温度センサーのダブルエレメントとは?構造とメリット・注意点

温度センサーの保護管とリード線


温度センサーのダブルエレメントとは、一つの保護管やシースの中に二つの感温素子を収め、二系統の測定に使う構造です。同じ測定箇所の温度を制御用と記録用に分けたり、一方を予備にしたりする目的で選びます。

一般的な一体形では先端付近に二つの素子を置くので、離れた二か所を自由に測れるという意味ではありません。タンクの上部と下部の温度を知りたい場合などは、測定位置を指定する多点式や、別々のセンサーを検討します。

選定では素子の数だけでなく、配線の独立性と共有する構造を一緒に読むことが大切で、二素子でも故障をすべて分離できるわけではありません。断面図と結線図を使い、用途の分け方と仕様書で確認する項目を整理します。

上の動画はダブルエレメントの概要を扱ったものですが、測点数や精度については本文で条件を補っています。一般的な二素子構造で何を分けられるのかを確認し、設備に必要な機能と照らし合わせてください。

目次

ダブルエレメントとは

エレメントは温度を感じる部分であり、測温抵抗体では抵抗素子、熱電対では測温接点とその回路に対応します。シングルとダブルは素子・測定回路の数の違いで、表示器の数や測定位置の数を指す言葉ではありません。

図1:一本の保護管内に二つの感温部を収める

測温抵抗体を例にした断面模式図です。先端近くの二素子から、別々の端子群へ配線を引き出します。

横にスクロールして全体を確認できます。

端子箱端子群A端子群B素子A素子B共通の保護管各素子のリード線

※位置・寸法は模式的で、線数は省略しています。実際の素子配置、シースや保護管の構造、端子配列は製品の図面で確認します。

測温抵抗体は金属の抵抗が温度で変わる性質を使い、熱電対は異種金属を組み合わせた回路の熱起電力を使います。熱電対と測温抵抗体の違いを踏まえて測定原理を選び、そのうえで必要な素子数を決めます。

リード線型では二系統の線束が出る構成があり、端子箱付きでは各素子を別々の端子群へ接続します。外観が似たシングル製品もあるので、端子箱や配線の見た目だけで判断せず、型式と結線図を照合してください。

日本電測のR26・R36シリーズは素子数にシングルのSとダブルのDを用意し、日本ヒーターも一本のシースに二個のセンサーを収める特注仕様を案内しています。どちらも製品ごとの選択肢であり、外径や温度範囲の制約まで共通とは限りません。

サーミスタなどの他の測定原理や、異種素子の組み合わせ、トリプルエレメントへの対応も、メーカーへ照会する仕様です。「ダブル」という名称だけで素子の種類や材質、結線、許容差が決まるわけではないので、必要条件を分けて伝えます。

素子数と2線式・3線式・4線式の違い

測温抵抗体の線式は、一つの抵抗素子を受信機器へどのように接続するかを示す区分で、素子の数とは別に選びます。3線式のシングルもあれば、3線式のダブルもあるため、発注書には両方の条件を記載します。

岡崎製作所の説明では、2線式は導線抵抗が測定抵抗に加わり、3線式も導線抵抗のばらつきが精度へ影響します。4線式は導線抵抗の影響を抑える方式ですが、受信側も対応している必要があり、線を増やすだけで変更はできません。

例えば、3線式を二組使う計画なら、センサー端子から盤の入力端子まで、それぞれの組を追える配線表を作ります。途中の端子台でAとBを取り違えると、予備に切り替えたつもりでも、意図した素子を使えなくなります。

シングル二本・ダブル一本・多点式の選び方

同じ取付位置の温度を別々の機器で使いたいならダブル、離れた位置の温度を調べたいなら別々のセンサーか多点式が候補になります。タンクの温度分布を調べる場合は、高さごとの測点を決めてから構造を選ぶ順番です。

シングルを二本取り付ける案は、取付口や工事が増える一方で、一本ずつの交換や取付位置の分離を検討できます。ダブル一本と比較するときは本体価格だけでなく、片側が故障した後にどの範囲を交換するかも見積もります。

ダブルエレメントのメリットとデメリット

主な利点は、取付口や保護管をまとめながら二系統の測定回路を取り出し、制御と記録などの用途を分けられることです。設置するセンサー本体の数を減らせる場合がありますが、配線や受信機器の入力は二系統分が必要です。

図2:3線式測温抵抗体を二組、別々の入力へつなぐ

各素子から3本ずつ、合計6本を引き出す例です。一つの素子を二台の入力へ分岐する結線とは異なります。

横にスクロールして全体を確認できます。

素子A素子B制御用温度入力記録用温度入力3本ずつを独立配線保護管を共有受信機器は別入力

※端子名・色分け・極性の指定は省略しています。抵抗素子への接続を示す原理図であり、実際の施工では製品の結線図を使ってください。

測温抵抗体の温度入力は素子へ測定電流を流すため、一素子へ二台を単純に並列接続すると、互いの測定へ影響するおそれがあります。二つの素子を別回路で使う方法と、対応する信号変換・分配機器を使う方法を区別して設計します。

