伸縮継手は配管の軸方向(管の長さ方向)の伸び縮みを吸収する継手で、フレキシブルチューブ(フレキ)は軸と直角の向きのずれや振動を吸収する柔らかい管です。どちらも「フレキシブルジョイント」と呼ばれることがありますが、得意な動きの向きが違います。
配管は温度で伸びるため、長さ50mの炭素鋼の蒸気配管が20℃から170℃になると、約90mm(9cm)も伸びる計算です。この記事では、フレキシブルチューブと伸縮継手の構造、ベローズ形とスリーブ形・単式と複式の違いを整理し、そのうえで伸び量の計算、使い分け、取り付けの注意点を順に見ていきます。
フレキシブルチューブとは
フレキシブルチューブとは、柔軟性のある配管のことで、ステンレス製のものが多く使われています。呼び方は分野で揺れ、この記事では金属製の管を「フレキシブルチューブ(フレキ)」、ゴム製の防振継手を「ゴム製フレキシブルジョイント」と呼び分けます。
管の部分はベローズ(蛇腹)構造で、配管の誤差の調整や振動の吸収に使われます。製品によっては、直角に曲げたりU字にしたりして接続することもできますが、ベローズの構造によって用途が分かれている製品もあるので、メーカーの仕様をよく読んで選んでください。
ベローズの周りは、金属線や板を編み込んだブレードで覆われており、ブレードはベローズを補強し、内圧で管が伸びるのを抑える役目です。サイズは、水道用のねじ込み・ユニオン接続の小口径(呼び径13〜50の製品例)から、フランジ付きの大口径(消防庁の指針の寸法表で呼径400まで)まであります。
どの向きに動くかで、吸収に向く部品が変わります。
※実際の配管では複数の動きが重なります。製品ごとの許容変位量(伸び・縮み・偏心・角度)を仕様書で確かめてください。
伸縮継手とは
伸縮継手とは、主に配管の軸方向の膨張・収縮の影響を吸収するための継手のことで、メーカーのカタログや規格では「伸縮管継手」と呼ばれます。
金属の配管は、高温の流体を流したり直射日光にさらされたりすると数cmも伸びるため、膨張・収縮を考えた配管の設計・施工が欠かせません。
伸縮継手には、主にスリーブ形とベローズ形の2タイプがあり、違いを一言でいえば、筒をパッキンで滑らせるか、蛇腹を縮ませるかです。
1つ目はスリーブ形です。外側の筒と内側の筒の間にパッキンがあり、配管の長さが変わるとパッキンが漏れを防ぎながら2つの筒が滑ります。

もう1つがベローズ形伸縮継手です。配管の伸びをベローズで吸収するしくみで、自由形・外圧形・ヒンジ形・ユニバーサル形・ジンバル形などのタイプがあります。下の図は、最もシンプルな自由形です。

配管が伸びると、継手は縮んでその分を受け止め、逆に配管が冷えて縮むと、継手は伸びます。スリーブ形のほうが一般に伸縮量を大きく取れますが、パッキンから漏れる可能性があります。
ベローズ形は完全に閉じた構造で漏れの心配はありませんが、金属疲労で破損するリスクがあります。
同じメーカーの同じ圧力クラス(1.0MPa・JIS 10K フランジ)の製品で比べた例です。
※数値はベンカンの取扱説明書の製品例です。使える圧力・温度・流体・伸縮量は型式ごとに違うので、採用する製品の仕様で確かめてください。
ベローズ形の種類は、内圧で継手が押し広げられる力(内圧推力)を誰が受けるかで整理すると分かりやすくなります。
自由形は推力を継手の外の固定点(アンカー)で受けるのに対し、ヒンジ形やジンバル形は、継手についた金具が推力を受け止め、角度の変化を吸収します。
吸収する動きと、内圧推力の受け方が違います。
※種類の呼び方や構成はメーカーで異なります。ユニバーサル形の軸方向の扱いは消防庁の運用基準(消防危第20号)によります。
単式と複式の違いは、ベローズの数と取り付け位置です。単式はベローズが1つで、固定点の近くに取り付けると片側のガイドを省けます。複式はベローズが2つで、2つの固定点の中間に入れ、中央のアンカーベースを固定して両側に均等に伸縮させます。
ヨシタケのEB-1J(単式)は最大伸縮長さ35mm、EB-2J(複式)は70mmですが、複式の70mmは、アンカーベースを中心に片側ずつ単式と同じ35mmを受け持つ形です。
伸縮継手の口径は、建築設備用の標準品で20A〜350A程度(ベンカン JB-13)、単式なら500Aまでつくるメーカーもあります。ユニバーサル形では、消防庁の指針に呼径1500までの寸法表が載っています。
プラント向けには、テクノフレックスのジンバル単式のようにφ2000まで対応する製品もあります。
配管はどれくらい伸びる?
