膨張タンク(膨張水槽)とは?役割と仕組み、開放式・密閉式の違いと容量の計算方法

機械室の温水配管と循環ポンプにつながる密閉式の膨張タンク

膨張タンク(膨張水槽)とは、温水や冷温水を循環させる配管で、水温による水の体積の増減を吸収し、圧力が上がりすぎるのを防ぐタンクです。水は20℃から80℃に温めるだけで、体積が約2.7%増えます。

種類は2つで、循環ラインの最も高い所に置いて大気に開いた開放式と、ゴムの膜でガスと水を仕切った密閉式があります。この記事では、膨張タンクの役割、設置しないと起きること、開放式と密閉式の仕組みと違い、容量の計算方法、封入ガス圧力の決め方の順に整理します。

膨張タンクの動きをアニメーションにした動画なので、まずはこちらで全体の動きをつかんでください。

音声で選定方法まで解説した動画もあります。

目次

膨張タンクとは

膨張タンクとは、温水や冷温水を循環させる配管で、水温の変化による水の体積の増減を吸収し、配管内の圧力が上がりすぎるのを防ぐタンクです。「膨張水槽」も同じものを指し、特に、ビルの屋上などに置く開放式のタンクを膨張水槽と呼ぶことが多いです。

主な役割は、温水の温度上昇による体積増加(膨張)を吸収して圧力の上昇を抑えることで、水は物性上、温度が変わると比体積(1kgあたりの体積)がわずかに変化します。

米国標準技術研究所(NIST)の物性値では、大気圧の水の比体積は20℃で0.0010018m³/kg、80℃で0.0010290m³/kgです。1,000Lの水を20℃から80℃に温めると、約27L増える計算です。

水は加熱されるとわずかに膨張しますが、配管の内容積は変わらないため圧力が上がり、これが放置されると機器の破損や漏れの原因になります。

安全弁によって圧力を逃がす方法もありますが、高温水を外部に排出するため、衛生面やエネルギー効率の観点から非効率です。そのため、膨張タンクを設けて膨張分を受け止めるのが一般的です。膨張タンクの役割を整理すると、次の3つになります。

  • 水が温まって増えた体積を受け止める
  • 配管内の圧力を、安全弁が開く圧力より低く保つ
  • 水が冷えて縮んだときは、受け止めていた水を配管に戻す

膨張タンクを設置しないとどうなる?

膨張タンクを設置しない場合は、次のような現象が起こります。

図1:膨張タンクがないとどうなるか

逃げ場のない水が温まると、圧力が上がり続けて弱い所から壊れます。

01冷水で満水になる循環配管に冷たい水を張り、空気を抜いた状態
02循環水の温度が上がる熱交換器やボイラーで水を温める
03循環水が膨張しようとする20℃→80℃で体積は約2.7%増えようとする
04配管・タンクの圧力が上がる内容積はほとんど変わらないので、水が押し込められる
05耐圧の低い機器が壊れるまたは水のラインの安全弁が開き、高温水が出る
変形しない容器に20℃の水を満たして80℃にすると、計算上の圧力は約64MPaに達します(NISTの物性値から)。

※約64MPaは、容器が全く変形しないと仮定した理論値です(鋼管の膨張分を差し引いても約58MPa)。実際の配管でこの圧力が出るわけではなく、その前に安全弁が開くか、弱い部分が壊れます。

循環配管が冷水で満水になった後、電気や蒸気の熱交換器で水の温度を上げると水は膨張しようとしますが、配管は自らの熱膨張分しか広がらないので、内容積はほとんど増えません。そのため圧力が上がり、水が配管内に無理やり収められることになります。

圧力が上がると水の比体積はわずかに小さくなるため、循環ラインの容積に収まるところまで、圧力が上がり続けます。水はほとんど縮まないので、収まるまでに必要な圧力は桁違いに大きくなり、上の図のとおり、変形しない容器なら計算上は数十MPaです。

その結果、急な圧力上昇に耐えられず、配管が外れたり、機器やバルブが壊れたりします。安全弁がある場合は、設定圧力まで上がった時点で安全弁から高温水が出てきます。

安全な所に排水が施工してあれば火傷の心配はありませんが、安全弁の寿命や省エネルギー性を考えると、よい対策とは言えません。安全弁の種類は安全弁の揚程式と全量式の違いで解説しています。そこで膨張タンクを設置し、比体積の増加分を逃がして、圧力の上昇を抑える必要があります。

