相当蒸発量(換算蒸発量)とは、ボイラーの能力を「100℃の水を100℃の蒸気にする」条件にそろえて表した蒸発量です。ボイラーのカタログに載っている「2,000kg/h」などの蒸発量は、この条件の値です。
実際の工場では、20℃前後の水を0.8MPaGなどの蒸気にするため、そのぶん蒸気1kgに要る熱が増えます。給水20℃・0.8MPaGの飽和蒸気の条件なら、2,000kg/hのボイラーでも実際に出せるのは約1,679kg/hです。
この記事では、相当蒸発量の意味と式、実際蒸発量への換算方法と例題、圧力・給水温度別の早見表、必要な蒸気量の求め方の順に整理します。動画でも解説しています。
相当蒸発量とは
相当蒸発量とは、100℃の飽和水を100℃の飽和蒸気にすると想定したときのボイラーの能力を表します。
ボイラーの能力は、1時間あたりにどれだけの蒸気を発生させられるかを示すkg/hやt/hで表すことが多く、この「1時間に出せる蒸気の量」が、一般に蒸発量と呼ばれるものです。ただし、出せる蒸気の量は給水の温度や蒸気の設定圧力によって大きく変わります。
そこで、条件をそろえて機種どうしを比べるために、相当蒸発量という指標が使われ、基準蒸発量や換算蒸発量ともいわれますが、どれも同じ意味です。
日本産業機械工業会のガイドラインも「相当蒸発量(換算蒸発量)」と併記し、大気圧で100℃の飽和水から100℃の飽和蒸気を発生させる場合の蒸気量と定めています。
同じボイラーの能力を、基準の条件で表すか、実際の使い方で表すかの違いです。
※実際の運転では、ボイラー効率や負荷の変動でも出せる蒸気量は変わります。
相当蒸発量は、次の式で計算できます。
このとき、分子は実際の加熱能力、分母は大気圧100℃の蒸気の潜熱を表します。2,257kJ/kgは、大気圧で100℃の飽和水1kgを100℃の飽和蒸気に変えるのに要る熱(蒸発潜熱)です。
エンタルピーは、水や蒸気1kgが持つ熱の量と考えると分かりやすい値で、詳しくはエンタルピーとは(内部エネルギー・エントロピーとの違い)で整理しています。
実際の条件でなぜ蒸気1kgに要る熱が増えるのかは、基準の条件と、20℃の水から0.8MPaGの蒸気をつくる例を並べると次のようになります。
実際の条件では、水を沸点まで温める熱が加わるぶん、1kgあたりの熱が約430kJ/kg多くなります。
2,000kg/h × 2,257 ÷ 2,689 ≒ 1,679kg/h
※圧力が高いと蒸発に要る熱(潜熱)はやや小さくなるため、基準との差は 659−227=約430kJ/kg です。値は蒸気表(IAPWS)から計算しています。
相当蒸発量と実際蒸発量の換算
ボイラーのカタログを比べるときは相当蒸発量で十分ですが、実際にボイラーを使うときに重要なのは実際蒸発量です。
計算の前に、自分の設備の蒸気圧力(ゲージ圧か絶対圧か)、給水温度、蒸気の状態(飽和蒸気か過熱蒸気か)の3つを確かめておきます。この3つで、蒸気1kgに要る熱が決まります。
相当蒸発量2,000kg/hのボイラーを例に、実際蒸発量を簡易的に次の手順で計算します。
ボイラーの熱量を、実際の蒸気1kgに要る熱で割るだけです。
※条件は蒸気0.8MPaG(飽和蒸気)、給水20℃。ボイラー効率の違いは含みません。
まず、相当蒸発量からボイラーの能力を計算します。今回は、100℃の飽和水を加熱して1時間に2,000kgの蒸気を発生させられるので、ボイラーの能力は次のようになります。
