AI向けの半導体で、なぜガラスの基板が注目されているのか。理由の一つは、チップを載せるパッケージ基板の芯(コア)を樹脂からガラスに替えると、表と裏をつなぐ電極をより高密度に配置できることです。
パッケージ基板は、半導体チップと機器側の基板の間に入り、細かい端子をつなぎ替える部品です。
2026年9月時点で当サイトが各社の公式発表を確認した範囲では、公表されているのは開発、サンプル提供、試験的な生産ラインまでの段階です。量産は2027〜2028年度を目標に掲げる発表が中心です。
この記事では、ガラスコア基板とは何かを、パッケージの中での位置づけから整理します。続いて、AI半導体で注目される理由、TGV(ガラス貫通電極)を中心とした作り方、量産を阻む壁、各社の公式発表、製造業の仕事への影響を順に見ていきます。
ガラスコア基板とは
ガラスコア基板とは、半導体パッケージ基板の芯材(コア)を、樹脂系の材料からガラスに置き換えた基板です。パッケージ基板は、半導体チップとマザーボードの間に入り、チップの細かい端子を基板側の粗い端子へつなぎ替える役割を持ちます。
高性能なプロセッサーでは、FC-BGA(チップを裏返して基板に直接つなぐ方式のパッケージ基板)が使われます。中心にコアがあり、その両面に配線と絶縁層を交互に重ねたビルドアップ層が載る構造です。
現在のコアは、ガラス繊維の布にエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ基板などの樹脂系が主流です。名前に「ガラス」と付きますが、板ガラスを使うガラスコア基板とは別物です。
コアには表と裏の配線をつなぐ貫通電極が必要で、ガラスに開けたものをTGV(Through Glass Via:ガラス貫通電極)と呼びます。
大日本印刷は2025年12月の発表で、ガラスに置き換えることでより高密度に貫通電極を配置できると説明しています。
ガラスに替わるのは、パッケージ基板の中心にあるコアの部分です。
※中段の3つがパッケージ基板(FC-BGA)です。実際にはコアを上下からビルドアップ層が挟む構造で、図では横に並べて示しています。
ガラスインターポーザとの違い
似た言葉にガラスインターポーザがあります。インターポーザはチップとパッケージ基板の間に入る中継基板です。チップレット(大きな回路を複数の小さなチップに分けて1つのパッケージに収める技術)の接続に使われます。
TOPPANは2025年12月の発表で、現在主流のシリコンインターポーザは大型化に課題があると説明しています。そのため、大型ガラス基板をベースとした技術の確立が期待されているとしています。
つまり、ガラスコアは樹脂コアの置き換え、ガラスインターポーザはシリコンインターポーザの置き換えという関係です。
どちらもガラスに貫通電極を開けますが、入る場所と置き換える相手が異なります。
※TOPPANは石川工場のパイロットラインで、ガラスインターポーザとガラスコアの両方を研究開発の対象にすると発表しています(2025年12月)。
パッケージ基板やインターポーザが後工程のどこで使われるかは、次の記事で工程の流れとあわせて整理しています。

AI半導体でガラスコア基板が注目される理由
背景にあるのは、チップレットの普及によるパッケージ基板の大型化です。AI向けの半導体は1つのパッケージに載せるチップの数と面積が増えており、AI需要で伸びるパッケージ基板にも、より大きく、より細かい配線が求められています。
大日本印刷は、基板が大型化するなかで、従来の有機樹脂ベースの基板では課題が出ると整理しています。平坦性が不足して微細な配線形成が難しくなり、剛性不足による反りでチップの実装も難しくなるという課題です。
ガラスはこの2点を同時に改善できる材料として検討されてきました。
ガラスは多くの項目で優れますが、熱伝導と量産プロセスの成熟度は課題として残ります。
※IEEE Electronics Packaging Societyの技術資料「Glass Core Substrate」(2025年11月更新)の比較表をもとに作成。著者はガラスメーカーであるAGCの技術者です。定性的な評価で、個別の製品の性能を示すものではありません。
有機コア基板の限界
樹脂系の基板も、材料や充填材の改良で配線の微細化を進めてきました。ただしIEEEの技術資料は、大型になるほど熱安定性、平坦性、寸法安定性に限界が出ると指摘しています。
