除害装置とは?半導体工場の排ガス処理の仕組み・方式比較(燃焼式・プラズマ式・触媒式)と国内メーカー

半導体工場のサブファブに並ぶ除害装置と排気配管

除害装置は、半導体の製造装置から出る排ガスを、工場の排気ダクトへ流す前に無害化する設備です。毒性や可燃性をもつガスを安全な状態に変え、温室効果の大きいフッ素系ガスを分解してから外へ出します。

工場全体の排気は屋上の洗浄設備でもまとめて処理しますが、半導体工場では製造装置の1台1台に、この小型の処理設備がつながっています。装置ごとに使うガスがまったく違うため、発生源の近くで処理するのが基本です。

この記事では、除害装置とは何かを、処理するガスの種類、PFC(パーフルオロカーボン類)が除害なしでは減らせない理由から整理します。続けて、主な処理方式、工場内での組み合わせ方、導入と運用のポイント、国内の主なメーカーを順に見ていきます。

先に要点:除害装置とは
  • 除害装置(アベートメント、ローカルスクラバー)は、半導体の製造装置から出る排ガスを、工場の排気ダクトへ流す前に無害化する設備。製造装置ごとに設置する
  • 処理するのは、毒性・可燃性のガス(モノシラン・ホスフィンなど)、腐食性のハロゲン系ガス、温室効果の大きいPFC等ガス(CF4・SF6・NF3など)、アンモニア・有機系の4分類
  • 主な方式は燃焼式、電気加熱式・プラズマ式、触媒式、湿式・乾式。ガスの種類と量に合わせて組み合わせる
  • PFCは装置で反応しきらずに多くが排気に出るため、除害装置での分解が排出削減の要になる
目次

半導体工場の除害装置とは

半導体工場の建屋脇に並ぶ排気ダクトとスクラバー塔

除害装置とは、半導体の製造装置から出る排ガスを、工場の排気系へ流す前に無害化する設備です。英語ではアベートメント(abatement)と呼ばれ、国内ではスクラバーや排ガス処理装置という呼び名も使われます。

半導体の前工程では、ウェーハに薄い膜をつける成膜、不要な部分を削るエッチング、装置内部の洗浄などで、多種類の特殊なガスを使います。

こうしたガスは装置の中ですべて反応するわけではなく、使われなかった分や反応でできた副生成物が、真空ポンプを通って排気されます。

排気の中身は装置や工程によってまったく異なります。そのため、工場全体の排気をまとめて処理するだけでは足りず、装置ごとに専用の除害装置を置き、発生源の近くで処理するのが基本的な考え方です。

図1:半導体工場の排気の流れと除害装置の位置

除害装置は、製造装置と工場の排気ダクトの間に入る「発生源での処理」です。

製造装置(プロセスチャンバー)成膜・エッチング・チャンバー洗浄などで特殊ガスを使う
未反応ガス・副生成物
真空ポンプチャンバー内のガスを引き出す。窒素で希釈されて排出される
排気
除害装置(ローカルスクラバー)装置ごとに設置。分解・酸化・吸収などで毒性ガスやPFCを処理
処理済みの排気
酸系排気フッ化水素などの酸性成分
アルカリ系排気アンモニアなど
一般・有機系排気熱排気や溶剤系
工場の排気ダクト
セントラルスクラバー・排気塔屋上などで排気をまとめて洗浄し、大気へ放出

※排気系統の分け方や名称は工場によって異なります。図は一般的な構成の例です。

除害装置は、製造装置が置かれるクリーンルームの床下や下階、いわゆるサブファブと呼ばれる空間に設置されることが多くあります。

製造装置の台数に合わせて多数が並ぶため、半導体工場の設備のなかでは目立たないものの、止まれば製造装置も止めざるを得ない重要なユーティリティ設備です。

処理を終えた排気は、成分に応じて酸系、アルカリ系などのダクトへ分けて送られ、屋上のセントラルスクラバーで改めて洗浄されてから大気へ出ていきます。

除害装置が最初の関門、セントラルスクラバーが最後の仕上げ、という二段構えだと考えると分かりやすいでしょう。

なお、成膜やエッチングがウェーハ上で何をしているのかは、半導体製造の仕組みと基本原理で工程ごとに整理しています。どの工程でどの装置・ガスを使うかは、半導体の前工程の流れで8つの工程に分けて解説しています。

