「産業機械・工作機械業界の大手」と聞くと、多くの方はコマツやファナックのような、名前の知られた企業を思い浮かべるのではないでしょうか。
実際には、建設機械、工作機械、制御装置、空圧機器など、分野ごとに強い企業は異なり、売上高の大きさだけでは各社の立ち位置は見えてきません。近年は、買収をめぐる動きも業界の勢力図を揺さぶっています。
この記事では、産業機械・工作機械業界の主要企業を、売上高ランキング、分野別の代表企業、各社の特徴と強み、海外との比較、再編の動き、企業を見るときのポイントという順で整理します。
産業機械・工作機械業界の売上高ランキング

まず、主な上場企業の売上高を比べてみます。建設機械や農業機械、工作機械、制御装置など、この業界に関わる代表的な企業の直近の決算は次のとおりです。
決算期は企業によって異なります。
※各社の決算短信などによる連結売上高(DMG森精機とアマダは売上収益)。全社の売上高で、産業機械・工作機械以外の事業も含みます。
首位のコマツと2位のクボタは、建設機械や農業機械を主力とし、売上高は兆円単位に達します。一方、工作機械を主力とするメーカーは数千億円規模で、分野によって企業の規模感が大きく異なります。
3位の日立建機は2026年3月期の売上高が1兆4,055億円、営業利益が1,301億円でした。4位の住友重機械工業は2025年12月期の売上高が1兆669億円で、日本での売上は全体の約4割にとどまります(同社の地域別売上から算出)。
ランキングを見るときは、事業範囲の違いに注意が必要です。クボタは農業機械に加えて水・環境関連、住友重機械工業は減速機や射出成形機、建設機械など幅広い事業を持っており、売上高の順位は「工作機械の強さ」の順位ではありません。
また、非上場のヤマザキマザックはこの比較に含めていませんが、工作機械の分野では同社も大手の一角です。決算期もそろっていないため、あくまで規模感をつかむための目安として見てください。
分野別の主要企業

業界とは記事で紹介した分類に沿って、分野ごとの代表的な企業を整理すると次のようになります。
同じ業界でも、分野ごとに顔ぶれが大きく変わります。
※主な製品は代表的なものに絞っています。各社は複数の分野にまたがる事業を持っています。
工作機械では、DMG森精機、ヤマザキマザック、オークマ、牧野フライス製作所が大手4社と呼ばれることが多く、板金機械ではアマダが大きな存在です。
部品・ユニットの分野では、ファナックやSMCのように、完成した機械の表に名前が出にくい企業が大きな売上と高い収益性を持っています。機械商社は、メーカーとユーザーをつなぐ流通の担い手です。

