「センサー」と聞くと、多くの方は自動ドアの人感センサーや、スマートフォンのカメラを思い浮かべるのではないでしょうか。
実際の製造現場では、部品があるかどうかを確かめる小さなスイッチから、ミクロン単位で寸法を測る測定器、設備の振動や温度を見張る装置まで、数えきれないほどのセンサーが働いています。人の目や手の代わりに、ものづくりの状態を数字に置き換えているのがセンサーと計測の技術です。
この記事では、センサー・計測とは何かを、全体の仕組み、代表的な基本原理、種類と方式、理解に欠かせない基本用語という順で整理します。
センサー・計測とは

センサーとは、温度や圧力、光、位置といった物理的な状態を検出し、電気信号に変えて伝える部品です。計測とは、その信号を基準と比べて数値として読み取り、記録や判断に使えるようにする一連の行為を指します。
つまりセンサーは「感じ取る役」、計測は「量として確かめる役」と考えるとわかりやすいでしょう。現場では両者がセットで使われるため、この記事ではまとめて「センサー・計測」と呼びます。
市場の規模も大きく、電子情報技術産業協会(JEITA)の調査では、2024年にJEITA会員内外の66社がグローバルに出荷したセンサーは2兆2,075億円(前年比110%)、数量は279億個を超えています。このうち産業用途は1,910億円で、全体の約9%を占めます。
金額の77%は光を扱うセンサーで、イメージセンサーなどが大きな割合を占めます。製造現場向けは金額こそ一部ですが、設備の自動化や品質管理を裏側で支える基盤として欠かせない存在です。
製造業でセンサー・計測が関わる範囲は、大きく3つに分けられます。1つ目は設備を正しく動かすための「制御」、2つ目は製品の良し悪しを確かめる「検査・品質管理」、3つ目は設備やエネルギーの状態を見張る「監視・保全」です。
同じ温度センサーでも、炉の温度を一定に保つために使えば制御、製品の熱処理条件を記録するために使えば品質管理、モーターの過熱を見つけるために使えば保全の道具になります。何のために測るのかによって、求められる性能や使い方が変わる点を押さえておきましょう。
どちらも「測る」道具ですが、役割と使われ方が異なります。
※センサーを内蔵した計測器や、表示機能を持つセンサーもあり、境界ははっきりしていません。

センサー・計測の仕組み

センサーの種類は多様ですが、情報が流れる道筋はほぼ共通しています。大きく見ると、検出する、信号に変える、伝えて使うという3つの段階です。
人間にたとえると、検出部は目や耳などの感覚器官、信号処理部は神経、出力・伝送部は脳へ情報を届ける経路にあたります。どこか1か所でも弱いと、正しい情報は伝わりません。
測りたい状態が、数字や制御の指令に変わるまでの道筋です。
※増幅や変換の回路はセンサー本体に内蔵されることが多く、外からは1つの部品に見えます。
検出部
最初の入口が検出部です。光を受けると電流が流れるフォトダイオード、力が加わると抵抗値が変わるひずみゲージ、温度で電圧が生じる熱電対など、ある物理量の変化に反応する素子が使われます。
どの素子を選ぶかで、測れる対象や範囲、苦手な環境が決まります。センサー選びは、まず検出部の性質を知ることから始まると言えます。
検出部の多くは半導体や金属、セラミックスなどの材料でできています。材料技術の進歩が、センサーの小型化や高感度化を支えてきました。
信号処理部
検出部が出す信号は、多くの場合ごく小さく、周囲のモーターやインバーターからの電気ノイズの影響も受けます。そこで信号を増幅し、不要な成分を取り除いてから、デジタル値に変換します。
この段階で、あらかじめ決めた値を超えたらONを出す「しきい値判定」を行うセンサーもあります。同じ検出素子でも、信号処理の出来で性能が大きく変わるのが特徴です。
たとえば、光電センサーで小さな部品を数える場合、受光量のわずかな変化を安定して見分けられるかどうかは、増幅とノイズ対策の良し悪しで決まります。現場で「たまに数え漏れる」といったトラブルの多くは、ここに原因があります。
出力・伝送部
処理された信号は、配線や無線を通じてPLC(設備を制御する専用のコンピューター)や上位のシステムへ送られます。ON/OFFだけを伝えるものもあれば、4〜20mAの電流や通信で測定値そのものを送るものもあります。
配線でつなぐ場合は、センサーから制御盤までの距離や、動力線と並べて通すかどうかでノイズの入り方が変わります。信号を正しく届けるための配線設計も、計測の品質を左右する要素です。
近年は、測定値に加えてセンサー自身の状態も送れる製品が増えています。信号の行き先が制御から分析へと広がったことが、センサーの役割を大きく変えました。

