食品・医薬・日用品業界の構造をわかりやすく解説|サプライチェーン・商流・利益構造

食品工場の原料投入から包装まで続く製造ライン

「食品・医薬・日用品業界の構造」と聞くと、多くの方はブランドを持つ大手メーカーが工場でつくり、お店に並べる、というシンプルな流れを思い浮かべるのではないでしょうか。

実際には、原料や容器をつくる企業、製造を請け負う受託企業、商品を仕分けて届ける卸まで、多くの企業がつながって成り立っています。どの位置にいるかで、利益の出方や働き方も大きく変わります。

この記事では、食品・医薬・日用品業界の構造を、全体像、階層ごとの企業の特徴、お金とモノの流れ、利益構造、構造の変化、キャリアの選び方という順で整理します。

目次

食品・医薬・日用品業界の全体像

原料や容器、包装材を区分保管する清潔な倉庫

食品・医薬・日用品業界のサプライチェーンは、農畜水産物や化学原料といった一次原料から始まり、消費者や患者の手元に届くまで、いくつもの段階を経ます。

中心にいるのは、ブランドを持つメーカーです。ただし、メーカーだけで完結する製品はほとんどありません。原料、容器、製造設備を外部から調達し、場合によっては製造そのものも外部に任せています。

さらに、つくった製品の多くは卸を通じて小売店や医療機関に届きます。川上から川下までを並べると、次のような構造になります。

図1:食品・医薬・日用品業界のサプライチェーン

一次原料から消費者・患者まで、役割の異なる企業が段階的につながります。

一次原料農畜水産物、石油化学原料、輸入原料など
加工・合成して供給
原料・素材メーカー食品素材・原薬・香料・界面活性剤
包材メーカーフィルム・ボトル・缶・紙容器
設備メーカー充填機・包装機・検査装置
原料・容器・設備を調達
ブランドメーカー・受託製造企画・開発・製造を担い、一部は受託企業に委託する
卸を通じて出荷
食品卸・日用品卸スーパー・コンビニ・ドラッグストアへ
医薬品卸病院・診療所・調剤薬局へ
直販・通販自社サイトや業務用の直接取引
販売・処方
消費者・患者店頭で購入する、または処方を受けて使う

※製品や企業によって、卸を通さない取引や、メーカーが原料を内製する場合もあります。

食品・医薬・日用品業界とはの記事では企業の分類を中心に紹介しましたが、ここでは一次原料と卸・小売まで範囲を広げています。業界の外側にいる企業も含めて見ると、1つの製品に関わる企業の多さがわかります。

階層ごとの企業の特徴

液体充填機を調整する日本人エンジニア

同じ業界でも、階層によって企業の数や規模、利益の出方、働き方はかなり異なります。ここでは5つの階層に分けて特徴を見ていきます。

原料・素材メーカー

食品素材や原薬、香料、界面活性剤などを製造し、メーカーに供給する企業です。化学メーカーや商社系の企業、専業の中堅企業など、成り立ちはさまざまです。

取引先はメーカーなので、一般の消費者には名前が知られていないことが多いものの、特定の素材で高いシェアを持つ企業も少なくありません。技術職は、顧客メーカーと一緒に製品をつくり込む仕事が多くなります。

食品の原料は、小麦や大豆、油脂など輸入に頼るものが多く、為替や国際相場の影響を強く受けます。原料価格の変動は、そのまま川下のメーカーのコストにはね返る構造です。

包材・設備メーカー

フィルムやボトル、缶をつくる包材メーカーと、充填機や包装機、検査装置をつくる設備メーカーです。包材では印刷大手も大きな役割を担っています。

食品・医薬・日用品は同じ製品を大量につくるため、容器や設備の性能が生産性を大きく左右します。衛生的に洗浄しやすい構造など、業界特有の要求に応える設計力が求められます。

ブランドを持つメーカー

企画・開発から製造、販売までを担う、業界の中心となる企業です。経済産業省の2024年経済構造実態調査によると、2024年6月時点の食料品製造業の事業所数は2万4,659で、製造業全体の11.1%を占めます。

同じ調査で、従業者数は約112万人です。ここから1事業所あたりの従業者数を算出すると約46人となり、比較的小さな工場が多いことがうかがえます。医薬品や化粧品を含む化学工業の事業所数は5,641で、食品に比べるとずっと少なくなります。

農林水産省の資料によると、食品の製造・卸・小売・外食を合わせた食品産業の企業数は、2016年の77万から2021年の65万へと12万減りました。どの業態でも小規模企業が大半を占めており、企業数は減少傾向にあります。

受託製造(OEM・CMO・CDMO)

他社ブランドの製品を受託して製造する企業です。食品や化粧品ではOEM、医薬品ではCMOやCDMOと呼ばれることが一般的です。

自社ブランドを持たない分、複数の顧客から多様な製品を受託するため、短期間で多くの品目の立ち上げを経験できるのが特徴です。一方で、仕様や価格は顧客の意向に左右されやすくなります。

