「FA業界の市場規模」と聞くと、多くの方は産業用ロボットの販売台数や、大手メーカーの売上高を思い浮かべるのではないでしょうか。
実際には、FA業界の規模をひとつの数字で表す公的統計はありません。ロボット、制御機器、センサーといった製品ごとに業界団体の統計があり、それぞれの数え方を知ったうえで組み合わせて読む必要があります。
この記事では、FA業界の市場規模を、最新の統計、過去の推移、需要先の内訳、海外市場と輸出、市場を動かすトレンド、今後の見通しとキャリアへの影響という順で整理します。
FA業界の市場規模

FA業界の市場規模を見るうえで、最もよく使われるのが日本ロボット工業会の統計です。2025年の産業用ロボット(マニピュレータ、ロボット)の受注額は1兆456億円で、前年比25.7%増と3年ぶりに増加しました。
同じ2025年の総出荷額は9,938億円、生産額は9,453億円です。いずれも会員企業と非会員企業を合わせた暦年の数値で、日本のメーカーがつくるロボットの規模を示しています。
このうち国内向けの出荷額は2,041億円(前年比10.8%減)でした。日本のロボット市場の規模を知りたい場合は、総出荷額ではなくこの国内出荷額を見るほうが実態に近くなります。
制御機器については、日本電気制御技術工業会(NECA、旧・日本電気制御機器工業会)が出荷統計をまとめています。スイッチやリレー、センサー、PLCなどの電気制御機器の出荷額は、2025年度見込みで6,643億円(前年度比9.0%増)です。
統計によって数え方が異なる点には注意が必要です。受注額は注文を受けた時点、出荷額や生産額はモノが動いた時点の金額で、景気の変わり目には両者の動きがずれます。また、業界動向サーチが主要企業35社の売上高を合計したFA業界の業界規模は5.3兆円(2021〜2022年)で、製品統計よりずっと大きくなります。これは各社の海外売上や周辺事業も含むためです。
このほか、空圧機器や搬送システム、画像処理機器などはそれぞれ別の団体や企業の数字で把握することになります。FA業界全体の規模は、複数の統計を並べて全体像をつかむものと考えておくとよいでしょう。
何を、どの時点で数えるかによって、見える規模が変わります。
※出典:日本ロボット工業会、日本電気制御技術工業会(オートメーション新聞の報道)、業界動向サーチ。統計ごとに対象企業や期間が異なるため、単純な合計はできません。

市場規模の推移

産業用ロボットの受注額を2019年から並べると、FA業界が設備投資の波に合わせて大きく上下する様子がよくわかります。
7年間で最も少ない年と多い年の差は、約3,000億円あります。
※出典:日本ロボット工業会「マニピュレータ、ロボット統計 受注・生産・出荷実績」各年版(会員+非会員、暦年)。2022年はロボットダイジェストの報道による。
2019〜2020年:輸出の減速とコロナ禍
2019年は受注額が前年比15.7%減の8,117億円となりました。日本ロボット工業会は、需要の約7割を占める輸出が減少傾向を続けたことを挙げています。
2020年は新型コロナウイルスの影響を受けながらも、受注額は5.8%増の8,588億円と持ち直しました。一方で国内出荷額は18.1%減の2,085億円と、国内の設備投資は落ち込みました。
受注が増えても生産額は1.5%減の7,665億円にとどまり、注文と生産のタイミングがずれた年でもあります。受注額は先行指標、生産額や出荷額は実際の仕事量に近い指標として読み分けるのが基本です。
2021〜2022年:中国需要で初の1兆円超え
2021年は受注額が25.6%増の1兆786億円となり、初めて1兆円を超えました。中国の需要が伸び、欧米もコロナ前の水準に戻ったことが背景です。
2022年も受注額は1兆1,118億円まで増え、生産額と総出荷額も初めて1兆円を超えました。制御機器でも、部品不足への備えとして先行発注が膨らみ、2022年度の出荷額が7,000億円を超えたとされています。
2023〜2025年:調整を経て再び拡大
2023年は中国市場の悪化や半導体・電子部品向けの落ち込みで、受注額は24.1%減の8,434億円に減りました。2024年も8,321億円と低い水準が続きました。
2024年の中身を見ると、国内出荷額は2.9%増の2,289億円と伸びた一方、輸出額は14.8%減の5,963億円でした。この時期の落ち込みは、主に海外、特に中国の需要の弱さによるものだったことがわかります。
2025年は一転して受注額が1兆456億円まで回復しました。わずか2年で2割以上落ち込み、また戻るという振れ幅の大きさが、この業界の特徴と言えます。
需要先・製品別の内訳

