ポンプの流量と圧力の関係とは?吐出圧力・揚程の関係式と調整方法

工場のポンプ室に並ぶ渦巻ポンプと吐出し側の圧力計・フレキシブル継手・弁

ポンプの流量と圧力の関係とは、流量を増やすほど吐出圧力が下がり、弁を絞って流量を減らすほど吐出圧力が上がる関係です。工場で多く使われる渦巻ポンプは、この右下がりの性質を持っています。

実際にどの流量と圧力で落ち着くかは、ポンプの性能と配管の抵抗の釣り合いで決まるため、ポンプを選ぶときは、狙った圧力で必要な流量を確保できるかを確かめます。

この記事では、流量と圧力の関係、揚程と圧力の換算式、配管抵抗の関係式、流量と圧力の調整方法、ポンプ効率の順に整理します。

目次

ポンプの流量と圧力の関係

ポンプの流量と圧力の関係は、次のようなグラフで表せます。

流量(吐出し量)が増えるほど圧力(揚程)が下がるポンプの特性を表すグラフ

流量が増えればポンプの出口圧力は低下し、流量が減ればポンプの出口圧力は上昇するのは、ベルヌーイの式で説明できます。

このグラフはポンプ単体の性能(HQ曲線)で、配管につないだときにグラフのどの点で動くかは、後で見る配管の抵抗との交点で決まります。

図1:HQ曲線の上で流量を減らす・増やすと変わる値

渦巻ポンプでは、流量と吐出圧力は逆向きに動きます。

流量を減らす(左へ)
流量を増やす(右へ)
吐出圧力(揚程)
上がる。流量0のときが締切揚程
下がる
配管の損失
小さくなる
流量のおおむね2乗で大きくなる
軸動力・電流
小さくなる(渦巻ポンプの場合)
大きくなる
注意すること
締切運転による温度上昇、サージング
モーターの過負荷、キャビテーション

※軸流ポンプ・斜流ポンプでは、締切に近づくほど軸動力が大きくなり、動き方が逆になります(KSB)。

ベルヌーイの定理では次の式が成り立ちます。

v22 + pρ + gz = 一定(Constant)
v:配管内流速[m/s] p:圧力[Pa] ρ:密度[kg/m3] g:重力加速度[m/s2] z:鉛直方向の座標[m]

3つの項は、どれも液1kgあたりのエネルギー(J/kg)です。ポンプから水へ与えるエネルギーが一定なら、流量が増えれば圧力が低下し、流量が減れば圧力が上昇することが、式の上からも理解できます。

ただし、流速の項はそれほど大きくなく、流速2m/sでも、高さに直すと約0.2m(約0.002MPa)です。

HQ曲線で揚程が数m〜十数m下がる主な理由は、羽根車の性質にあり、後ろ向きに曲がった羽根では、理論上の揚程が流量とともに直線的に下がります。そこへ羽根との摩擦やはく離などの損失が、流量が増えるほど大きく加わり、その結果、実際の曲線は右下がりの弧になります(Purdue大学の講義資料)。

実際にはポンプは流量や圧力によってエネルギー効率が変わるため、ベルヌーイの式だけで流量と圧力を計算できません。実務では計算はせず、ポンプの性能曲線(HQ曲線)と照らし合わせながら選定します。

吐出し量とは

吐出し量(はきだしりょう)とは、ポンプが吐出し口から単位時間に送り出す液の体積です。性能曲線の横軸の「流量」は、この吐出し量を指します。

単位は m3/min、L/min、m3/h がよく使われ、カタログでは「吐出量」とも書かれますが、意味は同じです。

ミニマムフローの戻り配管がある設備では、ポンプの吐出し量と使用先に届く量が一致しないため、流量計がどこに付いているかも合わせて確かめます。

揚程と吐出圧力の換算(H=P/ρg)

