ポンプの台数制御とは、複数のポンプを設置し、必要な流量や圧力に応じて運転台数を切り替える制御方法です。負荷が小さい時間帯に不要なポンプを停止し、必要な量を効率よく送ることを狙います。
ただし、運転台数を半分にすれば消費電力も必ず半分になるわけではありません。ポンプと配管の特性によって流量・揚程・効率が変わるため、増段・減段したときの動作点を比較することが必要です。
導入を判断する際は、時間帯ごとの負荷、最低流量、発停回数、予備機、設置と保守の空間を整理します。台数制御とインバータ制御は組み合わせることもでき、設備全体の条件に合う方式を選びます。
ポンプの台数制御とは
工場の冷却水や給水は、稼働する生産設備の数や時間帯で必要量が変わります。最大負荷に合わせた大きなポンプだけで小流量を扱うと、弁で余分な圧力を落としたり、効率の低い運転点で使い続けたりする場合があります。
台数制御では、必要量を複数のポンプへ分担させ、負荷が下がったときに一部を停止します。流量だけでなく、吐出圧力、使用先との差圧、タンク水位など、何を一定に保ちたい設備かによって検出する信号を選びます。
例えば、最大需要に対応するポンプ1台と予備1台の構成を、最大需要の半分ずつを受け持つポンプ2台と予備1台へ分ける考え方があります。後者では低負荷時に1台運転へ減らせますが、ポンプ本体の総設置数は3台になります。
図1:「設置台数」「運転台数」「予備」を分けて考える
必要な揚程での設計流量を、最大需要に対する割合で示した構成例です。
ここで「50%ずつ」とは、各ポンプが最大需要の半分の流量を担当するという意味です。各ポンプを定格の半分の回転速度で回すことや、弁開度を50%にすることを意味しないため、能力の割合と運転方式を区別してください。
例えばボイラーの給水では、水位に応じた連続的な流量調節と、必要能力に応じたポンプ台数の切替えを組み合わせます。ポンプの発停だけで常に水位を細かく調節できるとは限らず、給水弁や回転速度制御との役割分担が必要です。
並列運転でも流量は単純に2倍とは限らない
同じ吸込・吐出ヘッダーへ接続した並列ポンプは、共通する揚程でそれぞれの流量を足して合成特性を求めます。ただし、実際の運転点は合成ポンプ曲線と配管の抵抗曲線との交点であり、1台時の流量を単純に倍にはできません。
図2:2台に増やすと、流量と同時に必要揚程も変わる
説明用の数学モデル。後の電力計算例とは別条件であり、実製品の性能曲線ではありません。
モデル:1台H=50−0.008Q²、2台H=50−0.002Q²、配管H=10+0.004Q²。Qはm³/h、Hはm。流量増加は約1.41倍で、2倍ではありません。
各支管の損失やポンプの性能差が大きいと、流量分担も均等になりません。停止中の機器への逆流を防ぐ逆止弁、各機を隔離する弁、吸込条件とキャビテーション余裕を確認し、台数だけで容量を足し算しないことが重要です。
締切揚程が異なるポンプを組み合わせると、低い側が吐出側の圧力に負け、逆止弁を開けない場合があります。最低流量に加え、有効吸込ヘッド(NPSH)の余裕も、同時運転時の吸込配管損失を含めて確認します。
図2の1台曲線と配管曲線を等しいと置くと、40=0.012Q2となり、流量は約57.7m3/hです。2台曲線では40=0.006Q2から約81.6m3/hとなり、増加率は約1.41倍にとどまります。
これは配管損失が流量とともに増える系統の一例です。静水頭が支配的な系統と摩擦損失が支配的な系統では台数を増やした効果が異なり、実設備ではレベル差や使用先の弁状態による抵抗曲線の変化も確認します。
ポンプの台数制御を行うメリット
消費電力が抑えられる
負荷が低いときに一部のポンプを停止し、残ったポンプを効率のよい領域で使えれば、電力を削減できる場合があります。効果は流量・揚程と効率で決まるため、定格電力や運転台数だけの比較では不足します。
弁で流量を絞ったポンプの消費電力も、常に定格電力のままではありません。動作点が移動すると軸動力や効率も変化するので、既設の実測電力またはメーカーの動力曲線から、比較する入力電力を求めてください。
説明用に、水の必要流量50m3/hで比較します。大容量ポンプを弁で絞る案は全揚程45m・ポンプ効率60%、台数制御で小容量1台を使う案は全揚程30m・ポンプ効率75%とし、両案のモーター効率を90%と仮定します。
