渦巻ポンプの並列運転は、複数のポンプを共通の吐出配管につなぎ、必要な流量を分担して送る方法です。流量を増やす手段ですが、同じポンプを2台並べても、実際の吐出量が単機運転の2倍になるとは限りません。
選定では、合成したH-Q曲線と配管の抵抗曲線から運転点を求め、各台の流量・動力・吸込条件を確認します。合流管の損失、能力の違い、1台停止後の残るポンプの状態、逆止弁まで見ないと、増設しても期待どおりの流量を得られない場合があります。
この記事では、並列運転を選ぶ理由と4つの注意点を、配管図と数値を入れた例題で整理します。とくに「1台運転になるとNPSHAが下がる」という説明は、設備の条件によって変わるため、共通管と枝管を分けて確かめます。
なぜポンプの並列運転を選択するのか?
ポンプ1台で必要な流量を満たせないときや、需要に合わせて運転台数を切り替えたいときに並列運転を検討します。必要な揚程を各ポンプが負担し、その揚程で送れる流量を合計する考え方なので、直列接続のように揚程を足すものではありません。
直列運転では同じ流量に対する各台の揚程を加え、並列運転では同じ揚程に対する各台の流量を加えます。「揚程が不足なら直列、流量が不足なら並列」は入口として便利ですが、最終的な流量と揚程は、どちらも接続先の系統との関係で決まります。
需要が小さい時間帯は1台、大きい時間帯は2台と切り替える方式なら、大型1台を常に絞って使う方式より適した運転になる可能性があります。ただし、各台の効率や制御方法も関係するため、台数を増やしたという理由だけで省エネ効果は保証されません。
2台を設置する目的には、故障時の予備を確保することもあります。交互に1台ずつ運転する方式と、需要増加時に2台同時に運転する方式では必要能力が異なります。1台故障しても全量を供給したいのか、供給量が落ちても継続したいのかを最初に決めます。
図1:各台の吐出側を合流前に分け、共通管へ送る
2台運転で流量を分担する例。矢印は送水方向、逆止弁は各枝管に1個ずつです。図は横にスクロールできます。
※弁の図形は逆流防止の位置を示す模式図。保守用の仕切弁、計器、ドレンなどは省略しています。
基本的なつなぎ方では、各ポンプの吐出側に逆止弁を設け、その下流で共通管へ合流させます。実際には吸込配管の配置、液面の変動、枝管の長さなども各台の分担に影響するため、単にポンプ本体を横に並べた状態だけで能力を足し算しないようにします。
旧記事から継承する下の概念図は、単機と2台並列の性能曲線、配管の抵抗曲線の関係を示します。横軸は吐出量Q、縦軸は全揚程Hで、曲線の交点が運転点です。実機の特定型式の数値を読むための図ではなく、増設時の考え方を表しています。

メーカー公式の説明として、荏原製作所の「渦巻ポンプの基礎知識」も参考になります。下の動画は並列・直列を含む基礎事項を扱っていますが、個別設備の許容流量や始動順序は、その機種の仕様書・取扱説明書で別に確認してください。
合成曲線と配管抵抗から流量を求める
同じポンプ2台なら、ある揚程で各台が送れる流量は等しいので、その横方向の値を2倍して合成曲線を作ります。元の単機運転点の流量を2倍して終わるわけではなく、合成曲線と系統曲線を重ね直して新しい交点を求めます。
計算のため、単機の性能をH=40−0.005q²、系統の必要揚程をH=10+0.005Q²とした架空の設備を考えます。Hの単位はm、流量q・Qの単位はm³/hで、共通接続点までの枝配管の損失差は無視できるものとした簡略モデルです。
図2:同じ系統曲線との交点は、単機54.77と2台69.28
本文の架空モデルを描画。2台合成は流量方向へ広がり、運転点は同じ系統曲線上を移ります。横にスクロールできます。
※計算値はモデルの交点。実機の許容流量や動力・NPSHは、このグラフから決められません。
単機では約54.77m³/hですが、2台運転の全体流量は約69.28m³/hで、増加率は約26.5%です。各台の流量はその半分の約34.64m³/hとなり、単機時より少なくなります。2台にした効果が小さいのは、流量増加に伴って系統の必要揚程も増えるためです。
この例の運転揚程は単機時25mから2台時34mへ上がります。並列では揚程方向に性能曲線を加えませんが、運転点の揚程が全く変わらないという意味ではありません。系統曲線が急であるほど、増設による流量の伸びが制約されやすくなります。
実機では吐出フランジと共通ヘッダの間の損失もあるため、各台の性能を共通の接続点で比較できるように整理します。枝管の口径・長さ・弁が違う場合は、同一機種でも完全に均等分担になるとは限らず、それぞれの経路を含めて運転点を求めます。
ポンプの並列運転の注意点は?