伝送器で4–20mAの電流信号へ変換して送る場合も、素子数と出力系統数は別の仕様になります。二素子をどの入力へ接続し、伝送器がいくつの信号を出すかを、入力から受信側までの信号図で確認します。

一方を予備にすれば、片方の素子や配線の異常時に、もう一方へ測定を切り替える選択肢を設けられます。ただし、二素子にしただけでは自動切り替えにならないので、受信機器の機能と切り替えの運転手順まで決める必要があります。

二つの測定値を比べると異常を調べる手がかりになりますが、差が出ても、どちらが正しいかはそれだけでは分かりません。入力設定や配線、素子の応答差などを調べ、必要に応じて基準計との比較や校正で原因を切り分けます。

二素子の平均を取れば精度が必ず上がるわけでもなく、二つに共通する誤差は平均しても残ってしまいます。必要な許容差や応答性に合う素子を選び、校正と取付状態を含めて評価することが、測定値を比較する前提になります。

図3:分けられる故障と、共有部分に残る故障

二つの回路を分けても、保護管や取付位置は共通です。予備系統の目的に合わせて故障範囲を確認します。

片側の断線他方を使える場合共通の保護管破損二系統へ影響し得る共有部分の損傷

※構造から考えられる故障範囲の模式図です。片側断線時の測定継続や、保護管破損時の影響を一律に保証するものではありません。

重要な制約は、二つの素子が保護管や取付箇所、周囲の環境を共有していることで、図3はその構造から考えられる故障範囲を示しています。保護管の破損や挿入位置の不良では、二系統の測定に同時に影響する可能性があります。

バックアップを目的とする場合は、片側の断線への備えなのか、取付部分も含めた故障への備えなのかを先に整理します。独立した安全監視や停止機能を求める設備では、同じ保護管を共有して要求を満たせるか、設計条件との照合が必要です。

二素子を収めるための外径や端子箱の寸法、必要な配線本数、価格は製品ごとに変わり、既設品との互換性も確認します。取付ねじが同じでも、そのまま置き換えられるとは限らないので、挿入長や受信側の入力まで比較してください。

入力が二つでも、出力が二系統とは限らない

伝送器を使う構成では、二つの素子の値をどのように出力へ割り当てるかまで決める必要があり、入力数だけでは用途を判断できません。Endress+HauserのTMT82は、二つのセンサ入力に対し、アナログ4〜20mA/HART出力は一系統です。

制御と記録へそれぞれの測定値を送りたい場合は、二つの値を個別に受け取れる構成かを接続先まで確認します。同じ出力信号を分配する案では、表示先が二台になっても、元のセンサーや伝送器を共有する範囲が残ります。

一方、断線時の測定継続を目的にするなら、バックアップに対応した伝送器の機能と、切り替えの対象になる異常を調べます。断線を検知できることと、もっともらしい温度を示すずれを検知できることは、分けて仕様を読む必要があります。

二つの温度が違うときの切り分け

温度差が生じたら、最初に両チャンネルの記録時刻と、設備の温度が変化中か安定中かを確認して比較条件をそろえます。更新周期や表示の平滑化が違うと、同じ時刻に見える数字でも、異なる時間の状態を示すことがあります。

安定後も差が続く場合は、素子の種類と受信機器の入力設定を照合し、センサーから入力までの対応を図面で追います。測温抵抗体なら線式や端子の組み合わせも確認し、取り違えがない状態で素子の健全性を調べる順番にします。

例えば交換直後から差が出た場合は、新旧の型式と設定値を照合するほうが、経年劣化だけを疑うより原因を絞れます。運転中に急に変わった場合は、その時刻の作業や周囲の状態も記録し、変化の前後で何が違うかを調べます。

岡崎製作所の取扱説明書では、リード線を無理に引っ張らないことや、端子箱への雨水などの侵入を防ぐことが示されています。端子周辺の異常も調査対象に含め、素子本体だけを交換して同じ症状を繰り返さないようにします。

入力を入れ替えて比較する方法もありますが、制御に使う回路を外すと、制御出力や警報に影響するおそれがあります。実施の可否と運転への処置を先に決め、機器の取扱説明書と設備の作業手順に従って、担当者が切り分けます。

岡崎製作所の取扱説明書は、センサーの点検・交換を、運転停止と常温・常圧を確認してから行うよう指示しています。二素子の片方を使えることだけを理由に運転中に引き抜かず、対象機器の説明書と設備の作業手順に従ってください。

配線本数と温度差を計算する例

図2の構成を数量で確認するため、二素子をそれぞれ独立した3線式として盤へ直接接続する計画を考えます。必要な芯数は各素子の導線数から求め、シールドや予備芯、接地に使う導体はこの計算に含めないものとします。

