「FA業界の主要企業」と聞くと、多くの方はファナックやキーエンスといった、高収益で知られる有名企業を思い浮かべるのではないでしょうか。
実際には、FA業界の大手は制御機器、ロボット、センサー、空圧機器、搬送システムと得意分野がはっきり分かれています。売上高の大きさだけでなく、どの分野で、どのように稼いでいるかを知ると、業界の勢力図が見えてきます。
この記事では、FA業界の主要企業を、売上高ランキング、分野別の代表企業、各社の特徴と強み、海外企業との比較、再編・M&Aの動き、企業を見るときのポイントという順で整理します。
FA業界の売上高ランキング

FA事業を主力とする国内の主要企業を、直近の決算期の売上高で並べると次のようになります。首位のキーエンスは売上高1兆1,692億円(2026年3月期)と、単独で1兆円を超えています。
上位4社が8,000億円前後から1兆円超の規模で並んでいます。
※出典:各社の決算短信・決算説明資料。三菱電機とオムロンはFA関連セグメントの売上高、ほかは連結売上高(安川電機は売上収益)。決算期が異なるため参考比較です。
ランキングを見るときは、事業範囲の違いに注意が必要です。三菱電機とオムロンは会社全体ではなくFA関連の事業部門だけの売上高を載せています。キーエンスやダイフクは全社の売上高で、FA以外の用途も含みます。
決算期もそろっていません。ダイフクは決算期を12月に変更しており、安川電機は2月期です。順位はあくまで規模感の目安として捉えてください。
なお、業界動向サーチの2021〜2022年の集計でも、上位7社は同じ顔ぶれでした。当時は三菱電機が首位、キーエンスが2位で、数年で順位が入れ替わるほど各社の成長ペースには差があることがわかります。
分野別の主要企業

FA業界の企業は、「FA業界とは」の記事で紹介した分類ごとに、代表的な企業が異なります。主な分野と企業を整理すると次のとおりです。
大手でも、得意とする分野ははっきり分かれています。
※各社は複数の分野にまたがって製品を持っています。代表的な分野で分類しています。
このほか、全国には中堅・中小の機器メーカーやSIer、FA商社が数多くあります。大手の製品を組み合わせて設備を完成させるのは、こうした地域や業界に根ざした企業であることが多い点も押さえておきたいところです。

