同期発電機と誘導発電機の違いは?構造・すべり・励磁と用途の使い分け

工場の発電機室に設置された交流発電機と保護カバーのイメージ

同期発電機と誘導発電機の違いは、回転子の磁界の作り方、回転速度と周波数の関係、励磁に必要な電力の受け渡しにあります。名前だけで大規模向け・小規模向けと分けず、系統につなぐのか、単独で電源を作るのかまで含めて比較することが大切です。

同期発電機は、磁界を作る回転子が電気的な回転磁界と同期して運転する方式です。一般的な系統直結のかご形誘導発電機は、原動機で同期速度より速く回して有効電力を送り出し、磁界を作るための無効電力を系統などから受け取ります。

ただし、永久磁石を使う同期発電機や、変換器を介する可変速方式、コンデンサを使う自己励磁方式もあります。この記事では、まず基本構造と系統直結の運転を説明し、その後に例外となる方式、計算例、用途に応じた選び方を整理します。

目次

同期発電機とは

同期発電機は、固定子と回転子を持つ交流発電機で、一般的な回転界磁形では固定子側の巻線から電力を取り出します。原動機が回転子を回し、その磁界が固定子巻線を通る磁束を変化させることで、交流の起電力が発生します。

回転子の磁界を作る方法には、界磁巻線へ直流を流す巻線励磁式と、永久磁石を使う方式があります。したがって、同期発電機の回転子に必ず永久磁石が取り付けられているわけではありません。巻線励磁式では、励磁装置の構成と調整機能も確認します。

図1:巻線励磁式では回転子に界磁巻線、固定子に出力巻線がある

回転界磁形の位置関係を示す模式断面。磁束の変化で固定子巻線に交流起電力が生じます。横にスクロールできます。

NS 界磁巻線:直流で励磁固定子巻線:交流出力永久磁石式は、界磁巻線に代わり永久磁石で回転子の磁界を作る外側:固定子 内側:回転子

※見やすさのため2極と一部巻線だけを描いた概念図。下の4極の計算例とは別で、実機の結線や磁束分布を再現した図ではありません。

巻線励磁式では界磁電流を変えて内部の起電力を調整し、電圧や無効電力の制御に利用します。ブラシやスリップリングを用いる方式だけでなく、交流励磁機と回転整流器を使うブラシレス方式もあるため、保守項目は励磁方式によって異なります。

永久磁石式は回転子の磁界を永久磁石が作るので、界磁巻線の電流を加減する方式とは制御が異なります。変換器と組み合わせて発電機側と系統側を調整する例もあり、「同期機ならすべて同じAVRで同じように調整する」とは考えないようにします。

回転速度と周波数は極数で結び付く

同期発電機の電気周波数は、機械的な回転速度と極数の関係で決まります。同じ50Hzでも2極機と4極機では同期速度が違うため、周波数だけから発電機の回転数を一つに決めることはできません。銘板に示された極数と周波数を一緒に確認します。

極数と周波数から同期速度を求める
ns = 120fP
50Hz・4極:120 × 504 = 1,500min⁻¹
60Hz・4極:120 × 604 = 1,800min⁻¹
nₛ:同期速度[min⁻¹、回毎分] f:電気周波数[Hz] P:磁極の総数[極]。極対数ではありません。係数120は極対数と回毎分への換算を含みます。

4極機なら50Hzで1,500min⁻¹、60Hzで1,800min⁻¹が同期速度です。ここでPは磁極の総数であり、極対数ではありません。極対数を用いる別の式と混ぜると2倍の違いが出るため、資料ごとの記号の定義と、回毎秒・回毎分の単位を確認してください。

単独運転では、負荷の変化に合わせて原動機の入力を調整し、回転速度と周波数を保つ制御が必要です。同期発電機という構造だけで、負荷が変わっても周波数が自動的に一定になるわけではありません。調速機と励磁・電圧調整の役割を分けて見ます。

系統へ直接連系して同期運転しているときは、系統周波数に対応する同期速度で運転します。原動機の入力を増やしたときは、通常の定常運転で回転数を自由に上げるのではなく、系統との位相関係や出力が変わります。過渡的には動揺や脱調もあり得ます。

