電気・電子設計に必要なスキル・資格とキャリアパス|年収・将来性も解説

電気・電子設計のスキル・キャリアパス

電気・電子設計を目指すなら、まず固めたいのは、オームの法則から始まる電気回路と電子回路の基礎です。図面を描くCADや、回路の動きを計算で確かめるシミュレーターは会社ごとに違い、多くは入社後に覚えます。

仕事では、基礎知識をもとに回路や制御を組み立てる力、ツールを使いこなす力、多くの人と調整しながら進める力が求められます。資格は役に立つものの、資格がなければできない業務はそれほど多くありません。

この記事では、電気・電子設計に必要な知識・スキル、役立つ資格、キャリアパス、年収と将来性、向いている人という順で整理します。

目次

電気・電子設計に必要な知識・スキル

電気・電子設計に必要な力は、大きく次の4つに分けられます。どれか1つだけではなく、4つを組み合わせて使う場面がほとんどです。

図1:電気・電子設計に必要な4つの力

入社後に実務の中で伸ばしていくものも多く含まれます。

電気・電子の基礎知識電気回路、電子回路、電力、制御の理論
設計ツールの操作回路図・基板・電気CADとシミュレーター
規格・安全の知識安全規格、EMC、電気用品安全法など
調整・説明の力機械・ソフト・顧客との擦り合わせ

電気・電子の基礎知識

土台になるのは、オームの法則から始まる電気回路の理論と、トランジスタやオペアンプなどを扱う電子回路の知識です。制御盤設計では、モーターやインバーター、シーケンス制御の知識も欠かせません。

大学や高専、工業高校の電気・電子系の学科で学ぶ内容が中心ですが、実務で使うのは教科書の基本を応用したものが大半です。他分野から転身する人でも、基礎を学び直すことで十分に追いつけます。

回路設計を目指すならアナログとデジタルの電子回路を、制御設計を目指すならシーケンス制御とモーターの知識を、まず重点的に固めておくとよいでしょう。

設計ツールの操作

回路設計では回路図CADと基板CAD、回路シミュレーターを、制御設計では電気CADとPLCのプログラミングツールを使うのが一般的です。オシロスコープやテスターなどの測定器を正しく使えることも、同じくらい重要です。

ツールは会社によって異なるため、入社後に覚えることがほとんどです。ただし、CADの操作に慣れているだけで、最初の数か月の立ち上がりが早くなるのは確かです。

制御設計では、PLCのラダープログラムまで担当することが多いため、プログラミングに抵抗がないことも強みになります。学生のうちに実験や工作で測定器に触れておくと、入社後に戸惑いにくくなります。

規格・安全の知識

電気製品や設備には、感電や火災を防ぐための安全規格や、ほかの機器に電磁的な影響を与えないためのEMC規格があります。国内では電気用品安全法、海外向けには輸出先の規格への適合が求められます。

規格の条文をすべて覚える必要はありませんが、どの規格が関係するかを見きわめ、必要に応じて調べられる力は、経験とともに身につけていきたいところです。

制御盤設計では、機械の安全に関わる非常停止回路やインターロックの考え方も重要です。安全に関する設計は、顧客や審査の場で説明を求められることが多く、根拠を持って答えられることが信頼につながります。

調整・説明の力

電気・電子設計は、機械設計やソフトウェア、購買、製造、顧客など、多くの相手と情報をやり取りする仕事です。自分の設計の意図をわかりやすく説明し、相手の要望を正しく受け止める力が求められます。

特に設備の立ち上げでは、トラブルの状況を冷静に整理し、関係者に伝える場面が多くあります。技術力と同じくらい、周囲から信頼されることが仕事の進めやすさにつながります。

データを読み解く力

評価や試運転では、測定した波形や数値から、何が起きているのかを読み解く必要があります。感覚ではなく、データにもとづいて原因を絞り込む姿勢が、不具合の早期解決につながります。

最近は、設備から集めたデータを予知保全や品質管理に生かす取り組みも広がっています。電気の知識とデータを扱う力の両方を持つ人材は、今後さらに求められるでしょう。

電気・電子設計に役立つ資格

電気・電子設計は、資格がないと業務に就けない職種ではありません。ただし、資格は知識の証明になり、特に転職や未経験からの挑戦では評価されやすくなります。代表的なものは次のとおりです。

  • 電気主任技術者(第一種〜第三種)
  • 電気工事士(第一種・第二種)
  • 技能検定「電気機器組立て」
  • 技能検定「シーケンス制御」
  • 技術士(電気電子部門)
  • エンベデッドシステムスペシャリスト試験
  • QC検定(品質管理検定)
  • TOEICなどの語学資格 など