除害装置が処理するガス

除害装置が扱うガスは、危険の種類によって大きく4つに分けられます。どの分類のガスをどれだけ流すかで、選ぶべき方式が変わってきます。

図2:除害装置が処理するガスの4分類

「人と設備への危険」と「地球温暖化への影響」の両方を抑えるのが除害装置の役割です。

毒性・可燃性のガスモノシラン、ホスフィン、アルシン、ジボランなど。成膜やドーピングで使う。漏れれば中毒や発火の危険
腐食性のハロゲン系ガス塩素系・フッ素系のエッチングガスと、処理で生じるフッ化水素など。配管や設備を傷める
温室効果の大きいPFC等ガスCF4、C2F6、c-C4F8、SF6、NF3、CHF3など。エッチングとチャンバー洗浄で使う
アンモニア・有機系成膜で使うアンモニアや、IPAなどの有機溶剤(VOC)。湿式や触媒で処理することが多い

※1つのガスが複数の分類にまたがることもあります(例:NF3は温室効果ガスであり、毒性もある)。

毒性・可燃性の特殊高圧ガス

成膜やドーピング(不純物を入れて電気的な性質を変える工程)に使うガスには、ごく低い濃度でも人体に危険なものが含まれます。

高圧ガス保安法では、次の7種類を「特殊高圧ガス」と定め、少量の貯蔵でも特定高圧ガス消費者として届出の対象になり得るなど、特別な保安を求めています。

  • モノシラン
  • ホスフィン
  • アルシン
  • ジボラン
  • セレン化水素
  • モノゲルマン
  • ジシラン

モノシランは空気に触れると自然発火する性質があり、アルシンやホスフィンは強い毒性をもちます。

除害装置は、こうしたガスを燃焼や酸化で分解したり、薬剤に吸着させたりして、排気ダクトに入る前に危険のない状態にします。安全のための設備としての役割が、除害装置のもともとの出発点です。

温室効果の大きいPFC等ガス

もう一つの大きな対象が、フッ素を含む温室効果ガスです。半導体業界ではCF4、C2F6、C3F8、c-C4F8、CHF3、SF6、NF3などをまとめて「PFC等ガス」と呼ぶことがあります。

これらは不燃性で化学的に安定しているため扱いやすく、エッチングやCVD(化学気相成長)装置の洗浄に欠かせません。

一方で、その安定性ゆえに大気中で長く残り、同じ重さのCO2と比べて数千倍から2万倍を超える温室効果をもちます。京都議定書でもHFC、SF6とともに排出削減の対象に指定されました。

図3:半導体で使う主なフッ素系ガスの地球温暖化係数

CO2を1としたときの温室効果の大きさ(100年値)。最も小さいCF4でも6,000倍を超えます。

SF623,500
NF316,100
CHF3(HFC-23)12,400
C2F611,100
c-C4F89,540
C3F88,900
CF46,630

※環境省「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」の地球温暖化係数(IPCC第5次評価報告書の値)。

工場の温室効果ガスというとボイラーや電力由来のCO2に目が向きがちですが、半導体工場ではこうしたプロセスガスの排出も無視できない量になります。

排出量取引の対象になる企業にとっては、GX-ETSの対象企業と対応手順とあわせて考えておきたいテーマです。

PFCはなぜ除害装置なしでは減らせないのか

PFC等ガスの排出が問題になるのは、装置に流したガスの多くが反応しないまま排気に出てしまうからです。環境省の排出量算定方法でも、排出の大部分はエッチングや洗浄の工程でガスの使用効率が低いことから生じると説明されています。