ロボットの統計では、国内出荷は業種別、輸出は用途別に内訳が公表されています。2025年の主な内訳を並べると、どこで需要が伸びているかが見えてきます。
輸出の電子部品実装用が、国内の主要業種向けを大きく上回っています。
※出典:日本ロボット工業会「マニピュレータ、ロボット統計 受注・生産・出荷実績 2025年」。カッコ内は前年比。主な項目のみを抜き出しています。
最も伸びたのは、電子機器の基板に部品を載せる電子部品実装用の輸出で、前年比43.2%増の2,964億円でした。溶接用の輸出も34.6%増と3年ぶりに増えています。
一方、国内では電気機械製造業向けが3年連続、自動車製造業向けが3年ぶりに減少しました。長くロボットの最大の顧客だった自動車向けも、年によって投資の強弱が大きく変わります。
2024年には逆に、国内の自動車製造業向けが11.6%増の612億円と伸び、電子部品実装用の輸出も11.3%増でした。どの需要先が強いかは年ごとに入れ替わるため、1年分の数字だけで判断しないことが大切です。
制御機器では、2025年度見込みの出荷額6,643億円のうち国内が3,774億円、輸出が2,869億円です。輸出は16.5%増と国内の3.9%増を上回り、ここでも海外の需要がけん引役になっています。


海外市場と輸出

FA業界の数字を読むうえで欠かせないのが、海外の比重の大きさです。2025年のロボット総出荷額9,938億円のうち輸出は7,897億円で、出荷額の約8割(79.5%)が輸出です(両者から算出)。
2026年4〜6月期の統計でも、輸出額は前年同期比28.5%増と伸び、中国やタイ、ベトナムなどアジアの需要がけん引しました。同じ期の国内出荷額は3.7%増にとどまっています。
世界全体では、国際ロボット連盟(IFR)によると2024年に54万2,000台の産業用ロボットが新たに設置されました。このうち中国が29万5,000台と54%を占め、日本は4万4,500台で2番目の市場です。
注意したいのは、中国市場での中国メーカーのシェアが2024年に57%と初めて過半を超えた点です。最大の市場で地元メーカーとの競争が激しくなっていることは、日本のFA機器メーカーにとって大きな変化と言えます。
企業単位で見ても海外の比重は高く、ファナックは2026年3月期の売上高の約87%が日本以外(地域別売上から算出)、キーエンスは同期の海外売上高比率が66.6%です。
海外の比重が大きい分、為替の影響も受けやすくなります。円安の局面では海外売上の円換算額が膨らみ、円高の局面では逆に目減りするため、売上高の増減を見るときは為替の動きもあわせて確認したいところです。
市場を動かす主なトレンド

FA業界の需要は、顧客である製造業の投資テーマによって動きます。近年の市場を左右しているのは、次の4つの流れです。
どの流れが強いかで、伸びる製品や顧客が変わります。
半導体・AI関連の投資
2025年の回復をけん引したのは、電子部品や半導体に関わる設備投資でした。オムロンは2026年3月期の制御機器事業が12.3%増収となった要因として、生成AIに関連する半導体・データセンター向けの需要を挙げています。
搬送システムのダイフクでも、2025年12月期の売上高6,607億円のうち最も大きいのは半導体などのエレクトロニクス向けで、2,510億円でした。半導体の投資は波が大きいため、この分野への依存度が高い企業ほど、業績も上下しやすくなります。
人手不足と省人化
製造現場の人手不足は日本だけでなく、多くの国で共通の課題です。これまで自動化が難しかった多品種の組立や検査、箱詰めなどにも、協働ロボットや画像処理を使った自動化が広がっています。
大規模な工場だけでなく、中小の工場や物流倉庫が新たな顧客になっていることも、市場の裾野を広げています。これまでロボットを使ったことのない顧客が増えるほど、導入を支援するSIerや商社の役割も大きくなります。
DX・データ活用
工場の機器をネットワークにつなぎ、稼働データを分析して改善につなげる取り組みが進んでいます。三菱電機はFAシステム事業のなかで、データやAIを活用するデジタルソリューションを2030年度に向けた成長の柱に位置づけています。
工場がネットワークにつながるほど、サイバー攻撃への備えも欠かせません。制御システムのセキュリティは、FA業界の新しい市場になりつつあります。
地政学とサプライチェーン
NECAは2026年度の見通しのなかで、レアアースやメモリーの部品供給リスク、地政学リスク、原油価格の高止まりを懸念材料に挙げています。
一方で、生産拠点を分散させる動きは、新しい工場への設備投資を生みます。リスクと需要の両面をもたらす要因として注視されています。
今後の見通しとキャリアへの影響