主要企業の特徴と強み

ここからは、ランキングに挙げた7社について、事業の中身と強みを決算資料などで確認できた範囲で見ていきます。
キーエンス
センサーや測定器、画像処理機器などを手がける企業です。2026年3月期の売上高は1兆1,692億円、営業利益率は51.0%で、海外売上高比率は66.6%でした。
同社は代理店を介さない直販体制とファブレス経営を強みに挙げています。新商品の約7割が発売時点で世界初・業界初の機能を持つとしており、顧客の課題に合わせた提案営業が高収益を支えています。
ファナック
工作機械向けのCNC装置などのFA部門、ロボット部門、小型マシニングセンタなどのロボマシン部門、サービス部門の4つで事業を展開しています。2026年3月期の売上高は8,578億円で、ロボット部門が44.1%を占めます。
地域別ではアジアが41.1%、米州が27.1%、欧州が17.8%で、日本は12.9%にとどまります。売上高の約87%が海外(地域別売上から算出)という、グローバル色の強い企業です。サービス部門の売上高も1,411億円(16.5%)あり、世界中で稼働する機器の保守が収益を下支えしています。
SMC
エアシリンダーや電磁弁などの空気圧機器の大手です。同社のIR情報によると、空気圧機器の世界シェアは36%、国内シェアは62%で、約80の国と地域で事業を展開しています。
2026年3月期の売上高は8,425億円(前年比6.4%増)、営業利益率は22.6%でした。基本型1万2,000品目、総品目数88万品目におよぶ製品群が特徴で、2027年3月期には売上高1兆円を計画しています。
三菱電機(FAシステム事業)
PLCやサーボ、インバータ、加工機など、制御機器を幅広く手がけます。FAシステム事業の売上高は2026年3月期で7,982億円、営業利益率は9.4%でした。2027年3月期は売上高8,650億円、営業利益率11.8%を見込んでいます。
2030年度に売上高0.9兆円、営業利益率16%以上を目標に掲げ、機器とデータ・AIを組み合わせたデジタルソリューションを成長の柱に据えています。
ダイフク
自動倉庫や搬送システムなど、工場や物流センター、空港向けのマテリアルハンドリングを手がけます。2025年12月期の売上高は6,607億円で過去最高、営業利益率は15.3%でした。
売上高の約7割を海外で稼ぎ、分野別では半導体などのエレクトロニクス向けが2,510億円と最大です。商業・小売向けや自動車向け、空港向けなど、顧客業界が分散している点も特徴です。
安川電機
サーボモーターやインバータなどのモーションコントロールと、産業用ロボットを2本柱とする企業です。2026年2月期の売上収益は5,421億円で、ロボットが2,470億円、モーションコントロールが2,361億円でした。
2つの事業がほぼ同じ規模で並ぶため、ロボット本体と、それを動かすモーターの両方に強いのが特徴です。顧客業界の設備投資の動向を受けやすく、2026年2月期は増収ながら営業減益でした。
オムロン(制御機器事業)
PLCやセンサー、安全機器、ロボットなど、制御機器を幅広くそろえています。2026年3月期の制御機器事業の売上高は4,095億円で、前年比12.3%の増収でした。
同社の連結売上高7,674億円の半分以上を制御機器事業が占め、会社の中核を担う事業です。電子部品事業についてはスピンオフを決め、2026年3月期の決算では非継続事業として扱っています。FAを軸とした事業構成へのシフトが進んでいると言えます。
海外の主要企業との比較

FA業界は、日本企業が世界で存在感を持つ数少ない分野の一つです。一方で、欧州や中国にも強力な競合がいます。代表的な海外企業の特徴を整理すると次のとおりです。
欧州の総合企業と、中国の地元メーカーが主な競合です。
※出典:ABB、IFR、各社資料など。ABBのロボット部門の2024年の売上高は23億ドルでした。
シーメンスは、制御機器に加えて設計・シミュレーションなどのソフトウェアを大きく育て、工場全体をデジタルでつなぐ提案を強みにしています。日本勢のなかでも、三菱電機がデジタルソリューションを成長の柱に据えるなど、ソフトウェアとの組み合わせが共通の競争軸になっています。
ロボットでは、中国市場で地元メーカーのシェアが高まっています。国際ロボット連盟(IFR)によると、2024年に中国で設置されたロボットは29万5,000台と世界の54%を占め、その57%が中国メーカー製でした。日本勢にとっては、最大市場でのシェア維持が大きな課題です。
一方で、日本のFA企業は空気圧機器やセンサー、サーボ、ロボットなど、個別の機器で高いシェアや収益性を持つ企業が多いのが特徴です。SMCが空気圧機器で世界シェア36%(同社IR情報)を持つように、特定分野で世界トップクラスの専業メーカーが並んでいる点は、日本勢ならではの強みと言えます。

再編・M&Aの動き

FA業界では、ロボットやSIerの買収、事業の売却・分離など、世界規模で再編が進んでいます。近年の主な動きを並べると次のようになります。
ロボット・SIerの買収と、事業の選択と集中の2つの流れがあります。
※ABBのロボット事業の売却額は53億7,500万ドルで、完了は2026年半ばから後半の見込みと発表されていました。
日立製作所のJRオートメーション買収は、機器ではなくSIerの機能を買う動きとして注目されました。ユーザー企業が動く設備そのものを求めるなか、設備を仕上げる力の価値が高まっていることを示しています。
ABBのロボット事業の売却は、当初予定していた分離・上場の計画から切り替えたものです。買い手のソフトバンクグループはAIやロボットへの投資を進めており、FA業界の外から新しい資本が入ってくる流れとしても注目されています。
三菱電機のNozomi Networks買収は約1,300億円(8億8,300万ドル)と同社で過去最大規模で、工場の制御システムのセキュリティを強化するものです。FA業界の競争が、機器からデータやセキュリティへと広がっていることがわかります。
就職・転職で企業を見るときのポイント