国の温室効果ガス排出量の算定では、IPCCのガイドラインにある標準値を使います。ガスの購入量に「装置へ供給される割合」「反応で消費されない割合」「除害装置で処理されない割合」を掛けて排出量を出しています。

この式に標準値を当てはめると、除害装置がどれだけ効くかが見えてきます。

図4:CF4を100使ったとき、どれだけ大気へ出るか

CF4は反応で消費される割合が約1割しかなく、除害装置の有無で排出量が10倍変わります。

購入量100ボンベで購入したCF4
装置へ供給90プロセス供給率90%。残りはボンベ内の残ガス
反応せず排気へ81反応消費率は10%。9割が未反応のまま出る
除害装置あり8.1除害効率90%で処理した後の排出量
除害装置がなければ、81がそのまま大気へ。除害装置で処理すると8.1まで下がる。

※2006年IPCCガイドラインの標準値(反応消費率・除害効率)と、国の算定に用いるプロセス供給率による試算。工程で副生するCF4は含めていません。実際の値は装置や工程で異なります。

同じ標準値で見ると、反応消費率はガスによって大きく違います。

  • CF4:10%
  • C2F6:40%
  • SF6やNF3:80%
  • c-C4F8:90%

つまりCF4のような反応しにくいガスほど、除害装置に頼る度合いが大きくなります。

しかもCF4は、炭素1つとフッ素4つが強く結びついた、PFCのなかでも最も分解しにくいガスです。

環境省のPFC破壊処理ガイドラインも、CF4はフロン類の破壊処理と同じ条件だけでは十分に分解できない可能性があるとしています。そのうえで、製造ラインの除害設備による処理が一般的だと述べています。

さらに、C2F6やc-C4F8など別のガスを使った場合でも、プラズマ中の反応でCF4が副生成物として生まれます。使うガスを変えるだけではCF4の排出を完全には消せないため、分解力の高い除害装置が必要になるわけです。

除害装置以外の削減策

国内の排出量は、2000年代以降に業界団体の自主行動計画のもとで除害装置の設置が進んだことで減少してきました。

あわせて、温暖化係数の大きいC2F6から、C3F8やc-C4F8のような係数が小さく反応しやすいガスへの切り替えも進められています。

世界の半導体業界団体が集まる世界半導体会議(WSC)も、1999年にPFC排出を2010年までに基準年比で10%以上減らす目標を掲げました。2004年の共同声明でも、その取り組みを改めて確認しています。

除害装置の設置、ガスの切り替え、プロセス条件の最適化を組み合わせるのが、業界の基本的な打ち手です。

なお、NF3は温室効果ガスであると同時に毒性もあるため、国内では各社が安全上の理由からも除害装置を設置しています。温暖化対策と安全対策が、同じ設備で両立している例といえます。

除害装置の主な処理方式

除害装置の上部に接続されたステンレスの排ガス入口配管

除害装置の処理方式は、ガスを熱やエネルギーで分解する方式と、液体や薬剤に取り込む方式に大きく分かれます。代表的なのは燃焼式、電気加熱式、プラズマ式、触媒式、湿式、乾式の6つです。

