真空になる機器は、真空という理由だけで労働安全衛生法の圧力容器にはなりません。ただし、加熱する液体の温度や蒸気ジャケット、加圧工程も含めて区分を判断します。
真空容器とは、内部の気体を抜き、大気圧より低い圧力で使う容器です。法令の対象になるかどうかとは別に、外から押しつぶす圧力に耐える構造が必要なので、常圧用の密閉タンクをそのまま転用できません。
以下では第一種・第二種の定義をたどって真空専用と加減圧兼用を分けて考え、後半で外圧でつぶれる理由と計算例、メーカーへ渡す運転条件を具体的に整理します。
真空になる機器は圧力容器になる?
室温の空気を抜くだけの真空タンクと、蒸気で加熱する反応槽では判断の出発点が違います。用途と内部流体、温度、正圧になる工程の有無をそろえてから、法令上の定義に当てはめます。
「圧力容器」は技術用語として内圧や外圧を受ける容器を広く指す場合もありますが、この記事の第一種・第二種は労働安全衛生法施行令の区分で、カタログの商品名だけでは決まりません。
最初にそろえるのは圧力の基準で、ゲージ圧は周囲の大気圧をゼロ、絶対圧は完全真空をゼロとする表示です。同じ状態でも示す数値が変わるため、この区別が、真空の測定値を法令の正圧条件と混同しないための基本になります。
図1:同じ真空を絶対圧とゲージ圧で読む
周囲を101.3kPaとした例。内部20.0kPaの状態は、ゲージ圧では−81.3kPaです。
小さい画面では図を横にスクロールできます。
※目盛は説明用。周囲の大気圧は場所や気象で変わります。
例えば周囲が101.3kPa、容器内が絶対圧20.0kPaなら、ゲージ圧は次の値です。内圧が負になるという表示は、大気より低いことを表すのであり、絶対圧が負になったわけではありません。
図面の「−0.08MPaG」と「20kPa abs」を比べる際も、単位と基準を合わせます。計器の指示だけでなく仕様書の測定範囲を読み、圧力計の種類と測定原理に合った表示かを照らし合わせます。
区分の全体像は、日本ボイラ協会のボイラー・圧力容器の法的区分で整理されています。以下は容器だけを対象にしているので、蒸気や温水を外へ供給するボイラーの判定とは分けて読んでください。
第一種圧力容器の適用区分
第一種圧力容器は、施行令第1条第5号のイ〜ニに掲げる容器から、小さいものを除いて定義されます。加熱・反応・分離・高温液体の保有という用途を先に見るので、圧力の数値だけで分類を始めません。
図2:第一種の4類型で、圧力条件の書き方が違う
イ〜ハには「大気圧を超える」が付き、ニは液体の温度に着目した定義です。
| 類型 | 容器内でしていること | 定義で見る条件 |
|---|---|---|
| イ:加熱 | 蒸気・熱媒を受け入れる等して固体・液体を加熱 | 容器内が大気圧を超える。ロ・ハを除く |
| ロ:反応 | 容器内の反応で蒸気を発生 | 容器内が大気圧を超える |
| ハ:成分分離 | 液体を加熱して蒸気を発生させ、成分を分離 | 容器内が大気圧を超える |
| ニ:高温液体 | イ〜ハ以外で、高温の液体を内部に保有 | その液体の大気圧での沸点を超える温度 |
※施行令第1条第5号を要約。寸法・圧力と内容積の積による除外は、この表の用途判定とは別に適用します。
イ〜ハは、容器内が大気圧を超えることが条件に含まれます。ニだけは高温液体を保有するという用途で決まりますが、どの用途に当たっても、圧力と内容積による除外まで適用して最終区分を決める点は共通です。
ニで比べるのは、保有する液体の温度と、その液体の大気圧での沸点です。運転中の圧力での沸点と取り違えないようにし、混合液なら組成も含めて、容器がどの条件に当たるかを整理します。
用途に当てはまったら、次に施行令の除外条件を見ます。例えばゲージ圧0.1MPa以下で内容積0.04m³以下のものは除外対象で、同じ圧力範囲には胴の内径と長さによる条件もあります。
さらに、最高のゲージ圧をMPa、内容積をm³で表した積が0.004以下の容器も除かれます。ニの用途だけを根拠に、真空専用でも第一種に該当すると判断するのは誤りで、正圧の上限を含めた除外条件の適用が必要です。
