凝固点と流動点の違いとは?軽油・重油の低温特性と選び方

冬の屋外燃料タンクと保温された送油配管

凝固点は液体が固体へ変わる温度で、流動点は規定の試験条件で油が流れる最低温度です。物質の状態変化を見るか、低温での流れやすさを見るかが、二つの言葉の違いです。

軽油や重油は多くの成分が混ざっており、水のように一つの温度で全体が凍るとは扱えません。燃料を選ぶときは、流動点に加えてフィルターの目詰まりや油の粘度まで見ます。

冬の燃料供給を止めないためには、カタログの数字と設備の温度を結び付けることが大切です。凝固点の意味から試験の見方へ進み、軽油・重油と潤滑油の選び方を整理します。

動画の訂正:流動点は「凝固直前」ではなく、規定試験で流動する最低温度です。動画の一律46℃予熱・冷却のたびに試料を取り出すという説明は訂正し、予熱と観察は試験法の規定に従います。

住鉱潤滑剤の基油の解説では、予熱は45℃、報告温度は0℃を基準に2.5℃の整数倍です。「工業油だけの言葉」と限定せず、食品油の凝固性状とは試験対象・条件を分けて読みます。

軽油は季節・地域に合う号数で選び、夏5℃・冬−20℃と一律には扱いません。食用油の凝固温度は組成で変わり、潤滑油の選定では流動点に加えて機器の指定粘度や性能も必要です。

目次

凝固点とは

凝固点は、液体が冷やされて固体へ変わるときの温度を表す言葉です。純粋な物質では、同じ圧力の平衡状態で考えた凝固点と融点は一致します。

水なら大気圧付近で約0℃が身近な例で、融点は氷が水に戻る側から見た名称です。冷却の途中には過冷却も起こるため、温度計が示す瞬間の値と平衡の温度を区別します。

一方、食用油や石油製品は複数の成分を含むので、固まり方にも幅が生じます。冷やすにつれて一部の成分が結晶になり、液体と固体が混在した状態を通って性状が変わります。

オリーブ油やごま油が低温で白く濁ったり、パーム油や牛脂が室温で固まりやすかったりするのも、成分の違いによる現象です。食品の名称だけで凝固温度を一つに固定せず、製品の組成と測定条件で読みます。

図1:純物質と混合油では冷え方の読み方が違う

純物質の相変化温度と、混合油で結晶が徐々に増える範囲を分けて考えます。

純物質(平衡の模式)混合油(模式)相変化結晶が現れる固体の割合が増す冷却時間 →冷却時間 →温度温度

混合油にも組成に応じた相平衡があり、結晶の割合が温度とともに変わります。

「油が凍る」を二つの状態に分ける

日常の「凍る」には、結晶が出始めることと、容器を傾けても動かなくなることが含まれます。設備管理ではこの二つを分け、どの段階で機能が失われるかを問題にします。

たとえば燃料の大部分が液体でも、細かな結晶がフィルターに集まれば供給が止まります。燃料系統の状態は、タンク内の外観に流量とフィルター前後の圧力差を合わせて捉えます。

この違いは、不凍液の凝固温度を濃度で管理する場面とも区別すると理解しやすくなります。冷却水を運ぶチラーとブラインの循環では、冷却媒体と燃料油で使う物性の意味が異なります。

流動点とは

低温性状を調べるための油試料の瓶
油の性状は、試料と測定条件をそろえて比較します(イメージ)。

流動点は、規定の方法で冷却した油が流動性を示す最低温度です。成分が固体へ変わる現象に加え、結晶の構造や粘度が試料の動きに影響する点に特徴があります。

流れるかどうかは、結晶のつながり方や粘度にも左右されるため、観察の方法を統一して比べます。石油製品ではJIS K 2269が、流動点と曇り点の試験方法を扱っています。