この仮定では入力差が約5.30kWで、低負荷運転が年間4,000時間なら削減電力量は約21,200kWh/年となります。計器や制御盤の待機電力、運転時間の変化も含め、実設備では一年の負荷分布を使って評価します。
ポンプ効率とモーターを含む効率の違いは、ポンプ効率の定義と計算方法で確認できます。低流量の時間が短い設備では、上のような比較点で電力差があっても、年間の効果が小さい場合があります。
インバータ制御よりコストが安い
既設の定速ポンプや始動盤を活用でき、単純な増段・減段で必要条件を満たせる場合には、全機へインバータを追加する案より導入費を抑えられることがあります。ただし、台数制御が常に安いという意味ではありません。
ポンプ増設、配管、計器、制御盤の改造が必要なら、その費用が大きくなる場合もあります。制御機器の購入費だけで比べず、工事・試運転・保守・電気料金を合わせた費用を、同じ期間と供給能力で比較してください。
流量を連続的に細かく調節したい場合には、インバータによる回転速度制御が有力です。1台を可変速で調節し、残りを必要に応じて増段する併用方式もあるため、二者択一で判断する必要はありません。
図3:ヘッダーの計測と各ポンプの保護を組み合わせる
3台を接続した概念系統。実際の弁・保護・計測位置は設備仕様と取扱説明書で確認します。
ポンプの台数制御を行うデメリット
初期コストが高い
単純な手動運転と比較すると、必要な計器や制御機能、盤内機器、配線を追加する費用がかかります。流量計が常に必須というわけではなく、圧力・差圧・水位で制御する場合もありますが、適切な検出と保護は必要です。
ポンプを小さく分割しても、弁、継手、支持架台、電源回路、保守対象の数が増えます。既存配管へ増設できるか、停止中の予備機を安全に隔離できるか、故障時に必要量を維持できるかを含めて、初期費用を見積もります。
ポンプの発停回数が増える
負荷が切替え値付近を行き来すると、ポンプが短時間で発停を繰り返す場合があります。頻繁な始動はモーターの熱や機械的負荷、接触器などへ影響するため、メーカーが示す始動頻度や運転条件の範囲で制御します。
ただし、常に連続運転のほうが長寿命とは限らず、低流量・締切りに近い運転を長く続けることにも問題があります。始動電流のピークだけで年間電力量を決めず、継続時間と始動回数、停止で減った運転電力を含めて評価してください。
発停を抑える方法として、増段と減段の判定値を分けるヒステリシス、最小運転時間、最小停止時間、判定の遅延を設けます。単に信号を遅らせるだけでは圧力低下を招くため、応答中に必要量を確保できることも確認します。
図4:増段と減段の条件を分けて、境界での発停を抑える
各1台が最大需要の50%を供給できるという仮定。45%で増段、35%で減段する説明例です。
数値は推奨設定ではありません。実機では圧力維持、能力余裕、最低流量、始動頻度と遅延時間を合わせて決めます。
旧記事の30%・70%という例も、各ポンプの能力と照らさなければ使えません。1台の能力が最大需要の50%しかない設備で、需要70%まで増段を待つ設定にすると、その間に必要流量を確保できなくなる可能性があります。
先発機を固定すると運転時間が偏るため、交互運転や運転時間に応じた優先順位の変更も検討します。故障時の予備機起動、同時始動の抑制、復電後の再起動順序を決め、手動操作でも保護が有効な構成にしてください。
設置スペースが大きくなる
設置面積はポンプ本体だけでは決まらず、配管の取り回し、弁操作、盤、保守通路の空間も必要です。ポンプの台数が増える場合は、モーターや軸封を取り外す場所と搬出経路に不足がないか確認します。
図5:増設前に、点検・引抜き・搬出の空間を確保する
上から見た概念配置。図の寸法比は基準ではなく、必要寸法は製品と作業方法で確認します。
小型機を増やす案と大容量機を置く案では、実際の総面積が逆転する場合もあります。既設の基礎や床荷重、振動、漏水時の排水、騒音、吊上げ設備を含め、配置図と保全作業の手順を一緒に検討してください。
導入前にそろえる運転データと確認事項
最初に、流量・吸込圧力・吐出圧力・消費電力を同じ時刻で記録し、最大・通常・最小負荷の時間割合を求めます。銘板だけで現在の効率を決めず、製品の性能曲線と実際の測定位置、液温・密度も確認します。
増段後も各機がメーカー指定の運転範囲へ入るかを調べ、低流量での過熱や不安定運転、過大流量での過負荷を避けます。最低流量確保のバイパスがある場合、その循環流量もポンプが送る量と電力へ含めて評価します。