ポンプのカタログでは、圧力の代わりに揚程(m)で性能を表し、揚程は、ポンプが液に与えるエネルギーを液柱の高さに直した値です。

ポンプの前後の圧力差と揚程は、次の式で換算します。

H = Pρ × g  P = ρ × g × H
H:揚程[m] P:ポンプ前後の圧力差[Pa] ρ:液の密度[kg/m3] g:重力加速度 9.8[m/s2]

水(ρ=1,000kg/m3)なら、揚程10mは 1,000×9.8×10=98,000Pa で、約0.1MPaです。逆に、圧力差0.3MPaは約30.6mの揚程に当たります。

図2:揚程と圧力の早見表

同じ揚程でも、液が重いほど圧力は大きくなります。

揚程
水(比重1.0)
比重1.2の液
10m
0.098MPa
0.118MPa
20m
0.196MPa
0.235MPa
30m
0.294MPa
0.353MPa
50m
0.490MPa
0.588MPa

※P=ρ×9.8×H で計算した圧力差です。水の密度は1,000kg/m3、比重1.2の液は1,200kg/m3としています。

水より重い液でも、カタログの揚程(m)はほぼ同じ値で読めるので、圧力計の値を揚程に直すときは、その液の密度で割ります。

吐出し側の圧力計の読みは、吸込み側の圧力に ρgH を足した値がおおよその目安です。厳密には、吸込み口と吐出し口の流速の差や、圧力計の取り付け高さの差も加わります。

吸込み側が大気圧より低くなる設備では、連成計で負圧も読みます。単位の換算はポンプの揚程と吐出圧力の関係でも扱っています。

配管抵抗と流量の関係式(運転点)

ベルヌーイの式に、ポンプが加える揚程 H と配管の損失 hL を入れると次の形になり、各項を g で割り、高さ(m)にそろえた式です。

z1 + p1ρg + v122g + H = z2 + p2ρg + v222g + hL
添字1:吸込み側の液面 添字2:送り先の液面 H:ポンプの全揚程[m] hL:配管の損失水頭[m]

開放タンクどうしなら、両側の液面の圧力は大気圧で、液面の流速もほぼ0です。式は「H=実揚程(z2−z1)+hL」となり、ポンプは高さと損失の分を受け持てばよいことが分かります。

損失 hL は、直管の摩擦と、弁・継手・ストレーナなどの局部抵抗の合計で、この損失は流量のおおむね2乗に比例するので、配管が求める揚程は次の式で表せます。

Hsys = Ha + k × Q2
Hsys:配管が求める揚程(抵抗曲線)[m] Ha:実揚程(密閉タンクなら送り先と吸込み元の圧力差も足す)[m] k:配管の抵抗の係数 Q:流量

2乗に比例するのは、右側の k×Q2(損失)の部分だけで、実揚程 Ha は流量に関係なく必要なので、抵抗曲線は Ha の高さから立ち上がります。

図3:流量と配管の損失

流量を半分にすると損失は4分の1、1.25倍にすると約1.56倍です。

流量50%
25%
流量75%
56%
流量100%
100%
流量125%
156%

※流量100%のときの損失を100%とした値です(損失=k×Q2)。実揚程を含む全揚程は、この割合では変わりません。

抵抗曲線とHQ曲線の交点が、実際にポンプが運転する点(運転点)で、ポンプが出す揚程と、配管が求める揚程が釣り合う流量で落ち着きます。

図4:HQ曲線と抵抗曲線の交点=運転点

弁で絞ると抵抗曲線が立ち上がり、運転点は左上へ動きます。

HQ曲線抵抗曲線弁で絞った後運転点絞った後の運転点実揚程流量 Q揚程 H

※説明用の模式図です。実揚程10m、400L/minで損失20mの仮の配管と、400L/minで約30mを出すポンプの組み合わせで描いています(運転点は約400L/min・約30m)。