曇り点は、冷却により結晶が現れて油が曇り始める温度を見る指標です。見た目の変化を捉える曇り点と、試料の動きを捉える流動点では、観察する現象が異なります。

規定の試験で流れるかを判定する

住鉱潤滑剤の解説では、基油を45℃に加熱してから、かき混ぜず規定の方法で冷却します。流動点は0℃を基準に2.5℃の整数倍で表すと説明されています。

試料は一定の条件で冷却し、決められた温度で容器を傾けて動きを観察します。予熱、冷却、観察時間をそろえることが、異なる油を同じ尺度で評価する前提です。

瓶を家庭用冷凍庫へ入れる方法では、規定の温度履歴や観察条件がそろいません。現場で見た濁りや流れにくさは異常の手掛かりとして記録し、規格の試験値とは分けて扱います。

図2:流動点の試験は「試料の動き」を見る

温度履歴をそろえて冷却し、傾けたときの移動を比較します。

規定の冷却流動を観察動きを示さない同じ試料を使う液面・試料の移動凝固完了の判定ではない

流動する試料は液面が水平に動き、非流動の試料は傾けても動きを示しません。

試験結果を読むときは、温度の数字と一緒に試験方法の名称も残します。海外の性状表など別方式の結果を比べる際は、報告温度の刻みを含めて条件を合わせます。

製品資料の「代表性状」は、その製品の特徴を示すための値です。納入時に満たす規格上限や契約の保証値とは役割が違うため、受入判定に使う欄を取り違えないようにします。

曇り点・目詰まり点・流動点の違い

軽油の低温性状で特に重要なのが、フィルターの通過性を評価する目詰まり点です。流動点だけを比べると、タンクでは動くのにエンジンへ届かない現象を見落とします。

冷却された軽油ではパラフィン分が析出し、燃料フィルターを閉塞する原因になります。したがって低温対策では、結晶の発生、フィルターの通過、油全体の流動を別々の観点で読みます。

図3:タンクに液体が残っていても燃料は止まる

パラフィンの結晶がフィルターに捕まり、液体の流路を狭めます。

結晶を含む軽油フィルター供給先へ油全体はまだ流れる結晶の堆積流量が低下

ろ材の上流側に結晶がたまると、通過できる流路が狭まります。

冬だけ燃料の流れが悪くなったら、フィルター前後の圧力差と燃料温度を合わせて記録します。低温の結晶に加え、さびや水分、長期保管で増えた沈殿物も切り分けの対象になります。

供給不足による圧力低下は、ポンプの吐出圧力が低下する原因にも関わります。回転数を上げる前に、吸込側の閉塞と液温を調べると、原因に合った対処へ進めます。

凝固点や流動点を用いる理由

燃料油は組成の異なる炭化水素などの混合物なので、製品名だけでは低温での挙動が決まりません。そこで決められた条件で測った性状値を使い、製品同士の比較や受入管理に役立てます。

同じ軽油でも季節と地域に合わせて号数が変わり、必要な低温性状が調整されています。夏に受け入れた燃料を冬まで残す場合は、現在販売されている号数より、タンク内の残油の性状が問題になります。

軽油は季節・地域に合う号数を使う

ENEOSの石油便覧が示すJIS K 2204:2023では、軽油を特1号から特3号までの5種類に分けています。流動点の上限と目詰まり点の上限を並べると、低温で評価する対象の違いが見えてきます。

図4:軽油の号数と二つの低温規格値

流動点と目詰まり点は別の項目であり、それぞれの上限を満たします。

号数流動点目詰まり点
特1号+5℃以下規定なし
1号−2.5℃以下−1℃以下
2号−7.5℃以下−5℃以下
3号−20℃以下−12℃以下
特3号−30℃以下−19℃以下

出典:ENEOS石油便覧のJIS K 2204:2023抜粋。

夏期には1号や特1号、冬期には2号、寒冷地では3号や特3号などを使い分けます。ただし実際に供給される号数は地域と時期で変わるので、購入先の供給条件を調べて手配します。