反りを抑えるにはコアを厚くする方法がありますが、厚くすると貫通穴を細かくしにくくなるという板挟みが生じます。大きくしたい、細かくもしたいという2つの要求を、樹脂系のコアだけで満たすのが難しくなってきました。
ガラスの強み
1つ目は平坦性と寸法の安定です。インテルは2023年9月の発表で、ガラス基板はパターンの歪みを50%減らせ、配線密度を10倍に高められる可能性があると説明しました。
表面が平らなほど、露光で微細なパターンを描く工程で焦点を合わせやすくなるためです。いずれもインテル自身の見通しである点には注意が必要です。
2つ目は熱膨張係数(温度が上がったときの伸びやすさ)を組成で調整できる点です。シリコンのチップと伸び方が違うと、発熱のたびに歪みが生じます。
日本電気硝子のガラスセラミックスコア基板「GCコア」は、タイプによって6.1〜8.9ppm/℃の3種類を用意しています。樹脂基板に合わせた高膨張タイプも含まれます。
求められる値は製品ごとに異なります。パッケージにはシリコン以外に樹脂の配線層なども載るため、東京エレクトロンの解説記事は構成材料の組み合わせごとに最適な熱膨張係数のガラスが求められるとしています。
シリコンに合わせれば済むという単純な話ではありません。
3つ目は大型の角形パネルで作れる点です。大日本印刷とAGCは510×515mm、日本電気硝子は515×510mmのパネルサイズを公表しています。
同じ解説記事(2024年9月)は、ラピダスの試算を紹介しています。試算では、6640平方ミリメートルの基板は300mmウェーハからは4個しか切り出せず、600mm角のガラス基板なら40個切り出せます。
この数値は同記事による二次情報で、ラピダスの公表資料では確認できていません。コア基板に限らず、基板が大きくなるほど角形パネルの利点が大きくなることを示す例です。
光電融合との関係
ガラスは光を通しやすく、屈折率が光ファイバーに近いという性質があります。そのため、コパッケージドオプティクス(光と電気を変換する部品をチップのすぐ近くに載せる実装方式。CPO)にも向くとされています。
データセンターの消費電力を下げる技術として検討が進む分野です。
インテルは2023年の発表で、ガラス基板なら光インターコネクトを統合しやすいと述べています。AGCも2026年6月の半導体関連事業説明会の資料で、ガラスコア向けのTGV基板と並べて、光電融合向けの光学部材を開発品として示しています。
弱点もある
図3のとおり、熱伝導は樹脂系と同じく低い評価で、シリコンのように熱を逃がす役割は期待しにくい材料です。量産プロセスも確立の途中にあります。
IEEEの技術資料は2025年11月の更新時点で、ガラスはまだ商用化に至っておらず、さらなる開発が必要と書いています。期待の大きさと、実際に製品として出荷されている量は分けて見る必要があります。
ガラスコア基板の作り方とTGV加工

ガラスコア基板は、板ガラスに貫通穴を開け、穴の中と表面に銅を付け、その上にビルドアップ層を重ねて、最後にパッケージの大きさへ切り分けるという流れで作ります。樹脂系の基板と違うのは、前半の穴あけと金属の付け方です。
ガラス特有の難しさは、穴あけ、めっき、切り分けの3か所に集まります。
※工程の区切り方や順序は各社で異なります。IEEE Electronics Packaging Societyの技術資料と各社の発表をもとに整理しました。
TGVを開ける3つの方法
ガラスへの穴あけは、加工速度と割れにくさの両立が難しい工程です。IEEEの技術資料は、レーザーを使う代表的な方法として次の3つを挙げています。
速さ、熱の影響、穴の細かさのどれを優先するかで方式が分かれます。
日本電気硝子によると、一般的なガラス基板にレーザーで穴を開けると、一定の割合でクラックが入ります。そのため、レーザーによる改質とエッチングを組み合わせる方法が一般的に使われてきました。
同社は、この方法には工程が複雑で、加工時間と設備投資がかさむという課題があるとしています。
日本電気硝子は、この課題に対して材料側から答えを出そうとしています。2024年6月に発表したGCコアは、ガラス粉末とセラミックス粉末の複合材で、広く普及しているCO2レーザー加工機で穴を開けられます。
