「機械要素部品業界の主要企業」と聞くと、多くの方はベアリングの日本精工やNTNのような、名前の知られた数社を思い浮かべるのではないでしょうか。
実際には、空気圧機器、直動部品、精密減速機、ばね、シール、チェーンと、分野ごとに有力な企業があり、それぞれが世界で戦っています。売上高の規模だけでなく、事業の中身や利益率も会社によって大きく異なります。
この記事では、機械要素部品業界の主要企業を、売上高ランキング、分野別の主要企業、主要企業の特徴と強み、海外の主要企業との比較、再編・M&Aの動き、就職・転職で企業を見るときのポイントという順で整理します。
機械要素部品業界の売上高ランキング

まず、機械要素部品を主力とする主な上場企業の売上高を、最新の決算で比べてみます。上位には、連結売上高が1兆円を超える企業が2社並びます。
各社の最新期の連結売上高を並べたものです。
※各社の決算短信・決算説明資料より。ナブテスコとTHKは2025年12月期、それ以外は2026年3月期。ジェイテクト・ミネベアミツミ・THK・ナブテスコは売上収益、THKは継続事業ベース。億円未満切り捨て。
ただし、このランキングは各社の事業範囲の違いが大きく、そのまま機械要素部品の規模を表すものではありません。ジェイテクトは売上収益の約7割がステアリングなどの自動車セグメントで、ミネベアミツミも半導体・電子部品などの事業が大きな割合を占めます。
ベアリングを含む事業に絞ると、ジェイテクトの産機・軸受セグメントは3,471億円、ミネベアミツミのプレシジョンテクノロジーズ事業は2,812億円、NTNの軸受他の事業は3,489億円です(いずれも2026年3月期)。
日本精工は、産業機械事業が3,775億円、自動車事業が4,033億円で、ベアリングを中心とする事業の規模が大きい企業です。どの物差しで比べるかによって、順位は入れ替わる点に注意が必要です。
ばねやシールの大手も同じです。日本発条の2026年3月期は、自動車用のシートが2,925億円と最大の事業で、懸架ばねは1,674億円でした。NOKもシール事業が3,674億円で、電子部品事業が3,451億円と、機械要素部品以外の事業も大きな柱になっています。
分野別の主要企業

機械要素部品業界とはの記事で紹介した分野ごとに、代表的な企業を整理すると次のようになります。分野ごとに顔ぶれがまったく異なるのが、この業界の特徴です。
同じ業界でも、分野によって主要企業は異なります。
※代表例であり、各社はほかの分野の製品も手がけています。
ベアリングのように大手数社が競う分野もあれば、精密減速機のように特定の用途に特化した企業が存在感を持つ分野もあります。同じ業界でも、分野によって競争の形が違う点は押さえておきたいところです。
また、流通・通販のミスミグループ本社は2026年3月期の売上高が4,414億円で、ランキング上位のメーカーに迫る規模を持っています。