膨張タンクの種類

膨張タンクには開放式と密閉式の2種類があり、密閉式のほうが多いですが、まれに開放式を採用している設備も見られます。

開放式膨張タンク

  • 大気に開放されたタンクで、循環ラインの最も高い位置に設置
  • 水温上昇で体積が増えるとタンクの水位が上がり、オーバーフローで排出
  • ボールタップやレベルセンサーで自動補給
  • 大気と接しているため、腐食や不純物混入のリスクあり
循環ラインの最も高い位置に開放式膨張タンクを置いた系統の模式図

開放式は、大気に開いたタンクを循環ラインの一番高い場所に置き、上の図では、ポンプ(P)と加熱器(赤)を回るループの最上部にタンクがあります。

水の温度が上がって比体積が増えると、その分タンクの水位が上がり、上がりすぎた水は、オーバーフロー配管から排出されます。オーバーフローや蒸発で減った水は、水位制御で補給ラインから補い、たいていはタンク上部のボールタップか、レベルセンサーでポンプを動かして送水します。

開放式は大気に開いているため、水に溶け込む酸素(溶存酸素)が増え、配管の腐食が進みやすいというデメリットがあります。溶存酸素の測り方は溶存酸素と溶存酸素計の原理で解説しています。

密閉式に比べると大気中から不純物が入るリスクも高く、衛生面を気にする場合はあまり使いません。ビルの屋上などに置かれた開放式の膨張水槽がこれに当たり、屋上や屋外に置くことが多いので、冬の凍結にも注意が要ります。メーカーの資料でも、機械室に置ける密閉式の利点として「凍結の心配がない」ことを挙げています。

密閉式膨張タンク

  • ダイアフラムなどで水室とガス室を分離
  • 水の膨張でガスが圧縮され、圧力上昇を緩和
  • ガス圧は設置環境に合わせて調整可能
  • 衛生的かつ省エネ性に優れており、工場などでも広く利用
密閉式膨張タンクのガス室と水室がダイアフラムで仕切られた3つの状態の模式図

密閉式は、合成ゴム製のダイアフラムやブラダー(袋状の膜)で中が2つの部屋に分かれており、片方は水、もう片方は補給水と同じ圧力のガス(窒素や空気)です。

水の比体積が増えると、膨張タンクのガス室が縮んで急な圧力上昇を防ぎ、このときガスの圧力は上がって温水の圧力と釣り合います。風船が入った箱をイメージすると分かりやすいです。

上の図は、水が温まるにつれて水室が広がり、ガス室が縮んでいく様子です。メーカーの説明では、水張り時は封入ガスの圧力で水室に水がほぼ入らず、温まるにつれて膨張した水を吸収し、最高温度で吸収量が最大になります。

冷えて水が縮むと、ガスに押されて水が配管へ戻り、運転と停止をくり返しても同じ動きを往復するだけです。封入するガスの圧力は、設置場所にもよりますが、循環水の元圧で決まる場合が多いです。ガスの圧力は設置後も調整できます。

密閉式は置き場所が限定されず、溶存酸素が増えることもなく、高温水を外部に排出しないので省エネ性にも優れています。

圧縮性のガスで圧力を吸収し、系内は密閉のままなので、開放式のようなオーバーフロー配管をつなぐ必要はありません。ただし国内メーカーは、点検のため取出管に仕切弁とドレン弁を設けるよう求めています。

高温水を外部に排出せず、不純物が入るリスクも小さいので、衛生面を重視する工場などではこちらのタイプが使われます。ゴムの膜は温度が高いほど傷みやすくなり、ある国内メーカーは、連続して使う温度の目安を70℃とし、これを超えると膜の交換頻度が上がるとしています。

図2:開放式と密閉式の違い

膨張を水位で受けるか、ガスの縮みで受けるかの違いです。

開放式
密閉式
設置場所
循環ラインの最も高い位置(屋上など)
場所を選ばない(機械室など)
膨張を吸収する仕組み
タンクの水位が上がる
ガス室(空気・窒素)が縮む
空気との接触
あり(溶存酸素が増え、腐食しやすい)
なし
補給・排出
ボールタップなどで補給、オーバーフローで排出
不要
凍結・設置の手間
屋外では凍結に注意。最高所まで配管を立ち上げる
屋内に置けて凍結の心配が少ない。配管が短い
向いている用途
小規模・古い設備
空調・給湯・工場の温水ライン