医薬品のCDMOでは、製薬会社から製法を引き継ぐ技術移管や、承認申請に必要なデータづくりまで担うことがあります。顧客の規制対応を肩代わりする分、高い品質管理の力が求められます。

卸・小売

メーカーから製品を仕入れ、小売店や医療機関に届けるのが卸です。食品では三菱食品や日本アクセス、国分グループ本社、医薬品ではメディパルホールディングスやアルフレッサ ホールディングス、スズケン、東邦ホールディングスなどが大手です。

卸は物流だけでなく、売り場の提案や情報の提供も担っています。メーカーにとっては、製品を全国に届けるうえで欠かせないパートナーと言えます。

日用品や化粧品では、PALTACやあらたといった日用品卸が、ドラッグストアやホームセンターへの供給を担っています。多くのメーカーの商品をまとめて届けることで、小売の手間と物流のコストを減らす役割です。

図2:大手メーカーと中小メーカーの違い

同じメーカーでも、規模によって働き方や経験の幅が変わります。

大手メーカー
中小メーカー・受託企業
事業の範囲
研究から販売、海外展開まで幅広い
製造や特定分野に集中していることが多い
工場の規模
大規模ラインで少品種を大量生産
多品種少量や受託品の生産が中心
仕事の分担
職種ごとに細かく分かれている
1人で複数の役割を担うことが多い
品質の仕組み
専任部門が手順と記録を整備
顧客の基準に合わせて運用する

※企業ごとの差も大きく、あくまで一般的な傾向として捉えてください。

お金とモノの流れ(商流)

食品や医薬品の箱を仕分ける大型物流センター

食品・日用品と医薬品では、製品が届く先も、価格の決まり方も大きく異なります。まずは両者の商流を並べて確認します。

図3:食品・日用品と医薬品の商流

どちらも卸を経由するのが基本ですが、価格の決め手が違います。

メーカー製品をつくり、卸に販売する。販促費やリベートを支払うこともある
販売
食品卸・日用品卸多数のメーカーの商品をまとめて届ける
医薬品卸病院や薬局と価格を交渉して納める
納品
スーパー・コンビニ・ドラッグストア店頭価格は小売が決める
病院・診療所・調剤薬局患者への価格は国の薬価で決まる
購入・処方
消費者・患者医療用医薬品は保険が適用され、自己負担分を支払う

※一般用医薬品は、ドラッグストアなどを通じて食品・日用品に近い流れで販売されます。

食品・日用品は小売の力が強い

食品や日用品は、卸を通じてスーパーやコンビニ、ドラッグストアに届きます。売り場を持つ小売チェーンの交渉力が強く、店頭価格も小売が決めるのが基本です。

メーカーは、特売の支援や販売奨励金(リベート)などで売り場を確保します。小売が自社ブランドのプライベートブランドを展開し、その製造をメーカーが受託するという関係も広がっています。

医薬品は国が価格を決める

厚生労働省の統計では、2024年の医薬品生産金額のうち医療用医薬品が90.9%を占めます。医療用医薬品の価格は、国が薬価として定める公定価格です。

メーカーは卸に販売し、卸が病院や薬局と納入価格を交渉します。薬価は実際の取引価格にもとづいて改定されるため、発売後は価格が下がっていくのが前提のビジネスと言えます。

系列と長期取引

原料や包材、受託製造の取引は、一度決まると長く続くのが一般的です。医薬品では原料や製造所を変えるだけでも行政への手続きが必要になり、取引先を簡単には変えられません。

そのため、品質と安定供給の実績を積み重ねた企業ほど、取引を続けやすい構造になっています。

価格の見直しは、原料や包材の値上がりに合わせて交渉で決まるのが一般的です。値上げが続くなかで、川上から川下へのコストの転嫁をどう進めるかが、各階層の企業にとって共通の課題になっています。

利益構造:どこが儲かるのか

研究室で試料入りバイアルを確認する研究員

同じ業界でも、分野によって利益率には大きな差があります。上場企業の決算から、代表的な水準を見てみます。

図4:分野別に見た営業利益率の例

開発力やブランドの強さが、利益率の差になって表れます。

12.9%医薬品(主要7社合計)2026年3月期。新薬の特許が利益を支える
8.6%日用品(ライオン)2025年12月期。ブランドと処方開発が強み
4.7%食品(山崎製パン)2025年12月期。量と効率で稼ぐ
主要製薬7社はAnswersNewsの集計。ライオンと山崎製パンは、各社の決算の売上高と営業利益から算出した。同じ分野でも企業ごとの差は大きい。

医薬品は、特許で守られた新薬が大きな利益を生みます。AnswersNewsの集計では、2026年3月期の塩野義製薬の営業利益率は33.4%でした。一方で、研究開発に長い期間と多額の費用がかかり、ヒット品の有無で利益が大きく変わるという面もあります。

特許が切れると、同じ成分のジェネリック医薬品が発売され、先発品の売上は大きく落ち込みます。新薬メーカーが次の新薬を生み出し続けなければならないのは、この構造があるためです。

