「電子部品・半導体業界の市場規模」と聞くと、多くの方はニュースで目にする「世界の半導体市場が何兆円」といった大きな数字を思い浮かべるのではないでしょうか。
実際には、どの統計を使うか、日本企業の出荷を数えるのか世界全体の売上を数えるのかによって、同じ業界でも数字は大きく変わります。需要先や製品の種類によっても、伸び方は一様ではありません。
この記事では、電子部品・半導体業界の市場規模を、統計ごとの数え方、これまでの推移、需要先・製品別の内訳、海外市場との関係、市場を動かすトレンド、今後の見通しとキャリアへの影響という順で整理します。
電子部品・半導体業界の市場規模

電子部品・半導体業界の市場規模は、1つの数字で表しにくい業界です。部品、半導体、製造装置、材料と対象が幅広く、それぞれに別の統計があるためです。
国内の工場の生産活動でみると、経済産業省の2024年経済構造実態調査では、電子部品・デバイス・電子回路製造業の製造品出荷額等は2023年に17兆3,291億円でした。全製造業の4.6%を占める規模です。
日本企業の事業規模でみると、JEITAの統計で日系メーカーの電子部品グローバル出荷額は2025年度に4兆6,198億円でした。日本製半導体製造装置の販売高は、日本半導体製造装置協会(SEAJ)によると2025年度に5兆1,986億円です。
ここで押さえておきたいのが数え方の違いです。国内工場からの出荷を数える統計、海外工場の分も含めて日本企業の出荷を数える統計、世界全体の売上を数える統計では、対象がまったく異なります。数字を比べるときは、何を数えた統計かを必ず確認することが大切です。
統計によって、数えている範囲が異なります。
※各統計は対象範囲や集計期間が異なるため、単純に合計・比較することはできません。

市場規模の推移

業界の勢いを示す例として、日本製半導体製造装置の販売高の推移を見てみます。装置は半導体メーカーの設備投資に直結するため、業界全体の波をよく映す指標です。
SEAJによると、販売高は2019年度の2兆730億円から、2025年度には5兆1,986億円まで拡大しました。6年でおよそ2.5倍になった計算です(SEAJの公表値から算出)。
増減を繰り返しながら拡大し、2026年度は6.5兆円台が予測されています。
※出典:日本半導体製造装置協会(SEAJ)「半導体・FPD製造装置 需要予測(2026年度〜2028年度)」(2026年7月)。2026年度は予測値。
伸び方は一直線ではなく、増加と減少を繰り返しています。主な理由を順に見ていきます。
コロナ禍後のデジタル需要と供給不足
2021年度の販売高は前年度比44.4%増と大きく伸びました。在宅勤務やオンライン化でパソコンやサーバーの需要が高まり、自動車向けなどで半導体の供給不足が起きたことから、各社が一斉に生産能力を増強したためです。
電子部品でも、同じ時期に受注が急増しました。需要の急増期には部品や装置の納期が長くなり、顧客が先回りして発注する動きも重なります。
在庫調整による一時的な落ち込み
2023年度は前年度比5.9%減と、販売高が前年度を下回りました。スマートフォンやパソコンの需要が一巡し、積み上がった在庫を減らすために半導体メーカーが投資を抑えたためです。
このように、需要の拡大と調整を数年単位で繰り返すのがこの業界の特徴です。シリコンサイクルと呼ばれるこの波は、装置や部品の受注に時間差をもって表れます。
生成AIによる投資の再拡大
2024年度は29.0%増、2025年度も9.0%増と、販売高は再び拡大に転じました。SEAJは、AIサーバー向けの先端ロジックや、HBMを中心としたDRAMへの投資が成長をけん引していると説明しています。
為替も金額に影響します。装置の多くは海外に販売されるため、同じ台数でも円安の局面では円建ての販売高が大きく見えやすい点に注意が必要です。
需要先・製品別の内訳

