背圧タービンとは、排気を大気圧以上の圧力のまま出し、その蒸気を工場の加熱などに使う蒸気タービンです。排気を復水器で水に戻し、真空まで膨張させて発電量を最大にする復水タービンとは、排気の使い方が正反対です。
取り出せる電気は復水タービンより減りますが、排気の熱を捨てずに使えるため、電気と熱を合わせた全体の効率が上がります。この記事では、背圧タービンの仕組み、メリット、制御方法、抽気背圧タービン、復水タービンとの違いの順に整理します。
背圧タービンとは

背圧タービンは蒸気タービンの一種で、排気圧力が大気圧以上のタービンです。排気の全量を工場などの熱源に使うので、復水器を持ちません。
「背圧」はタービンの出口側にかかる圧力のことで、高い圧力の蒸気を工場で使う圧力まで下げる途中で発電するので、タービンが蒸気の減圧弁の役も兼ねます。
タービンを出た蒸気は、復水器ではなく工場の設備へ向かいます。
※復水タービンは、排気を復水器で水に戻して排気側を真空にし、蒸気を最後まで膨張させます。
排気を工場の加熱に使えば全体の熱効率を大幅に上げられるため、電気と熱を同時に使うコージェネレーション(熱電併給)でよく使われるタービンです。
ガスタービンの排熱で蒸気をつくり、その蒸気でも発電するコンバインドサイクルでも、熱も工場で使う形なら背圧タービンや抽気タービンが使われます。発電所の大型コンバインドサイクルでは、発電量を最大にする復水タービンが普通です。
電気と熱を同時に使う設備の全体像は、コージェネレーションとコンバインドサイクルの違いで整理しています。導入を検討する条件はコージェネレーションを導入するメリット、検討条件も参考になります。
背圧タービンは、発電以外にポンプ・送風機・圧縮機を回す用途にも使われます。たとえば新日本造機は、背圧タービンの用途に、ボイラーの給水ポンプや通風機の駆動も挙げています。
電動ポンプと同じ役目のタービン駆動ポンプを並べ、停電時の備えにする設備もあるのは、停電しても蒸気があれば動くからです。
たとえば加圧水型の原子力発電所は、電動補助給水ポンプとは別にタービン動補助給水ポンプを備えているので、全交流電源を失っても、主蒸気でポンプを回して給水できます。
背圧タービンのメリット
背圧タービンのメリットは、プロセスで蒸気の利用先がある場合にエネルギー効率が上がる点です。まず、復水タービンで発電する場合を考えます。

復水タービンで発電する場合は、一般的なランキンサイクルの流れになります。
- ボイラーで発生させた蒸気を復水タービンに入れる
- 復水器で蒸気を凝縮させ、高い真空をつくる
- 復水をポンプでボイラーへ戻す
- 復水器で奪った熱は、冷却塔で冷やして大気へ捨てる
燃料のエネルギーを100とすると、電力として取り出せるのは30程度で、残りの多くは冷却塔から大気に捨てられます(考え方を示す目安)。
電気を取り出す方法としては効率的ですが、燃料全体で見るとむだが多くなります。一方、背圧タービンの流れは次のとおりです。

