スプリット制御とは、1つの調節計の操作量を分割し、2つ以上の制御弁などへ割り当てる制御方法です。一方の弁を先に使ってから他方を開く動作や、加熱用と冷却用の弁を切り替える動作に使われます。
プラントでは、優先して使いたい蒸気と補助の蒸気を組み合わせたり、温度に応じて温水と冷水を使い分けたりする場面があります。同じ信号を受ける場合でも、2つの弁が同じ開度になるとは限らず、それぞれに異なる動きを割り当てるのがポイントです。
この記事では、「平行特性」と「V字特性」を例に、グラフの読み方と4~20mAの関係を整理します。開度の指令、実際の弁の位置、配管を流れる流量は別の量として読み進めてください。
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スプリット制御とは?
温度や圧力を一定に保つ通常の制御では、測定した値と目標値を調節計で比較し、その結果に応じて弁などを動かします。スプリット制御は、その調節計が計算した1つの操作量を、複数の操作端へ配分する仕組みです。
例えば、操作量が前半の範囲にある間は弁Aだけを閉から全開まで動かし、後半では弁Aを全開に保ったまま弁Bを開きます。2つの弁を独立した目標値で制御するのではなく、1つの制御目的に沿って連携させます。
この配分を担う機器は「スプリット演算器」と呼ばれますが、必ず独立した箱が必要なわけではありません。調節計や制御システムの演算機能で分割する場合と、弁側のポジショナで受け持つ入力範囲を設定する場合があります。
弁を増やす理由は、単に流せる量を大きくするためだけではありません。使いたい供給源の順番がある場合や、加熱と冷却のように効果が逆の操作を1つの目標にまとめたい場合にも、操作範囲を分ける意味があります。
横軸は分割前の操作量u、縦軸は各弁への開度指令です。時間の経過を表した図ではありません。
グラフの入力は温度や圧力そのものではない
調節計で扱う値には、測定値PV、設定値SP、操作量MVがあります。温水タンクならPVは測定温度、SPは目標温度、MVは加熱や冷却の強さを表す調節計の出力であり、スプリット演算へ渡すのはこのMVです。
図1の横軸は、この操作量を0~100%へ換算した値です。横軸50%だから温度が設定値の半分という意味ではなく、分割した操作範囲の中央にあることを示します。縦軸を電流で描く場合には、開度指令との換算関係も必要です。
測定値から操作量を計算する方法には、PID制御などがあります。スプリット制御はその出力の配分方法なので、PIDのP・I・Dと同じ分類の調整項目として扱うと、どこで動作が決まるのか分かりにくくなります。
スプリット制御はどんな時に使う?
蒸気を優先ラインから使う平行特性
2本の蒸気ラインが合流し、その先の設備へ蒸気を送る例を考えます。回収した蒸気などを優先的に使い、必要な供給量を確保できないときだけ補助蒸気を使いたい場合には、2つの弁を順番に開く配分が候補になります。
合流後の圧力を1つの圧力調節計で監視し、圧力が設定より低くなれば蒸気供給を増やす操作量を出します。最初は優先ラインの弁Aを開き、操作量が切替点を超えた後に補助ラインの弁Bを開くように設定します。
太い実線は蒸気、破線は制御信号です。補助弁の起動条件は、分割前の操作量で決めます。
旧記事では、この順次動作を「平行特性」と呼んでいます。2本の直線が同じ方向へ傾く特性として覚えると図と対応しますが、弁Aと弁Bを全範囲で同時に同じだけ開く動作とは異なり、端点と切替点を読む必要があります。
弁Aが全開でも、必要な蒸気量が必ず流れるとは限りません。流量は弁の容量だけでなく上流と下流の圧力条件にも左右されるため、優先側の供給圧力が低下すれば、全開のまま下流圧力が不足することがあります。
供給源の異常時に補助弁へ切り替える判断や、2系統間の逆流を防ぐ措置は、スプリット特性だけでは完結しません。圧力の制御と保護の条件を分け、設備の運転方針やインターロックとの関係を決めておきます。
優先ラインを先に使う方針と、どの負荷でも優先ラインを使い切れることも同義ではありません。弁Aの開度が大きくても供給源側に余力があるとは限らないため、圧力の記録と両弁の操作量を合わせて見て、補助側が開く理由を判断します。
温水と冷水を使い分けるV字特性
温水プールや温度調整タンクでは、低温時には温水を入れ、高温時には冷水を入れる使い方が考えられます。ここでは、操作量の小さい側で温水、大きい側で冷水を増やすように定義して説明します。
操作量0%では温水弁が全開で、操作量を増やすほど温水弁を閉じます。中央50%で温水弁と冷水弁がともに閉じ、それを超えると冷水弁を開くため、2つの開度指令を一緒に描くとV字状になります。
この例では温度が上がると操作量uを増やす向きに調節し、温水を減らしてから冷水を増やします。
この向きでは、低温になるほど操作量を小さくして温水弁を開き、高温になるほど操作量を大きくして冷水弁を開く必要があります。調節計の正逆動作を反対に設定すると、温度上昇時にさらに加熱する側へ動くため、動作方向を先に確かめます。