主要企業の特徴と強み

ここからは、代表的な企業の特徴を、決算で確認できた数字とともに見ていきます。
コマツ
建設機械・鉱山機械の世界的なメーカーです。2026年3月期の売上高は前期比0.7%増の4兆1,327億円で、そのうち建設機械・車両部門が3兆7,961億円と大半を占めます。
同期の営業利益は5,673億円で、前期から13.7%減りました。建設・鉱山の投資動向に加え、原材料や物流のコストが業績を左右する構造です。プレス機械などを含む産業機械ほか部門も、2,361億円の売上があります。
クボタ
農業機械の大手で、トラクタやコンバインのほか、小型の建設機械や水・環境関連の事業も持っています。2025年12月期の売上高は3兆189億円、営業利益は2,655億円でした。
地域別の売上構成から算出すると、海外比率は約77%で、北米だけで全体の約4割を占めます。北米市場の動向が業績を大きく左右する企業です。
ファナック
工作機械の頭脳となるNC装置で世界的な存在で、産業用ロボットや小型の加工機(ロボマシン)も手がけます。2026年3月期の売上高は8,578億円と過去最高を更新し、営業利益率は21.4%でした。
部門別の売上高ではロボットが44.1%と最も大きく、FAが24.3%、サービスが16.5%です。地域別売上から算出すると海外比率は約87%で、特にアジアと米州の比重が大きくなっています。
SMC
工場の自動化に欠かせない空気圧機器(空圧機器)の大手です。2026年3月期の売上高は8,425億円、営業利益は1,906億円で、営業利益率は約23%でした(同社決算から算出)。
地域別に見ると日本は約2割で、中国が約28%を占めるなど、海外比率は約8割にのぼります(同社の地域別売上から算出)。多くの機械メーカーや工場に部品を供給する、ユニット・部品メーカーの代表例です。
DMG森精機
日本とドイツの工作機械メーカーの統合を経て現在の体制になった企業で、マシニングセンタや複合加工機を幅広く手がけます。2025年12月期の売上収益は5,150億円で、前期から4.8%減りました。
同期の受注の地域構成は欧州が55%、米州が24%で、日本は10%にとどまります。受注の約9割を海外が占める、国際色の強いメーカーです。
オークマ
旋盤やマシニングセンタを主力とし、NC装置まで自社で開発する点が特徴の工作機械メーカーです。2026年3月期の売上高は前期比14.1%増の2,359億円、営業利益は5.8%増の155億円でした。
同期は中国での売上高が530億円と前期から55.0%増えるなど、海外市場が伸びました。機械とNC装置を一体で開発できることが、同社の強みと言えます。
牧野フライス製作所
マシニングセンタや放電加工機に強く、金型や航空機部品など高精度の加工で知られるメーカーです。2026年3月期の売上高は前期比11.5%増の2,612億円、営業利益は35.2%増の250億円でした。
同社は2024年末からのニデックによる買収提案や、その後の投資ファンドによる買収計画など、業界再編の中心にいた企業でもあります。経緯はこのあと整理します。
アマダ
金属の板を切ったり曲げたりする板金機械の大手で、レーザー加工機やプレスブレーキなどを手がけます。2026年3月期の売上収益は前期比10.3%増の4,374億円で、過去最高を更新しました。
北米やアジアで、データセンターのサーバーラックや空調機器向けの板金需要が伸びたことが追い風になりました。2025年にはプレス機械のエイチアンドエフや、基板加工機のビアメカニクスの買収を発表し、事業領域を広げています。
海外の主要企業との比較

世界の工作機械市場では、国ごとに役割が分かれています。ジェトロのビジネス短信によると、2022年の工作機械の生産額シェアは中国が28.1%で首位、日本が13.1%、ドイツが12.7%でした。
生産量と輸出では、上位の顔ぶれが入れ替わります。
※生産・輸出シェアはジェトロ「ビジネス短信」(2023年3月)による。機種帯は一般的な評価の目安です。
中国は自国の大きな需要を背景に生産額で首位に立つ一方、輸出では日本とドイツが二大勢力となっています。日本の工作機械受注の約7割が外需であることも、この構図を裏付けています。
企業単位で見ても、日本の大手は海外で稼いでいます。ファナックの2026年3月期の地域別売上高は、アジアが3,526億円、米州が2,322億円、欧州が1,524億円で、日本は1,108億円でした。
日本企業の中にも、DMG森精機のように欧州を最大の市場とする企業や、ファナックのようにNC装置で世界の工作機械メーカーを顧客とする企業があります。国別の比較だけでなく、国境をまたいだ企業の組み合わせで勢力図を見る視点も大切です。
世界市場の推移や需要地の変化は、市場規模と動向の記事で詳しく解説しています。
再編・M&Aの動き

