後、光で物を検出する光電センサーが広く使われるようになり、マイコンを内蔵して設定や判定を自在に行えるセンサーも登場しました。センサーは、単なるスイッチから判断機能を持つ部品へと進化していきます。
電子式になったことで、応答の速さと寿命が大きく向上し、高速で動く生産ラインにも対応できるようになりました。自動化設備が一気に広がった背景には、こうしたセンサーの進化があります。
つながる時代
近年は、MEMS技術による小型化と、通信技術の発達によって、多数のセンサーをネットワークでつなげるようになりました。電池で動く無線センサーも増え、たとえば横河電機は2017年11月に、振動と温度のセンサーを内蔵した小型無線センサー「Sushi Sensor」を発表し、2018年3月から国内で発売しています。
配線工事なしで既存設備に後付けできるようになったことで、古い設備が多い工場でもデータ収集を始めやすくなりました。集めたデータをAIで分析する取り組みも広がっています。
従来技術との違い

ここでいう従来技術とは、人の感覚による確認や、決まった周期で行う点検、単体で完結するセンサーのことです。現在のセンサー・計測は、これらとどう違うのでしょうか。
測る主体、タイミング、データの使い方が大きく変わっています。
※人による確認が不要になるわけではなく、センサーと人が役割を分担する形が一般的です。
人の感覚からデータへ
熟練者は、設備のわずかな音の変化や、製品の手触りから異常に気づくことができます。しかし、その判断基準は言葉にしにくく、人によってばらつきも出ます。
センサーは同じ基準で、休むことなく測り続けます。誰が見ても同じ数字で判断できる点が、人の感覚との最大の違いです。
ただし、センサーが捉えられるのは、あらかじめ決めた量だけです。想定外の異常に気づく力は今も人の方が優れているため、両者を組み合わせることが大切です。
定期点検から常時監視へ
従来の設備点検は、月に1回、年に1回といった周期で行うのが一般的でした。この方法では、点検と点検の間に起きた変化を見逃すおそれがあります。
センサーで常時監視すれば、変化が起きたその時点で気づけます。点検の周期を状態に合わせて見直すことで、保全の手間を減らしながら故障を防ぐことも可能になります。
こうした考え方は、状態に応じて保全を行うことから「状態基準保全(CBM)」と呼ばれます。決まった周期ではなく、設備の状態に合わせて手を打つのが特徴です。
単体の判断からデータの活用へ
以前のセンサーは、ONかOFFかを制御装置に伝えれば役目を終えていました。現在は、測定値そのものを記録し、ほかの設備や工程のデータと組み合わせて分析するのが当たり前になりつつあります。
たとえば、加工時の温度データと製品の寸法データを突き合わせれば、不良が出やすい条件を見つけられます。センサーは、その場の判断だけでなく、改善のヒントを生み出す道具になりました。

センサー・計測のメリット

センサー・計測を活用することで得られるメリットは多岐にわたりますが、現場で特に大きいのは次の3つです。
品質、設備、人の働き方のそれぞれに効果があります。
品質の安定
全数を計測し、製造条件を記録しておけば、不良品が後工程や顧客に流れ出るのを防げます。万一不具合が起きても、原因となった条件をデータからさかのぼって特定できます。
不良の原因がわかれば、同じ問題の再発を防ぐ対策も打ちやすくなります。品質を「検査で守る」から「工程でつくり込む」へ変えていく土台になるのがセンサーです。
設備の安定稼働
モーターやポンプの振動、温度の変化を監視すれば、故障の前ぶれを早めに捉えられます。計画的に部品を交換できれば、突発的な停止による生産の遅れを減らせます。
設備がどれだけ動き、どれだけ止まっているかという稼働状況の見える化も、生産性を高めるうえで大きな効果があります。止まっている理由がわかれば、改善の優先順位もつけやすくなります。
設備保全の担当者にとっては、いつ、どの設備を優先して手入れすべきかを判断する材料が増えることになります。限られた人数で多くの設備を守るうえで、この効果は小さくありません。
人の負担軽減
計器の見回りや手書きの記録といった作業は、時間がかかるうえに記入ミスも起こりがちです。センサーでデータを自動収集すれば、こうした作業の負担を大きく減らせます。
空いた時間を、データを見て改善策を考えるといった付加価値の高い仕事に回せるのも、人手不足の現場にとって大きなメリットです。
データが自動で残ることで、担当者が変わっても過去の状態を確認できるようになります。これは技能継承の面でも大きな助けになります。
センサー・計測の課題と導入時の注意点

メリットが大きい一方で、センサーを付ければすぐに成果が出るわけではありません。導入の前に知っておきたい3つの課題を整理します。
事前に想定しておけば、多くの失敗は避けられます。
※対策は一例です。現場の条件に合わせて検討してください。
目的があいまいなまま導入してしまう
よくある失敗が、とりあえずセンサーを付けてデータを集めたものの、何に使えばよいかわからないというケースです。データは集めただけでは価値を生みません。
どの課題を解決するために、何を測るのかを先に決めることが重要です。小さな範囲で試して効果を確かめ、成果が見えてから広げていく進め方が失敗を減らします。
現場の環境による誤差や誤検出
工場には、油や粉じん、振動、温度変化、電気ノイズなど、センサーにとって厳しい条件がそろっています。カタログどおりの性能が出ず、誤検出に悩まされることも少なくありません。
設置する環境をよく調べ、方式や取り付け位置、配線の引き回しまで含めて検討する必要があります。導入前に現場で試験的に測ってみるのも有効です。
また、センサーの値が正しいかどうかを確かめる手段も用意しておきましょう。値がおかしいときに、設備の異常なのかセンサーの故障なのかを切り分けられないと、かえって現場が混乱します。
維持管理とデータ管理の負担
センサーは付けたら終わりではなく、定期的な校正や清掃、無線センサーなら電池の交換が必要です。台数が増えるほど、この維持管理の手間も大きくなります。
また、ネットワークにつながるセンサーが増えると、データの保管場所やセキュリティ対策も考えなければなりません。導入計画には、運用の体制と費用まで含めておくことが大切です。
まとめ
- センサー出荷金額は2024年に2兆2,075億円となり、AIやDXの広がりが成長を後押ししている
- 人手不足、品質要求の高度化、脱炭素、データ活用が注目の主な背景
- 機械式から電子式、そしてネットワークにつながるセンサーへと進化してきた
- 人の感覚や定期点検と比べ、常時・同じ基準で測り、データとして活用できる点が違い
- 導入では目的の明確化、設置環境への配慮、維持管理の体制づくりが欠かせない
センサーの基本的な仕組みや原理はセンサー・計測とは?仕組みと基本原理で、具体的な使われ方はセンサー・計測の主な用途と導入事例で詳しく解説しています。センサーのデータを生かす予知保全や脱炭素・カーボンニュートラル、人手不足・省人化の技術ページもあわせて参考になります。
センサー・計測の最新動向や関連する技術については、センサー・計測の技術ページから関連記事もあわせてご覧ください。
出典
- センサー出荷金額・用途別内訳:一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)「センサ・グローバル出荷実績(2023・2024年)の発表」(2025年9月26日)
- 製造業の就業者数:経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2026年版ものづくり白書 概要」
- 無接点近接スイッチの発表:オムロン「製造業の生産性向上をめざして」
- 小型無線センサーの発売:横河電機「IIoTを実現する小型無線センサ「Sushi Sensor」の第一弾として振動・温度センサを開発・発売」

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