仮の配管で数字を当てはめてみます。実揚程10m、400L/minのときの損失が20mなら、抵抗曲線は400L/minで30m、300L/minで約21m(10+20×0.752)を通ります。

この配管に、400L/minで約30mを出すポンプをつなぐと、運転点はほぼ400L/min・30mです。水なら30mは約0.29MPaで、吸込み側が大気圧なら吐出し側の圧力計もおよそこの値を指します(流速と計器の高さの差を除いた概算)。

この2乗の関係を逆から見ると「水圧と流量」の関係になり、決まった弁やノズルを通る流量は、前後の圧力差の平方根に比例します。

Q2Q1 = √ΔP2ΔP1
Q:流量 ΔP:弁・ノズルの前後の圧力差。添字1は元の状態、2は変えた後(出口の開き具合は同じとする)

圧力差を2倍にしても流量は約1.4倍(√2)にしかならず、流量を2倍にするには、圧力差が4倍要ります。

ポンプの流量と圧力を調整する方法

ポンプの流量と圧力を調整するには、ポンプの出口にグローブ弁などの絞り弁を設置し、その開度で流量と圧力を調整します。

弁を絞ると抵抗曲線が立ち上がり、運転点はHQ曲線に沿って左上へ動くため、流量は減り、ポンプ直後の吐出圧力は上がります。

このため、ポンプを設置する場合は、出口の圧力計と調整弁が必須になります。ポンプは機器自体が振動するため、入口と出口に、振動を吸収するフレキシブルチューブを設置することも重要です。

ポンプの吸込み側と吐出し側の圧力計、吐出し側の調整弁の配置図

ボールバルブとグローブバルブの使い分けは、ボールバルブとグローブバルブの使い分けの記事に記載しています。図面で計器と弁の位置を確かめるときは、P&ID(配管計装図)の読み方が役立ちます。

弁で絞るほかにも、流量と圧力を変える方法があり、同じ軸で並べると、違いは次のとおりです。

図5:流量と圧力を調整する3つの方法

余った揚程を弁で捨てるか、ポンプの出す揚程そのものを下げるかが分かれ目です。

吐出し弁で絞る流量:減る吐出圧力:上がる電力:あまり減らない注意:閉め切らない
回転数を変える流量:減る吐出圧力:下がる電力:大きく減る注意:実揚程より下げられない
バイパスで戻す流量:使用先へは減る吐出圧力:やや下がる電力:減らない注意:主に小流量の保護用

※回転数を80%にすると、流量80%・揚程64%・軸動力51.2%になります(相似則)。バイパスは戻した分もポンプが送るので、ポンプ自体の流量は増えます。

回転数で調整するには、インバータ制御を使います。モーターの回転数は極数と電源の周波数で決まり、その関係はモーターの極数と回転数で解説しています。

弁と回転数で電力の差が出る理由は、工場の省エネとエネルギー管理の基本とあわせて読むと整理しやすくなります。調整するときは、次の3点に注意します。

  • 流量は吐出し側の弁で調整し、吸込み側の弁では絞らない(キャビテーションの原因になる)
  • 吐出し弁を閉め切ったまま回し続けない(締切運転。ミニマムフローで対策する)
  • 弁を開けすぎない(流量が多すぎると過負荷になり、ポンプの電流値が上がる)

流量が増えると圧力が下がる右下がりの範囲で使えば、問題はありません。ただし、ごくまれに流量が増えると圧力も上がる状態になり、激しく振動することがあります。この現象をサージングといい、ポンプの圧力と流量の関係が重要な要素になるトラブルです。

関連記事:サージングとは?ポンプ・送風機で起こる現象と条件・対策、キャビテーションとの違い

ポンプ効率とは?