センサー・計測の基本原理

センサーの原理は、突き詰めると「ある物理現象を、電気の変化に置き換える」ことです。製造現場でよく使われる原理を、代表的な4つに分けて見ていきます。
どの原理にも得意と不得意があります。原理を知っておくと、カタログの数字だけでは判断しにくい「この現場で本当に使えるか」を見極めやすくなります。
多くのセンサーは、次のいずれかの変化を電気信号に置き換えています。
光を使う原理
光電センサーは、投光部から出した光が、物体によって遮られたり反射したりする量の変化を受光部で捉えます。物体に触れずに、離れた位置から有無を判断できるのが強みです。
カメラを使う画像センサーも光の原理の応用で、明るさの分布から形や傷を読み取ります。一方で、ほこりや油の霧、透明な物体には弱いという性質もあります。
光電センサーには、投光部と受光部を向かい合わせる透過形、反射板を使う回帰反射形、物体からの反射光を直接受ける拡散反射形などの方式があり、設置スペースや対象物に応じて選びます。
電磁気を使う原理
近接センサーの多くは、コイルで高周波の磁界をつくり、金属が近づいたときに生じる変化を検出します。光を使わないため、油や切りくずが多い環境でも安定して動くのが特徴です。
樹脂や液体など金属以外を検出したい場合は、静電容量(電気をためる性質)の変化を使う方式が使われます。回転の角度や速度を測るエンコーダーにも、磁気や光の原理が使われています。
近接センサーは検出距離が数mm〜数十mm程度と短いものが多く、その分、狙った位置の金属だけを確実に捉えられます。シリンダーの動作端の確認や、回転する歯車の歯の検出などでよく使われます。
力やひずみを使う原理
金属に力を加えると、目に見えないほどわずかに伸び縮みします。ひずみゲージは、この伸び縮みで電気抵抗が変わる性質を利用して、重さや力を測ります。
圧力センサーや、はかりに使われるロードセルもこの原理の仲間です。振動を測る加速度センサーも、揺れによって内部に生じる力を電気信号に変える仕組みを持っています。
加速度センサーの中には、MEMS(微細加工技術でつくる小さな機械構造)を使ったものもあります。指先に乗るほどの大きさで、スマートフォンから設備の監視まで幅広く使われています。
熱を使う原理
温度の測定には、異なる2種類の金属をつないだときに温度差で電圧が生じる熱電対や、温度で抵抗値が変わる測温抵抗体がよく使われます。炉の高温から冷凍庫の低温まで、用途に応じて使い分けます。
物体から出る赤外線の量で温度を知る放射温度計は、触れずに測れる点が便利です。ただし表面の状態によって値が変わるため、測り方の前提を理解しておくことが正しい計測の条件になります。
温度は、製品の品質に直結する条件でありながら、測る位置が少しずれるだけで値が変わりやすい量です。どこに、どれだけ深くセンサーを差し込むかといった取り付けの工夫も、計測の一部と考えるとよいでしょう。
センサー・計測の種類・方式