※密閉式の設置場所・凍結・配管工事の項目は、森永エンジニアリングのカタログの特長説明によります。

膨張タンクの選定方法

膨張タンクを選定するためには、次の2つの値をそろえる必要があります。

  • 膨張水量(L)
  • タンク内容積(L)

計算に入る前に、図面や現場で次の条件を集めますが、どれか1つでも分からないと、容量は決まりません。

  • システム保有水量(配管の口径と長さ、機器の保有水量)
  • 水を張るときの温度と、運転中の最高温度
  • 補給水の圧力(給水方式)
  • 安全弁の設定圧力
  • タンクとポンプ・安全弁の位置関係、タンクの設置高さ

補給水の圧力とポンプの位置は、最低使用圧力と封入ガス圧力を決めるのに使い、詳しくは後の「封入ガス圧力」の章で説明します。

図3:膨張タンクの容量の計算の流れ

この記事の計算例は1つです。460L→11.5L→26.8Lと順に求めます。

01保有水量 Vsを出す50Aの配管200m(1mあたり約2.2L)と熱交換器20L460L
02膨張係数 εを決める20℃の水を80℃まで温める場合0.025
03膨張水量 Veを出す温まって増える水の量。Vs×ε11.5L
04タンク内容積 Vを出す最低使用圧力0.4MPaA、最高使用圧力0.7MPaAで計算26.8L

※求めたタンク内容積と、最高使用圧力・温度・材質の条件から機種を選びます。数字は説明用の例で、実際の設備では自分の系統の値に置き換えてください。

選定の結果、タンクの容積が大きくなり、圧力容器に該当してしまう場合があり、そのときは、小さいタンクを複数組み合わせて小分けにすることで回避できる場合があります。

労働安全衛生法施行令では、ゲージ圧力0.2MPa以上の気体を保有し、内容積0.04m³以上などの容器を第二種圧力容器としています。該当するかは容量・封入圧・機種で変わるので、選定結果をもとにメーカーと相談することをお勧めします。

圧力容器の区分と必要な検査は、第一種圧力容器と第二種圧力容器の違いで整理しています。

膨張水量

膨張水量は、次の式で計算できます。

Ve = Vs × ε
Ve:膨張水量[L] Vs:システム保有水量[L] ε:膨張係数

システム保有水量は、ループ配管や密閉型の温水タンクなど、機器の容積を足し合わせたものです。配管の口径と長さ、機器の仕様があれば計算できます。例えば「50Aの配管200mと、保有水量20Lの熱交換器」という条件なら、50A配管1mあたりの容積が約2.2Lなので、保有水量は460Lと分かります。

2.2 × 200 + 20 = 460 [L]
配管用炭素鋼鋼管(SGP)の50Aは外径60.5mm・厚さ3.8mmで、内径52.9mmから1mあたり約2.2Lになります。メーカーの保有水量表でも50Aの鋼管は2.2L/mです。

膨張係数は、温度によって変化する比体積の割合から、鉄管の膨張率を引いたものです。金属の膨張よりも保有する液体の膨張のほうが大きいので、それを吸収する膨張タンクが必要になります。

膨張率は水か不凍液かによって変わり、それぞれに目安の数値が決まっています。例えば「20℃の水を80℃まで温める」という場合は、膨張係数が0.025となります。

中身を確かめると、水の体積は20℃から80℃で約2.72%増えます。鋼管の体積も、線膨張係数11.6×10-6/℃の約3倍の割合で約0.21%広がるので、差し引き約0.025です。

図4:20℃の水を温めるときの膨張係数

水の体積の増え方から、鋼管が広がる分を引いた値が膨張係数です。

最高温度
水の体積の増加
鋼管の体積の増加
膨張係数 ε
40℃
0.60%
0.07%
0.0053
50℃
1.03%
0.10%
0.0093
60℃
1.53%
0.14%
0.0139
70℃
2.09%
0.17%
0.0192
80℃
2.72%
0.21%
0.0251(≒0.025)
90℃
3.41%
0.24%
0.0316

※水の比体積はNISTの大気圧の値、鋼管はSGPの線膨張係数11.6×10-6/℃(日本製鉄)の3倍で計算。メーカーの膨張係数表には4℃を基準に水だけの膨張率を載せたものもあり(80℃で0.029)、基準温度で値が変わります。

先ほどの例(保有水量460L、膨張係数0.025)では、膨張水量は11.5Lです。

460 × 0.025 = 11.5 [L]

