ポンプの軸動力とは、液体を送るためにポンプの軸へ与える動力で、水動力(流量×必要差圧)をポンプ効率で割って求めます。流量100m³/h、必要差圧59kPa、効率70%の例では、必要な軸動力は約2.34kWです。
この値はモーターの機械出力を選ぶための基礎であり、モーターが電源から受け取る消費電力とは異なります。流量と差圧の求め方、単位換算、効率の使い方を順に確認し、最後にモーターの定格出力との比較を整理します。
ポンプの軸動力を計算する方法
計算の順番は、必要流量を決め、必要差圧を求め、両者を掛けて水動力を計算し、それをポンプ効率で割るという四段階です。先に液体へ与える動力を求めてから、ポンプ内部の損失を含む軸動力へ戻すと、効率を掛ける向きを間違えにくくなります。
図1:軸動力は、モーターからポンプへ渡る機械動力
電動機への電気入力、軸の動力、液体が受け取る水動力を区別します。
動力の位置を示す模式図で、実機の安全カバー等は省略しています。運転中に軸や継手へ接触する操作を示すものではありません。
ポンプの流量を求める
必要流量は、使用先ごとの消費量を調べ、同時に使う量や季節による変動を整理して決めます。最大値を単純に足し合わせるだけでは過大になる場合もあるため、通常時と最大時を分け、どの運転条件を満たす必要があるか確認します。
計算に使う流量は、対象ポンプを実際に通る量です。使用先へ送るほかに戻り配管や循環流がある構成では、使用先の消費量だけをポンプ流量とみなすと必要な動力を小さく見積もるため、系統図で流れを確認します。
運転条件を整理するときには、最大流量の条件と最大差圧の条件が同時に起こるかを確認します。異なる運転場面の最大値を組み合わせた計算だけでは実際の負荷を表さないので、成立する条件の組み合わせごとに比較します。
水動力をWで求める場合には、流量を1秒あたりの体積であるm³/sにそろえるため、m³/hの数値を3600で割ります。今回の100m³/hは約0.0278m³/sとなり、時間単位を直さず式へ入れると、計算結果が3600倍ずれます。
同じ100m³/hは約1.667m³/minでもありますが、この値を毎秒の流量を要求する式へ入れてはいけません。公式の係数がどの時間単位を含むかを確かめ、流量計の表示単位から計算式の単位へ一度そろえておきます。
流量計の位置も、計算に使う流量を決める手掛かりになります。戻り配管の分岐より下流にある計器は使用先へ送る量を示すため、その表示だけを使わず、ポンプを通過する全量との対応を系統図に書き込みます。
複数台で並列運転する場合は、設備全体の流量とポンプ一台あたりの流量を分けて扱います。同じ機種でも配管や制御条件によって分担が変わるため、合計流量を台数で等分した値が実際の運転点と一致するか確認します。
ポンプの必要差圧を求める
必要差圧は、液体を持ち上げる高さだけでなく、送り先の圧力条件や配管・弁・機器の圧力損失を含めて求めます。次の例では、吸込槽の液面がポンプより5m上、吐出先が10m上で、吸込側と吐出側の損失を各5kPaとします。
図2:吸込側の押込みを引き、吐出側の損失を足す
両端が大気開放なら、必要な圧力上昇は高さの差5m分と、配管損失の合計10kPaです。
水の密度997kg/m³、重力加速度9.806m/s²を仮定。速度水頭等を省いた計算例です。実際の全揚程は速度・高さ・両端圧力を含めて評価します。
吸込側は液面からの水頭約48.9kPaが加わりますが、ポンプへ届くまでに5kPa失うため、吸込圧力は約43.9kPaです。吐出側では高さ10m分の約97.8kPaに損失5kPaを加えるので、必要な吐出圧力は約102.8kPaとなります。
この差圧は例の条件で求めた値なので、実際の設計では液位変動や配管抵抗の変化を確認して、必要な余裕を決めます。やみくもに安全率を重ねず、ポンプの流量と圧力の関係を踏まえて、通常時と最大流量時を比較してください。
ポンプ入口と出口の圧力計の差が、そのまま全揚程に対応するとは限らず、測定位置の高さや流速の差の補正が必要です。配管の抵抗を見積もる際は、流速が速すぎる配管の圧力損失にも注意します。
上の吸込・吐出圧力は、大気圧をゼロとするゲージ圧です。一般に動力計算に使う差圧は全揚程に相当する圧力上昇であり、静圧差だけを使えるのは、ポンプ出入口の高さと速度の差を無視できる場合です。
吸込槽と吐出槽の両方が大気開放なら、両端液面の圧力は同じなので、圧力差の項は相殺されます。密閉した加圧槽へ送る場合や、吸込槽にも圧力がある場合には、その圧力条件を高さと配管損失に加えて評価します。