図5:除害装置の主な処理方式の比較

分解する方式は難分解性のPFCに、取り込む方式は水溶性・反応性のガスに向きます。

仕組みと得意なガス
注意点
燃焼式
燃料と空気のバーナーで高温にして分解・酸化。シランなど可燃性ガスやPFCをまとめて処理できる
燃料が必要。NOxやCOの発生を抑える設計が求められる
電気加熱式
電気ヒーターで加熱して酸化・分解。燃料を使わない
分解できる温度に限りがあり、CF4の扱いは機種によって異なる
プラズマ式
プラズマの高いエネルギーでガスを解離。CF4やSF6など難分解性のPFCに強い
電力を多く使う。電極など消耗部品の交換が必要
触媒式
触媒の上で加熱し、比較的低い温度でPFCを分解。燃焼を伴わない
触媒の劣化や被毒に注意。粉体が多い排気には前処理が要る
湿式
水やアルカリ液のシャワーに通して吸収。フッ化水素、塩素系、アンモニアなど
PFCはほとんど水に溶けず処理できない。排水処理が必要
乾式
薬剤(吸着剤)を詰めた筒に通して吸着・反応。CVDの毒性ガスなど
薬剤の交換が必要。大流量やPFCには向かない

※実際の装置は、分解する方式と湿式を組み合わせた複合型が多く使われます。

燃焼式

燃焼式は、都市ガスなどの燃料をバーナーで燃やし、その炎と高温の中に排ガスを通して分解する方式です。可燃性ガスからPFCまで、幅広いガスをまとめて処理できるのが強みで、大流量の水素や塩素を同時に処理できる機種もあります。

一方で燃料を使う分、処理そのものがCO2を出し、燃焼条件によってはNOx(窒素酸化物)やCO(一酸化炭素)が生じます。各メーカーは、処理するガスの量に応じて燃料を絞る運転や、低NOxのバーナー設計で対策しています。

電気加熱式・プラズマ式

電気加熱式は、燃料の代わりに電気ヒーターで排ガスを加熱して酸化・分解します。燃料配管が要らず、燃焼に伴う排ガスも出ないため、化石燃料を使わない除害装置として位置づけるメーカーもあります。

プラズマ式は、放電で生み出したプラズマの高いエネルギーでガスの結合を断ち切る方式です。熱だけでは分解しにくいCF4やSF6にも対応でき、ドライエッチングの排ガスなど難分解性のPFCを多く含む用途で使われます。

触媒式

触媒式は、触媒の働きで分解反応を起こしやすくし、燃焼よりも低い温度でPFCを分解する方式です。燃焼を伴わないため排ガスや排水の量を抑えやすく、燃料も不要です。

ただし、シランの酸化でできる粉体や一部の成分は触媒の働きを弱めます。そのため前段で粉体を取り除き、後段で分解生成物を洗い流す構成と組み合わせて使うのが一般的です。

湿式・乾式

湿式は、排ガスを水やアルカリ性の液体のシャワーに通し、水に溶けやすい成分を吸収させる方式です。エッチングで出る塩素系ガスやフッ化水素、成膜で使うアンモニアなどに向いています。構造が比較的シンプルで、省スペースで導入しやすいのが利点です。

乾式は、専用の薬剤を詰めた容器に排ガスを通して、化学反応や吸着で有害成分を固定する方式です。

水も燃料も使わないため、研究開発ラインや実験室など用役が限られる場所でも使いやすい方式です。一方で薬剤が飽和したら交換が必要で、流量の大きいラインでは交換頻度が課題になります。PFCはどちらの方式でもほとんど処理できません。

複合型と工場内での組み合わせ

実際の除害装置は、1つの方式だけで完結することはあまりありません。分解する工程と洗い流す工程を1台の中で組み合わせた複合型が主流で、代表的なのが「燃焼・加熱・プラズマで分解し、湿式で洗う」二段構成です。

図6:複合型除害装置の処理の流れ

分解でできたフッ化水素や粉体を、後段の湿式で取り除くのが基本の形です。

1台の除害装置の中
01入口・前処理排ガスを受け入れ、必要に応じて粉体を除去。複数の配管を1台で受けることもある
02分解・酸化燃焼・電気加熱・プラズマ・触媒で分解。PFCはフッ化水素などに、シランは二酸化ケイ素の粉体に変わる
03冷却・洗浄水やアルカリ液でフッ化水素などの酸性成分と粉体を洗い落とす
除害装置の外
04排気ダクト処理済みの排気を酸系などのダクトへ送る
05排水処理フッ素を含む排水は、工場の排水処理設備で処理する
06粉体の回収装置内にたまった粉体は、定期保守で回収・廃棄する