タンク内容積

次に、先ほど求めた膨張水量をもとに、必要なタンクの内容積を求めます。タンク内容積は、次の式で計算できます。

V = Ve1 − PfPo
V:タンク内容積[L] Ve:膨張水量[L] Pf:最低使用圧力[MPaA] Po:最高使用圧力[MPaA]

この式は、ガスの圧力と体積の積が一定になる関係(ボイルの法則)から来ています。最低使用圧力で封入したガスが、膨張水に押されて最高使用圧力まで縮むとして、必要なタンクの大きさを逆算しています。

そのため、式の圧力は大気圧を含めた絶対圧(MPaA)で入れます。国内メーカーのカタログの式も、ゲージ圧に0.1を足して同じ形で計算しています。

残る値は最低使用圧力と最高使用圧力で、最低使用圧力は、補給水の圧力とポンプの揚程を足し合わせたものです。例えば補給水の圧力が0.2MPaGで、ポンプの揚程が10m(0.1MPa)なら、最低使用圧力は0.3MPaGです。

ゲージ圧力(大気圧を0とした圧力、MPaG)を絶対圧力に直すため、大気圧の約0.1MPaを足して0.4MPaAになります。

最高使用圧力は、安全弁の設定圧力です。例えば安全弁の設定圧が0.6MPaG(0.7MPaA)なら、その値が最高使用圧力になります。圧力の単位の関係は圧力の単位換算表にまとめています。

ここまでの数字を入れると、Vは26.8Lです。

V = 11.5 [L]1 − 0.4 [MPaA]0.7 [MPaA] = 26.8 [L]
0.4MPaA=0.3MPaG+大気圧0.1MPa、0.7MPaA=0.6MPaG+大気圧0.1MPa。分母は 1−0.4/0.7≒0.429 です。

この式から、最低使用圧力と安全弁の設定圧が近いほど、大型のタンクが必要になることが分かります。安全弁を作動させないことが目的なので、少し内圧が上がるだけで安全弁が作動する場合は、吸収量を大きくするため大型の膨張タンクが要ります。

図5:安全弁の設定圧と必要なタンク内容積

安全弁の設定圧が最低使用圧力に近いほど、タンクは急に大きくなります。

0.4MPaG
57.5L
0.6MPaG
26.8L
0.8MPaG
20.7L

※膨張水量11.5L・最低使用圧力0.4MPaAは同じで、安全弁の設定圧(最高使用圧力0.5/0.7/0.9MPaA)だけを変えて計算。安全弁の設定圧は、配管や機器の耐圧を超えない範囲で決まります。

あとは膨張水量とタンク内容積、最高使用圧力、温度、材質などの条件から膨張タンクを選定できます。温水配管に使う場合は、接液部をステンレスにするのが一般的です。

膨張タンクの封入ガス圧力

膨張タンクを注文するときは、最初に空気や窒素の封入圧力を設定しておく必要があり、膨張タンクの内部は二重構造で、封入された空気が縮むことで膨張した水を吸収します。

タンクの空気封入圧力は、最低使用圧力と同じにしておけば問題ありません。タンクがポンプの一次側(吸込み側)にある場合は補給水圧力、二次側(吐出し側)にある場合は補給水圧力にポンプ揚程を足したものになります。

ただし、空気封入圧力はMPaGで求められることが多いので、先ほどの最低使用圧力から大気圧の0.1MPaを引いた値になり、例では0.4MPaA−0.1=0.3MPaGです。高所に設置する場合は、立ち上がった分だけ水圧が下がるので注意が必要です(1m=約10kPa)。

封入圧が低すぎると、水を張った時点でタンクに水が入ってしまい、メーカーの資料でも、最初から水が入ると計算した膨張水量を吸収しきれなくなるとしています。封入した窒素や空気は、時間とともに少しずつ減り、国内メーカーは、1年に1回は封入圧を確かめ、下がっていれば補充するよう求めています。

図6:封入ガス圧力の決め方と点検

封入圧は「タンクを付ける場所の、水を張ったときの圧力」に合わせます。

ポンプの一次側(吸込み側)補給水圧力に合わせる。高架水槽なら水面までの高さ、減圧弁があればその設定圧
ポンプの二次側(吐出し側)補給水圧力にポンプ揚程を足す。例:0.2MPaG+0.1MPa=0.3MPaG
高い所に置く場合立ち上がった高さ1mにつき約10kPa、水圧が下がる分を引く
年に1回の点検封入ガスは少しずつ抜ける。封入圧を測り、下がっていれば補充する

※封入圧の指定はゲージ圧(MPaG)が多く、容量の式は絶対圧(MPaA)で計算します。補給水圧力を変えたときは封入圧も合わせ直します。

ポンプの吸込み側の圧力は、キャビテーションの検討にも関わります。考え方はポンプの流入水頭の計算方法で解説しています。

膨張タンクのよくある質問

膨張タンクが満水になる原因は?