同期機を系統へつなぐときは、電圧、周波数、位相、相順などの条件を確認し、適切に同期投入します。具体的な条件と計器の見方は同期投入に必要な条件、運転中の周波数・負荷分担はドループ制御とアイソクロナス制御も参照してください。

単独電源や無効電力制御に適用する

巻線励磁の同期発電機は、大規模な火力・水力設備だけでなく、工場の自家発電や非常用電源などにも使われます。自立して電圧と周波数を作る場合には、原動機、励磁、調速、保護と負荷の特性を組み合わせて、必要な電力品質を保つよう設計します。

系統連系中の巻線励磁機では、励磁調整を通じて無効電力や力率を制御します。ただし、どこまでも自由に調整できるわけではなく、電流、温度、安定性などで定まる運転可能範囲があります。装置の機能と発電機本体の限界を分けて確認します。

明電舎のブラシレス発電機用AVRにも、力率・無効電力制御や各種の限定機能が示されています。特定装置の設定範囲を他の機種へ流用せず、発電機の仕様と系統側の条件に合わせて扱います。制御の概要はAQR制御の原理と目的も参考になります。

誘導発電機とは

誘導発電機は、誘導機を発電側の状態で使うもので、基本構造は誘導電動機と共通します。代表的なかご形では、回転子に導体棒と両端の短絡環があり、固定子が作る回転磁界との相対的な回転によって、回転子側に電流が誘導されます。

系統へつないだ通常のかご形誘導機では、原動機が回転子を同期速度より速く回すと、電磁トルクが回転を妨げる向きに働き、機械入力を電力へ変換します。電動機として自ら回り始める説明と、外部から軸を駆動して発電する説明を分けて理解します。

図2:かご形の導体棒は、両端の短絡環でつながっている

かご形回転子だけを取り出した模式斜視図。発電時は原動機から軸を駆動し、固定子の回転磁界に対して速く回します。横スクロールできます。

回転子 n > 回転磁界 nₛ原動機の軸入力導体棒:回転子鉄心に配置短絡環:導体棒の端を接続

※固定子・軸受・ケーシングは省略。通常の系統直結かご形の発電状態であり、変換器を含むすべての誘導方式を表す条件ではありません。

回転速度が同期速度を上回る差は「すべり」で表せますが、通常の系統直結かご形で運転に使う速度の変化範囲は、同期速度付近の限られた範囲です。風の強さなどに合わせて、回転数を広い範囲へ自由に変えてよいという意味ではありません。

同期速度を超えれば、どれだけでも出力を増やせるわけではありません。原動機の入力、電流、温度上昇、トルク特性、機械的な許容速度などを確認します。一般の電動機を任意の速度で回せば安全な発電設備になる、という使い方にはしないでください。

有効電力を送っていても、励磁用の無効電力を受け取る

系統直結の誘導発電機は、発電した有効電力を系統へ送りながら、回転磁界を作るための励磁電流を系統から受け取ります。この励磁に関わる無効電力と、原動機から得て送り出す有効電力は異なります。発電中だからすべての電力の向きが一方向、とは限りません。

図3:有効電力Pと、励磁用無効電力Qの向きは異なる

通常の系統直結かご形誘導発電機の概念。水車から機械入力を受け、系統へPを送り、励磁のQを受け取ります。横スクロールできます。

水車・原動機 かご形誘導発電機 変圧器系統母線 有効電力 P:発電機 → 系統励磁用Q:系統 → 発電機

※PとQの関係を示す図で、二つの独立した送電線を意味しません。補償用コンデンサや電力変換器を組み合わせる場合は、Qの供給元と流れを改めて整理します。

誘導機そのものには、巻線励磁同期機のように直流界磁電流を調整する装置がありません。構造や付属装置を簡素にしやすい一方、系統の電圧や無効電力の供給能力への影響を確認します。必要に応じて補償設備を検討し、機械単体の価格だけで比べないようにします。

通常のかご形誘導機では、同期発電機と同じ方法で内部起電力の位相を合わせる同期調整は不要です。ただし、接続時の電流や電圧変動、投入する回転速度、保護、停止・解列の条件まで不要になるわけではなく、設備と系統の条件に沿って確認します。