FA業界の企業を比べるときは、売上高の大きさだけで判断しないことが大切です。少なくとも次の3つの視点をあわせて見ると、企業の姿がより立体的に見えてきます。
決算資料で確認できる数字から、働き方の違いも見えてきます。
※いずれも決算短信や有価証券報告書、統合報告書などで確認できます。
利益率を見る
同じFA業界でも、営業利益率はキーエンスの51.0%から、安川電機の8.7%(2026年2月期、売上収益と営業利益から算出)まで大きな差があります。
利益率の高さは、製品の付加価値や価格決定力の強さを表します。研究開発や人への投資の余力にもつながるため、企業の体力を見る目安になります。
海外比率を見る
ファナックの約87%、ダイフクの約7割のように、FA業界の大手は海外売上の比重が高い企業が多くあります。海外比率が高い企業ほど、海外顧客への対応や出張、駐在の機会が増えやすくなります。キーエンスのように国内での売上も大きい企業では、国内顧客を担当しながら海外の動向にも関わる、といった働き方になることもあります。
一方で、為替や海外景気の影響も受けやすくなります。語学や海外での仕事に関心があるかどうかは、企業を選ぶうえで大切な判断材料です。
事業の集中度を見る
特定の製品や顧客業界に売上が集中している企業は、その分野の景気が良いときに大きく伸びる反面、落ち込むときの影響も大きくなります。
セグメント別の売上構成を見ると、どの事業に配属される可能性があるかも見えてきます。会社全体の数字だけでなく、自分が関わりたい事業の規模と伸びを確認しておきたいところです。
たとえば安川電機はロボットとモーションコントロールがほぼ半分ずつ、ファナックはロボット部門が4割強を占めます。同じロボットメーカーでも、事業の組み合わせによって景気の波の受け方や社内のキャリアの幅は変わってきます。

まとめ
- FA業界の売上高首位はキーエンスで、2026年3月期に1兆1,692億円
- ファナック、SMC、三菱電機FAシステム事業が8,000億円前後で続く
- 制御機器、ロボット、センサー、空圧、搬送と、各社の得意分野ははっきり分かれている
- 海外ではシーメンスや中国の地元メーカーが競合で、ロボットやSIerをめぐる再編が進んでいる
- 企業を見るときは売上高だけでなく、利益率・海外比率・事業の集中度をあわせて確認する
FA業界の基本的な仕組みはFA業界とは、市場規模の推移はFA業界の市場規模と動向、サプライチェーンや利益構造はFA業界の構造で解説しています。関連する職種として技術営業・FAEや機械設計、技術では産業用ロボットもあわせてご覧ください。
業界の働き方や市場動向については、FA・自動化システムの業種ページから関連記事もあわせてご覧ください。
出典
- キーエンスの売上高・事業モデル:株式会社キーエンス「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」、同社「ビジネスモデル」(https://www.keyence.co.jp/investor/business-model/)
- ファナックの売上高・部門別・地域別売上:ファナック株式会社「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(安川電機の数値は同社「2026年2月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」による)
- 三菱電機FAシステム事業:三菱電機株式会社「FAシステム事業 2026」
- SMCの売上高・シェア:SMC株式会社「SMC早わかり」(ダイフクとオムロンの数値はLNEWS、オートメーション新聞の決算報道による)
- ABBのロボット事業売却:ABB「ABB to divest Robotics division to SoftBank Group」
- 2021〜2022年のランキング:業界動向サーチ「FA業界の動向や現状、ランキングなど」

コメント