温水と冷水を直接入れる設備では、温度を変えると同時に水量も増えます。図は温度制御の考え方を示すためのもので、実際には液位や排水、混合の状態も考慮する必要があり、温度のスプリット制御だけでタンク全体を管理できるわけではありません。
温水と冷水の圧力や温度差が異なると、同じ開度変化でも温度への効き方が変わります。切替点を50%にしただけで加熱と冷却の能力が釣り合うとは限らず、弁の選定と実際の応答を合わせて確認します。
V字特性を読むときには、温水側の直線が右下がりであることにも注目します。入力が増えると全ての弁が開くという思い込みを避け、入力0%、切替点、入力100%の3点で温水と冷水の状態を言葉にすると、図面と設定を照合しやすくなります。
スプリット制御の信号のやり取り
4~20mAを0~100%に換算して読む
アナログ電流信号を使う構成では、調節計からの4~20mAをスプリット演算器へ入力し、演算後に各弁へ4~20mAを出す方式があります。入力も出力も同じ電流範囲でも、同じ割合で変化するとは限りません。
4mAを0%、20mAを100%とする場合、電流幅は16mAです。したがって中央50%は12mAとなり、8mAを全範囲の半分と数えることはできません。次の式は、範囲内の電流を割合へ直すための説明式です。
図1の順次動作で入力が8mAなら操作量は25%なので、弁Aへの開度指令は50%、弁Bは0%です。各弁の0~100%に4~20mAを割り当てる独立出力方式では、それぞれの出力電流は12mAと4mAになります。
入力16mAなら操作量75%となり、弁Aは100%、弁Bは50%の指令です。この場合の独立出力は弁A側20mA、弁B側12mAであり、入力電流16mAをそのまま2つの弁へ同じ指令として渡す説明とは区別します。
同じ入力8mAでも、V字特性では温水側50%、冷水側0%の指令です。入力16mAでは温水側0%、冷水側50%となるため、電流値だけを記録するのではなく、どの特性を選び、どちらの弁へ割り当てているかも残します。
各弁の開度指令と出力電流まで計算する
図1のように操作量の中央で担当を切り替える場合、前半では弁Aへの指令を操作量の2倍にします。後半では弁Aを全開に保ち、中央を超えた分を2倍して弁Bへ割り当てるため、それぞれの担当範囲で全行程を使えます。
次に、演算器が各弁へ独立した4~20mAを出す構成として、開度指令を電流へ戻します。これは開度指令の換算であり、弁側で4~12mAなどの分割レンジを受ける構成へ、そのまま適用する計算ではありません。
V字特性では、前半で温水側の指令を100%から0%へ減らし、後半は閉指令を保つ点が順次動作と異なります。操作量25%では温水50%・冷水0%、75%では温水0%・冷水50%となります。
個別出力の4mAは、この例では開度指令0%に対応する有効な信号です。配線断によって電流が流れない状態と同じ扱いにはせず、断線をどう検知するか、検知時にどの動作へ移るかは、調節計や受信機器の仕様を確認します。
演算器の2出力とポジショナ側の分割は別方式
もう一つは、弁側のポジショナが入力信号の受け持ち範囲を分ける方式です。例えば、対応する機器で弁Aを4~12mA、弁Bを12~20mAで全行程動かすように設定すると、調節計の1出力を2つの動作範囲に分割できます。
上段は独立した2つの電流出力、下段はポジショナが担当レンジを分ける例です。
EmersonのFisher 3620Jなどの取扱説明書には、4~12mAと12~20mAの分割例が示されています。ただし、対応する回転角・行程やばねの組み合わせに条件があり、全てのポジショナを同じ設定へ変更できるわけではありません。
電流信号の接続では、出力が駆動できる負荷、入力抵抗、電源や絶縁の方式も関係します。1つの信号で動かすという概念だけを根拠に信号線を並列分岐せず、機器の接続仕様と計装図に従って実装を決める必要があります。
制御画面に表示される操作量が正常でも、弁がその位置へ動いているとは限りません。信号、ポジショナ、空気源、アクチュエータ、弁本体のどこまで確認したかを分けると、設定の問題と機械的な不具合を切り分けやすくなります。
ポジショナは、受けた指令に対応する位置へ弁を動かすために使う機器です。電流を受けるポジショナでも、空気式アクチュエータを動かすには所定の空気供給が必要であり、電流の確認だけでは空気圧や機械側の健全性まで確かめたことにはなりません。
信号増加で開くか閉じるかという動作特性と、電源や空気源を失ったときの安全位置は別々に確認します。特性図が閉方向を示すことを理由に、停電時にも必ず閉止すると判断せず、アクチュエータや付属機器を含む仕様を読みます。
切替点の不感帯と重なりを決める
加熱・冷却の切替点では、小さな信号変動で両側の弁が頻繁に動く場合があります。そこで、両方を閉じる範囲を設ける方法があり、この出力特性上の帯を不感帯、またはデッドバンドと呼びます。