真空専用で使用する最高のゲージ圧を0MPaとする条件なら、内容積との積も0となり、0.004以下の除外に当たります。別空間の蒸気ジャケットや正圧で使う工程は、それぞれの条件で判断します。
第一種のうち、次のどちらかに当たるものを「小型圧力容器」と呼びます。一つ目は、ゲージ圧0.1MPa以下で、内容積0.2m³以下、または胴の内径500mm以下かつ長さ1000mm以下のものです。
二つ目は、使用する最高のゲージ圧と内容積の積が0.02以下のものです。こちらは一つ目とは別の条件なので、0.1MPa以下という圧力条件を同時に満たす必要はありません。
例えば第一種の用途に該当し、使用する最高のゲージ圧が0.20MPa、内容積が0.080m³なら、積は0.016で小型の積の条件を満たします。ただし、この積は真空度の絶対値を代入して求めるものではありません。
「簡易容器」と呼ばれるものにも構造の規定があります。対象は第一種から除かれた加熱容器などのうち施行令第13条第3項第26号に該当するもので、すべての非該当容器の総称ではありません。
同号では、ゲージ圧0.1MPa以下で内容積0.01m³以下のものや、圧力と内容積の積が0.001以下のものなどを除いています。第一種の除外に使う0.04m³・0.004と、ここでの数値を混同しないことが大切です。
対象となる簡易容器には簡易ボイラー等構造規格が関係するため、検査の扱いが軽いからといって、構造上の基準や安全な取扱いが不要になるわけではありません。
小型には個別検定など、その区分に応じた管理が必要です。第一種・小型・簡易の関係や検査の違いは、第一種圧力容器と第二種の違いと合わせて、適用法令と書類を照合すると整理できます。
蒸気ジャケットと内槽は分けて考える
ジャケットは、容器の外周を二重にして蒸気や温水を流す空間です。製品が入る内槽が真空でも、蒸気側が正圧になる装置があるため、装置全体を「真空機器」と呼ぶだけでは法令判定が終わりません。
図3:真空の内槽と、正圧の蒸気ジャケットの断面
共通の壁には、蒸気側と内槽側の絶対圧の差が働きます。
※周囲大気圧0.1013MPaとした説明例。実機の法令区分、評価する内容積、設計温度は構造・用途と合わせて決めます。
図の条件ではジャケットの絶対圧が0.4013MPa、内槽が0.0200MPaなので、共通壁を内向きに押す差圧は0.3813MPaとなり、外側が大気だけの場合より大きい荷重になります。
メーカーには、内槽とジャケットそれぞれの圧力・温度・内容積を提示します。片側だけ加圧する状態も含めて設計条件を決め、法令の判定と共通壁の強度評価を別々の欄に残すと、見積もりの範囲が明確になります。
第二種圧力容器の適用区分
第二種圧力容器は、第一種を除き、ゲージ圧0.2MPa以上の気体を内部に保有する容器のうち、所定の大きさに当たるものです。真空だけで使う気体容器は、この正圧条件に当たりません。
大きさの条件は、内容積0.04m³以上、または胴の内径200mm以上かつ長さ1000mm以上で、容積の条件と胴寸法の条件はどちらかを満たせばよく、両方が必須ではありません。
例えば第一種に当たらない空気槽で、ゲージ圧0.20MPa、内容積0.050m³なら、第二種の圧力・容積条件を満たします。通常は真空でも、加圧して内容物を押し出す工程があれば、その条件を含めて判定します。
第二種に当たらない気体容器にも、施行令第13条第3項第27号の簡易容器があります。大気圧を超える気体を保有し、内容積0.1m³超などの条件で規定されるため、「0.2MPa未満なら何も対象にならない」ともいえません。
この27号の気体容器と前述の26号の加熱容器などは、該当する入口が異なります。真空専用の室温空気槽を考える場合は、いずれも正圧や用途の条件を先に整理し、容量が大きいという理由だけで当てはめません。
26号・27号には、船舶用、自動車用燃料装置、電気事業法や高圧ガス保安法などの適用を受けるものを除く規定もあります。他法に関係する設備は、圧力と容積だけで結論を出さず、各号の除外まで照合します。
実務で見落としやすいのは、窒素で真空を戻す操作や洗浄・滅菌です。供給側が高圧の場合は、大気圧まで戻す設計と、正圧で保持する設計を区別し、減圧・遮断・圧力制限を仕様に組み込みます。