ポンプは、水などの流体に圧力を加えて遠くまで輸送するために使います。ポンプの効率とは、ポンプに供給した動力がどの程度水の圧力エネルギーに変換されたかを表す指標です。

供給したエネルギーが、すべて水の圧力エネルギーに変換されるのが理想です。しかし実際には、モーターでのエネルギー損失や、ポンプ内部での水とインペラとの摩擦損失などがあるため、すべては変換できません。

前の章の調整方法とも関わり、弁で絞った分の揚程は弁で熱になって消え、回転数を下げればポンプに入る軸動力そのものが減ります。

図6:電力が水の圧力になるまで

モーターとポンプの中で、段階ごとに損失が差し引かれます。

01電力モーターに入るエネルギー
02軸動力モーターの損失を引いた、軸を回す動力
03水動力羽根車の摩擦や漏れを引いた、液が受け取る動力

※ポンプ効率は 03÷02、モーター効率は 02÷01 です。水動力は ρgQH で計算します。

水動力とポンプ効率は、次の式で表せます。

Pw = ρ × g × Q × H  η = PwP
Pw:水動力[W] ρ:液の密度[kg/m3] g:重力加速度 9.8[m/s2] Q:吐出し量[m3/s] H:全揚程[m] P:軸動力[W] η:ポンプ効率(小数)

寺田ポンプ製作所 TM-545 のカタログ値(400L/min・全揚程30.2m・効率56.3%)で確かめます。水動力は約1.97kWで、軸動力は 1.97÷0.563≒3.50kW と、カタログの値と一致します。

ポンプの動力は大半が電力ですが、大容量の火力発電所のボイラ給水ポンプなどでは、モーターの代わりに蒸気タービンで回すこともあります(タービン駆動)。

どの使用ポイントでポンプ効率が最も高くなるかはポンプごとに固有の値で、性能曲線を見ればピークポイント(最高効率点)が分かります。モーター側の選び方は、モーターの種類と違いで整理しています。

関連記事:熱落差とは?断熱熱落差とタービン効率の公式・内部効率の計算

ポンプの流量と圧力のよくある質問

水圧を上げると流量は増えますか?

出口の弁やノズルの開き具合が同じなら増え、流量は圧力差の平方根に比例するので、圧力差を2倍にすると約1.4倍です。

一方、ポンプの吐出し弁を絞って吐出圧力を上げた場合は、流量は減ります。出口を変えずに圧力を上げたのか、出口を絞った結果として圧力が上がったのかで、向きが逆になります。

ベルヌーイの定理だけでポンプの流量は計算できますか?

できません。ポンプが加える揚程 H は流量によって変わるので、H の値は性能曲線から読みます。

損失を入れたベルヌーイの式で計算できるのは、配管側の抵抗曲線で、その抵抗曲線と HQ曲線の交点を求めると、流量と圧力が決まります。

吐出圧力が上がらない・急に下がるときは?

使用量が増えて運転点が右へ動いたほか、吸込み側の液不足、羽根車の摩耗、逆回転、配管の詰まりなどが考えられます。

調べ方はポンプの吐出圧力が低下する原因で、電流値・場所ごとの圧力・流量計の見方とあわせて整理しています。

まとめ

この記事のまとめ
  • ポンプは流量が上がれば吐出圧力が低下し、弁で絞って流量を減らせば上がる
  • 揚程と圧力は H=P/ρg で換算でき、水なら揚程10mで約0.1MPa
  • 配管の損失は流量のおおむね2乗に比例し、HQ曲線と抵抗曲線の交点が運転点になる
  • 流量と圧力は吐出し弁・回転数・バイパスで調整し、吸込み側の弁では絞らない
  • 圧力と流量の関係はベルヌーイの定理で理解できるが、実際の選定には性能曲線を用いる

ポンプについて理解するためには、圧力と流量についてしっかり理解しておく必要があり、ポンプを利用する際は、常にこの関係を頭に置いておきましょう。

軸の封じ方はメカニカルシールとグランドパッキンの違い、締切運転で液温が上がる理由はポンプのジュール熱の記事で説明しています。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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