※構成はメーカーや機種によって異なります。燃焼式+湿式、触媒式+湿式などの組み合わせがあります。

分解の段階では、PFCに含まれていたフッ素がフッ化水素などに変わります。フッ化水素は強い腐食性と毒性をもつため、そのまま排気へ流すわけにはいきません。分解したら終わりではなく、分解で生まれた物質を確実に捕まえるまでが除害装置の仕事です。

シランを含む成膜の排ガスでは、燃焼や加熱で酸化すると二酸化ケイ素の白い粉体ができます。この粉体を湿式部で洗い落とす構成が一般的で、粉体の量が多い工程ほど、配管や装置内部の詰まり対策が重要になります。

装置ごとに方式を選ぶのが基本

同じ工場の中でも、成膜装置、エッチング装置、洗浄工程では排ガスの中身が異なります。方式の組み合わせの例は次のとおりです。

  • 成膜装置:粉体に強い燃焼式や電気加熱式と湿式の組み合わせ
  • エッチング装置:PFCに強いプラズマ式や燃焼式
  • アンモニアを多く使う工程:湿式

このように製造装置ごとに除害装置の方式を選び分けるのが一般的です。

導入と運用で押さえたいポイント

除害装置の側面パネルを開けて粉体を回収する保全担当者

除害装置は製造装置の付帯設備として発注されることが多く、製造装置の仕様が決まってから検討が始まります。ただ、選定を誤ると処理性能だけでなく、用役の手配や保守の負担に長く影響が残ります。

検討の際には次の4つの観点で整理しておくと抜けが減ります。

図7:除害装置を選ぶ・運用するときの4つの観点

処理性能だけで選ぶと、用役や保守で後から苦労します。

対象ガスと流量どのガスが、どれだけ、同時に流れるか。洗浄時の大流量や、PFCの種類(特にCF4の有無)を確認する
用役(ユーティリティ)燃料ガス、電力、冷却水、排水、窒素。工場側で供給できるかと、ランニングコストを見積もる
保守と稼働率粉体の詰まり、腐食、消耗部品の交換周期。製造装置の定期保全と止める時期をそろえられるか
安全とインターロック除害装置が止まったときに製造装置のガス供給を止める連動。停電時や異常時の動きを決めておく

対象ガスと用役を先に固める

最初に確認したいのは、製造装置から出るガスの種類と最大流量です。特にCF4を処理対象に含めるかどうかで、選べる方式が大きく絞られます。CF4を処理対象外とする機種もあるため、仕様書の対象ガスの書き方には注意が必要です。

次に、方式ごとに必要な用役を工場側で用意できるかを確認します。

  • 燃焼式:燃料ガスの配管
  • 湿式:給水と排水処理の能力
  • 電気加熱式・プラズマ式:電力容量

台数が多い工場では、用役の合計が建屋の設計にまで影響します。

保守は「粉体」と「腐食」との戦い

運用で最も手間がかかるのは、装置内にたまる粉体と、フッ化水素などによる腐食への対応です。粉体が配管や反応部に堆積すると処理性能が落ち、放置すれば詰まりで停止に至ります。

そのため多くの工場では、一定期間ごとに装置を止めて清掃や部品交換を行う時間基準の保全を組んでいます。

圧力や温度の変化から堆積の進み具合を捉えられれば、止める時期を状態に合わせて決めることもできます。考え方は一般的な設備保全と同じで、TBMとCBMの使い分けがそのまま当てはまります。

止まったときの動きを決めておく

除害装置が止まった状態で製造装置がガスを流し続ければ、未処理の毒性ガスが排気ダクトに流れ込みます。これを防ぐため、除害装置の異常信号で製造装置のガス供給を自動で止めるインターロックを組むのが一般的です。