次に、実際の蒸気1kgを発生させるのに必要な熱量を出します。ボイラーの設定圧力が0.8MPaG、給水温度が20℃なら、それぞれのエンタルピーは蒸気表から次のとおりです。
- 0.8MPaGの蒸気:2,773kJ/kg
- 20℃の水:84kJ/kg
蒸気表は絶対圧で引くので、0.8MPaG(ゲージ圧)は大気圧を足した約0.9MPaの行を見ます。この2つの差が、求めたい値です。
よって、ボイラーの能力を、実際に蒸気をつくるのに必要な熱量で割ると次のようになります。
3つの手順を1本にまとめると、相当蒸発量の式を実際蒸発量について解いた形になります。
相当蒸発量に対して、16%も小さい値が出たことになり、この式から、ボイラーの能力が同じなら給水の温度が高いほうが発生できる蒸気量は増えることもわかります。
使用条件によって相当蒸発量と実際蒸発量にはこれだけの差があるため、選定の際には注意しましょう。
早見表:相当蒸発量1,000kg/hあたりの実際蒸発量
飽和蒸気をつくる場合の目安です。蒸気表の値から計算しており、ボイラー効率の違いは含みません。
| 蒸気圧力\給水温度 | 20℃ | 40℃ | 60℃ | 80℃ |
|---|---|---|---|---|
| 0.4MPaG | 847 | 875 | 904 | 935 |
| 0.6MPaG | 843 | 870 | 899 | 930 |
| 0.8MPaG | 839 | 866 | 895 | 926 |
| 1.0MPaG | 837 | 864 | 892 | 923 |
例えば相当蒸発量2,000kg/hのボイラーを0.8MPaG・給水20℃で使うなら、839×2=約1,680kg/hで、上の計算(1,679kg/h)とは丸め方の差だけです。
表を見ると、圧力よりも給水温度の影響が大きいことがわかります。0.8MPaGで給水を20℃から60℃に上げると約7%増える一方、給水20℃で圧力を0.4から1.0MPaGに上げても約1%しか減りません。
そのため、ドレン(蒸気が冷えてできた温水)を回収して給水に戻したり、エコノマイザ(節炭器)で給水を温めたりすると、同じボイラーで出せる蒸気量が増えます。こうした熱の回収は、工場の省エネの定番の打ち手でもあります。
ただし、ボイラーの効率は給水温度や燃料の種類、負荷の大きさで変わるため、精緻な値が知りたい場合は、ボイラーメーカーに問い合わせる必要があります。効率の考え方はボイラー効率の計算方法(入出熱法・熱損失法)で詳しく整理しています。
相当蒸発量・蒸発量のよくある質問
蒸発量と蒸気量の計算で迷いやすい点を、相当蒸発量との関係でまとめます。
手元にある数字によって、使う式が変わります。どれも「熱量 ÷ 蒸気1kgに要る熱」の形です。
※配管の放熱、ブロー、負荷の変動は含みません。実際の選定では余裕を見ます。
蒸発量とは何ですか?
蒸発量とは、ボイラーが1時間に発生させる蒸気の量(kg/h、t/h)です。実際の給水温度・圧力で出せる量を実際蒸発量、100℃→100℃の条件に換算した量を相当蒸発量(換算蒸発量)と呼び分けます。
この記事でいう実際蒸発量は給水温度と圧力から計算した「その条件で出せる能力」であり、運転中に流量計で測った蒸気量は、負荷やボイラー効率の影響も含んだ実測値になります。
カタログや仕様書に「蒸発量 2,000kg/h」とだけ書かれている場合も、相当蒸発量で表示していることが多いです。中小企業基盤整備機構の解説でも、ボイラーの仕様は換算蒸発量で表示されるとしているので、条件の注記を確かめましょう。
必要な蒸気量(kg/h)はどう計算しますか?
