世界の製造業が生み出す付加価値のうち、約28%を中国1か国が占めており(2024年、世界銀行)、20年前の2004年には約8.5%でした。中国は安い人件費で組み立てを請け負う「世界の工場」から、EV(電気自動車)や電池、太陽光パネルで世界の供給を握る国へ変わりました。
規模を数字で確かめたあと、強い5つの分野、強くなった理由、抱える課題の順に見ていき、最後に、日本企業から見た中国の4つの顔を整理します。
中国の製造業はどれくらい大きいか

国の製造業の大きさは、ふつう「製造業付加価値」で比べます。売上から原材料や部品の仕入れを引いた、その国の工場が新たに生み出した価値のことです。世界銀行の統計(名目ドル)では、中国の製造業付加価値は2024年に4.65兆ドルで、2010年には米国を上回り、世界最大になっています。
同じ2024年の日本は0.79兆ドルで、中国は日本の約6倍の規模であり、中国経済の中でも製造業はGDPの約25%を占め、いまも経済の柱です。
20年で約8.5%から約28%へ。世界の製造業の3割近くを1か国が担うようになりました。
※世界銀行 World Development Indicators「Manufacturing, value added(current US$)」から算出。名目ドルのため為替の影響を受けます。2010年に中国(1.92兆ドル)が米国(1.79兆ドル)を上回りました。
伸びは近年も続いており、中国国家統計局によると、2025年の製造業の付加価値(一定規模以上の企業)は前年より6.4%増えました。
中身も変わりつつあり、ハイテク製造業が工業全体の17.1%を占め、設備をつくる装置製造業も36.8%に達しました(いずれも2025年、一定規模以上の企業)。国別の順位の移り変わりは世界の製造業ランキングで詳しく比べています。
中国が強い5つの分野
中国の強さは分野によって表れ方が違い、生産台数で世界一の分野もあれば、工場の生産能力で他国を引き離している分野もあります。
「強い」の中身は、生産量・生産能力・設置台数と分野ごとに異なります。
※IEA=国際エネルギー機関、IFR=国際ロボット連盟。TrendForce は台湾の調査会社で、数字は予測値です。
EV(電気自動車)
国際エネルギー機関(IEA)によると、2024年に中国で売れた電気自動車は1100万台を超えて新車販売のほぼ半分を占め、世界のEV生産の70%超が中国です。
輸出でも存在感があり、2024年の世界のEV輸出の40%(約125万台)が中国からでした。価格の面でも、中国で売れたEVの3分の2は、補助金を除いても同じクラスのエンジン車より安かったとされます。
中国国家統計局の集計では、2025年の新エネルギー車(EVとプラグインハイブリッド車など)の生産は1652.4万台で、前年より25.1%増えました。EV化で部品の構成がどう変わるかはEVシフトで増える部品・なくなる部品で数字とともに見られます。
電池
EVの心臓部であるリチウムイオン電池も中国に集中しており、IEAは、世界の電池セルの生産能力の約85%が中国にあるとしています。電池の性能を左右する正極材・負極材といった材料でも、中国のシェアは大きいとされ、完成品だけでなく、材料から押さえている点が特徴です。
太陽光パネル
太陽光パネルは、原料のポリシリコンからインゴット、ウエハー、セル、モジュールへと加工してつくり、IEAは、このすべての工程で中国のシェアが80%を超えるとしています。
2025年の太陽電池の生産量は8億3274万kWで、前年より7.6%増えました(中国国家統計局)。日本で量産を目指す次世代型についてはペロブスカイト太陽電池の量産計画で取り上げています。
汎用半導体
半導体のうち、回路の線幅が28nm(ナノメートル)以上の「成熟プロセス」でつくる品種を、ここでは汎用半導体と呼びます。車や家電の電源制御、表示用ドライバーなどに使われる、量の多い品種です。
米国・日本・オランダが先端の製造装置の輸出を制限したことで、中国はこの成熟プロセスに投資を集めています。調査会社TrendForceは、成熟プロセスの生産能力に占める中国の比率が2027年に39%に達すると予測しています。
2025年の集積回路の生産は4842.8億個で、前年より10.9%増えました(中国国家統計局)。
産業用ロボット
国際ロボット連盟(IFR)によると、2024年に世界で新しく設置された産業用ロボット54.2万台のうち、54%にあたる29.5万台が中国で、使う側としても世界最大の市場です。