安全弁の設定値を下げても、それだけで容器の区分を自由に変えられるわけではありません。ボイラー則は最高使用圧力を「構造上使用可能な最高のゲージ圧力」と定義しており、弁の設定値そのものを指してはいないからです。
銘板や明細書の最高使用圧力と、安全弁の設定・容量を対応させて管理します。圧力を逃がす安全弁の仕組みと、流体や必要吹出し量に応じた安全弁の選定は、容器の強度判定と組み合わせる事項です。
真空に耐える強度は、内圧の耐圧とは別に見る

真空槽の壁には、外側の大気が内向きに働きます。円筒の薄い壁が圧縮されてある条件で急につぶれる現象が座屈で、内側から膨らませる正圧での破損とは壊れ方が違います。
正圧0.2MPaに耐えるという情報だけでは、真空に使える証明になりません。胴の直径や長さ、板厚、補強の配置などによって外圧への強さが変わるため、設計計算書や仕様書で真空使用の範囲を確かめます。
円筒の胴だけでなく、平らなふたのたわみやシール面の変形も対象になります。容器本体が壊れなくても、ふたや接続口の変形で漏れが起きれば、要求した真空度を維持できません。
図4:直径600mmのふたには、約23kNの内向き荷重
外圧差81.3kPaを面積に掛けた荷重。板厚や座屈限界を求める計算ではありません。
※左は正面、右はふた周辺の断面。寸法と圧力は説明用で、図は縮尺どおりではありません。
図の円形ふたで、直径を0.600mとすると面積は約0.283m²です。大気圧と内圧の差81.3kPaを掛けると、内向きの合力は約23.0kNとなり、面積が大きいほど荷重も増えます。
内部を完全真空に近づけると、同じふたの荷重は約28.6kNに近づきます。周囲が大気の容器では差圧はおよそ1気圧が上限でも、その面積全体にかかる荷重を支える必要があることが分かります。
真空はポンプで作る場合だけでなく、蒸気が冷えて水に戻るときにも生じます。蒸気を凝縮させて低圧を保つ復水器の仕組みと同様に、密閉した槽の冷却でも内部圧力が下がるためです。
意図しない負圧を防ぐ設備では、必要な空気を取り入れる真空破壊弁を使います。意図的に真空を維持する槽では、工程条件と保護の設定を合わせ、常に大気開放する弁を無条件に付ける設計にはしません。
真空時の破損でも、破片や内容物が周囲に飛ぶ危険があります。特にガラス容器やのぞき窓は損傷と遮蔽の管理が重要で、「内向きにつぶれるから飛散しない」として保護を省くのは危険です。
購入前にそろえる運転条件と書類
運転条件は、通常運転の真空度だけでなく工程ごとに整理します。投入から洗浄までを一枚に並べると、短時間の加圧や温度上昇を見落としにくくなり、メーカーも評価する圧力の組合せを把握できます。
図5:真空タンクの工程を、仕様書の確認欄へつなぐ
内槽とジャケットを別々に記録し、その状態が同時に生じるかも残します。
| 工程・状態 | 記録する条件 | そろえる証拠 |
|---|---|---|
| 脱泡・乾燥 | 内槽最低絶対圧、最高温度、内容物 | 外圧設計条件・構造計算書 |
| 蒸気加熱 | ジャケット最高圧力・温度と内槽の同時条件 | 両空間の図面・内容積・法令区分 |
| 窒素導入・圧送 | 供給圧、容器内の上限、制限・遮断方法 | 配管計装図・安全装置仕様 |
| 洗浄・冷却 | 洗浄温度、蒸気凝縮、排液時の通気 | 取扱説明書・運転手順 |
| 保守・再組立 | ふた、シール、のぞき窓の指定部品と組付け | 部品表・点検記録・検査資料 |
※数値は各設備の仕様から記入します。法令の適用が分かれる場合は、製作者と所轄機関に条件を示して整理します。
図面には、真空ラインと窒素ラインの接続、遮断弁、圧力計、安全装置を記載します。機器番号と工程表を対応させるには、P&IDとPFDの違いを踏まえ、運転に必要な配管計装図をそろえると役立ちます。
ふたやガスケットの交換も、元の真空仕様に合う組合せを維持します。呼び径が同じだけで互換と判断せず、ねじ込み接続とフランジ接続の方式や締結条件まで、指定部品と図面を照合します。
見積依頼では、法令区分の回答と、内圧・外圧の設計条件を別項目で求めると明確です。購入仕様書の作り方に沿って、提出図書と検査の範囲まで書けば、納入後に真空対応の証拠を探す手戻りを減らせます。
真空容器のよくある質問
真空タンクは第二種圧力容器ですか?