測定用導線の本数:一般式と数値代入
N = n × k
N = 3 × 2 = 6本
N:測定用導線の合計[本]、n:一素子の導線数[本]、k:独立して接続する素子数[個]。3線式二組を接続する説明例です。

次に、安定した同じ対象を測り、素子Aの表示が100.4℃、素子Bの表示が99.8℃だったと仮定して差と平均を求めます。ここで使う値は計算手順を示す説明用の仮定であり、製品の実測値や許容差の推奨値ではありません。

二系統の指示差:絶対値で比較
ΔT = |TA − TB|
ΔT = |100.4 − 99.8| = 0.6℃
二系統の算術平均
Tm = TA + TB2
Tm = 100.4 + 99.82 = 100.1℃
TA・TB:各系統の指示温度[℃]、ΔT:指示差[℃]、Tm:算術平均温度[℃]。この計算だけでは真の温度は求まりません。

この結果から分かるのは、二系統の表示の隔たりと算術平均までであり、平均が正しい温度であるとは判断できません。二つの値が同じ方向にずれている場合もあるため、良否を決めるには基準計との比較や測定系の誤差の評価が必要です。

0.6℃という差だけを取り出して、すべてのダブルエレメントに共通する故障判定の境界にはできません。使用温度での素子の許容差と入力機器の誤差を調べ、工程で許される温度の幅に対して、判定条件を決めます。

発注から交換後までの確認

発注時は既設の型式だけでなく、取付図と結線図に、Aを制御、Bを記録といった用途を記入してメーカーへ伝えます。後から用途を変える予定がある場合も、必要な入力機能や端子の余裕を、現在の構成と一緒に確認してください。

温度範囲は感温部だけの条件とせず、リード線や接続部が置かれる周囲温度も含めて、構成する部品の条件を照合します。先端が使用範囲内でも、接続部が高温になる配置では、センサー一式としての適合確認が必要です。

納入時には銘板と発注仕様を照合し、二組の線や端子の識別が、配線表のA・Bと一致することを確認します。交換後は現場の接続と盤側のチャンネル対応を記録し、二つの表示が出ただけで完了にしないことが取り違え防止につながります。

予備用の素子は日常画面に表示されない構成もあるため、健全性をいつ、どの方法で確認するかを保全計画へ含めます。切り替え先の状態が分からないまま予備を当てにせず、点検結果と次の確認時期を設備の記録に残してください。

ダブルエレメントのよくある質問

3線式のダブルエレメントは線が何本になりますか?

各素子を独立した3線式として引き出す一般的な構成では、図2のように3本ずつの二組で計6本になります。端子の名称や色分けは結線図で確認し、6本という見た目だけで測定原理や回路の種類を決めないようにします。

シングルエレメントを二台の表示器へ分岐できますか?

測温抵抗体では、二台の入力機器を一素子へ直接並列に接続すると測定電流が互いに影響するおそれがあるため、対応仕様の確認が必要です。二素子の独立回路を使うか、信号変換・分配機器を使うかを、受信側の仕様に合わせて選びます。

二つの測定値が違ったら素子の故障ですか?

差の原因には素子の故障だけでなく、結線や入力設定、測定電流、温度変化への応答差なども考えられます。素子A・Bと入力チャンネルの対応を記録し、同じ条件で比較できるようにしてから、異常のある範囲を調べてください。

発注するときに何を伝えればよいですか?

測りたい位置と二系統の用途を伝え、素子数だけでは決まらない温度範囲や結線、外形条件を仕様書へ落とし込みます。受信機器の入力仕様も添えて照合すると、センサーの構造と盤側の配線を別々に決めてしまう取り違えを防げます。

図4:発注・置き換え時に埋める仕様の照合表

取付口をまとめられるかだけでなく、必要な測点と独立性を満たすかまで確認します。

確認する仕様伝える内容図面・機器との照合
測定位置と用途同じ箇所か離れた複数点か、制御・記録・予備素子の位置、共通故障の範囲
素子熱電対・測温抵抗体などの種類、数、温度範囲、許容差型式の素子数記号と受信側の入力設定
機械的な取付保護管材質・外径・挿入長・取付方法取付口、使用環境、交換スペース
電気的な接続結線方式、端子数、入力・出力の系統数各素子の結線図、ケーブル、伝送器・受信機器

※素子数と結線方式は別の指定です。異種素子やトリプルへの対応は、発注先の製作範囲を確認します。

まとめ

この記事のまとめ
  • ダブルエレメントは二つの感温素子・測定回路を備える構造です。
  • 一般的な一体形は同じ測定箇所の近傍を二系統で測ります。
  • 制御と記録の使い分けや予備回路に利用できます。
  • 保護管や取付位置を共有する故障範囲は別に検討します。
  • 素子数と結線、外形、受信機器の仕様を照合します。

工事や交換の負担を減らせる場合でも、必要な測定位置と独立性を満たすことが、ダブルを選ぶ前提になります。点検方針はTBMとCBMの使い分け、信号の接続は計装信号の種類と方向も使って整理できます。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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