ボイラーのプライミングとは、ボイラー水が水滴のまま蒸気と一緒にボイラーの外へ運び出される現象です。水位が高すぎるときや、蒸気の使用量が急に増えたときに起きやすくなります。
泡が原因で同じように水が持ち出されるのがフォーミングで、ボイラー技士の試験ではホーミングと書かれます。どちらも、蒸気に水や不純物が混じるキャリーオーバーの原因で、この記事では、プライミングとフォーミングの違い、起きると何が困るか、原因ごとの対策の順に整理します。
プライミングとフォーミングの違い
プライミングとフォーミングは、どちらもボイラー水が蒸気と一緒に出ていく現象です。水処理メーカーの栗田工業は、この2つをまとめてキャリーオーバーと呼んでいます。
違いは水を持ち上げるもので、プライミングは激しい沸騰で水そのものが持ち上がり、フォーミングは消えにくい泡が水を運びます。
どちらもキャリーオーバーの原因ですが、水を持ち上げるものと効く対策が違います。
※実際には両方が重なって起きることもあります。栗田工業・スパイラックス・サーコの解説をもとに作成。
プライミングとは
プライミングは、ボイラー水が水滴となって蒸気と一緒に運び出される現象で、水気立ちとも呼ばれます。本来、ボイラーの中でできた蒸気は水面で水と分かれ、乾いた蒸気として送り出されますが、プライミングが起きると水滴が蒸気に混じり、蒸気の品質が下がります。
典型的なきっかけは、蒸気の使用量が急に増えることで、蒸気が一気に出ていくとボイラーの中の圧力が下がり、水の中で多量の気泡が発生します。
気泡で膨らんだ水は水位を押し上げて蒸気の出口まで届き、もともと水位が高すぎると、水面から出口までの余裕が小さく、さらに起きやすくなります。
設計より低い圧力で運転しているときも要注意で、同じ量の蒸気でも体積が大きくなって流れが速くなり、水滴を連れ出しやすくなります。これは、炭酸水を振ってから蓋を開けると、中の液体があふれ出すのに似ています。
- 炭酸水を振ると、溶けていた二酸化炭素が気化して内圧が上がる
- 蓋を開けることで一気に内圧が下がる
- 液体が泡立ち、あふれ出す
ボイラーでは、蓋を開ける動きにあたるのが蒸気の急な使用で、圧力が下がった瞬間に沸騰が激しくなり、水があふれるように出口へ向かいます。
手掛かりは、蒸気の使用量が急に増えた直後や、水位が高めのときに起きることで、泡が少なくても起きます。ただし、ひとつのサインだけでプライミングと決めつけず、水質も合わせて確かめます。
蒸気負荷の急増で圧力が下がると、沸騰が一気に激しくなります。
※設計より低い圧力での運転や、汽水分離器の不良も起きやすくする要因です。
フォーミング
フォーミングは、ボイラーの水面に泡ができて広がり、泡と一緒に水が蒸気に混じる現象で、泡立ちとも呼ばれます。英語の foaming のことで、ボイラー技士の試験や教本ではホーミングと書かれます。
泡の層が水面から蒸気の空間まで広がると、蒸気と水を分けにくくなり、泡が割れるたびに細かい水滴が飛び、蒸気の品質が下がります。
原因は、ボイラー水に含まれるもので、代表的なのがボイラー水の濃縮です。蒸気になるのは水だけなので、給水に含まれる塩類はボイラーの中にたまっていきます。
溶けている塩類(溶解固形物)が増えると、気泡が安定して水面で割れにくくなり、アルカリ度が高すぎる場合や、懸濁物(濁りの粒子)が多い場合も泡立ちやすくなります。
もう一つは、油分や洗剤などの有機物の混入で、清缶剤などの薬品を入れすぎた場合も、泡の原因になります。フォーミングは、石鹸や洗剤を溶かした水に空気を入れると泡立つ様子に近いです。
- 水は空気が入っても表面張力によって泡がすぐ消える
- 石鹸水や洗剤が混ざると界面活性によって水の表面張力が下がる
- 空気が入ると泡立つ
ボイラー水に不純物が混じって泡立ちが起きるのが、フォーミングです。石鹸の原料は油脂なので、油が泡の原因になるのは感覚的にも分かりやすいはずです。
手掛かりは、泡が多くてなかなか消えないことで、ボイラー水の電気伝導率が高い、採水した水に油っぽさやぬめりがある場合も、フォーミングを疑います。
水に溶けたものや混じったものが、泡を消えにくくします。
※小型のボイラーは水面の面積あたりの蒸気発生量が大きく、泡立ちやすい傾向があります(スパイラックス・サーコ)。
プライミング、フォーミングが与える影響
プライミングやフォーミングで持ち出された水は、蒸気配管を通って、蒸気を使う設備まで届きます。影響はボイラーの中ではなく、下流の設備に出るのが特徴です。
キャリーオーバーの被害は、蒸気の流れに沿って下流の設備に出ます。
※栗田工業、スパイラックス・サーコの解説をもとに作成。どの設備があるかはプラントによって違います。