非常用発電機では、燃料が普段あまり減らず、夏季の残油を冬にも使うことがあります。停電時だけ動けばよい設備ほど、補給日、受入号数、残量を結び付けた記録が役立ちます。

コスモエネルギーは、夏季用軽油が冬季に使えない可能性と、備蓄燃料のグレードへの注意を案内しています。単に残量を満たすだけでなく、使用する季節まで含めて在庫を管理することが大切です。

数字を外気温へ直接置き換えない

仮に燃料温度が−12℃で、3号軽油の規格上限と比べる場面を考えます。流動点上限との温度差は8℃ですが、目詰まり点上限との温度差は0℃になります。

説明用:油温と二つの規格上限の差
ΔTp = Toil − Tp,limit
= −12 − (−20) = 8℃
ΔTf = Toil − Tf,limit
= −12 − (−12) = 0℃
Toil:仮定した油温。Tp,limit:3号の流動点上限。Tf,limit:3号の目詰まり点上限。各温度の単位は℃、ΔTの単位も℃(温度差ではKと同じ大きさ)です。ΔTは温度差で、運転の安全余裕や合否を算定する式ではありません。

この差から分かるのは、流動点だけを基準にするとフィルター側の条件を読み落とすことです。実油の試験値、機器の指定燃料、油温の分布をそろえて、使用条件を決めます。

気象情報の最低気温と、タンク内部や屋外配管の油温にも違いがあります。暖かい室内タンクの温度だけを測ると、外壁を通る細い枝管や停止中のフィルターの冷えを見逃します。

重油は流動点と送油・噴霧の粘度を分ける

重油の規格ではA重油が1種、B重油が2種、C重油が3種に対応しています。石油便覧の表では流動点は1種が5℃以下、2種が10℃以下ですが、季節による注記もあります。

寒候用の1種と2種は0℃以下、暖候用の1種は10℃以下という条件が示されています。基本欄の数字だけを全季節へ当てはめず、受け入れる油の仕様を注文書と照合します。

C重油はこの表で流動点の規定がなく、加熱して送る際には粘度が大きな判断材料になります。種類と規格の全体像は、A重油・B重油・C重油の違いで比較できます。

流動点より高い温度でも、油が粘ければ送油の圧力損失は大きくなります。バーナーで細かく噴霧するための条件は、配管で流せる条件より厳しくなる場合があります。

燃料の受入温度、送油温度、バーナー入口温度は、目的を分けて管理します。燃焼設備側の構成はボイラーの仕組みと構成機器と合わせると、燃料が使われるまでの流れを追いやすくなります。

タンクだけでなく供給経路の低温部を探す

温度を調べる範囲は、貯蔵タンクからポンプ、フィルターを通って使用機器へ届くまでです。運転中の状態だけでなく、夜間に停止した後や起動直前の油温も記録します。

図5:燃料系統のどこが冷えるかを追う

タンク平均温度だけで判断せず、屋外の枝管とフィルター前後にも測定点を設けます。

貯蔵タンク出口油温屋外枝管送油ポンプフィルター使用機器液中温度起動前・運転中を記録

測定は既設計器や承認された手順で実施し、危険物設備を不用意に開放しません。

保温材のすき間や外装の破損があると、その部分から熱が逃げやすくなります。配管の保温と放熱量では、厚さだけでなく施工状態も性能に関わる理由を整理しています。

保温は熱の逃げを遅らせる方法なので、長時間停止する系統では入熱の条件も必要になります。電気トレースや加温の追加は、油の引火性、設備の防爆区分、メーカーの指定を踏まえて設計します。

低温で油が来ないときに吸込側の問題を放置すると、ポンプの運転状態も悪化します。原因の調査にはポンプのよくあるトラブルの症状別の見方を使い、空運転を避けます。

温度記録には測定日時、運転・停止の別、タンクや配管の測定位置を添えます。液中の油温と保温材の外側の表面温度は分け、同じ位置で継続して比べると冷え方の変化を追いやすくなります。