高さの基準は全て同じ位置にそろえます。今回の例でポンプから吐出先まで10mあるからといって、そのまま10m分だけを必要揚程にせず、吸込側の液面が5m高いことによる押込みも考慮します。
液位が変わる設備では、吸込槽が低く吐出槽が高い条件など、必要揚程が大きくなる組み合わせも調べます。図の数値は1つの液位に対する例なので、運転範囲内で液位が動く場合は、その端点も設計条件として記録します。
配管損失は一定の設備定数ではなく、流量や配管条件によって変わります。別の流量へ計算を展開するときには、例の各5kPaを固定したまま使うのではなく、その流量に対応した損失へ見直す必要があります。
既設設備の計算では、設計図の高さだけでなく、圧力計を取り付けた位置と流量を測った時刻も記録します。流量が変動している最中の吐出圧力と、別の時刻の吸込圧力を引き合わせても、一つの運転状態を表す差圧にはなりません。
ポンプ出入口の圧力を測って全揚程を求める方法と、両端の槽から必要揚程を積み上げる方法は区別します。出入口の実測差圧から評価した値へ、その運転で既に含まれている系統の配管損失を再び加えると二重計上になります。
流量と差圧をかける
流量Qと必要差圧ΔPを掛けると、液体へ与える単位時間あたりのエネルギーである水動力が求まります。単位はWで、仕事そのものの量を表すJとは異なり、1秒あたりにどれだけ仕事をするかを表す動力です。
図3:圧力×体積流量の単位がWになる理由
圧力は面積あたりの力であり、押し進める体積と組み合わせると、単位時間あたりの仕事になります。
単位をそろえると、流量はm³/s、圧力差はPaなので、m²が約分されてN·m/sが残ることが分かります。通風機でも体積流量と圧力上昇の積で流体動力を概算できますが、圧力の種類や密度変化を無視できる条件かを確認します。
水動力の「水」は水だけに使えるという意味ではなく、ここでは液体へ与える動力を指します。差圧をPa、流量をm³/sでそろえた積はWになるので、密度をどこで使って差圧や揚程を求めたかを追うと式の関係を理解できます。
例の59kPaは大気圧からの吐出圧力ではなく、吸込側を考慮したポンプの必要な圧力上昇です。吐出圧力102.8kPaをそのまま流量へ掛けると、吸込側から与えられている圧力までポンプが作るものとして計算してしまいます。
途中の数値は十分な桁数を保ち、最後の答えで丸めると、別の計算書とも照合しやすくなります。この記事の約59kPaや約1.64kWは説明のために丸めた値なので、小数点以下の差だけを性能差として評価しないでください。
ポンプ効率で割る
ポンプ内部には流れや機械部分の損失があるため、液体へ1.64kWを与えるには、それより大きい動力を軸へ入れる必要があります。ポンプ効率を70%と仮定すると、計算には70ではなく0.7を使い、水動力をこの値で割ります。
図4:効率70%なら、軸から入れた動力の70%が水動力になる
水動力を求める向きでは効率を掛け、必要な軸動力へ戻す向きでは効率で割ります。
動力比を表す模式図で、数値は丸めています。損失に電動機の損失は含めません。
ポンプ効率は機種だけで決まる固定値ではなく、流量や運転条件によって変わるため、選ぶ運転点の値を使います。概算段階で仮の効率を使った場合も、最終的にはポンプの性能曲線と運転点から軸動力と合わせて確認します。
同じ水動力1.64kWでも、仮にポンプ効率60%なら軸動力は約2.73kW、80%なら約2.05kWです。これは効率の影響を見る説明例で、同じポンプで自由にその効率を選べるという意味ではありません。
性能曲線には、流量に応じた揚程、効率、軸動力などが示されます。計算した1点が成立するかだけでなく、使う流量範囲で効率と軸動力がどう変わるかを読み、メーカーの選定結果と照合します。
性能曲線の効率を採用するときの注意
カタログに載る最高効率は、そのポンプの全ての流量で得られる値ではありません。必要流量で揚程曲線を読み、その点に対応する効率を採用することで、最高効率だけを使った過小な動力見積りを避けられます。
性能曲線を比べるときには、同じ型式名でも回転数や羽根車径が違えば条件が変わることに注意します。採用した曲線の資料番号と条件を残し、選定書の効率や軸動力がどの仕様に対応するかを後から追えるようにします。
軸動力の計算式まとめ
ここまでの計算を一つにまとめると、差圧を使う式と全揚程を使う式の二通りで軸動力を表せます。どちらも同じ関係を表しますが、流量を毎秒で使うか毎分で使うか、圧力をPaで使うかkPaで使うかで係数が変わります。