蒸気の品質低下
最も直接的な影響は、蒸気の品質の低下で、蒸気に水滴が混じると、乾き度(蒸気のうち、水になっていない部分の割合)が下がります。
蒸気が熱を渡すのは、主に凝縮するときで、最初から水滴の分は凝縮の熱を持たないので、同じ量の蒸気を送っても、熱交換器で使える熱が減ります。
フォーミングでは、泡と一緒にボイラー水の塩類も蒸気に入り、蒸気を加熱や加湿に直接使う工程では、製品の品質に響くこともあります。
機器の腐食や摩耗
蒸気の品質が下がると、下流の機器の腐食や摩耗が進みやすくなります。プライミングで運ばれた水滴は、速い蒸気の流れに乗って配管の曲がりや弁に当たり、その衝撃で金属が削られたり、腐食が進んだりします。
フォーミングで持ち出された塩類は、蒸気の通り道に付着物として残ります。栗田工業は、過熱器の膨出・破裂や、蒸気タービンの破損事故につながるおそれを挙げています。
タービンでは、翼に付着物がたまったり水滴が当たったりして、性能低下や損傷につながります。翼の役割はタービンの動翼と静翼で整理しています。
弁やスチームトラップの小さな穴に付着物がたまると、能力が落ちたり詰まったりし、突発的な故障の原因になるので、点検の計画にも関わります。
水撃発生リスクの増加
プライミングで蒸気管に水が入ると、水撃(ウォーターハンマー)が起きやすくなります。水撃とは、配管の中で急に動かされた水が、配管や弁に強い衝撃を与える現象です。
繰り返すと配管が傷み、破裂につながることもあり、圧力の高い蒸気配管ほど、壊れたときの被害が大きくなります。フォーミングでも、泡と一緒に運ばれた水が配管の低いところにたまれば、同じように水撃の原因になります。
ランニングコストの増加
プライミングとフォーミングは、ボイラーまわりの運転コストを押し上げます。濡れた蒸気は使える熱が少ないので、同じ加熱をするのに多くの蒸気が要り、燃料が増えます。さらに、腐食や摩耗が進めば、補修や部品交換の回数が増えます。
水撃で配管や弁が壊れると、修理費に加えて設備を止める損失も出ます。蒸気配管の点検は、設備保全のTBMとCBMの考え方で周期を決めておくと、異常に早く気づけます。
プライミング、フォーミングの対策
プライミングとフォーミングは原因が違うので、効く対策も違います。原因を水位・負荷の急変・缶水(ボイラー水)の濃縮・油脂分の4つに分けると、打ち手を選びやすくなります。
発生を疑ったら、水位、直前の負荷の変化、ボイラー水の電気伝導率、油の混入や薬注量の順に確かめるのが一つの目安です。運転の変更は、設備の運転基準とメーカーの手順に従って進めます。
上の2つはプライミング、下の2つはフォーミングの主な原因です。
※栗田工業「キャリーオーバー障害」の対策4項目、スパイラックス・サーコの解説をもとに作成。
プライミング対策
プライミングの対策としては、次のようなものが挙げられます。
- ボイラーの負荷を急変させない
- 水位を適正に保つ
- 水質管理を行う
まず、運転圧力を安定させて急な圧力低下を防ぐには、使用先の弁を一斉に開けない、立ち上げ時に負荷をゆっくりかける、といった運転の決まりが効きます。
負荷の変動が大きく、運転の工夫だけでは抑えきれない工場では、蒸気をためておくスチームアキュムレータで変動をならす方法があります。
比例式の水位制御や、ボイラーの圧力が下がりすぎないようにする圧力制御も、メーカーが挙げる対策です。どれが合うかは設備の構成と負荷の波で変わるので、メーカーと相談して選びます。
ボイラーの能力を超える蒸気を取らないことも基本で、能力の目安となる蒸発量の考え方は、相当蒸発量と実際蒸発量の違いで整理しています。
次に、水面計と水位制御で、ボイラーの水位を常に適切に保ち、水位制御の方式はレベル制御とはで解説しています。
水位が正しくても水が出ていく場合は、蒸気と水を分ける汽水分離器(気水分離器)の不良も疑い、点検や修理、増設で分離の力を取り戻します。
水処理装置で給水の質を整え、不純物や有機物を減らすことも大切です。水質が悪いとフォーミングが重なり、プライミングが起きやすくなるためです。
フォーミング対策
- 水質を監視する
- 薬剤を添加する
- ボイラー内部の清掃
フォーミングを防ぐには、まず水質管理を徹底し、ボイラーに入れる水の質を管理して、油分や有機物の混入を防ぎます。水処理の基本はボイラー水の水処理にまとめています。
濃縮は、ボイラー水の電気伝導率で監視するのが一般的です。環境省の資料には、JIS B 8223:2021 から作成した多管式特殊循環ボイラの表が載っています。
多管式の小型貫流ボイラー(JIS では多管式特殊循環ボイラ)で軟化水を使い、常用使用圧力が1MPa以下の場合は400mS/m以下です。管理値はボイラーの形式・圧力・水処理の方式ごとに分かれ、蒸気の質も管理の対象なので、自分の設備の値を確かめます。