次に、どの製品や需要先が市場を支えているかを見ていきます。半導体と電子部品では、主な顧客の構成が異なります。
WSTSによると、2025年の世界半導体市場7,956億ドルのうち、最も大きいのはロジックの2,995億ドル、次いでメモリの2,300億ドルです。この2分野だけで全体の約3分の2を占めます(WSTSの公表値から算出)。
AI向けに伸びたロジックとメモリが、大きな割合を占めています。
※出典:WSTS 2026年春季半導体市場予測(JEITA公表)。百万ドル単位の公表値を億ドルに換算。
伸び率でみても、2025年はロジックが38.8%増、メモリが39.0%増と大きく伸びた一方、ディスクリートは1.0%減でした。AI向けの高性能品とそれ以外で明暗が分かれているのが現状です。
電子部品の需要先では、JEITAが集計する用途別構成比(2026年4〜6月期)で自動車が30.4%と最も大きく、通信機器が19.0%、PC・周辺機器が16.1%で続きます。
自動車向けが最大で、通信機器、PC・周辺機器が続きます。
※出典:JEITA電子部品部会「電子部品用途別構成比推移」。調査参加企業の連結ベースの出荷額による。AV機器2.8%、家電2.8%、医療・ヘルスケア0.8%は省略。
自動車向けが大きいのは、電動化や運転支援の広がりで1台あたりに使われる電子部品が増えているためです。通信機器やパソコンでは、製品の高機能化による部品点数の増加が需要を支えています。
製品別の動きも見ておきます。JEITAの統計では、2025年度の電子部品グローバル出荷のうち受動部品が2兆4,376億円と前年度比10%増え、なかでもコンデンサは1兆7,277億円と12%増えました。AIサーバーやデータセンター向けの需要が伸びをけん引しています。
個別企業でも同じ傾向が見られます。村田製作所の2026年3月期の用途別売上高は、通信が35.7%、モビリティが25.9%、コンピュータが16.9%と、同じ3分野が上位を占めています。
海外市場と輸出

電子部品・半導体業界は、製造業のなかでも特に海外との結びつきが強い業界です。顧客である電子機器メーカーの工場が、中国や東南アジアなどに多く集まっているためです。
市場の地域別にみると、WSTSによる2025年の日本の半導体市場は447億ドルで、世界全体の約5.6%でした(WSTSの公表値から算出)。アジア太平洋が4,397億ドル、米州が2,565億ドルと、需要の中心は海外にあります。
企業単位でも海外比率は高く、2026年3月期の海外売上高比率は村田製作所、TDKともに92.7%でした。村田製作所では、中華圏向けだけで売上高の47.2%を占めています。
製造装置も同様です。SEAJによると、2025年度の日本市場における半導体製造装置の販売高は1兆4,395億円でした。日本製装置の販売高5兆1,986億円と比べると、日本製装置の大半は海外の工場に納められていることがわかります。
財務省の貿易統計では、2025年の「半導体等電子部品」の輸出額は前年比16.2%増えました。一方、中国向けの「半導体等製造装置」の輸出は12.2%減、EU向けは18.0%増と、輸出先によって動きが分かれています。
海外企業と比べると、半導体そのものでは日本の存在感は以前ほど大きくありません。ジェトロによると、世界の半導体市場に占める日本市場の割合は1988年の40.2%をピークに低下しました。その一方で、製造装置や材料、電子部品では、日本企業が世界で高い存在感を保っています。
市場を動かす主なトレンド

電子部品・半導体の市場は、世界的な技術や政策の変化から強い影響を受けます。ここでは、特に影響の大きい4つのトレンドを取り上げます。
需要と投資の両面から、市場の方向を左右しています。
生成AIとデータセンター
最も大きな原動力は生成AIです。SEAJは、米国大手IT企業のAIデータセンター投資が年率70%程度の高い伸びを示していると指摘しています。
AIサーバーには、高性能なロジック半導体と大容量のメモリが大量に使われます。複数のチップを1つにまとめる先進パッケージングも、生産能力を大きく上回る需要が続いているとされます。
自動車の電動化
電気自動車やハイブリッド車では、モーターや電池を制御するためにパワー半導体や多数の電子部品が必要です。自動車は電子部品の最大の用途であり、中長期にわたる需要の柱と位置づけられています。
ただし、電気自動車の普及ペースには地域差があり、需要が伸び悩む局面もあります。車載向けの比率が高い企業ほど、その影響を受けやすい点は押さえておきたいところです。
経済安全保障と国内投資
半導体は経済安全保障の要とされ、各国が自国での生産に力を入れています。国内では、TSMCが出資するJASMの熊本第1工場が2024年12月に量産を始め、Rapidusが北海道千歳市で2027年の量産開始を目指しています。
政府は「AI・半導体産業基盤強化フレーム」で、2030年度までの7年間で10兆円以上の公的支援を行う方針を示しました。10年間で50兆円を超える官民の投資を見込んでいます。
人手不足と工場の自動化
新しい工場の建設が相次ぐ一方で、人材の確保は大きな課題です。JEITA半導体部会に参加する主要8社は2022年、10年間で4万人の採用を目指す考えを示しました。
人手に頼らない工場づくりも進んでいます。装置間の自動搬送やデータによる品質管理、設備の予兆保全は、スマートファクトリー・IoTの代表的な活用分野です。