工作機械業界では、2020年代に入って買収による再編が相次いでいます。主な動きを時系列で整理すると、次のようになります。
ニデックの連続買収、牧野フライス製作所をめぐる動き、その他の3つに分けて整理します。
※各社の発表と報道をもとに作成。年月は発表または手続きの時期です。
ニデックは2021年から2023年にかけて国内外の工作機械メーカーを相次いで傘下に収め、工作機械事業を急速に広げてきました。2023年にはイタリアのPAMAも買収しています。
2024年12月には牧野フライス製作所に対して同意のないTOBを表明し、2025年4月に開始しましたが、牧野側の対抗策をめぐる裁判所の判断を受けて、同年5月に撤回しました。
その後、牧野フライス製作所は投資ファンドのMBKパートナーズによる買収に賛同しましたが、2026年4月、政府は外為法に基づき買収の中止を勧告し、MBK側もこれを受け入れました。高精度の工作機械が経済安全保障の観点から重視されていることを示す出来事です。
DMG森精機は2023年に倉敷機械を買収し、アマダは2025年にエイチアンドエフとビアメカニクスの買収を発表しました。自社にない技術や製品を買収で取り込む動きは、今後も続くと考えられます。
建設機械では、日立建機の株式を日立製作所が2022年に26%分売却し、株主構成が大きく変わりました。同社は2027年4月にランドクロスへ社名を変更する予定です。
就職・転職で企業を見るときのポイント

売上高の大きさは、企業を知る入口にすぎません。就職や転職で企業を比べるときは、次の3つの視点も押さえておきたいところです。
売上高のランキングに、次の3点を重ねると企業の姿が見えてきます。
利益率で稼ぐ力を見る
売上高が同じ規模でも、利益率には大きな差があります。2026年3月期の営業利益率は、ファナックが21.4%だったのに対し、オークマは約6.6%、牧野フライス製作所は約9.6%でした(オークマと牧野は各社決算から算出)。
利益率が高い企業は、研究開発や人への投資に回せる余力が大きいと言えます。売上と利益の両方を数年分並べて見ると、企業の安定性がつかみやすくなります。
海外比率と地域の偏りを見る
この業界の大手は、売上の多くを海外で稼いでいます。ファナックは売上の約87%、DMG森精機は受注の約9割が海外です。
海外比率が高い企業では、語学力が生きる場面や海外出張の機会が増えます。同時に、特定の国の景気や関税の影響を受けやすいため、どの地域に偏っているかも確認しておくと安心です。
事業の集中度を見る
工作機械を主力とする企業は設備投資の波を直接受けやすい一方、特定の分野で専門性を深められる環境です。反対に、住友重機械工業やクボタのように事業が多角化した企業は、波をならしやすい反面、配属先によって扱う製品が大きく変わります。
自分が関わりたい製品や技術がどの事業に含まれるかを確認し、会社全体ではなく事業単位で見ることが、入社後のギャップを減らすポイントです。
まとめ
- 売上高ではコマツ、クボタなど建設・農業機械の大手が上位で、工作機械の主力メーカーは数千億円規模
- 工作機械ではDMG森精機、ヤマザキマザック、オークマ、牧野フライス製作所が大手とされる
- ファナックなど部品・制御の企業は、高い利益率と海外比率が特徴
- 世界では中国が生産額で首位、輸出では日本とドイツが二大勢力となっている
- ニデックや牧野フライス製作所をめぐる再編が進み、企業選びでは利益率・海外比率・事業の集中度も見たい
企業を比べる前に、業界の全体像や構造を押さえておくと、各社の立ち位置が見えやすくなります。業界の基本は産業機械・工作機械業界とは、市場の推移は市場規模と動向の記事、商流や利益構造は業界構造の記事で解説しています。
関連する職種や技術の記事は、産業機械・工作機械の業種ページからあわせてご覧ください。
出典
- ファナックの売上高・部門別構成:ファナック株式会社「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
- 牧野フライス製作所の売上高:株式会社牧野フライス製作所「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(そのほか各社の決算短信・決算資料も参照)
- 生産・輸出シェア:ジェトロ「ビジネス短信:2022年のドイツ国内の工作機械生産額は前年比9.8%増」
- ニデック・DMG森精機の買収:M&A Online「【工作機械】止まぬニデック旋風、盟主のDMG森精機は8年ぶり買収へ」
- ニデックのTOB撤回:MONOist「ニデックが牧野フライスへのTOB撤回」
- 外為法の中止勧告:赤坂国際法律会計事務所「MBKパートナーズによる牧野フライス公開買付け――18年ぶりの外為法中止勧告」

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