密閉式で多いのは、ガス室のガスが抜けて、水室に水が入りすぎるケースで、封入ガスは時間とともに減り、ガス充填口のキャップの締め不良でも抜けます。ゴムの膜(ダイアフラム・ブラダー)が破れるとガス室にも水が入り、封入圧の設定違いやタンクの容量不足でも同じ症状になります。

兆候は、温めたときの圧力上昇が大きくなり、安全弁から水が出ることです。米国メーカーの取扱説明書も、安全弁から水が垂れるなら封入圧の不適切か容量不足を疑うよう書いています。

確かめるときは、熱源を止めて水を冷ましてから、タンクの元弁を閉じて水を抜き、ガス充填口で封入圧を測ります。米国メーカーの取扱説明書では、ガス側から水が出る場合は膜の漏れとし、ダイアフラム式は本体ごと交換するとしています。

開放式では、ボールタップやレベル制御の不良で補給が止まらず、水位が上がり続けてオーバーフローするのが主な原因です。日常の点検の考え方は設備保全とはで整理しています。

ボイラーにも膨張タンクは必要?

温水ボイラーで温水を循環させる暖房・給湯の系統には必要で、ボイラーで温まった循環水が膨張するので、その分を膨張タンクで受けます。米国メーカーの温水暖房用タンクの説明書では、ボイラーの供給側で、循環ポンプの吸込み側に付ける配置を示しています。

一方、蒸気ボイラーは水を蒸気にして送り出す使い方で、密閉した温水の循環ループとは構成が違います。補給水と戻ってきた復水は、大気に開いた給水タンク(または脱気器)に集めてからボイラーへ送ります。

そのため、蒸気ボイラーの本体側に循環水用の膨張タンクを付ける考え方はとりません。ただし、蒸気で温水を作る熱交換器の先が密閉の温水ループなら、そのループには膨張タンクが要ります。

冷却塔の配管にも膨張タンクは必要?

冷却塔の方式で変わります。開放式冷却塔は冷却水が大気に触れる方式で、下部の水槽が大気に開いています。水槽そのものが、開放式膨張タンクと同じように体積の変化を受け止めます。

密閉式冷却塔は、冷やしたい水をコイルの中に通し、大気から切り離した閉じたループで回します。この閉回路に大気に開いた水槽がない場合は、密閉式の温水配管と同じく、膨張タンクなどで体積の変化を受ける必要があります。

同じ考え方は、サーバーを水で冷やす液冷の配管にも当てはまります。構成はデータセンターの液冷設備で紹介しています。

まとめ

この記事のまとめ
  • 膨張タンク(膨張水槽)は、循環ラインの圧力上昇を防ぐために設置する
  • 膨張タンクには、水位で受ける開放式と、ガスの縮みで受ける密閉式の2種類がある
  • 選定は膨張水量とタンク内容積で決まる。保有水量・温度・補給水圧・安全弁の設定圧を先に集める
  • タンク内容積は V=Ve/(1−Pf/Po)。圧力は絶対圧で入れる
  • 封入ガス圧力は最低使用圧力と同じにし、年に1回は確かめる

温水の循環ラインに膨張タンクを設置する理由は、温度上昇による水の熱膨張を吸収させるためで、ポンプの発停やバルブの急閉などで起きる衝撃を吸収させる役割もあります。

膨張タンクを設置せず、安全弁が頻繁に作動すると、高温水のエネルギーを外部に捨てることになります。その意味で、膨張タンクは省エネ機器とも言えるでしょう。工場全体の打ち手は工場の省エネとエネルギー管理で紹介しています。

配管図で膨張タンクの位置を確かめるときは、P&ID(配管計装図)の読み方も参考になります。メーカーが公開している選定シートを使うと、条件を入れるだけで容量を試算できます。⇒ 密閉式膨張タンク選定フォーマット(XLS、ホーコス)

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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