配管の伸び量は、次の式で計算できます。
たとえば長さ50mの炭素鋼の蒸気配管が、20℃から170℃になる場合を計算します。
炭素鋼なら1mあたり100℃で約1.2mm伸びる、と覚えておくと概算に便利で、ステンレスは炭素鋼の約1.4倍伸びます。
係数は資料で少し違い、ベンカンの選定資料は鋼管1.27×10−5、ヨシタケは炭素鋼鋼管1.29×10−5を使っており、上の例なら約95〜97mmです。
この伸びを配管の曲がり部(エルボ)で逃がしきれないときに、伸縮継手を入れたり、ループ(Ω形・U形)配管にしたりします。継手の数は、伸び量を継手1本の伸縮量で割って見当をつけ、90mmの例では、次のようになります。
これは取付時が20℃で、それより冷えない場合の概算で、実際は取付時の気温を境に、伸び側と縮み側を別々に計算します。
ベンカンの選定例では、鋼管35m・最高120℃・最低−10℃・取付時20℃として、伸び44.45mmと縮み13.34mmを出しています。単式(縮み25・伸び10mm)なら1.778本と1.334本の大きいほうを採り、2本です。
伸縮継手の両側に固定点とガイドを設け、伸びが継手に軸方向にかかるようにします。
※複式の場合は、継手中央のアンカーベースも固定します。ガイドの間隔などは、後の「取り付けるときの注意点」で触れます。
伸縮継手とフレキシブルチューブの使い分けは?
- 配管の軸方向のずれ:伸縮継手
- 配管の軸方向以外のずれ:フレキシブルチューブ
選ぶ基準は名前ではなく、吸収したい動きの向きで、外装ブレードの付いたフレキシブルチューブは、ブレードが伸び止めになるため、軸方向の伸び縮みをほとんど吸収できません。
消防庁の運用基準(消防危第20号)は、危険物タンクの配管に使うフレキシブルメタルホースを「軸方向の許容変位量が極めて小さい」ものとしており、可撓管継手は「圧縮又は伸長して用いないこと」と定めています。
軸方向の膨張をフレキで逃がしたいときは、フレキを配管の軸と直角の向きに付けたり、U字形に配管したりして、横方向の変位として吸収させます。フレキは振動対策・地盤沈下対策や、配管施工の誤差の吸収にも役立ちます。
ポンプと配管をつなぐところの振動対策には、ゴム製の継手(フレキシブルジョイントなどの名称)も使われます。トーゼンの球形ゴム製フレキシブル継手「トーゼンフレックス」は、20A〜400Aで偏心10〜25mm・偏角15°を許容し、給水や冷温水などの配管に向きます。
設備の振動診断でポンプの振動を見るときも、配管側の継手が効いているかは確かめどころです。
名前ではなく、吸収する動きで選びます。
※「フレキシブルジョイント」はゴム製を指すことも金属製を指すこともあります。手配では材質と許容変位量で確かめてください。
伸縮継手を取り付けるときの注意点
伸縮継手は、継手だけ入れても働かず、メーカーの取扱説明書は、どれも固定点(アンカー)・ガイド・支持の3つをそろえることを求めています。
自由形やスリーブ形では、内圧が継手を押し広げる力を固定点で受け、力の大きさはベローズの有効面積×圧力です。
ヨシタケの表では、100Aのベローズ(有効受圧面積118.1cm²)に1.0MPaがかかると、静的推力は11,810N(約1.2トン分)です。この製品例のように、固定点はこれにばね反力やガイドの摩擦を足した力に耐える強さが要ります。
固定点がない、または弱いと、耐圧試験や運転中にベローズやスリーブが伸びきって壊れるおそれがあり、ベンカン・ヨシタケとも、故障の原因の筆頭に挙げています。
メーカーの取扱説明書に沿った、一般的な流れです。
※ガイドの間隔はベンカン・ヨシタケの製品例で、継手から最初のガイドまで管外径の4倍以内、次のガイドまで14倍以内です。採用する製品の取扱説明書で確かめてください。
芯ずれの許容は製品で違います。ベンカンのベローズ形は125A以下で±2mm・150A以上で±3mm、ヨシタケは1.5mm以下です。芯ずれはベローズが内筒にこすれる異音や破損の原因になります。
フランジ形の継手は、配管側にも合う相フランジが要ります。溶接形のスリーブ形(突き合せ溶接)は、BW(バットウェルド)で管とつなぎます。
ベローズ形は分解できず、壊れたら製品ごと交換で、ヨシタケのEB形は、伸縮1000回を交換の目安として推奨しています。
スリーブ形は年に1〜2回、パッキン締付ボルトの緩みと摺動部の漏れを見て、漏れたら、対角に少しずつ(1/4回転ずつ)増し締めします。
伸縮継手とフレキのよくある質問
「フレキシブルジョイント」はゴム製?金属製?