センサーはいくつもの切り口で分類できます。現場で機種を選ぶときに意識される代表的な分け方を整理します。
分類の軸は1つではなく、同じセンサーでも「非接触式で、ON/OFF出力の、組込み型」というように、複数の軸を組み合わせて特徴を表します。
検出対象による分類
まず、何を知りたいかによる分け方です。物があるかどうかや位置を知る「検出用」と、長さや温度、圧力の値を知る「計測用」に大きく分かれます。
メーカーの技術解説でも、光電センサー、近接センサー、変位センサー、画像センサー、ロータリーエンコーダー、圧力・流量センサー、振動センサーなど、対象ごとに製品群が整理されています。
初めて機種を選ぶ場合は、「あるかないか」を知りたいのか、「どれだけか」を知りたいのかを最初に決めると、候補を絞り込みやすくなります。
接触式と非接触式
次に、対象に触れて測るかどうかによる分け方です。接触式は安定して正確に測りやすく、非接触式は速く動く物や柔らかい物にも使えるという違いがあります。
触れるかどうかで、得意な場面と注意点が変わります。
※実際には、両方を組み合わせて精度と速度を両立させる例も多くあります。
出力方式による分類
出力がON/OFFの2値か、連続した値かによっても分かれます。部品の有無ならON/OFFで十分ですが、寸法のばらつきを管理したい場合はアナログ値や通信で数値を受け取る必要があります。
最近は、1本の通信線で設定の変更や診断情報の取得までできるセンサーも増え、配線の手間を減らしながら多くの情報を扱えるようになっています。
設置形態による分類
設備に組み込んで常時働く「組込み型」、人が持ち運んで使う「ハンディ型」、電池で動き無線でデータを送る「後付け型」という分け方もあります。
特に無線の後付け型は、配線工事なしで既存設備に取り付けられるため、古い設備の稼働状況を見える化する入り口として広がっています。
ただし、電池の交換周期や、電波が届きにくい金属だらけの環境への対策など、無線ならではの注意点もあります。設置形態は、使う場所と期間を考えて選ぶことが大切です。
センサー・計測を理解するための基本用語

カタログや仕様書を読むときに必ず出てくる言葉があります。似た言葉が多いため、意味の違いを押さえておくと機種選びの失敗を減らせます。
仕様書を読むうえで、最初に押さえておきたい6つの言葉です。
よく混同されるのが分解能と精度です。0.001mmまで表示できても、実際の値からずれていれば精度が高いとは言えません。「細かく読める」ことと「正しく測れる」ことは別の性能です。
繰り返し精度と精度の違いも大切です。毎回同じだけずれて測れる測定器は、繰り返し精度は高いものの、精度は低い状態です。この場合は校正でずれを補正すれば、正しく測れるようになります。
このように用語の意味を正しく理解しておくと、仕様書の数字を比べるだけでなく、自分の現場に必要な性能はどれかを判断できるようになります。
校正に関連して、トレーサビリティという言葉も使われます。自社の測定器が、国家標準までさかのぼれる基準で校正されていることを示す考え方で、品質保証の場面では特に重視されます。
このほか、周囲の温度変化による値のずれを表す「温度特性」や、電気的な雑音への強さを表す「耐ノイズ性」も、現場で安定して使えるかを左右する大切な指標です。
仕様書に書かれた値は、決められた試験条件のもとでの性能です。実際の現場では温度や汚れ、取り付け方によって性能が変わるため、余裕を持った選定と現場での確認が欠かせません。
まとめ
- センサーは物理的な状態を電気信号に変える部品で、計測はそれを数値として確かめる行為
- 信号は、検出部、信号処理部、出力・伝送部の順に流れて制御や分析に使われる
- 代表的な原理は、光、電磁気、力やひずみ、熱の変化を電気に置き換えるもの
- 検出対象、接触の有無、出力方式、設置形態によって種類が分かれる
- 分解能と精度の違いや校正など、基本用語を押さえると機種選びの失敗を減らせる
センサー・計測がなぜ今注目されているのかはセンサー・計測が注目される背景と従来技術との違いで、現場での具体的な使われ方はセンサー・計測の主な用途と導入事例で詳しく解説しています。センサーのデータを設備の故障予測に生かす予知保全や、工場全体をつなぐスマートファクトリー・IoT、センサーを設計する電気・電子設計の仕事もあわせて参考になります。
センサー・計測の最新動向や関連する技術については、センサー・計測の技術ページから関連記事もあわせてご覧ください。
出典
- センサー出荷金額・数量・用途別内訳:一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)「センサ・グローバル出荷実績(2023・2024年)の発表」(2025年9月26日)
- センサーの製品分類:オムロン制御機器「センサ – 技術解説」

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