業界団体の見通しは、そろって拡大を見込んでいます。日本ロボット工業会は2026年のロボット受注額を1兆2,200億円(前年比16.7%増)、生産額を1兆500億円(同11.1%増)と予測しています。
NECAは2026年度の電気制御機器の出荷額を7,000億円(前年度比5.4%増)と見込んでいます。世界では、IFRが2025年に57万5,000台、2028年には70万台を超える設置台数を予測しています。
企業の計画にも強気の数字が並びます。SMCは2027年3月期に売上高1兆円を計画し、三菱電機はFAシステム事業の売上高を2030年度に0.9兆円まで伸ばす目標を掲げています。
伸びる職種
市場が海外中心で拡大するなか、顧客の現場で機器の選定や立上げを支える技術営業・FAEやフィールドエンジニアの需要は続くと考えられます。海外拠点の支援や出張の機会も増えやすい職種です。
また、ロボットと周辺機器を組み合わせて設備に仕上げるSIerの技術者や、制御ソフトの開発者も、自動化の対象が広がるほど必要とされます。
求められるスキル
機械・電気・制御の基礎に加え、画像処理やデータ活用、ネットワークの知識を持つ人材の価値が高まっています。現場の機械とデジタルの両方がわかることが、今後の強みになります。
需要の波が大きい業界だからこそ、特定の顧客業界に偏らない経験や、語学を含めて海外案件に対応できる力も、長く働くうえでの支えになります。
市場の動きは、そのまま働く人に求められる力の変化につながります。
※いずれも一般的な傾向です。求められる力は企業や職種によって異なります。
まとめ
- FA業界の規模は、ロボットの受注額・出荷額、制御機器の出荷額など複数の統計を組み合わせて見る
- 産業用ロボットの受注額は2025年に1兆456億円と、3年ぶりに増加した
- 受注額は数年単位で2割以上増減するなど、設備投資の波を大きく受ける
- ロボット出荷額の約8割が輸出で、電子部品実装用の輸出が大きく伸びている
- 2026年も拡大の見通しで、海外対応力やデジタルの知識を持つ人材の価値が高まる
FA業界の基本的な仕組みはFA業界とは、サプライチェーンや利益構造はFA業界の構造、主要企業の売上高や強みはFA業界の主要企業と勢力図で解説しています。関連する技術として産業用ロボットや人手不足・省人化、職種では技術営業・FAEもあわせてご覧ください。
業界の働き方や主要企業については、FA・自動化システムの業種ページから関連記事もあわせてご覧ください。
出典
- ロボットの受注額・出荷額・見通し(2025年):一般社団法人日本ロボット工業会「マニピュレータ、ロボット統計 受注・生産・出荷実績 2025年(会員+非会員)」(2019〜2024年は同会の各年版プレスリリース、2022年はロボットダイジェストの報道)
- 2026年4〜6月期の統計:robot digest「受注額、生産額は3四半期連続で過去最高値を更新/日本ロボット工業会」
- 制御機器の出荷額・見通し:オートメーション新聞「NECA、2026年度電気制御機器の出荷見通し」
- 企業の売上高・海外売上高比率:株式会社キーエンス「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(ファナック、オムロン、ダイフク、SMC、三菱電機の数値は各社の決算短信・決算説明資料および報道による)
- 世界のロボット設置台数:International Federation of Robotics「World Robotics 2025 report – Industrial Robots」
- 業界規模:業界動向サーチ「FA業界の動向や現状、ランキングなど」

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