図5:差圧式と全揚程式では、単位の組合せを変えない
効率ηは小数で入力し、計算結果の単位をWかkWのどちらにするかを先に決めます。
全揚程の式では密度を使うため、水以外の液体は比重によって動力が変わりますが、差圧の式ではその圧力差に密度の影響が含まれています。同じ差圧式へさらに比重を掛けると二重に補正してしまうので、どちらの式を使っているかを確認します。
比重の影響を比べる際には、何を同じ条件に保つかを決めます。同じ流量・揚程・効率なら密度が大きいほど軸動力は大きくなりますが、同じ流量・差圧・効率を固定した比較では、式へ別に密度を掛ける必要はありません。
計算書には、効率の数値だけでなく、その値を採用した運転点も残します。密度、流量、揚程を変えた後に以前の効率だけを使い続けると、性能曲線と計算条件が対応しなくなるため、変更条件をまとめて見直します。
例えば圧力差で計算した後に全揚程の式で照合するなら、密度と重力加速度を同じ値にそろえます。係数0.163は丸めを含む実用式なので、厳密な照合では係数にまとめる前の基本式へ戻すと、差の理由を確認できます。
モーター出力の選び方
モーターは、必要軸動力を満たす定格出力のものを選びますが、一つの運転点の計算結果だけで最終決定することはできません。使用する流量範囲での最大軸動力、起動時の条件、周囲温度やメーカーの余裕基準などを合わせて照合します。
図6:2.34kWに対し、2.2kWは不足、3.7kWは候補
標準出力の例を比較したもので、3.7kWを無条件に選定できるという意味ではありません。
必要軸動力の概算:2.34kW
出力候補:2.2kW(計算値未満)
出力候補:3.7kW(追加条件を確認)
市販モーター・ポンプの出力には0.75、1.5、2.2、3.7、5.5kWなどの例があります。採用機種の仕様表で確認します。
定格出力3.7kWのモーターを選んでも、常に3.7kWの電力を消費するという意味ではなく、実際の負荷と電動機効率が関係します。軸へ必要な機械動力と電源側の消費電力を分けると、設備の容量検討と運転費の見積りを混同せずに済みます。
直結駆動で必要軸動力を2.34kW、電動機効率を仮に90%とすると、電気入力の概算は2.60kWです。この90%は説明用の仮定であり、実機では採用するモーターと負荷率に対応する効率を使います。
ポンプ効率70%と電動機効率90%を続けて考えると、電気入力から水動力までの効率は63%です。二つの効率を足し合わせたり、ポンプ効率だけで電気入力まで求めたりしないようにします。
ベルトや減速機などを介して駆動する場合には、ポンプ軸で必要な動力とモーター軸の出力の間にも損失があります。今回の直結の例と同一視せず、どの軸の動力を表しているかを定め、必要な伝達効率を含めます。
軸動力のkWから配線や保護機器を直接選ぶことはできません。電源電圧、相数、電流、始動方式などの電気条件も関係するため、機械出力の選定と電源側の設計を分け、電動機の仕様に基づいて確認します。
余裕を取る目的は、根拠のない大きなモーターへ置き換えることではありません。どの運転点や液体条件が最大の軸動力を必要とするかを先に確認し、そこへ適用するメーカーの余裕基準と定格条件を明らかにします。
運転範囲と余裕を選定書に残す
メーカーへ選定を依頼するときは、通常時と最大時について、流量・揚程・液体条件を一組ずつ示します。最大流量だけを渡すより、どの範囲で動力を確認すべきかが伝わり、設計担当とメーカーの想定のずれを減らせます。
吐出弁の開度や配管の構成が変わる設備では、必要な流量範囲に対応する軸動力曲線を確かめます。弁を開くと常に動力が増える、絞ると必ず減るとは一律に決めず、対象のポンプが示す曲線で最大負荷を探します。
流量を多めに決め、揚程にも余裕を加えたうえで、さらに動力へ同じ意味の余裕を重ねると過大選定につながります。余裕は液位変動や将来の増設などの根拠と対応させ、計算書のどの条件に織り込んだかを明記します。
大きいモーターに換えただけでは、ポンプが必要な流量や揚程を出せるようになるとは限りません。同じ回転数と羽根車のままならポンプ側の性能曲線が基礎となるため、動力不足とポンプ能力不足を分けて検討します。
省エネを比較する際には、カタログ上の最高効率に加え、普段どの流量で何時間使うかを整理します。荏原製作所も過大な水量・圧力の見直しを挙げており、必要な性能に運転を合わせることが検討の出発点になります。
よくある質問
計算値と実際の消費電力を比較するときは?