- ボイラーで発生させた蒸気を背圧タービンに入れる
- 背圧タービンから出た蒸気を、プロセスの加熱に使う
- 凝縮した水(復水)を回収し、ポンプでボイラーへ戻す
同じく燃料を100とすると、電力は10程度しか取り出せませんが、その代わり加熱に60を使うので、全体では70のエネルギーを有効に使えます。
実機の例は、米国環境保護庁(EPA)のCHP技術カタログ(2017年)にあります。500kW〜15MWの背圧タービン3例は、燃料に対する発電効率が5〜7%程度、工場へ送る蒸気を含めた総合効率が約80%です(高位発熱量基準)。
同じ資料では発電所のボイラーと蒸気タービンの平均効率が約33%で、数字は違っても、電気は少なく全体の効率は高いという傾向は同じです。
電気だけを見れば復水タービン、電気と熱の合計では背圧タービンが上回ります。
※上の系統図の数字で、考え方を示すための目安です。実際の割合は蒸気の条件、設備の規模、熱を使い切れるかで変わります。
日本大百科全書も、背圧タービンはタービンの効率は少し低くなるが、工場全体の熱効率は高いと説明しており、動力用と加熱用の蒸気を別々につくるより燃料を節約できます。
裏を返すと、効果が出るのは排気の利用先がある場合だけで、工場の蒸気の使用量が減る時間帯は、そのぶん発電量も減ります。
機構は同じでも、電力ではなく、液体を送るポンプや空気を圧縮する機械を回すものもあります。蒸気の膨張でエネルギーを取り出す流れは、ランキンサイクルの仕組みで詳しく説明しています。
運転では、背圧を必要以上に高くしないことも欠かせません。環境省の指針は、背圧の許容される最低値を管理標準として決め、下限に近い背圧で運用することを勧めています。
タービンの入口と出口の圧力差が大きいほど、回収できるエネルギーが増えるからです。圧力差と取り出せる仕事の関係は熱落差とタービン効率で計算できます。
同じ資料には、背圧を下げてタービンによる熱回収率を5%から6%に上げると、エネルギー消費量などが4%減る試算例があります。これは背圧タービンを使う工場の個別条件での試算で、どの設備にも当てはまる数字ではありません。
工場全体のエネルギーのむだを減らす考え方は、工場の省エネとエネルギー管理の基本でまとめています。
背圧タービンの制御方法
背圧タービンの制御は、ガバナ(調速機)が蒸気加減弁を動かし、タービンに入る蒸気の量を変えて行い、ここでは代表的な2つの制御と、一次圧力の制御を紹介します。
1組の加減弁で一定にできるのは1つの量だけで、何を一定にするかを決めると、ほかの量は成り行きになります。
系統(電力会社の送電網)とつないでいるか、切り離しているかで変わります。
※日立評論 1972年2月「産業用タービンにおける電子油圧式ガバナの運転」表1(通常の場合)をもとに作成。抽気背圧タービンは加減弁を2組持つ形式の例です。
排気圧力一定制御
タービン二次側の排気圧力が一定になるように、一次側のガバナでタービンに入る蒸気の量を調整します。工場の蒸気の使用量が増えて排気圧力が下がれば、加減弁を開いて蒸気を増やします。
タービンの出力は成り行きになりますが、排気圧力が一定なので二次側の利用先で安定した加熱ができ、一般的によく使われる方法です。
日立評論(1972年)の表では、通常の背圧タービンは系統と並列なら排気圧力制御、単独運転なら回転数制御です。並列中は、蒸気の需要に合わせて出た電力の過不足を系統が受け持ちます。
出力一定制御
背圧タービンの出力(仕事)が一定になるように制御する方法で、排気圧力は成り行きになりますが、出力を一定にできます。
出力に制限がある場合や、ポンプを回すときに使われ、ポンプ駆動では、回転数や吐出側の圧力を目標にして仕事の量を決めます。
系統から切り離した単独運転では、所内の周波数を保てるのがタービンだけになります。そのため、出力ではなく回転数を一定にする回転速度制御になります。
排気を他の用途で使う場合は、別の制御ラインで圧力を一定にする機構が必要です。タービンを通さずに減圧して送るラインがその例で、タービンバイパス弁の役割で仕組みを解説しています。
制御としては、一次圧力(タービン入口の蒸気圧力)を一定にする方法もあります。日立評論(1972年)は、製紙の回収ボイラや製鉄の多種燃料ボイラと組む場合、タービン側で主蒸気圧力を制御するほうが有利な場合が多いとしています。
同じ論文の採用例は抽気背圧タービンや二段抽気復水タービンで、主蒸気圧力の制御を加えるときは、ほかの制御量を1つ外す必要があります。
どの制御にするかは、何を優先するかで使い分けます。4つの制御の全体像は蒸気タービンの制御方法まとめで比べています。
抽気背圧タービンとは

背圧タービンの中でも、排気ラインが複数あるものを抽気背圧タービンと呼びます。途中の段から蒸気を抜き出し(抽気)、最終段の排気も工場へ送るタービンです。
1台のタービンで圧力の違う蒸気を取り出せるので、複数の系統に蒸気を送りたいときに有効です。利用先の状況に合わせて抽気量を調整できるのも特徴です。
日立評論(1972年)の表では、抽気背圧タービンは系統と並列なら抽気圧力と排気圧力、単独運転なら回転数と抽気圧力を制御します。抽気圧力をタービン内部で制御する形式は、加減弁を高圧側・低圧側の2組持つので、2つの量を同時に一定にできます。