発表では直径75マイクロメートル、ピッチ250マイクロメートル、板厚0.4mmの穴を、毎分2万穴以上の速度で加工した例を示しました。
同社が2025年5月に公表した板ガラスのコア基板では、レーザー改質・エッチング品が板厚0.4mmで穴径50マイクロメートルです。CO2レーザー品は、板厚0.5mmで穴径90マイクロメートルです。
同社の公表値では、穴の細かさは改質・エッチング品が上回ります。CO2レーザー品は、工程を簡素にすることを狙ったものです。
穴に銅を付ける
ガラスは電気を通さないため、まず薄い下地(シード層)を付け、その上に電解銅めっきで銅を成長させます。下地には無電解めっきが使われることが多く、電気めっきと無電解めっきの違いがそのまま工程の役割分担になっています。
難しいのは密着です。ガラスは表面が滑らかで均質なため、銅がはがれやすく、めっきが付かない箇所も出やすくなります。
そこでガラスと下地の間に、チタンやクロム、金属酸化物などの薄い密着層を挟む方法が取られます。大日本印刷も2023年3月の発表で、新工法でガラスと金属の密着性を高めたと説明しています。
銅の付け方には、穴を銅で埋める充填タイプと、穴の側壁だけに金属層を付けるコンフォーマルタイプがあり、大日本印刷は両方を提供する方針です。
伝送損失への影響については、IEEEの技術資料が2020年の学会発表(Tanakaら、ECTC 2020)の測定例を引用しています。
ガラス基板上の試験用の線路(コプレーナ線路)にTGVを入れた場合と入れない場合で、挿入損失の差を30GHzで比べたものです。結果は、コンフォーマルが0.48dB、部分充填が0.34dB、完全充填が0.23dBでした。
線路の長さあたりの値ではなく、この試験構造での差です。同資料は、方式による差は大きくないものの、銅を多く詰めるほど損失が小さくなる傾向だとしています。
穴の細さを表す指標がアスペクト比(板厚を穴径で割った値)です。大日本印刷は2023年の開発品で9以上、AGCは板厚1.0mmで最大20対1の加工が可能としています。数字が大きいほど、めっき液を穴の奥まで行き渡らせるのが難しくなります。
量産を阻む4つの壁

ガラスコア基板の利点は10年以上前から知られていました。東京エレクトロンの解説記事によると、2009年には米ジョージア工科大学で研究が始まっています。それでも普及しなかったのは、量産技術にするのが難しかったためです。
材料そのものよりも、加工・搬送・設計の側に課題が集まっています。
割れ(マイクロクラックとSeWaRe)
ガラスは本来強い材料ですが、表面の微小な傷(マイクロクラック)に応力が集中します。そのため、実用上の強度は理論値より2桁ほど低くなります(IEEEの技術資料による)。
ガラス加工メーカーの解説でも、実用強度は理論強度の100分の1程度とされています。
穴あけ、搬送、切断のどこで傷が入っても、後の工程で割れの起点になります。
ガラスコア基板に特有なのが、SeWaRe(背割れ)と呼ばれる割れです。ビルドアップ層を重ねて切り分けた後に、切断した端面からガラスの内部へ水平に亀裂が走ります。原因は、ガラスとビルドアップ層の樹脂の熱膨張係数の差で応力がたまることです。
新光電気工業は国際学会ECTC 2025で、ダイシング時のSeWaReがこの熱膨張係数の差で起きることを特定したと発表しました。あわせて、信頼性試験で高い接続信頼性を示したとしています。
この論文は優秀論文として表彰されています(同社の2026年7月の公表)。
対策としては、ビルドアップ層を薄くする、切断条件を見直す、樹脂とガラスの密着を強める、といった方法が報告されています。端部の樹脂層を内側へ後退させる構造(プルバック)にする方法もあります。
IEEEの技術資料によると、一部の特殊なガラスを除けば、ガラスの種類による粘り強さ(破壊靱性)の差は±10%程度にとどまります。そのため、材料選びよりも応力と傷の大きさを減らす設計のほうが効くとしています。
めっきの密着と充填
密着層を挟む方法は工程が1つ増えます。真空装置で膜を付ける乾式の方法もありますが、細く深い穴の奥まで均一に付けにくく、大型パネルでは装置コストも上がります。湿式と乾式のどちらを選ぶかは、製品仕様と設備コストの兼ね合いで決まります。