原動機の入力が不足して回転数が下がると、誘導機が電動側へ移ることもあります。発電しているつもりで系統から電力を受ける状態になっていないか、電力の向きと保護を確認します。関連する現象の入口として発電機のモータリングも参照してください。

すべりの符号で電動側と発電側を整理する

すべりは、同期速度と実際の回転速度との差を同期速度で割った値と定義するので、回転子が同期速度より遅い電動側が正、速い発電側が負です。資料によって符号の説明を省略している場合もあるため、式の分子の順序を確かめます。

通常の系統直結かご形:すべりの計算
s = ns − nns
n = 1,530:s = 1,500 − 1,5301,500 = −0.02 = −2%(発電側)
n = 1,470:s = 1,500 − 1,4701,500 = +0.02 = +2%(電動側)
s:すべり[無次元] nₛ:同期速度 n:回転子の回転速度[いずれもmin⁻¹]。百分率では100を掛けます。ここでは4極・系統50Hz、nₛ=1,500min⁻¹としています。

図4:回転子の速度差と、端子の周波数を分けて読む

4極50Hzの通常直結かご形を使った説明用例。速度の横軸は回毎分で、系統側の端子周波数は50Hzです。軸の図は横にスクロールできます。

電動側 s > 0発電側 s < 01,4701,5001,530同期速度 nₛmin⁻¹
1,470min⁻¹すべり+2%回転磁界より遅い電動側
1,500min⁻¹すべり0同期速度。かご形の理想モデルでは速度差による誘導がない
1,530min⁻¹すべり−2%原動機で速く回す発電側。端子は系統50Hz

※これは定格や許容速度の指定ではありません。巻線励磁同期機は同じ1,500min⁻¹でも発電でき、このかご形の速度差の説明とは仕組みが異なります。

4極50Hzの系統で1,530min⁻¹なら、同期速度1,500min⁻¹に対してすべりは−2%です。一方、1,470min⁻¹なら+2%の電動側になります。どちらも原理の説明用の値であり、実機の定格回転速度や発電可能な出力を示すものではありません。

1,530min⁻¹で発電していても、系統直結機の端子周波数が51Hzになるわけではありません。端子側は系統の50Hzで、回転子の速度差によって誘導機の動作状態が決まります。同期機の回転速度から単独時の周波数を求める式を、そのまま端子周波数へ使わないでください。

自己励磁と可変速方式は、通常の系統直結と分ける

通常の系統直結誘導発電機は、系統などに励磁用の無効電力を頼るため、系統から切り離すだけで独立した安定電源になるわけではありません。「自己励磁能力があるから何も付けずに単独で使える」という説明は、一般的なかご形直結機には当てはまりません。

一方、コンデンサや電力変換装置で必要な無効電力を供給し、自己励磁して単独運転する構成はあります。NRELの研究でも扱われていますが、回転速度、容量、負荷、電圧と周波数の管理が関係します。コンデンサを追加するだけで条件によらず安定するものではありません。

広い回転速度範囲で発電したいときは、変換器を含む方式を別に検討します。発電機側の電力を変換して系統側へ送る構成なら、発電機の回転速度と系統周波数を直接結び付けない運転が可能ですが、変換器の容量、損失、制御、保護も設備の一部になります。

同期発電機と誘導発電機の違いと使い分け

最初に決めたいのは、単独電源として運転する必要があるか、常に系統と連系して使うかです。次に原動機の回転速度と出力の変化、無効電力の調整、連系先への影響を確認します。機械の方式名だけで用途を決めず、電力変換器や補償装置を含めた設備として比較します。

図5:系統直結・単独運転・変換器を含む構成を分けて比較する

代表的な構成の比較。特定製品の価格や効率を保証する表ではありません。横にスクロールできます。

比較点巻線励磁同期機通常直結かご形誘導機永久磁石同期機+変換器の例
磁界の作り方直流界磁巻線、励磁装置固定子回転磁界と回転子誘導電流回転子の永久磁石
系統周波数と速度直接連系時は同期速度同期速度を超える発電側のすべり変換器で発電機側と系統側を調整
単独電源励磁・調速などと組み合わせて構成切り離すだけでは安定電源にならない変換器の自立機能・制御等の設計次第
無効電力運転可能範囲で励磁調整励磁Qを系統/補償装置から受ける変換器の能力・制御条件を確認
保守・費用励磁方式・冷却・軸受等を含める機械を簡素にしやすいが補償/保護も評価発電機と変換器を一体で評価