合流後の配管サイズを太くする必要がある
合流後の共通管には、複数の枝管から来た合計流量が流れるため、必要に応じて管径を見直します。ただし、並列なら必ず太くするという一律の条件ではありません。目標流量、既設配管の余裕、許容する損失や流速を計算して判断することが必要です。
例えば実流量が2倍になり、共通管の内径が同じなら、平均流速は2倍になります。損失係数を一定とみなせる条件では、損失水頭は流速の二乗に比例するので4倍です。流量の増加を見込む設計では、共通管の損失が急に大きくなる点に注意します。
図3:2倍の流量を送るとき、共通管の断面積を確かめる
同じ長さ・条件で損失係数を一定とする説明用比較。太くする必要性は許容損失などを踏まえて判断します。
※模式断面は内径と流量の考え方を示すもので、実際の流速分布は省略。呼び径と実内径は異なります。
同じ流速を保って2倍の流量を流すには、断面積を2倍、内径を約1.414倍にする計算になります。呼び径を2倍にするという意味ではなく、実際の内径で比べる必要があります。配管径はこの単純計算だけで決めず、長さ、粗さ、継手、弁、施工条件も含めて選定します。
管径や弁開度などの条件が変わらなければ、増設だけで元の系統曲線が左上へ移動するわけではありません。同じ系統曲線に2台の合成曲線を重ねた交点へ移ります。管径変更や弁の絞りによって抵抗が変わった場合に、系統曲線そのものを描き直します。
既設改造で共通管を交換できない場合は、増設後の到達流量を先に計算し、必要流量との差を確認します。ポンプを追加しても流量がほとんど増えないなら、配管経路や弁、機器の圧力損失が制約となっていないかを調べ、増設案だけに絞らず比較します。
ポンプの性能が違うと締め切り運転になるケースがある
異なる性能のポンプを並列に使う設計もありますが、共通ヘッダの圧力に対して、各台が正の流量を送り出せるかを確かめます。安定した性能曲線と近い締切揚程の組合せは扱いやすく、異なる場合には需要範囲ごとの流量分担まで確認します。
一方のポンプが作るヘッダ圧力が、もう一方の締切時に発生できる圧力より高いと、弱い側の逆止弁が開かず、運転していても送り出せない場合があります。締切揚程だけでなく、吸込圧力差、枝管損失、逆止弁の開弁条件も含めて比較することが必要です。
図4:逆止弁が逆流を止めても、弱い側の流量は出ない場合がある
ポンプ側で作れる圧力がヘッダ側に及ばず、弁が開かない状態の模式断面。具体的な開弁差圧は弁の仕様で確認します。横スクロールできます。
※圧力の向きを示す矢印で、右から左へ実際に流れている図ではありません。逆止弁と最小流量保護は役割が異なります。
締切状態では、ポンプ内部で受け取ったエネルギーの一部が液の温度上昇につながり、シールや内部部品の損傷などを招くおそれがあります。流量が出ていないのに電動機が回っている状態を、通常運転として放置しないようにします。
また、流量ゼロだけでなく、メーカーの最小連続流量を下回る運転や、不安定な曲線の範囲にも注意します。同じ型式を選ぶ場合も、回転数、羽根車径、摩耗、制御設定が違えば性能は変わるため、銘板が同じという確認だけで済ませないことが大切です。
増設時は、既設・新設それぞれの流量と吐出圧力を測れるかも検討します。合計流量だけでは一方がほとんど負担していない状態を見落とすため、各台の電流、振動、温度と合わせて確認します。温度上昇の基本はポンプ内部で液温が上昇する理由も参照してください。
1台運転の場合、NPSHAが下がる
1台運転なら必ずNPSHAが下がる、という一般則ではありません。NPSHAは設備側の有効吸込ヘッドで、吸込槽の圧力、液面高さ、液温に対応する蒸気圧、吸込配管の損失などで決まります。小さいポンプを選んだこと自体で、その値が下がるわけではありません。