停電、冷却水の断水、燃料の供給停止などが起きたときに、どの設備がどの順で止まるのかは、設計段階から整理しておく必要があります。想定される異常を洗い出して対策を決める手順は、工場のリスクアセスメントのやり方と共通する部分が多くあります。

国内の主な除害装置メーカーと投資の動き

組立工場で製造中の排ガス処理装置の筐体

除害装置の市場には、半導体製造装置メーカーの一事業として手がける企業と、環境保全装置を専業とする企業の両方が参入しています。

海外勢では英国のEdwards(Atlas Copcoグループ)なども知られ、国内外のメーカーが方式の違いで競う市場です。

図8:国内で知られる主な除害装置メーカーと得意な方式

各社とも複数方式をそろえていますが、強みとする技術に違いがあります。

荏原製作所
燃焼式・触媒式・乾式半導体製造装置の一事業として展開。燃焼式+湿式の機種に加え、触媒式+湿式、乾式をそろえる
カンケンテクノ
電気加熱式・プラズマ式京都府長岡京市に本社を置く環境保全装置の専業。熱酸化に電気式を採用し、湿式スクラバーや大気圧プラズマ方式もそろえる
クリーン・テクノロジー
プラズマ式・乾式・湿式難分解性PFC向けのプラズマ式、CVD排ガス向けの乾式、VOC向けのヒーター+触媒式などを展開

※各社の公開情報をもとに整理。取り扱う方式や機種は変わることがあります。海外ではEdwardsなども大手として知られます。

荏原製作所は、半導体製造装置の事業の一つとして除害装置を展開しています。燃焼式と湿式を組み合わせた機種では低NOx・低COの運転を打ち出しており、大流量の水素や塩素の処理に対応する機種もあります。

カンケンテクノは、熱酸化に電気ヒーターを使い、化石燃料を使わないことを特徴としています。専業メーカーで、装置の納入先は電子デバイスのほか医療分野などにも広がります。

生産能力の増強が続く

半導体工場の新設・増設が相次ぐなか、除害装置メーカーも生産能力の増強を進めています。製造装置が増えれば、その台数に応じて除害装置の需要も増える構造のためです。

カンケンテクノは2022年7月に熊本県玉名市と立地協定を結び、2023年に同市で工場を稼働させました。

2025年4月時点の報道では月産15〜20台の体制から、2027年初めに稼働予定の新生産棟の完成後は月産60台を目指すとされていました。

2026年9月には、約13.6億円を投じて玉名市の工場を増設し、製造能力を2倍にすると報じられています。

国内では、北海道でラピダスの2nm量産に向けた準備が進み、広島ではマイクロンのメモリー新工場が着工しました。熊本も含め、先端工場の建設が続く限り、除害装置は製造装置と一緒に増えていく設備だといえます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 除害装置は、製造装置の排ガスを発生源の近くで無害化する設備で、装置ごとに設置する
  • 処理対象は、毒性・可燃性の特殊高圧ガス、腐食性のハロゲン系ガス、温室効果の大きいPFC等ガスなど
  • PFCは反応しにくく、特にCF4は大半が未反応で排気に出るため、除害装置が削減の要になる
  • 方式は燃焼式、電気加熱式、プラズマ式、触媒式、湿式、乾式があり、分解と湿式の複合型が主流
  • 選定では対象ガスと流量、用役、保守、停止時のインターロックの4点を押さえる

除害装置は目立たない設備ですが、半導体工場の安全と温暖化対策の両方を支える存在です。関連する職種としては工場の用役設備を守る設備保全や、装置の立ち上げを担う生産技術が、この設備と深く関わります。

温室効果ガス削減の全体像については、脱炭素・カーボンニュートラルの仕組みもあわせてご覧ください。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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