穴を銅で埋める充填めっきは、板厚、穴径、穴の形に強く左右されます。アスペクト比が高くなるほど、めっき液の添加剤、液の流し方、電流のかけ方の最適化が必要になり、めっき後の熱処理の条件も密着に影響します。
薬液メーカーと装置メーカーの開発が欠かせない領域です。
大型で薄い板の搬送
曲げたときに生じる応力は板厚の2乗に反比例するため、薄い板ほど割れやすくなります。さらに大型になるほど、どこかに傷がある確率が上がり、自重でのたわみも大きくなります。
この点で強みになるのが、ディスプレイやフォトマスクで大型ガラスを扱ってきた経験です。大日本印刷は、フォトマスクなどで培った大面積ガラスのハンドリング技術を応用したと説明しています。
サムスン電機と合弁を組む住友化学グループの東友ファインケムも、ガラスのハンドリング技術と大面積ガラス向け自動化設備の運営ノウハウを強みに挙げています。
放熱と仕様の幅
ガラスは熱を伝えにくいため、チップの発熱をどこへ逃がすかはパッケージ全体で設計する必要があります。ガラスに替えれば熱の問題まで解決する、というわけではありません。
仕様の幅も量産の難しさにつながります。前述のとおり求められる熱膨張係数は製品ごとに違い、穴あけの方式も2系統が並走しています。
装置メーカーや加工メーカーから見ると、どの方式、どの板厚に合わせて設備を組むかを決めにくい時期が続いているといえます。
各社の動き(公式発表で確認できた範囲)
ここからは、2026年9月30日時点で各社の公式発表から確認できた動きを、発表時点とあわせて整理します。開発、サンプル提供、パイロットライン、量産目標は意味が異なるため、区別して読む必要があります。
2023年の開発発表から、2025年以降はサンプル提供と試作ラインの段階へ進んでいます。
※各社のニュースリリース、米商務省(NIST)の公表資料による。目標時期は発表時点のもので、変更される可能性があります。
国内の基板・材料メーカー
大日本印刷は2025年12月16日、埼玉県久喜市の久喜工場内にTGVガラスコア基板のパイロットラインを新設し、同月から順次稼働させると発表しました。このラインで量産検証を行い、2026年初頭にサンプル提供を始めるとしています。
量産については、顧客とマーケットの動向を見ながら、2028年度の量産開始に向けた体制を構築していくという表現です。
久喜工場は出版印刷を主力としてきた拠点で、人材や土地の活用を事業ポートフォリオ改革の一環と位置づけています。このリリースに投資額の記載はありません。
TOPPANは同じ2025年12月16日、石川県能美市の石川工場に次世代半導体パッケージのパイロットラインを導入すると発表しました。2026年7月からの稼働開始を目指すとしています。
対象は大型ガラス基板を用いたインターポーザ、ガラスコア、有機RDLインターポーザ(樹脂の再配線層でつくる中継基板)です。将来の量産化に向けた技術の検証という位置づけです。
稼働時期は2025年12月時点の目標で、実際に稼働を始めたかどうかは、2026年9月30日時点で同社の発表からは確認できていません。
日本電気硝子は、GCコアと板ガラスのコア基板の2本立てです。
2025年5月には、レーザー改質・エッチング対応の515×510mm基板でサンプル提供を始めました。また、CO2レーザー対応の無機コア基板は2028年の量産開始を目指すとしました。
ガラスを供給する側が、穴あけまで済ませた状態で提供する動きです。
AGCは、板厚0.1〜1.1mm、穴径50マイクロメートル以上の微細孔付きガラス基板を510×515mmなどのパネルで提供できるとしています。
2026年6月の説明会資料では、ガラスコア向けとガラスインターポーザ向けのTGV基板をいずれも開発品として示しました。
新光電気工業も、ガラスコアを用いたビルドアップ基板を開発中であることを学会発表を通じて明らかにしています。
2026年9月時点で、当サイトが各社の公式発表を確認した範囲では、量産開始を公表した企業は見当たりません。
※2026年9月30日時点で確認できた各社の公式発表による。ここにない企業が取り組んでいないという意味ではありません。
海外メーカーの動き
ガラス基板が広く注目されるきっかけになったのは、インテルの発表です。同社は2023年9月18日、次世代の先端パッケージ向けガラス基板を発表し、2020年代後半の投入を計画すると述べました。