注意したいのは、2台から1台へ切り替えた後に、残るポンプ1台の流量が増える場合です。先ほどの設例では、2台時の各34.64m³/hから、単機時の54.77m³/hへ増えます。運転点が変わるため、その流量での吸込条件・必要NPSH・動力を改めて確認します。
図5:1台停止後、共通管と残る枝管では流量の変化が逆になる
本文の設例の流量で整理。共通管と稼働枝管それぞれの流量から区間ごとの損失を求め、合算して吸込損失を再評価します。横スクロールできます。
※この図は流量変化の整理で、吸込損失を新たに組み込んだ数値シミュレーションではありません。NPSHAの最終増減は各区間の損失と液位・液温等で決まります。
各ポンプへ向かう吸込枝管では、残る1台の流量増加によって損失が増える可能性があります。一方、吸込共通管には2台分の合計流量が流れているので、単機への切替後に総流量が減れば、その共通管の損失は小さくなります。両者を分けて計算します。
このため、切替後のNPSHAの増減は吸込配管の構成と運転点によって変わります。水位低下や高液温、ストレーナの詰まりが重なる条件も確認し、単機・複数台それぞれでメーカーの必要NPSHと所定の余裕を満たすかを照合します。
NPSHRは機器側が必要とするNPSHです。カタログの値がNPSH3を表す場合、キャビテーションによる揚程3%低下の試験基準に対応します。NPSHAがその値を超えても気泡が一切生じない保証にはならず、必要な余裕や運転範囲は対象機種の条件に従います。
吸い上げ高さだけを小さくして終えるのではなく、液面から入口までの損失と温度条件を一緒に確認します。計算の入口は流入水頭の計算方法、用語と基準の整理はNPSHの考え方と計算方法の記事で確かめてください。
ポンプの吐出側に逆止弁が必要
並列運転では、各台の吐出側で合流前に逆止弁を設け、他のポンプから停止中のポンプへ流れ込むことを防ぎます。合流後に一つだけ付けても、枝管どうしの回り込みは防げません。流れの向きと、停止した枝管を隔てる位置を配管図で確認します。
逆流すると停止ポンプが逆転するなど、通常の送水とは異なる状態になるおそれがあります。能力の違いや回転数制御がある場合も、共通圧力と各台の差圧を確認します。逆止弁は逆流を防ぐ部品であり、弱い側の吐出不足や締切運転を自動的に解決するものではありません。
また、逆止弁が閉じる際の急な流速変化は、水撃の検討にも関係します。停止時の大きな衝撃音を単に「弁が効いた証拠」と考えず、閉止特性と送水管路の条件を確認します。長い管路や高低差の大きい設備では、必要に応じて過渡解析も検討します。
回転数制御と台数制御を組み合わせる場合は、始動・停止の圧力条件、低需要時の最小流量、切替の頻度まで確認します。制御の概要はインバータ制御のメリットとデメリット、台数の切替はポンプの台数制御も参考になります。
図6:最大需要の2台運転だけでなく、単機・低需要・停止も照合する
メーカー性能曲線と系統の条件を組み合わせて確認する項目。表は横にスクロールできます。
| 運転状態 | 主な確認 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 2台・最大需要 | 合成曲線の交点、共通管損失、各台分担 | 全体流量を単機時の2倍と決める |
| 1台運転 | 残台の流量、軸動力、必要NPSH、枝管損失 | 台数減なら1台の負担も減ると考える |
| 低需要 | 最小流量、締切近傍、不安定領域、起動頻度 | 弱い側が回っていても吐出しない |
| 始動・停止 | 逆流防止、逆止弁閉止、水撃、制御切替 | 逆止弁だけで過渡問題が解消すると考える |
※作業時の操作順序は、対象設備の取扱説明書と管理された運転手順を優先します。
よくある質問
同じポンプを2台にすると流量は2倍ですか?