反対に、2つの出力が同時に有効になる範囲を重なりとして設ける場合もあります。不感帯を広くすれば常に良くなるわけではなく、何も操作しない区間による応答の遅れと、同時加熱・冷却によるエネルギー消費などを考えて選びます。
温水を閉じ終わる位置と冷水が開き始める位置を離すと、両方の指令が0%になる範囲ができます。
試運転では、端点だけでなく切替点の前後で各出力と弁の動きを確認します。例えば操作量を小さい側から増やした場合と、大きい側から減らした場合の両方を見れば、設定した特性と戻り動作の違いも確認できます。
記録には、分割前の操作量、各弁への電流、開度指令、確認できる場合は実際の弁位置を並べます。圧力や温度が振れる場合にも、この順で追えば、出力配分の境界で起きているのか、弁が指令に追従していないのかを検討できます。
ただし、稼働中の蒸気弁や温冷水弁を確認のために不用意に全開へ動かすと、圧力や温度が急変するおそれがあります。設備の試験手順に沿って、信号模擬で確かめる範囲と実流体を使う範囲を分け、安全条件を満たして実施します。
切替付近で不安定になるときの確認順序
切替点で温度や圧力が振れるときは、最初に操作量が境界を往復しているのかを記録から確認します。操作量が一定なのに弁位置が動く場合は、分割特性を変更する前にポジショナや弁側の追従状態を調べる必要があります。
操作量と個別出力の関係が図面どおりでない場合は、演算器とポジショナの両方で分割していないかを確認します。独立出力を全範囲で受ける設計なのに弁側も半分の範囲へ設定すると、意図した入力と開度の対応が崩れます。
指令どおりに弁が動いても、片側だけ温度や圧力の変化が大きい場合は、流体側の条件へ確認を進めます。弁容量や差圧に加え、温冷水では供給温度の違いも影響するため、両側を同じ開度で比較するだけでは原因を絞れません。
不感帯は、こうした信号や機械側の不具合を隠すために広げる設定ではありません。出力特性が正しく実装されていることを先に確かめ、負荷の変化と温度・圧力の応答を見ながら、切替条件と調節計の調整を検討します。
Fisher 3610J・3620Jの取扱説明書は、スプリット運転中のポジショナのバイパスを禁止しています。入力信号が直接アクチュエータへ送られ、意図した動作が変わって設備を乱すおそれがあるため、試験や保全でもこの禁止事項に従います。
よくある疑問
2つの弁の開度を足すと、いつも100%になりますか?配分の設定によって異なります。図1では前半に弁Aだけを開き、後半は弁Aを全開にして弁Bを追加するので、開度指令の合計を一定にする制御ではありません。
開度50%なら流量も最大の50%ですか?弁の流量特性や弁前後の差圧によるため、一律には決まりません。一定流量を保ちたい場合には、実際の流量を測って調整する流量制御との役割の違いを確認します。
二位置制御や比率制御と同じですか?スプリットは操作範囲を分ける考え方です。開閉で切り替える二位置制御や、2つの流量などの比を保つ比率制御とは、何を決める仕組みなのかが異なります。
スプリット制御の切替点は必ず50%ですか?50%は2つの動作を説明するための設定例です。各弁の能力や用途に応じて担当範囲を決め、機器が設定できる範囲を確認します。中央付近に両弁を閉じる不感帯を設ける場合もあります。
4~20mAの入力が12mAなら、各弁への出力も12mAですか?入力12mAは分割前の操作量50%です。図1の独立出力方式では弁Aが100%指令で20mA、弁Bが0%指令で4mAとなり、入力と個別出力は一致しません。
まとめ
スプリット制御は、1つの操作量を2つ以上の弁へ割り当てる方法です。蒸気を順番に使う平行特性では一方を先に開き、温冷水を切り替えるV字特性では、一方を閉じてから他方を開く配分にします。
特性図では横軸と縦軸の量を確かめ、操作量、電流、開度指令を区別します。演算器で独立出力を作る方式か、ポジショナの担当範囲を分ける方式かを確認すると、4~20mAの信号の意味を読み違えにくくなります。
制御方式を合わせて学ぶ場合は、主調節計と副調節計を組み合わせるカスケード制御、時間に沿って目標値を変えるプログラム制御も参考にしてください。目標値の決め方、制御計算、出力の配分を分けて整理すると、設備の構成を理解しやすくなります。
参考資料・出典
- Emerson:Fisher 3570 Positioners(Split Range Operation)
- Emerson:Fisher 3610J/3620J取扱説明書(Table 8)
- エムジー:スプリット演算器MFS2の紹介(2018年4月技術誌)
- 横河電機:UP35Aパラメータ一覧(加熱冷却の出力デッドバンド)
- アズビル:次世代調節弁6000シリーズの開発
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