10年以上の研究を経たもので、まずはデータセンターやAIなど、大型のパッケージが必要な用途から導入するとしています。
その後の進み具合については、同社が2026年6月2日付のIntel Foundryの公式ブログで紹介しています。同年5月の国際学会ECTC 2026での発表内容です。
ガラスコア基板は研究開発の段階にある「将来の」技術と位置づけたうえで、銅を完全に充填したTGVが厳しい熱サイクル試験に耐えたことなどを示したという内容です。
これとは別に、日経クロステックは2026年7月31日付の記事で、インテルが同じ学会で明らかにした内容を報じています。内容は、ガラスコア基板を使うパッケージを既存ラインで製造する技術の確立です。
この点は報道によるもので、同社のブログには記載がありません。量産の開始時期は、同社の公式発表では確認できませんでした。
米国では、韓国SKCの子会社Absolicsがジョージア州コビントンでガラス基板の拠点を整備しています。
米商務省はCHIPS法にもとづき、同社に最大7500万ドルの助成を決めました(2024年5月に予備的な合意、同年12月に最終決定)。
先端パッケージ基板の供給がアジアに集中していることが、支援の理由に挙げられています。量産を始めたかどうかは、米商務省の公表資料では確認できていません。
韓国では、サムスン電機が住友化学グループと組みます。住友化学は2026年7月2日、子会社の東友ファインケムがサムスン電機と合弁契約を結んだと発表しました。
新会社「GlaSSEM」(仮称)は韓国・平澤市に置き、出資比率はサムスン電機66%、東友ファインケム34%、2027年度下期を目標に供給体制を整える計画です。
材料と装置でも動きがあります。ドイツのガラスメーカーSCHOTTは2023年9月に、先端パッケージ向けガラス基板の需要に応える行動計画を発表しました。
同じくドイツのLPKFは、レーザー改質とエッチングを組み合わせた加工技術「LIDE」を、ガラスコア基板のTGV形成向けに展開しています。
素材、基板、装置の各層で企業が動いており、電子部品・半導体業界のサプライチェーンの広い範囲に関わるテーマです。
製造業の仕事への影響

ガラスコア基板は、半導体メーカーや基板メーカーだけの話ではありません。各社の発表を読むと、別の分野で磨いてきた技術や設備が持ち込まれていることが分かります。
既存の技術と設備が転用されている
大日本印刷は、フォトマスクやMEMSで培ったパネル製造と大面積ガラスの取り扱いを土台にし、出版印刷を主力としてきた工場の人材や土地を活用しています。日本電気硝子の開発品は、汎用性の高いCO2レーザー加工機で加工できる点が特長です。
東京エレクトロンの解説記事も、液晶パネルの製造で確立された大型ガラスの調達、描画、搬送の仕組みが、実用化のハードルを下げていると指摘しています。
ディスプレイ、プリント基板、めっき、レーザー加工の経験を持つ企業や技術者にとって、接点の多い分野です。
樹脂系の基板がすぐに置き換わるわけではない
インテルは、大型で高速な伝送が求められる用途から導入すると説明しています。大日本印刷も、量産は顧客と市場の動向を見ながら進めるという姿勢です。
当面は樹脂系のコアが主流であり続け、ガラスは大型・高性能のパッケージから段階的に使われていく、と読むのが各社の発表に沿った見方です。
樹脂系の基板に関わる仕事が急になくなるとは考えにくい一方、ビルドアップ層の材料や工程はガラスコアでも引き続き必要です。コアが替わることで、密着、応力、切断といった周辺の技術に新しい要求が加わる、と捉えるほうが実態に近いでしょう。
取引先として見ておきたい点
装置、材料、加工の立場で関わる場合は、次の3点を押さえておくと状況を読みやすくなります。
- パネルサイズは510×515mm前後が各社の発表でよく使われている
- 穴あけはCO2レーザーとレーザー改質・エッチングの2系統が並走しており、どちらが主流になるかは定まっていない
- 量産時期はいずれも「目標」や「計画」であり、顧客の評価結果しだいで変わりうる
サンプル提供の段階では、基板の仕様も評価の方法も固まっていません。営業や購買の立場では、相手が開発、サンプル、パイロットライン、量産のどの段階にいるのかを確かめてから、数量や納期の話を進めるのが安全です。