食品は、原材料費の比率が高く、1つあたりの単価も低いため、利益率は低めになりがちです。大量に安定してつくる効率と、値上げを受け入れてもらえるブランド力が利益を左右します。

業界全体を見ると、利益が出やすいのは研究開発やブランドを持つ川上・川下寄りの機能で、製造そのものは利益が薄くなりやすい構造です。いわゆるスマイルカーブに近い形と言えます。ただし、高度な技術が必要なバイオ医薬品の受託製造のように、製造で稼ぐ分野もあります。

受託製造や原料・包材の企業は、顧客メーカーとの価格交渉で利益が決まる面が大きくなります。そのため、他社にまねできない技術や設備を持っているかどうかが、利益率を分けるポイントです。

業界構造の変化

バイオ製造設備の操作盤を確認する技術者

食品・医薬・日用品業界の構造は、ここ数年で少しずつ変わってきています。特に大きいのは次の3つの動きです。

製造の外部委託の広がり

製薬会社が研究開発や販売に集中し、製造を受託企業に任せる動きが広がっています。バイオ医薬品は専用の設備が必要なため、自社で工場を持つか、外部に任せるかの判断が重要になっています。

食品や化粧品でも、OEMを活用して新しい商品を短期間で出すメーカーが増えています。受託企業にとっては、事業を伸ばす機会と言えます。

委託が広がると、メーカーの技術者の仕事も変わります。自分で工程を動かすよりも、委託先の品質や工程を評価し、管理する力が求められる場面が増えていきます。

海外M&Aと異業種からの参入

国内市場の伸びが限られるなかで、大手は海外企業の買収で成長を目指しています。飲料・酒類や医薬品の大手は、売上の半分以上を海外で稼ぐ企業も珍しくありません。

事業の境界も変わりつつあります。キリンホールディングスは2025年12月期の売上収益のうち医薬が20.4%、明治ホールディングスは2026年3月期の売上高のうち医薬品が19.8%を占め、食品と医薬品を1社で手がける企業もあります。

医薬品の輸入増と国内製造

厚生労働省の統計では、2024年の医薬品の輸入金額は4兆2,567億円で、輸出金額の8,234億円を大きく上回りました。新しい薬の多くが海外で開発・製造されているためです。

感染症の流行時には、薬や原料の供給が滞るリスクも意識されました。国内で製造できる体制をどう維持するかは、業界全体の課題になっています。

その一方で、国内でもバイオ医薬品の工場を新設・増設する動きがあります。製造拠点を国内に持つことの価値が、改めて見直されていると言えます。

業界構造から考えるキャリアの選び方

製造ラインを望む工場通路を歩く若手技術者

ここまで見てきた構造を踏まえると、どの階層の、どの立ち位置の企業を選ぶかで、積める経験は大きく変わります。代表的な選択肢を比べてみます。

図5:立ち位置ごとに積める経験

同じ技術職でも、会社の立ち位置によって経験の中身が変わります。

積める経験
注意したい点
ブランドメーカー
開発から量産、市場対応まで一貫して関われる
担当が細分化され、経験が偏ることもある
受託製造
多くの品目と顧客の立ち上げを経験できる
仕様や納期は顧客の意向に左右されやすい
原料・包材・設備
複数のメーカーと取引し、専門技術を深められる
最終製品に直接関わる実感は得にくい
卸・物流
業界全体の商品と売り場の動きがわかる
ものづくりの技術職としての経験は限られる

※同じ立ち位置でも、企業の規模や方針によって経験できる範囲は異なります。

たとえば、規制に沿った工程の立ち上げを早く数多く経験したいなら受託製造、1つの製品を長く育てたいならブランドメーカー、という選び方ができます。自分が伸ばしたい経験から逆算して階層を選ぶのが、この業界でのキャリアの考え方と言えます。

どの立ち位置でも、生産技術品質保証・品質管理購買・調達の経験は階層を越えて生かしやすいのが特徴です。

また、同じ階層の中でも、食品か医薬品かで求められる規制の知識は異なります。分野をまたいで転職する場合は、HACCPやGMPといった品質の仕組みの違いを事前に理解しておくと、入社後のギャップを小さくできます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 一次原料から消費者・患者まで、多くの企業が段階的につながる業界
  • 中心はブランドメーカーだが、原料・包材・設備・受託製造・卸が支えている
  • 食品・日用品は小売の交渉力が強く、医薬品は国の薬価が価格を決める
  • 利益は研究開発とブランドに集まりやすく、分野ごとの差も大きい
  • 外部委託や海外M&Aが進み、立ち位置によって積める経験が変わる

市場の大きさと推移は食品・医薬・日用品業界の市場規模と動向、大手企業の顔ぶれは主要企業と勢力図で整理しています。業界の基本は食品・医薬・日用品業界とはもあわせてご覧ください。

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出典

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この記事を書いた人

BtoB製造業特化のWebマーケター。プラント業界にてエンジニアを10年経験した後、マーケティングの分野へ。工業技術ブログ「エネ管.com」を2017年から運営し、月間20万PVを達成。保有資格はエネルギー管理士、第三種電気主任技術者。

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