同じ揚程で読んだ合成曲線上の流量は2倍ですが、実際の運転点は配管抵抗との交点で決まります。流量が増えるほど必要揚程が上がる系統では、単機時の流量の2倍に届かないことがあります。各台の分担と全体流量を区別して計算してください。
並列では揚程は変わらないのですか?
性能曲線を作るとき、同じ揚程で流量を足すという意味であり、実運転の揚程が一定という意味ではありません。系統曲線に沿って流量が増えれば、運転点の揚程も変わります。本文の架空例では、単機時25mから2台時34mへ上がっています。
能力の違うポンプは一緒に使えますか?
設計上可能な場合はありますが、全需要範囲で各台の正流量、安定性、許容範囲の確認が必要です。共通ヘッダ圧力が弱い側の出せる圧力を超えると、逆止弁が開かず流量ゼロとなる場合があるため、機種名だけを見て組合せを決めないでください。
1台が止まれば、残る1台の負担も減りますか?
必ずしも減らず、残る1台の流量が、2台運転中の各台流量より増える場合があります。ポンプの動力特性によっては電動機の負荷も変わるため、単機運転点の軸動力と定格を確認します。吸込枝管の損失や必要NPSHも、その流量で再評価します。
並列化すれば省エネになりますか?
需要変動に合わせて適切な台数や回転数を選べる場合に、省エネにつながる可能性があります。実際の年間効果は、運転時間、各台の効率、配管損失、制御、補機も含めて比較します。ポンプを追加するだけで、常に使用電力が減るわけではありません。
まとめ
渦巻ポンプの並列運転は、同じ揚程で各台の流量を足し、合成曲線と抵抗曲線の交点から全体流量を求めます。合流後の配管、各台の締切や低流量、単機切替後の吸込条件、合流前の個別逆止弁を順に確認すると、増設後の問題を見つけやすくなります。
実機の検討では、必要流量を満たすかだけでなく、各台の許容流量、効率、動力、NPSH、始動停止時の変動も照合します。とくに1台停止後の残台流量と、吸込共通管・枝管の損失を分け、メーカーと設備条件に合った運転範囲を確認してください。
関連する選定条件として、ポンプの軸動力、真空ポンプの原理、液体の粘度とポンプの関係も参照できます。ほかの機種や用途との違いは、ポンプのカテゴリから確認してください。
出典
- KSB:Parallel operation(合成曲線、個別逆止弁、異なる締切揚程と安定性)
- KSB:System characteristic curve(系統曲線、損失水頭と流量の二乗関係の仮定)
- KSB:NPSH(設備側とポンプ側のNPSH、基準面、NPSH3)
- Grundfos:Pumps in parallel(共通吐出管、並列接続の基礎)
- Grundfos:SCALA1 twin pump configuration(製品例としての予備運転と補助運転、交互切替)
- 酉島製作所:CAM/CASカタログ(冊子2頁、常降性、流量に対する各性能曲線)
- 荏原製作所:水撃解析(始動停止、逆止弁のスラミングと過渡解析)
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