一方、抽気復水タービンは、最終段の排気が復水器に入るタービンです。抽気背圧タービンと名前が似ていますが、排気圧力が違います。
排気を復水器へ送るか工場へ送るか、途中で抽気するかの組み合わせです。
※産業用の蒸気タービンのメーカーは、復水・抽気復水・抽気背圧・混圧などの型式をそろえています(三菱重工のラインアップなど)。
抽気の仕組みと抽気復水タービンのメリットは、抽気とは?抽気復水タービンの仕組みで解説しています。抽気圧力を一定に保つ2つの方式は内部抽気圧力制御と外部抽気圧力制御の違いで比べています。
背圧タービンと復水タービンの違い
背圧タービンと復水タービンの違いは、排気を工場の熱に使うか、復水器で水に戻すかです。この違いから、発電量・全体の効率・向く場面が分かれます。
電気を多く取るか、電気と熱を合わせて使うかの違いです。
※日本大百科全書「蒸気タービン」の型式の説明をもとに作成。熱の使い道が足りないと、背圧タービンの利点は出ません。
復水器が真空になる理由と構造は、復水器とは?真空になる理由と役割で解説しています。背圧タービンを選ぶ前には、次の3点を確かめておくと判断しやすくなります。
- 工場で使う蒸気の量と、時間帯・季節による増減
- プロセスに必要な蒸気の圧力(排気圧力の下限になる)
- 欲しい電力と、蒸気の使用量から出る発電量の釣り合い
蒸気の需要と電力の需要がどちらも大きく変わる工場では、抽気復水タービンが選ばれることもあります。抽気で工場に蒸気を送りつつ、残りで発電を続けられるからです。
背圧タービンのよくある質問
タービンとは?
タービンとは、蒸気・ガス・水などの流体を羽根車に当てて回し、動力を取り出す原動機です。蒸気タービン、ガスタービン、水車(水力タービン)などがあります。
復水タービンとは?
復水タービンとは、排気を復水器で水に戻し、排気側を高真空にして蒸気を最後まで膨張させるタービンです。同じ蒸気から取り出せる電力が最も多く、発電所の主力です。
抽気タービンとは?
抽気タービンとは、膨張の途中で蒸気の一部を抜き出し、加熱などに使うタービンです。残りを復水器に送るものを抽気復水タービン、排気も工場に送るものを抽気背圧タービンと呼びます。
日本大百科全書のように、「抽気タービン」を抽気復水タービンの意味で説明する資料もあります。
排気タービンとは?背圧タービンとの違いは?
排気タービンは、一般にエンジン(内燃機関)の排気ガスで回すタービンを指します。自動車や船のターボチャージャー(排気タービン過給機)がその代表です。
背圧タービンは排気を「出す側」の蒸気タービンで、排気タービンは排気を「受けて回る側」です。工場などから出る低圧蒸気で回す蒸気タービンを排気タービンと呼ぶこともあるので、文脈で見分けます。
背圧はどこまで下げられる?
下限は、工場のプロセスが必要とする蒸気の圧力で決まります。末端の設備までの配管や弁で圧力が下がる分も見込んで、必要な圧力を確かめます。
環境省の指針の図でも、プロセスの必要圧力に近づけるほどタービンで回収するエネルギーが増える、という考え方です。下限を割ると工場で蒸気が使えなくなるので、下げられるのは必要圧力までです。
まとめ
- 背圧タービンは、排気圧力が大気圧以上で、排気の全量を工場の熱に使う蒸気タービン
- 電気は復水タービンより少ないが、熱を使い切れれば全体の効率は上がる
- 系統と並列なら排気圧力一定制御、単独運転なら回転数を一定にする制御が基本
- 抽気背圧タービンは、圧力の違う蒸気を複数の系統に送れる背圧タービン
- 復水タービンとの違いは、排気を熱に使うか、復水器で水に戻すか
背圧タービンは復水タービンに比べると電力として取り出せる量は少ないですが、全体としては効率が上がります。自分の工場の背圧はいくつで、どの制御で動いているかを確かめておくと、運転の理解が深まります。
蒸気設備を受け持つ仕事はプラントエンジニアの仕事や製造業のエネルギー管理士の仕事でも紹介しています。
出典
出典・参考資料(9件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 蒸気タービンの型式(復水・背圧・抽気タービン):日本大百科全書(ニッポニカ)「蒸気タービン」(コトバンク)
- 背圧タービンの定義・燃料節約:デジタル大辞泉・ブリタニカ国際大百科事典「背圧タービン」(コトバンク)
- タービン・排気タービンの定義:コトバンク「タービン」、コトバンク「排気タービン」
- 背圧の管理と試算例:環境省「温室効果ガス排出削減等指針 対策メニュー 抽気タービンの抽気圧力・背圧タービンの排圧の適正管理」
- 産業用タービンの種類と制御する量:日立評論 1972年2月「産業用タービンにおける電子油圧式ガバナの運転」
- 背圧タービンの発電効率・総合効率の例:U.S. EPA「Catalog of CHP Technologies」(2017年9月)Section 4 Steam Turbines、Table 4-2
- タービン動補助給水ポンプ:原子力委員会 定例会議資料「(参考)タービン動補助給水ポンプについて」、九州電力「玄海原子力発電所4号機 第16回定期検査中における運転上の制限逸脱について」(概略系統図)
- 背圧タービンの用途(ポンプ・送風機・圧縮機の駆動):新日本造機「蒸気タービン」
- 産業用蒸気タービンの型式:三菱重工「産業用自家発・火力発電用蒸気タービン」
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