試運転では増段時の圧力変動、減段後の供給量、予備機への切替え、センサー故障時の動作を確認します。負荷変動が急な設備では、タンクなどの緩衝能力や使用先の許容変動幅も含め、制御の応答を決める必要があります。
台数を切り替えても異常時の保護を失わない
吸込水槽の水位低下や吸込圧力の不足を検出したときは、空運転を防ぐ機能を優先します。圧力不足を見てポンプを次々と追加するだけでは、水が来ていない原因を解決できず、複数機を同時に損傷させるおそれがあります。
故障した機器を自動運転の対象から外す機能と、修理中の機器が誤って起動しない隔離手順も必要です。画面の停止表示だけで作業を始めず、動力電源や自動起動信号、配管側の圧力を含め、事業所の安全な点検手順に従います。
常用2台と予備1台で計画しても、共通ヘッダーや電源が使えなければ供給を続けられません。どこまでの故障に備える予備機なのかを決め、ポンプ単体の台数と設備全体の供給継続性を区別して評価してください。
効果を比較するときは生産量の違いを補正し、電力原単位と年間電力量を併せて確認します。需要の山をずらせる工程では、設備の台数切替えに加え、負荷平準化も選択肢になります。
工場全体では、電動ポンプの電力と、熱機関や液体燃料・固体燃料を使う設備のエネルギーを区別して集計します。将来の生産量や稼働時間も見込み、局所的な電力差だけで投資を決めないことが大切です。
よくある質問
予備ポンプも常に運転するのですか?
通常の予備機は停止して待機し、故障時や計画した切替え時に使います。常用台数と予備台数を明確にし、電力比較では実際に運転する機器と制御設備の待機分を分けて集計します。
2台を並列にすると流量は必ず2倍ですか?
必ずしも2倍にはなりません。同じ揚程で流量を足した合成曲線と、配管の抵抗曲線の交点で決まります。増えた流量によって配管損失も大きくなるため、各機の運転点を確認してください。
台数制御とインバータ制御は併用できますか?
できます。可変速機で流量や圧力を細かく調節し、必要に応じて他の機器を増段する構成があります。低速時の運転範囲や増減段条件、保護を含めた系統設計が必要です。
発停設定を30%・70%にすればよいですか?
その数値を一律には使えません。増段までの能力不足を避け、減段後も必要流量と最低流量を満たす設定にします。許容始動回数、最小運転・停止時間、判定遅延と合わせて決めてください。
導入費だけで方式を選んでよいですか?
初期費用に加えて、年間電力量、保守費用、停止時の生産への影響を比較します。必要な予備能力と保守空間を含め、同じ供給条件と評価期間で各方式を比べることが必要です。
出典・参考資料
- 米国DOE・Hydraulic Institute「Improving Pumping System Performance」:複数ポンプの構成、負荷と動力、速度制御、設備全体の費用評価。
- KSB「Centrifugal Pump Lexicon:Parallel operation」:並列運転の合成曲線と配管特性。
- Grundfos「Control MPC Installation and Operating Instructions」:台数制御、発停間隔、始動回数、交互運転等の設定例。個々の機種の条件は対象製品の説明書で確認。
- Grundfos「CU 202 Installation and Operating Instructions」:11.4の電源投入時遅延による同時始動の抑制。Control MPCとは別製品の機能例で、設定値は転用しません。
まとめ
- 台数制御は、負荷に応じて実際に運転するポンプの数を変える方法
- 設置台数と常用・予備を区別し、並列運転の動作点を確認する
- 省エネ効果は流量・揚程・効率と年間負荷分布から計算する
- 発停の判定差、最小運転・停止時間、最低流量と保護を設計する
- 初期費用・保守空間・予備能力を含め、速度制御との併用も比較する
台数制御の成否は、ポンプを何台置くかだけでは決まりません。実測した負荷と性能曲線を基に、運転台数ごとの供給能力と消費電力を比べ、切替え時も安定して使える設備にまとめてください。
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