図2:電気・電子設計に役立つ資格の特徴

分野や担当する工程によって、評価されやすい資格は異なります。

電気主任技術者
運転・保安電気技術者試験センターが実施。電気設備の保安の監督に必要な国家資格
電気工事士
工事電気工事の作業に必要な国家資格。制御盤の配線や現場対応で役立つ
技能検定「電気機器組立て」
製造・技能配電盤・制御盤組立て作業などがある国家検定。盤設計の基礎になる
技能検定「シーケンス制御」
製造・技能令和5年度に電気機器組立てから独立した職種。制御設計と相性がよい
技術士(電気電子部門)
設計・技術技術士法にもとづく国家資格。電気電子部門は設計経験を積んだ中堅以降の目標
エンベデッドシステムスペシャリスト
設計・技術IPAが実施する高度試験。組込みシステムの設計を主導する力を証明
QC検定
品質・検査日本規格協会が実施する品質管理の検定。評価や不具合対応で役立つ
TOEICなどの語学
語学・実務英語で書かれた海外規格の読解や、海外拠点・顧客とのやり取りで評価される

※受験資格や試験の内容は、各実施団体の公式サイトで最新情報を確認してください。

資格は、次のように目指す分野に合わせて選ぶのが効率的です。

  • 制御盤設計を目指すなら:電気工事士や技能検定
  • 回路設計や組込みの分野なら:エンベデッドシステムスペシャリスト試験
  • 長く専門性を磨くなら:技術士

工場の電気設備に関わる機会が多い会社では、電気主任技術者の知識が役立つ場面もあります。いずれの資格も、実務の経験と組み合わせることで価値が高まります。

資格手当や受験費用の補助を設けている会社もあるため、入社後に計画的に取得していく人も多くいます。

電気工事士や電験三種の取得に向けて通信講座を検討する場合は、SATの講座内容と受講料も確認できます。

※リンク先の商品紹介には、アフィリエイト広告を含みます。

電気・電子設計のキャリアパス

どの段階でも共通するのは、担当した案件の数と種類が、そのまま設計者としての引き出しになるという点です。

電気・電子設計のキャリアは、若手のうちは先輩の下で経験を積み、中堅になると案件の電気全体を任され、その先で専門職か管理職に分かれていくのが一般的な流れです。

未経験からこの職種を目指す場合は、設備保全や電気工事、製造の現場で電気に触れた経験が足がかりになります。現場で配線や機器に触れた経験は、設計に移ったときに大きな強みになるからです。

図3:電気・電子設計の主なキャリアの流れ

若手、中堅、ベテランの3つの段階で、任される範囲が広がっていきます。

若手(入社〜5年程度)
01部分設計先輩の指導の下で回路や盤の一部を担当
02評価・試運転測定や現地対応を通じて実機を覚える
03図面の修正既存設計の変更で設計の型を身につける
中堅(5〜15年程度)
04電気全体の担当1案件の電気設計を最初から最後まで担う
05顧客との折衝仕様の打合せや技術的な説明を任される
06後輩の指導設計審査や図面チェックで後輩を支える
ベテラン
07専門職・管理職技術を極めるか、チームを率いるかを選ぶ
08別職種・独立技術営業や生産技術、独立の道もある

※年数はあくまで目安です。会社の規模や分野、本人の経験によって大きく変わります。

専門職として技術を極める

電源回路やアナログ回路、ノイズ対策、機能安全など、特定の分野を深く掘り下げ、社内の第一人者として頼られるキャリアです。難しい不具合の解決や、新しい技術の導入を任されることが多くなります。

専門性を高めるには、日々の設計で出会った課題を掘り下げるだけでなく、社外の知見を積極的に取り入れる姿勢も大切です。社外の知見は、学会や業界団体のセミナー、メーカーの技術資料などから得られます。

大手メーカーを中心に、管理職と同等の処遇で専門職を評価する制度を設ける会社もあります。技術士などの資格は、専門性を客観的に示す手段として役立ちます。

管理職としてチームを率いる

設計チームのリーダーや課長として、複数の案件の進捗や人員、予算を管理するキャリアです。自分で図面を描く時間は減りますが、機械やソフトウェアを含めた開発全体を動かす立場になります。

装置メーカーでは、電気設計の出身者がプロジェクトマネージャーとして、機械・電気・ソフトウェアをまとめる役割を担うことも少なくありません。

設計の経験があることで、部下の設計を的確にチェックし、現実的な計画を立てられるのが強みです。技術と人の両方を見られるリーダーは、どの会社でも不足しがちです。

別職種への転身や独立

電気・電子設計の経験は、他の職種でも生かせます。顧客に技術的な提案を行う技術営業・FAEや、生産ラインの設備を計画する生産技術、新しい技術を探る研究開発などが代表的な転身先です。