加熱したい設備の熱負荷が分かっていれば、熱負荷を蒸気の潜熱で割って求めます。蒸気は凝縮してドレンになるときに潜熱を手放すので、使う圧力の潜熱で割るのが基本です。ドレンをさらに冷やして顕熱まで使う設備は、その分を差し引いて考えます。
この890kg/hを給水20℃・0.8MPaGのボイラーで出すには、相当蒸発量で約890×2,689÷2,257≒約1,060kg/hのボイラーが要る計算です。実際には配管の放熱や負荷の変動を見込んで余裕を持たせます。
相当蒸発量をkWに換算するには?
相当蒸発量に2,257を掛けて3,600で割る式は、日本産業機械工業会の貫流ボイラ性能表示ガイドラインでも、熱出力[kW]を出す式と定めています。
燃料の使用量から蒸発量を出せますか?
燃料の使用量、発熱量、ボイラー効率が分かれば出せるもので、同じガイドラインでは、燃料消費量×燃料発熱量×ボイラー効率÷2,257で相当蒸発量を求めます。
発熱量の標準値は、A重油36.7MJ/L、灯油34.8MJ/L、都市ガス13Aで40.6MJ/m³Nです(日本ボイラ協会の標準値)。これらは低位発熱量(真発熱量)の値で、高位発熱量(A重油38.9MJ/L、13Aで45.0MJ/m³N)より5〜10%小さい値です。
そのため、効率も低位発熱量基準の値を組み合わせ、高位発熱量で計算するなら効率も高位発熱量基準の値に置き換えます。
逆に燃料の量も出せ、相当蒸発量2,000kg/hのA重油焚きで効率を90%(低位発熱量基準)と仮定すると、燃料は2,000×2,257÷(36,700×0.9)≒約137L/hです。
燃料代や設備の見直しを考えるなら、効率の改善と給水温度の改善を分けて評価すると判断しやすくなります。エネルギー管理の実務は製造業のエネルギー管理士の仕事でも紹介しています。
過熱蒸気をつくるボイラーの場合は?
式は同じで、h2に蒸気表(過熱蒸気表)から引いたその圧力・温度の過熱蒸気の比エンタルピーを使います。過熱するぶんh2が大きくなるので、同じ相当蒸発量でも実際蒸発量はさらに小さくなります。
まとめ
- 相当蒸発量(換算蒸発量・基準蒸発量)は、100℃の飽和水を100℃の飽和蒸気にすると想定した際の能力
- 実際蒸発量は、実際の給水温度・蒸気圧力で出せる蒸気量で、相当蒸発量より小さくなる
- 相当蒸発量と実際蒸発量は、G=Ge×2,257÷(h2−h1)の計算で変換できる
- 圧力よりも給水温度の影響が大きく、給水を温めると実際に出せる蒸気量が増える
- 精緻な値はボイラー効率が影響するので、メーカーへの問い合わせが必要
相当蒸発量と実際蒸発量の違いについてでした。熱関係の機器は、電気と違い実際の使用環境が機器選定時と大きく異なることが多いので、選定を間違えないよう十分に注意しましょう。
ボイラーの種類や構造はボイラーとは何か(種類と仕組み)で詳しく解説しています。ボイラーを含むユーティリティ設備の日常管理は、設備保全の仕事の大きな柱です。
出典
出典・参考資料(5件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 相当蒸発量の定義・熱出力と燃料からの式・燃料発熱量の標準値:一般社団法人日本産業機械工業会 ボイラ・原動機部会「貫流ボイラ性能表示ガイドライン」(2017年3月29日、JIS B 8222 を引用)
- 換算蒸発量と実際蒸発量の換算式:中小企業基盤整備機構 J-Net21「蒸気ボイラーの蒸発量」
- 水・蒸気の比エンタルピー(早見表・図の検算):NIST Chemistry WebBook「Thermophysical Properties of Fluid Systems」(Water)
- ボイラーの燃料消費量と蒸気量の関係:環境省「温室効果ガス排出削減等指針 対策メニュー:ボイラー排ガス顕熱回収装置・分散ボイラーシステム等」
- 燃料の低位発熱量と高位発熱量の値:環境省「設備更新等によるCO2削減効果の算定ツール(ボイラーの燃料転換、高効率化)」
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