主要企業の特徴と強み

ここからは、分野を代表する7社について、事業の中身と強みを決算資料で確認できた範囲で見ていきます。
日本精工
日本精工は、ベアリングを中心に産業機械向けと自動車向けの事業を持つ企業です。2026年3月期の売上高は9,116億円で、前期比14.4%増えました。2025年9月にNSKステアリング&コントロールを連結したことで、ステアリング事業の売上高1,006億円が加わっています。
地域別では日本が31.5%、中国が21.3%、米州が20.1%を占め、海外売上高比率は約69%です(地域別売上高から算出)。産業機械と自動車の両方にバランスよく顧客を持つことが強みです。
NTN
NTNは、ベアリングと、自動車のドライブシャフトに使う等速ジョイントを二本柱とする企業です。2026年3月期の売上高は8,263億円で、CVJアクスル事業が4,775億円、軸受他の事業が3,489億円でした。
米州が売上高の32.3%を占めるなど海外売上高比率は約74%と高く(地域別売上高から算出)、営業利益は構造改革などにより前期比35.2%増の310億円となりました。
ミネベアミツミ
ミネベアミツミは、ボールベアリングを中核製品の一つとしながら、モーター、半導体、電子部品など幅広い事業を持つ企業です。2026年3月期の売上高は1兆6,643億円で、オートメーション新聞によると14期連続の増収となりました。
ボールベアリングを含むプレシジョンテクノロジーズ事業は、データセンター向けのサーバー需要と航空機向け需要に支えられ、売上高が前期比10.0%増の2,812億円となりました。M&Aを重ねて事業を広げるのが同社の特徴です。
SMC
SMCは、空気圧シリンダーや電磁弁などの空気圧機器を主力とする企業です。2026年3月期の売上高は8,425億円、営業利益は1,906億円で、営業利益率は22.6%と業界の中でも際立って高い水準にあります(決算短信から算出)。
顧客の所在地別に見ると、中国向けが2,349億円と日本向けの1,588億円を上回り、海外が売上の約8割を占めます(仕向地別売上高から算出)。2027年3月期は売上高1兆円を見込んでいます。
THK
THKは、機械の直線運動を支える直動案内機器「LMガイド」で知られる企業です。2025年12月期の売上収益は、継続事業ベースで前期比7.9%増の2,404億円でした。
2026年2月には、自動車部品を手がける輸送機器事業を譲渡する契約を結び、産業機器事業に経営資源を集中する方針を明確にしました。
ナブテスコ
ナブテスコは、産業用ロボットの関節に使われる精密減速機のほか、鉄道車両用機器や自動ドアなども手がける企業です。2025年12月期の売上高は3,079億円、営業利益は前期比60.3%増の207億円でした。
精密減速機を含むコンポーネントソリューション事業は、産業用ロボットの在庫が適正水準に戻ったことで売上高が17.3%増の793億円となりました。ロボット市場の動きが業績に直結する構造です。
ミスミグループ本社
ミスミグループ本社は、FA用部品や金型部品をカタログやウェブで販売する企業です。自社で企画する製品に加え、他社製品も扱う流通事業のVONA事業を持ち、2026年3月期の売上高は前期比9.8%増の4,414億円でした。
事業別ではVONA事業が1,925億円、FA事業が1,605億円、金型部品事業が884億円です。メーカーと流通の両方の顔を持つ独自の立ち位置で、部品の選び方や買い方そのものを変えてきた企業といえます。


海外の主要企業との比較

ベアリングの世界市場では、欧州と米国にも大手企業があります。日本企業は、これらの海外大手と世界の各地で競い合っています。
各社の2025年度の売上規模と特徴を比べたものです。
※各社の決算発表より。通貨が異なるため、円換算による順位付けはしていません。
シェフラーは2024年10月にヴィテスコ・テクノロジーズを吸収合併し、電動化向けの部品まで事業を広げました。SKFは逆に自動車事業を切り離し、産業向けに集中する道を選んでいます。
日本勢は、自動車と産業機械の両方に強い総合型の日本精工・NTN・ジェイテクトに加え、ボールベアリングを中核製品の一つとするミネベアミツミなど、得意分野を持つ企業がそろっているのが特徴です。空気圧機器のSMCのように、分野によっては海外で大きな事業を築いている企業もあります。
収益性にも違いがあります。SKFの2025年の調整後営業利益率は12.7%で、日本精工の4.3%やNTNの3.8%(2026年3月期、決算資料から算出)を上回りました。算定の基準は異なりますが、規模だけでなく稼ぐ力でも海外大手と競うことが、日本勢の課題といえます。
再編・M&Aの動き