制御盤設計の分野では、経験を積んだ後に独立し、設計を請け負う事務所を開く人もいます。図面を描ける人材は社外からの需要も大きいため、働き方の選択肢が広い職種といえます。

電気・電子設計の年収と将来性

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)によると、電気技術者・電子機器技術者の平均年収は703.9万円です(令和7年賃金構造基本統計調査)。平均年齢は42.1歳です。

同じサイトで示されている機械設計技術者の659万円と比べても、技術職の中で高めの水準にあります。

図4:技術職の平均年収の比較

job tagに掲載された全国の平均年収です。

電気技術者・電子機器技術者703.9万円
機械設計技術者659万円
システムエンジニア(組込み、IoT)578.5万円

※出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)。令和7年賃金構造基本統計調査による。職業の分類上、設計以外の業務に就く人も含まれます。

ただし、この数字には設計以外の生産技術や保守に携わる人も含まれており、会社の規模や業界、年齢によって差が出ます。

一般に、経験を積んで電気全体を任されるようになるほど、収入は上がっていく傾向があります。求人票を見る際は、年収だけでなく担当範囲や残業、出張の頻度もあわせて確認したいところです。

同じjob tagによると、電気技術者・電子機器技術者の就業者数は30万5,190人(2020年国勢調査)です。製造業の幅広い分野に、多くの技術者が働いていることがわかります。

需要の面では、job tagに示された電気技術者・電子機器技術者の求人倍率は2.43倍(令和7年度)です。機械設計技術者の3.14倍、組込み・IoTのシステムエンジニアの4.26倍と同じく、人材を求める企業が多い売り手市場が続いています。

図5:今後求められる4つのテーマ

電気の知識を土台に、次のような分野で活躍の場が広がっています。

電動化・パワエレ車載機器や充電設備、インバーターの設計
省エネ・脱炭素消費電力を抑える回路や設備の設計
IoT・データ活用センサーと通信で設備の状態を見える化
省人化・自動化ロボットや自動化設備の制御設計

自動車の電動化や工場の自動化、脱炭素に向けた省エネの取り組みなど、電気の知識が必要な分野は広がる一方です。人手不足を背景に、産業用ロボットや自動化設備の需要も高まっています。

今後は、回路や制御の知識に加えて、ソフトウェアや通信、データ活用がわかる人材がより求められるでしょう。電気を軸に隣の領域へ知識を広げていくことが、長く活躍するための近道です。

電気・電子設計に向いている人

ここまで見てきた仕事の性質から、向いているのは次のような人です。裏を返せば、この3点に抵抗がある場合は、入ってからのギャップが大きくなりやすいと言えます。

目に見えない仕組みを考えるのが好き

電気の流れは目に見えません。回路図や波形から、何が起きているのかを頭の中で組み立てる作業が中心になります。子どもの頃に電子工作や機械の分解が好きだった、という設計者も多くいます。

仕組みを理屈で理解することや、パズルのように条件を満たす組み合わせを考えることが好きな人には、ほかでは味わえない面白さがある仕事です。

地道な確認を積み重ねられる

配線1本、部品1つの間違いが、動作不良や事故につながります。図面のチェックや測定を、面倒がらずに一つずつ積み重ねる姿勢が求められます。

不具合の原因を探るときも、仮説と検証を根気よく繰り返すことになります。すぐに答えが出なくても粘り強く取り組める人ほど、信頼を得やすい環境です。安全に関わる部分では、確認を省かない慎重さが何より大切にされます。

人と話しながら仕事を進められる

電気・電子設計は、一人で黙々と図面を描くだけの仕事ではありません。機械設計やソフトウェア、製造、顧客と頻繁にやり取りしながら進めます。設備の立ち上げでは、顧客の工場で現場の作業者と一緒に問題を解決する場面もあります。

自分の考えを言葉で説明し、相手の話にも耳を傾けられる人は、設計の腕とあわせて大きく評価されます。新しい技術を学び続ける好奇心があれば、なおよいでしょう。

まとめ

この記事のまとめ
  • 電気・電子の基礎知識、ツール、規格、調整力の4つが必要になる
  • 資格は必須ではないが、電気工事士や技能検定、技術士などが評価されやすい
  • 若手から中堅を経て、専門職・管理職・別職種へとキャリアが広がる
  • 平均年収は703.9万円(令和7年)で、求人倍率も2.43倍と需要が高い
  • 仕組みを考えるのが好きで、地道な確認と対話ができる人に向いている

電気・電子設計がどんな職種かは電気・電子設計とはで、実際の仕事の進み方は電気・電子設計の仕事の流れで解説しています。働く場所を考えるなら、FA業界や電子部品・半導体業界、自動車業界の記事も参考になります。

電気・電子設計については、電気・電子設計の職種ページから関連記事もあわせてご覧ください。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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