流量・差圧・液体条件を、電力を測った運転状態にそろえることが先決です。設計上の最大条件で計算した軸動力と、部分負荷で運転するモーターの電力を直接比較して、差を全て損失や劣化と判断しないようにします。
比較する動力の境界もそろえます。ポンプ軸の計算値に対して、電動機やインバータを含む電源側の測定値を使う場合には、その間の損失が含まれるため、何を含む効率で評価したかを記録します。
電動機の銘板にある定格出力は、運転中の電力を実測した値とは区別して扱います。水動力を銘板の定格出力で割っても、そのときの実際の軸出力を使っていないため、運転中のポンプ単体の効率は求められません。
傾向を比べる記録には、流量・吸込圧力・吐出圧力に加え、液位と回転数も同じ時刻で残すと役立ちます。前回と今回で条件が変わった項目を先に探すことで、運転点の移動による電力差を、機器の劣化だけに結び付けずに済みます。
差圧が小さい運転では軸動力もゼロに近づきますか?
流量や効率も同時に変わるため、差圧だけで判断できません。特に運転範囲の端で一定の効率を仮定したまま計算を延長せず、実際の軸動力曲線を確認し、締切運転などの可否もメーカーの運転条件に従います。
軸動力を満たせばポンプ選定は完了ですか?
軸動力の確認だけでは、必要な流量・揚程を満たすことや、吸込条件が適切なことまで保証できません。液体温度や性状、吸込側の条件なども含めてポンプを選び、動力計算はその中の一つの確認項目として扱います。
流量と揚程が満たせる候補でも、メーカーが示す許容運転範囲や必要な吸込条件を別に照合します。効率のよい点だけを目標にして使用条件を外さず、通常運転から想定する端点まで、選定書上で成立することを確認します。
水動力と軸動力の違いは?
水動力は液体が受け取る動力、軸動力はその水動力を生むためにポンプの軸へ与える動力で、ポンプ効率を介して対応します。さらに電動機の電気入力を求める場合は、直結駆動なら軸動力を電動機効率で割り、必要に応じて伝達部分の損失も含めます。
水以外の液体ではどうする?
差圧を使う基本式はそのまま使えますが、揚程から求める場合は液体の密度または比重を反映します。粘度が水より高い液体では性能や効率の補正が必要になる場合があるため、水の性能曲線をそのまま使わずメーカーに確認します。
特に温度が変わる液体では、密度だけでなく粘度の条件もそろえてメーカーへ伝えます。比重を掛けるだけで補正が終わると考えず、必要流量と全揚程を満たす運転点を改めて求め、その点の効率で軸動力を評価します。
まとめ
- 必要流量を、使用先と運転条件から決める
- 必要差圧を、高さ・圧力条件・配管損失から求める
- 流量と差圧の積が水動力で、単位はW
- 水動力をポンプ効率で割ると軸動力になる
- モーター選定は全運転範囲の軸動力と仕様を確認する
ポンプの動力計算は、必要な流体動力を求めてから機械の損失を含めるという考え方で、低圧の通風機の概算にも応用できます。運転費を考えるときは負荷変動と電動機効率まで確認し、工場の省エネの検討につなげます。
出典
出典・参考資料(4件)を開く出典・参考資料を閉じる
- KSB「Characteristic curve」:効率・軸動力・必要吸込条件の流量依存性
- KSB「Head」:ポンプ全揚程と系統揚程の区別
- KSB「Viscosity」:粘度による流量・揚程・効率の補正
- 荏原製作所「ポンプの省エネ」:過大な水量・圧力の見直しと必要性能に合わせた運転
- KSB「Power input」:ポンプ軸入力と運転範囲の最大動力
- KSB「Efficiency」:ポンプ効率と電動機を含む総合効率
- KSB「Centrifugal pump design」:軸動力・必要駆動出力・全揚程・粘性液体の扱い
- BIPM「SI Brochure」:Pa、N、J、Wの単位
- 荏原製作所「エバラポンプハンドブック」:製品に採用される電動機出力の例
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