室温の気体を真空だけで保持するタンクは、第二種の正圧条件には当たりません。窒素による圧送などでゲージ圧0.2MPa以上を使う場合は、第一種に当たる用途かを先に見てから、大きさの条件を判定します。
負圧でも圧力容器の検査は必要ですか?
検査や検定の要否は装置名ではなく用途と適用区分で決まるため、内槽が負圧でも加熱側に正圧の空間がある装置では、それぞれの構造と条件を整理し、必要な書類を製作者とそろえます。
常圧の密閉タンクを真空引きしてもよいですか?
常圧で密閉できることは、真空で使えることを示しません。メーカーが真空対応として示す仕様を選び、本体に加えてふた・のぞき窓・接続部も、その圧力と温度に対応したものを使います。
フルバキューム対応とは何ですか?
一般に、内部を完全真空に近づけた場合の外圧差を考慮した仕様を指します。周囲の圧力と設計温度も含む条件が必要で、ジャケットが加圧される容器では、その同時条件を別途仕様書に示します。
安全弁があれば真空でつぶれませんか?
正圧を逃がす安全弁と、負圧時に気体を取り入れる真空破壊弁では役割が違うため、真空運転に耐える構造を基本にし、工程に応じた圧力制限や保護装置を組み合わせて使います。
次の自社動画では、0:22・1:54・4:48で真空機器を一律に非該当と説明しています。真空専用では上記の除外条件を適用しますが、装置全体では蒸気ジャケットや正圧工程も含めて区分を判断します。
0:41の「安全弁設定=最高使用圧力」と、0:48の「正圧0.2MPaに耐えれば真空も可」は誤りです。5:11の「破損しても飛散しない」も誤りで、強度と保護は本文の条件に従います。
まとめ
- 真空という理由だけでは、法令上の第一種・第二種圧力容器の判定は終わらない
- 第一種は加熱・反応・成分分離・高温液体の4類型から、除外条件と小型の範囲を見る
- 内槽が真空でも、蒸気ジャケットや加圧工程の条件を別に整理する
- 真空による外圧強度は、正圧の耐圧とは別に評価する
- 法令区分、設計圧力・温度、安全装置、点検資料を仕様書に残す
真空容器の選定では、対象となる流体と全工程の条件を示すことが出発点です。法令の区分と外圧への強さを別々に整理しておけば、運転条件を変えるときにも、再評価が必要な範囲を追えます。
出典
出典・参考資料(7件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 第一種・小型・第二種と簡易容器の定義:e-Gov「労働安全衛生法施行令」第1条第5〜7号、第13条第3項第26・27号
- 最高使用圧力の定義:厚生労働省「ボイラー及び圧力容器安全規則」第1条第6号
- 各区分の説明:東京労働局「労働安全衛生法に基づく免許の交付要件」
- 外圧と座屈・ふた・シール面の評価:Pfeiffer Vacuum「3.4 Vacuum chambers」(構造の説明を参照。欧州の法令区分は日本へ適用していません)
- 常圧の密閉蓋と真空使用の違い:MONOVATE「蓋の形状を教えてください」
- 真空破壊弁の役割:TLV「大容量バキュームブレーカー」
- 真空ガラス容器の破損・飛散の危険:University of Pennsylvania「SOP: Glassware Under Vacuum」
NEWSLETTER
機械設計・プラントエンジニアリングの記事を、週1回まとめてメールで受け取る
週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。
機械設計を選んだ状態で登録へ ›無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。
WEEKLY NEWS
今週の製造業ニュース10選
メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。
LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