どちらにも使われる呼び名です。ポンプ周りの防振用ならゴム製、配管の誤差や横ずれの吸収なら金属製フレキを指すことが多く、手配では材質と許容変位量で確かめるのが確実です。
エキスパンションとフレキの違いは?
エキスパンション(expansion joint)は伸縮継手の英語の呼び名で、軸方向の伸び縮みを受けます。フレキは横方向のずれを受けるので、違いは本文の使い分けと同じです。
名前の似た膨張タンク(エキスパンションタンク)は、温水の体積の膨張を逃がす容器で、継手とは別物です。
伸縮継手と伸縮管継手は同じもの?
同じもので、JISの「ベローズ形伸縮管継手」(JIS B 2352)のように、規格やカタログでは「伸縮管継手」と書かれます。
ベローズ形伸縮継手はどれくらいもつ?
伸び縮みの回数で決まり、ヨシタケのEB形は伸縮1000回を交換の目安としていて、温度の上げ下げが多い配管ほど早く傷みます。
ベローズの材質はステンレスが主流で、ベンカンのJB-13・14はSUS316Lです。ステンレスの種類によって、耐食性が変わります。
まとめ
- フレキシブルチューブは柔軟性のある配管で、軸と直角のずれ・振動・施工誤差を吸収する
- 伸縮継手は軸方向の膨張・収縮を吸収する継手で、スリーブ形とベローズ形がある
- スリーブ形は伸縮量を大きく取れるがパッキン漏れ、ベローズ形は漏れないが金属疲労に注意
- ブレード付きのフレキは軸方向の伸びを吸収できないので、軸方向の膨張には伸縮継手か配管ループで対応する
- 伸縮継手は固定点(アンカー)とガイドがそろって初めて働く
筆者の経験では、配管サイズが小さければフレキが使われている現場が多いように思います。またベローズ形の継手は種類が多いので、よく調べたうえで検討してください。
伸縮継手やフレキの点検は、定修(定期修理)で配管全体を見るときにも欠かせません。配管設計の仕事の全体像はプラントエンジニアの仕事でも紹介しています。
出典
出典・参考資料(7件)を開く出典・参考資料を閉じる
- ベローズ形の仕様・選定例・アンカーとガイド:ベンカン「JB-13,14,17〜20型 ベローズ形伸縮管継手 取扱説明書」
- スリーブ形の仕様・点検と増し締め:ベンカン「JS型 スリーブ形伸縮管継手 取扱説明書」
- 単式・複式の伸縮長さ、内圧推力、交換の目安、JIS B 2352:ヨシタケ「EB-1J・2J、EB-11・12型 伸縮管継手 取扱説明書」
- フレキシブルメタルホース・ユニバーサル式の扱い:消防庁 消防危第20号「可撓管継手の設置等に関する運用基準について」(大阪市消防局 掲載)、堺市消防局 危険物規制の審査基準 別記19「可とう管」
- ヒンジ形・ジンバル形:テクノフレックス「HS ヒンジ単式」、同「GS ジンバル単式」(イプロス掲載の製品ページ)
- ゴム製フレキシブル継手:トーゼン「トーゼンフレックス」
- 水道用フレキシブル継手:日邦バルブ「フレキシブル継手」カタログ
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