今後の見通しとキャリアへの影響

業界団体の見通しでは、市場の拡大は当面続くと予測されています。
WSTSは、世界半導体市場が2026年に1兆5,112億ドル、2027年に1兆9,137億ドルに達すると予測しています。2026年だけで2025年の約1.9倍となる急拡大で、特にメモリの伸びが大きい見通しです(WSTSの公表値から算出)。
SEAJも、日本製半導体製造装置の販売高を2026年度に6兆5,502億円、2028年度に7兆7,718億円と予測しています。JEITAは、2026年の電子情報産業の世界生産額を4兆5,103億ドルと見込んでいます。
ただし、これらはあくまで現時点の予測です。過去にも急拡大のあとに調整局面が訪れており、シリコンサイクルの波がなくなるわけではない点は押さえておきたいところです。
伸びる職種
市場の拡大に伴って人材需要が高まっているのが、工場の立ち上げや量産を担う職種です。プロセスエンジニアや生産技術、設備保全は、新工場の稼働に欠かせません。
装置メーカーでは、顧客の工場で装置を立ち上げて保守するフィールドエンジニアの需要が大きくなっています。顧客に製品を提案する技術営業・FAEも、採用が活発な職種の1つです。
求められるスキル
技術の変化が速いため、特定の工程や製品の知識に加えて、データを扱う力が重視されるようになっています。製造データの分析や、AIを使った検査・品質管理の知識は、多くの職種で強みになります。
顧客や生産拠点の多くが海外にあるため、英語での技術的なやり取りができる人材も評価されやすいと言えます。他業界で培った生産管理や品質保証の経験を生かせる場面も増えています。

まとめ
- 市場規模は統計によって数え方が異なり、国内の製造品出荷額等は2023年に17兆3,291億円
- 日本製半導体製造装置の販売高は2025年度に5兆1,986億円と、6年で約2.5倍に拡大
- 半導体はロジックとメモリ、電子部品は自動車・通信機器・PC向けが需要の中心
- 需要の多くは海外にあり、大手部品メーカーの海外売上高比率は9割を超える
- 生成AIや国内投資で拡大が続く見通しだが、景気の波には注意が必要
業界の基本的な仕組みは電子部品・半導体業界とは、サプライチェーンや利益構造は電子部品・半導体業界の構造、主要企業の顔ぶれは電子部品・半導体業界の主要企業と勢力図で詳しく解説しています。
このほかの関連記事は、電子部品・半導体の業種ページからもあわせてご覧ください。
出典
- 製造品出荷額等:経済産業省「2024年経済構造実態調査 二次集計結果〔製造業事業所調査〕結果の概要」
- 半導体製造装置販売高:一般社団法人日本半導体製造装置協会「半導体・FPD製造装置 需要予測(2026年度〜2028年度)」(2026年7月2日)
- 世界半導体市場:JEITA「WSTS 2026年春季半導体市場予測について」(2026年6月2日)、電子情報産業の世界生産はJEITA「電子情報産業の世界生産見通し」、日本のシェア推移はジェトロ「復活目指す日本の半導体(前編)」
- 電子部品の出荷額・用途別構成比:ニュースイッチ(日刊工業新聞)「昨年度の電子部品出荷、4%増加の4兆6198億円」、JEITA電子部品部会「電子部品用途別構成比推移」
- 輸出:財務省「令和7年分貿易統計(速報)の概要」、各社の海外売上高比率は村田製作所・TDKの2026年3月期決算短信
- 政策・人材:経済産業省「AI・半導体産業基盤強化フレーム」、EE Times Japan「10年で4万人採用目指す、半導体メーカー8社が若手人材を熱望」

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