つくる側でも変化があり、中国国内で売れたロボットに占める中国メーカーの比率は57%となり、初めて海外メーカーを上回り、10年前は約28%でした。ロボット需要の読み方は産業用ロボット受注額の推移と統計の読み方が参考になります。
材料から完成品までの工程が国内にそろっているため、量産と値下げを速く進められます。
※各工程のシェアは図2のとおり。工程の一部を海外から調達している品目もあります。
「世界の工場」から製造強国へ 強くなった理由
中国の製造業は、20年ほどで役割を大きく変えてきました。
組み立ての請け負いから、技術と産業を自ら育てる段階へ移ってきました。
組立拠点として伸びた時代
2000年代の中国は、海外企業の工場を受け入れ、部品を輸入して組み立てる役割が中心でした。豊富な労働力と低い人件費が、家電や衣類、電子機器の組み立てを引き寄せました。
この時期に、工場を動かす人材と部品メーカーの集積が国内に育ち、のちに自国ブランドの製品を量産する土台になっています。日本の家電や半導体が同じ時期にどう後退したかは日本の製造業はなぜ伸び悩んだのかで振り返っています。
中国製造2025
2015年5月、中国の国務院(日本の内閣にあたる)は産業政策「中国製造2025」を出しており、製造強国を目指す最初の10年の行動計画という位置づけです。重点分野には次のようなものが並びます。
- 次世代の情報技術、高性能な数値制御工作機械とロボット
- 省エネ車・新エネルギー車、電力設備
- 航空宇宙、海洋・船舶、鉄道車両
- 新材料、バイオ医薬・医療機器、農業機械
図2で見たEVやロボットは、この重点分野に含まれていました。政策で示した分野に投資と補助が集まり、10年ほどで世界の上位に立った形です。
国内市場・集積・投資
政策だけで強くなったわけではありません。EVを例にとると、次の4つがかみ合いました。
どれか1つではなく、4つが同時に働いたことが速さにつながりました。
※固定資本形成は通商白書2025、研究開発費は中国国家統計局による。
国内でたくさん売れると、工場の稼働が上がり、1台あたりのコストが下がります。国内で鍛えた価格で海外に出るという流れが、EVや太陽光パネルで起きました。
第15次五か年計画
中国は5年ごとに経済の中期計画を立てます。2026〜2030年の第15次五か年計画は、2026年3月の全国人民代表大会(日本の国会にあたる)で採択されました。
その方向を示した2025年10月の「建議」は、製造業の比率を合理的な水準に保つことを掲げており、先進製造業を柱にした産業体系をつくる方針です。サービス業に移るのではなく、製造業を経済の中心に据え続ける姿勢が読み取れます。
中国の製造業が抱える課題

経済産業省の通商白書2025は、中国の景気低迷と「過少消費」の構造を取り上げています。不動産市場の不況が長引き、消費者の気持ちは3年にわたって低い水準が続き、国内で物が売れにくい状態です。
それでも、政府が主導する投資で工場の生産能力は積み増されてきました。中国のGDPに占める固定資本形成は41%(2023年)で、米国・EU・日本と比べて投資に偏っています。
国内で売れない分が安い価格で海外に出て、各国との摩擦を生んでいます。
※経済産業省「通商白書2025」第I部第1章第2節の分析をもとに作成。
通商白書は、この流れを輸出単価の下落を伴って輸出が増える「デフレ輸出」と呼んでいます。鉄鋼では生産能力の余りが再び広がり、鋼材や太陽電池の輸出単価が大きく下がりました。
安い鋼材はアジアなどの市況を押し下げ、各国が輸入を制限すると、行き場を失った鋼材が日本にも向かいやすくなります。国内の鉄鋼市場の動きは鉄鋼・非鉄金属業界の市場規模と動向で確かめられます。
日本企業から見た中国

日本企業にとって、中国は1つの顔だけではなく、競争相手であり、顧客であり、調達先でもあります。輸出管理という規制の面も加わります。
同じ会社の中でも、部署によって中国との関わり方が変わります。
競争相手として
EVや太陽光パネル、汎用半導体では、中国メーカーが量と価格で世界の市場を広げています。日本企業が強みとしてきた分野でも、中国国内だけでなく東南アジアなどの第三国で競う場面が増えました。
JETROの2025年度の調査では、中国に進出した日系企業のうち、今後1〜2年で事業を「拡大」すると答えた企業は21.3%で、過去最低でした。