受入時は規格・代表性状・実測値を読み分ける

燃料を購入するときは、用途と使用する季節を伝え、必要な低温性状を仕様に含めます。号数だけを口頭で確認するより、注文書と納入書の記録を対応させると、残油の追跡が容易になります。

受入判定では、契約で求めた範囲と試験成績書の実測値を対応させます。カタログの代表性状は製品間の比較に使い、納入ロットごとの判定記録には試験成績書の値を残します。

補給で異なる時期の油が混ざった場合は、後から入れた油の号数だけでタンク全体を代表させません。残量と補給量を記録し、低温での適合性は供給者と相談して、必要な試験や入替えを決めます。

停止が起きた場合にも、燃料温度と機器の状態を同じ時刻で残すと調査が進みます。起動直後だけ悪いのか、連続運転でも流量が落ちるのかを分け、低温と汚れの影響を絞り込みます。

フィルターを交換して一時的に回復しても、冷えた燃料が供給されれば結晶による閉塞は再発します。交換品の状態と温度履歴を保全記録に残し、消耗品交換と燃料の低温対策を切り分けます。

潤滑油は低流動点だけで選ばない

潤滑油でも低温で流れることは大切ですが、機器に必要な粘度と潤滑性能を満たすことが先にあります。流動点が低い油へ替えるだけでは、荷重を支える油膜や材料との相性を評価できません。

冷間始動時に油が供給されるかを調べる一方、運転温度で油膜を保てるかも見ます。油の選定では使用温度、回転速度、荷重と給油方式をそろえ、機器の指定油と比較します。

軸受では、油膜を保つ潤滑管理と、外部からの水分や異物の侵入を防ぐ密封管理を組み合わせます。軸受周辺の構造はラビリンスシールとオイルシールの違いと合わせて読むと、油の役割を切り分けられます。

粘い液を送る能力はポンプの形式にも関わるため、液の性状と機器を一緒に検討します。遠心式と容積式の使い分けは、ポンプの種類と特徴で全体を確認できます。

凝固点・流動点のよくある質問

流動点は凝固点より何℃高いのですか?

両者を一定の温度差で換算する関係はなく、測る対象と試験の条件が異なります。油の組成や結晶の構造で流れ方が変わるため、必要な指標そのものを性状表で読みます。

軽油は流動点より暖かければ使えますか?

流動点だけでは使用可否を決められず、目詰まり点と機器の指定条件も必要です。寒冷地へ移動する車両や屋外の発電機では、使用場所と使用時期に合った燃料を手配します。

流動点と引火点はどう違いますか?

流動点は低温での流れを、引火点は油から生じた蒸気への着火に関わる条件を表します。低温対策で加温するときも、流動性の改善と火災の防止は、それぞれの条件に応じて検討します。

タンクの軽油が白くなったら凍結ですか?

低温でパラフィンが析出した可能性がありますが、外観だけで原因を確定しません。温度履歴と採取試料を残し、水分や汚れも含めて調べ、燃料供給者と機器の手順に沿って対処します。

流動点は食用油には使わない言葉ですか?

食用油の低温変化は、凝固温度や白濁、結晶化などの言葉で説明されます。石油製品のJIS試験値と食品油の凝固性状は測定の目的が違うため、同じ表の数値として比較しません。

まとめ

この記事のまとめ
  • 凝固点は相変化、流動点は規定試験での流動性を見る指標
  • 混合油は一部の成分が結晶になる段階から挙動が変わる
  • 軽油は流動点と目詰まり点を並べ、季節・地域に合う号数を使う
  • 重油は送油と噴霧の粘度、潤滑油は機器の指定性能も調べる
  • 低温対策ではタンクから使用機器までの油温と停止時間を追う

冬の供給停止を防ぐ出発点は、燃料の性状と系統の最も冷える場所を対応させることです。温度や圧力の記録を残しておけば、油の選び直しと設備側の改善を具体的に判断できます。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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