濃くなったら、ボイラー水の一部を捨てるブローで下げます。ブローの量と熱の損失はボイラーのブローとブロー率の計算で扱っており、電気伝導率の測り方は、電気伝導率とはが参考になります。
油は、工程から回収する復水に入りやすく、熱交換器の漏れで油が復水に混じると、そのまま給水に戻ってきます。回収系に油が入っていないかを確かめることが、根本の対策になります。
泡を抑えるには、ボイラー水に消泡剤を入れる方法もありますが、懸濁物による泡には効きにくいとされ、原因を断つ対策の代わりにはなりません。清缶剤などの薬品は、入れすぎるとかえって泡の原因になります。
給水の処理には、溶けた酸素を除く脱気器もありますが、脱気器が防ぐのは腐食で、泡の原因になる塩類や油は取れません。役割の違いは脱気器(デアレーター)の仕組みで確かめてください。
ボイラーの内部も定期的に清掃し、汚れやスラッジを取り除くことで、泡の原因になる不純物を減らせます。最後に、過剰な負荷や急な負荷変動を避けます。安定した運転が、プライミングとフォーミングに共通する対策の基本です。
プライミング・フォーミングのよくある質問
キャリーオーバーとプライミングの関係は?
キャリーオーバーは、ボイラー水の水滴や溶けた塩類が蒸気系統へ移ってしまうことを指す、結果の側の呼び名です。プライミングとフォーミングは、その起き方の呼び名で、結果がキャリーオーバー、起き方がプライミングとフォーミングと考えると整理できます。
対策を選ぶときは、どちらの起き方かを先に見極めます。
ホーミングとフォーミングは同じ?
同じもので、どちらも英語の foaming(泡立ち)をカタカナにした言葉で、ボイラー技士の試験や教本ではホーミング、メーカーの資料ではフォーミングと書かれることが多いです。
加工の分野の「フォーミング(forming、成形)」や、機械の原点に戻る「ホーミング(homing)」とは別の言葉です。
プライミングは低水位でも起きる?
プライミングの原因になるのは、低水位ではなく高水位で、水面から蒸気の出口までの余裕が小さくなり、水滴が出ていきやすくなります。
プライミングと水位の関係は、ボイラー技士の過去の試験でも問われており、低水位は、空だきにつながる別の危険な状態です。
起きたときは、まず何を確かめる?
原因の4つを順に見ると、水面計で水位が高すぎないか、直前に蒸気の使用量が急に増えていないかをまず確かめます。
水位と負荷に問題がなければ、ボイラー水の電気伝導率と、復水や給水への油の混入を調べます。泡が多くしつこいならフォーミング、負荷の急変と重なるならプライミングが、見分けの目安です。
まとめ
- ボイラ水を持ち出す現象にはプライミングとフォーミング(ホーミング)があり、まとめてキャリーオーバーと呼ぶ
- プライミングは高水位や蒸気負荷の急増で、水そのものが持ち上がって出ていく
- フォーミングはボイラー水の濃縮や油脂分で泡が消えにくくなり、泡と一緒に水が出ていく
- 影響は下流に出る。乾き度の低下、水撃、過熱器・タービン・弁への付着や損傷
- 発生要因が違うので、水位・負荷の管理と、ブロー・油の混入防止を使い分ける
プライミングとフォーミングはどちらもキャリーオーバーを起こしますが、発生要因が違います。対策も変わってくるので、取り違えないように注意しましょう。
ボイラーの水質管理や省エネは、エネルギー管理士の試験でもよく出るテーマです。工場での役割は製造業のエネルギー管理士の仕事で紹介しています。その他のボイラーに関する記事は、ボイラーとは何かにまとめています。
出典
出典・参考資料(6件)を開く出典・参考資料を閉じる
- キャリーオーバーの定義・分類・原因・障害・対策:栗田工業 水処理教室「ボイラで発生する『キャリーオーバー障害』とは」
- キャリーオーバーの影響と是正措置:スパイラックス・サーコ 用語解説「キャリーオーバー」
- プライミング・フォーミングの要因(高水位・低い圧力での運転・負荷の急増・TDS・アルカリ度・懸濁物):Spirax Sarco「Water for the boiler」
- フォーミングの原因と見分け方:トリイ株式会社「ボイラーで起こる『キャリーオーバー』とは?」
- 給水・ボイラ水・蒸気の質の規格:日本規格協会 JIS B 8223:2021「ボイラの給水,ボイラ水及び蒸気の質」(プレビュー)
- 多管式特殊循環ボイラ(小型貫流ボイラー)・軟化水の電気伝導率の管理値:環境省「ボイラー給水の水質の適切な管理」
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