ここ数年の主な再編を並べると、規模の拡大を狙う統合・買収と、事業の組み替えの2つの方向が見えてきます。
規模の拡大と、事業の組み替えの2つの流れに分かれます。
※各社の発表・決算資料より。THKの譲渡は2026年6月1日完了予定と発表されています。
国内では、椿本チエインと大同工業の統合のように、同じ分野の企業が組んで海外勢に対抗する動きが出てきました。ミネベアミツミはボールねじ事業をミネベアリニアモーションとして取り込み、年間2,000億円以上とされるボールねじ市場でのシェア拡大を目指しています。
椿本チエインは大同工業の連結子会社化に伴い、2026年3月期に116億円の負ののれん発生益を計上しました。統合の効果は、販売網の相互活用や製品のクロスセルとして今後表れてくると見られます。
一方で、THKやSKFのように自動車向けの事業を切り離す会社と、日本精工のようにステアリング事業を取り込む会社があり、自動車向け事業の位置づけは各社の判断が分かれているといえます。
就職・転職で企業を見るときのポイント

機械要素部品の企業を比べるときは、売上高の大きさだけで判断しないことが大切です。特に次の3点を確認すると、会社の姿が見えやすくなります。
売上高と並べて確認したい指標です。
利益率を見る
同じ業界でも、営業利益率はSMCの22.6%から、日本精工の4.3%、NTNの3.8%まで大きな差があります(2026年3月期、決算資料から算出)。利益率の高い会社は、研究開発や待遇に回せる余力も大きいと考えられます。
会社全体だけでなく、自分が働きたい事業のセグメント利益も確認しましょう。利益の出方については機械要素部品業界の構造の記事で詳しく解説しています。
海外比率を見る
大手の多くは海外売上高比率が7割前後に達し、海外拠点との仕事や海外赴任の可能性も高くなります。語学を生かしたい人には魅力ですが、国内中心で働きたい人は確認しておきたい点です。
どの地域の比率が高いかによって、景気や通商政策の影響の受け方も変わります。市場全体の動きは機械要素部品業界の市場規模と動向もあわせてご覧ください。
事業の集中度を見る
ジェイテクトやミネベアミツミのように、機械要素部品以外の事業が大きい会社もあります。応募する部門が会社の中でどの位置づけにあるかは、セグメント別の売上高で確かめられます。
再編で事業の範囲が変わる会社も増えています。直近の買収や事業譲渡のニュースを確認しておくと、入社後の働き方を具体的に想像しやすくなります。
まとめ
- 連結売上高ではジェイテクトとミネベアミツミが1兆円超。ただし事業範囲の違いが大きい
- ベアリング、直動部品、空気圧機器、精密減速機など、分野ごとに主要企業が異なる
- 大手の海外売上高比率は約7割に達し、SMCは営業利益率22.6%と際立って高い
- 海外ではSKF、シェフラー、ティムケンが大手。SKFは自動車事業の分離を進めている
- 統合・買収と事業譲渡が相次ぎ、自動車向け事業の位置づけで各社の判断が分かれている
業界の基本は機械要素部品業界とは、市場の大きさは機械要素部品業界の市場規模と動向、サプライチェーンや利益の出方は機械要素部品業界の構造で解説しています。関連する職種では技術営業・FAEや機械設計がこの業界と深く関わります。
関連する職種や技術については、機械要素部品の業種ページから関連記事もあわせてご覧ください。
出典
- 日本精工の業績:日本精工株式会社「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」(BigGo ファイナンス掲載)
- NTNの業績:NTN株式会社「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
- ミネベアミツミの業績:ミネベアミツミ株式会社「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」(ジェイテクト、SMC、日本発条、NOK、椿本チエイン、THK、ナブテスコも各社の決算資料による)
- SKFの業績:MarketScreener “SKF : Q4 2025 Report”
- シェフラーの業績:Schaeffler AG “Schaeffler reports solid results for 2025”(ティムケンは同社”Timken Reports Fourth-Quarter and Full-Year 2025 Results”)
- 再編の動き:オートメーション新聞「椿本チエインと大同工業、経営統合で基本合意 大同工業を完全子会社化」(ミネベアミツミのボールねじ事業は日刊自動車新聞、THKの事業譲渡はkikai-news.net 産機通信の報道による)

コメント