まとめ
- ガラスコア基板は、パッケージ基板の芯材を樹脂系からガラスに置き換えたもので、TGVで表裏をつなぐ
- AI半導体の大型化で、樹脂系コアの平坦性と剛性の不足が目立ってきたことが注目の背景にある
- TGVの形成はCO2レーザーとレーザー改質・エッチングの2系統が並走している
- 量産の壁は、割れ(SeWaRe)、めっきの密着と充填、大型薄板の搬送、放熱と仕様の幅の4つ
- 公式発表を確認できた範囲では、各社は開発・サンプル・パイロットラインの段階で、量産は2027〜2028年度の目標が中心
ガラスコア基板は、材料、加工、めっき、搬送、検査の技術が組み合わさってはじめて成り立つ製品です。基板や材料を手がける企業の全体像は電子部品・半導体業界の主要企業で、ガラスメーカーの位置づけは窯業・セラミックス業界の主要企業で整理しています。
前工程を含めた技術の動きは、半導体製造のテーマページから関連記事もあわせてご覧ください。
出典
出典・参考資料(18件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 大日本印刷のパイロットライン:大日本印刷 ニュースリリース「『TGV(ガラス貫通電極)ガラスコア基板』のパイロットラインを久喜工場(埼玉県)に新設」(2025年12月16日)
- 大日本印刷の開発発表:大日本印刷 ニュースリリース「次世代半導体パッケージ向け”TGVガラスコア基板”を開発」(2023年3月20日)
- TOPPANのパイロットライン:TOPPANホールディングス ニュースリリース(2025年12月16日)
- 日本電気硝子のGCコア:日本電気硝子 ニュースリリース(2024年6月5日)
- 日本電気硝子のCO2レーザー対応ガラスコア基板:日本電気硝子 ニュースリリース(2024年12月4日)
- 日本電気硝子のサンプル提供と量産目標:日本電気硝子 ニュースリリース(2025年5月22日)、製品ページ「半導体パッケージ用無機コア基板」
- AGCの開発品:AGC 半導体関連事業説明会資料(2026年6月2日)、AGC「CES 2026 Semiconductor」
- 新光電気工業の学会発表:SHINKO ELECTRIC INDUSTRIES News(2026年7月6日)
- インテルのガラス基板:Intel Newsroom「Intel Unveils Industry-Leading Glass Substrates to Meet Demand for More Powerful Compute」(2023年9月18日)
- インテルの2026年の学会発表(公式ブログ):Intel Foundry「How Intel Foundry Packaging Technologies Redefine AI and HPC Scalability Limits at ECTC 2026」(2026年6月2日)
- インテルの2026年の動き(報道):日経クロステック「インテル、ガラスコア基板量産へ前進 AI半導体と光電融合に対応」(2026年7月31日)
- Absolicsへの助成:NIST「Absolics (Georgia)」、NIST ニュースリリース(2024年12月)
- サムスン電機と住友化学グループの合弁:住友化学 ニュースリリース(2026年7月2日)、Samsung Electro-Mechanics News(2025年11月5日)
- SCHOTTの行動計画:SCHOTT Media Release(2023年9月27日)
- LPKFの加工技術:LPKF「Glass Core Substrates for Advanced Packaging」
- 材料比較、TGVの形成とめっき、信頼性:IEEE Electronics Packaging Society「Glass Core Substrate」(2025年11月更新、著者はAGC所属)
- ガラスの理論強度と実用強度:三芝硝材「ガラスの強度および破壊」
- ガラス基板の背景と取り数の試算:東京エレクトロン TELESCOPE Magazine「注目が集まる『ガラス基板』の最新動向」(2024年9月4日)
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