顧客・販売先として
中国は日本の部材や設備の大きな納め先でもあります。財務省の貿易統計によると、2025年の日本から中国への輸出は18兆7795億円でした。
このうち半導体等製造装置は前年より減った品目に挙がっており、中国の工場が増えれば装置や材料の需要は増えますが、規制や景気で受注が大きく振れる点には注意が必要です。一方で、2025年の営業利益を黒字と見込む在中日系企業の割合は6割台に戻り、4年ぶりに上がりました(JETRO)。
調達先・生産拠点として
2025年の日本の中国からの輸入は26兆6942億円で、輸入全体の約23.6%を占めました。パソコンなどの電算機類や通信機の輸入が増えています。輸出と輸入を合わせると約45.5兆円で、米国(約33.3兆円)を上回る日本の最大の貿易相手です。
部品・材料を中国から買っている工場は多く、代わりの調達先を持てるかどうかが生産を止めない鍵になります。関税をきっかけとした調達網の見直しは米国関税とサプライチェーン再編の影響で詳しく扱っています。
輸出管理・通商リスクとして
中国は2025年4月4日、サマリウムやジスプロシウムなど7種類の中・重希土類(レアアース)の関連品目を輸出管理の対象にしました。モーター用の磁石などに使う材料です。
2026年1月6日には、軍民両用(デュアルユース)品目について、日本の軍事ユーザーや軍事用途などへの輸出を禁じると発表しました。中国原産の品目を第三国から日本へ移すことも禁じています。対象の線引きは公告の文面で確かめる必要があり、自社の材料がどこから来ているかを把握しておくことが備えの第一歩です。

まとめ
- 中国は世界の製造業付加価値の約28%を占め、2010年から世界最大(世界銀行)
- EV・電池・太陽光・汎用半導体・産業用ロボットで世界の上位に立つ
- 大きな国内市場、政策の後押し、産業の集積、投資の多さがかみ合った
- 内需の弱さと過剰な生産能力から「デフレ輸出」と通商摩擦が起きている
- 日本企業にとっては競争相手・顧客・調達先・規制リスクの4つの顔を持つ
中国の製造業は、日本のものづくりと切り離して考えられない存在です。日本側の強みと弱みは日本の製造業の強みと弱み、日本企業が首位を握る部材・装置は世界シェアトップの日本の製造業で確かめられます。
この記事は連載「製造業を知る」の第4章「海外勢の動き」の1本目です。製造業の全体像から順に読める入口ページから、ほかの章もあわせてご覧ください。
出典
出典・参考資料(14件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 製造業付加価値(2004〜2024年):World Bank「Manufacturing, value added (current US$)」、同「Manufacturing, value added (% of GDP)」
- 2025年の生産量・付加価値・研究開発費:中国国家統計局「2025年国民経済和社会発展統計公報」(2026年2月28日)
- EVの販売・生産・輸出:IEA「Global EV Outlook 2025」
- 電池セルの生産能力:IEA「Batteries and Secure Energy Transitions」(2024年)
- 太陽光パネルの工程別シェア:IEA「Solar PV Global Supply Chains」(2022年)
- 成熟プロセスの生産能力:TrendForce プレスリリース(2023年12月14日)
- 産業用ロボットの設置台数:IFR「World Robotics 2025」プレスリリース(2025年9月25日)
- 中国製造2025:中国政府網「国務院関于印発《中国製造2025》的通知」
- 第15次五か年計画:国家発展改革委員会(2025年11月18日)、中国政府網(2026年3月13日)
- 中国の景気低迷とデフレ輸出:経済産業省「通商白書2025」第I部第1章第2節
- 日本の対中貿易:財務省「令和7年分貿易統計(速報)の概要」(2026年1月22日)
- 在中日系企業の動向:JETRO「中国ビジネスの最前線(前編)」(2026年3月10日)
- レアアースの輸出管理:中国商務部・海関総署公告2025年第18号
- 対日のデュアルユース品目の輸出管理:中国商務部公告2026年第1号
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