※誘導機の自己励磁方式や巻線形・変換器付き方式は、表の「通常直結かご形」と同一条件ではありません。

単独で電圧・周波数を保つことが目的なら、励磁や調速を組み合わせた同期発電機が候補になります。系統と連系する小水力などでは、かご形誘導発電機の簡素な構造が候補になりますが、接続先の電圧変動や励磁無効電力の扱いを確認します。

「再生可能エネルギーなら誘導発電機」と一つに決めることもできません。富士電機は風力用の永久磁石同期発電機を紹介しており、日本小水力発電も変換器を組み合わせる永久磁石同期方式を示しています。風力・水力とも、原動機と電気側の構成を合わせて選びます。

効率の比較では、発電機本体だけでなく励磁、変換器、増速機などの損失と、実際の負荷率をそろえます。定格点の効率が高い機械でも、年間を通じた運転条件が違えば発電量は変わります。同期か誘導かだけで、どちらが必ず高効率かを断定しないようにします。

費用と保守では、ブラシの有無、励磁装置、冷却、軸受、変換器、無効電力補償、制御盤を確認します。かご形は構造を簡素にしやすい一方、方式によって周辺機器が増える場合もあります。保守が不要になるわけではなく、構成に対応する点検と交換部品を比較します。

実務では、銘板の容量・電圧・周波数・極数・回転速度、原動機の運転範囲、励磁系統、単線結線図を先にそろえます。そのうえで自立の要否、連系条件、電力と無効電力の流れ、保護・停止時の動作を確認すると、方式の違いが具体的な設計条件につながります。

よくある質問

同期発電機の回転子は、すべて永久磁石ですか?

永久磁石だけでなく、回転子の界磁巻線に直流を流して磁界を作る方式もあります。巻線励磁機にはブラシレス方式もあるため、永久磁石の有無とブラシの有無は同じ区分ではありません。励磁の仕組みと制御方法を、対象機の仕様で確認してください。

誘導発電機は、同期速度より遅くても発電しますか?

ここで説明した通常の系統直結かご形では、原動機で同期速度より速く駆動する発電側の運転を扱います。巻線形や電力変換器を組み合わせた方式まで、同じ説明を一律に広げないでください。比較するときは、回転子と電源・変換器の接続方式まで確認します。

発電中なのに系統から電流を受けるのはなぜですか?

有効電力を送り出すことと、励磁に必要な無効電力を受けることは両立します。通常の系統直結誘導発電機では、回転磁界を作るための励磁電流を系統から受けます。電力計と力率・無効電力の表示を混同せず、それぞれの符号の定義も確かめてください。

誘導発電機なら同期投入も速度管理も不要ですか?

同期機と同じ起電力の位相合わせは不要でも、接続時の電流や電圧への影響、投入速度、原動機、保護の確認は必要です。通常直結機で使えるすべりの範囲も限られるため、任意の速度で運転してよいという意味ではありません。

風力発電は誘導発電機だけを使うのですか?

誘導方式だけでなく、永久磁石同期発電機と変換器を組み合わせる方式などもあります。広い可変速運転を考える場合には、発電機の種類に加えて電力変換と制御の構成を比較します。用途名だけで決めず、原動機・系統・保守条件を合わせて検討してください。

まとめ

同期発電機は界磁巻線や永久磁石で回転子の磁界を作り、系統直結の同期運転では同期速度に対応して動きます。通常のかご形誘導発電機は同期速度を超えて駆動し、有効電力を送りながら励磁用無効電力を系統などから受ける点が基本の違いです。

単独運転の要否、回転速度の範囲、無効電力の制御、変換器や補償機器、費用と保守まで含めて選定します。同期なら大規模、誘導なら可変速が自由という二分法を避け、対象設備の構造と接続方式を確認して使い分けましょう。

関連する機器と制御は、発電機のカテゴリも参照できます。同期投入、AQR、モータリング、ドループ制御の記事と合わせて読むと、機械の構造と運転上の役割をつなげて整理できます。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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