ノイズフィルターは、電源や信号に重なる不要な成分を抑える部品です。制御盤では、スイッチング電源やインバータから出るノイズ、外部から電源線を通って入るノイズへの対策に使います。
ただし、電流容量だけで選んでも、狙った効果が出るとは限りません。ノイズの流れる経路、周波数、取付け方を合わせて考えます。この記事では電源用を中心に、原理からフェライトコアとの違い、選定、効果の確認まで説明します。
動画のモード変換は、回路の不平衡などで起こる現象で、CM自体にも放射や回路への影響があります。適合要求と対策方法は別で、適用規格は製品・用途・市場で異なります。全製品への外付けフィルター取付義務ではありません。
ノイズフィルターとは?
ノイズとは、目的とする電圧・電流・信号に含まれる不要な成分のことです。例えば直流電源では、必要な直流電圧に高周波の変動が重なることがあります。受け側の回路がその影響を受けると、測定値の揺れや通信エラー、誤動作につながります。
フィルターは、必要な成分と不要な成分に対する通りやすさの違いを使います。電源用では商用周波数の電力や直流を供給しながら、より高い周波数のノイズを減らします。電源そのものを作り直したり、停電時の電力を蓄えたりする機器とは役割が異なります。
ノイズを抑える目的は二方向あります。一つは装置から外へ出る妨害を減らすこと、もう一つは外から入る妨害の影響を減らすことです。同じ電源線でもノイズ源と影響を受ける機器の位置は変わるため、どちらを対策するかを先に整理します。
パッシブ型とアクティブ型の違い
パッシブ型は、主にコイルやコンデンサなどの受動部品で構成します。制御盤へ取り付ける金属ケース入りの電源用フィルターや、ケーブルへ装着するフェライトコアが身近な例です。本記事では、これらの受動的な対策を中心に扱います。
アクティブ型には、電子回路へ電力を供給し、妨害を打ち消す成分を作る方式などがあります。電力設備で使う高調波対策用のアクティブフィルターもありますが、対象とする周波数や容量は異なります。名称が似ていても、同じ代替品として選びません。
AC用、DC用、信号用という区別も必要です。信号線に電源用と同じ考えで大きな容量を加えると、必要な信号まで変形させることがあります。4〜20mA信号でも、伝送方式だけでなく、応答速度や受け側の仕様を踏まえて対策します。
ノーマルモードとコモンモードを見分ける
ノーマルモードは、二本の線の間で生じるノイズです。ディファレンシャルモードとも呼び、ある瞬間には一方の線を進み、もう一方の線を戻る電流として表せます。負荷へ供給する通常の電流と同じ二線のループを使うため、線間の電圧へ直接重なります。
コモンモードは、二本の線に同じ向きで流れる成分です。電流は途中で消えるのではなく、筐体や大地との浮遊容量など、二線の外側にある経路を通って戻ります。「商用電源と同じ位相」という意味ではなく、二線の成分を互いに比較した呼び方です。
電流のある瞬間の向き。実際のノイズ電流は時間とともに変化する。
伝導経路を説明する模式図。浮遊容量や接地の構成は装置ごとに異なる。
コモンモードだから無害とはいえません。ケーブルに流れる電流が放射の原因になり、周辺機器へ影響する場合があります。受信回路の許容範囲を超えたり、二線の回路条件が非対称なため差動成分へ変換されたりすることもあります。
症状だけでモードを決めつけると、別の対策を選んでしまいます。電源線の線間を見るのか、複数線をまとめた電流を見るのかで、測定対象も変わります。まず発生源、影響を受ける機器、両者をつなぐ経路を図面上で整理します。
例えば二線へ同じ大きさの電圧変動が加われば、理想的な差動入力では差が増えません。しかし実回路では、各線の対筐体容量や入力インピーダンスが等しいとは限りません。共通の変動を差動回路がどこまで受け流せるかも、受け側の仕様に含めて考えます。
ノイズフィルターの原理
電源用ノイズフィルターの基本は、低い周波数を通し、高い周波数を減衰させるローパスフィルターです。コイルとコンデンサを組み合わせ、不要な成分の通り道を変えます。「高周波を遮断する」といっても、ある周波数で突然ゼロになるわけではありません。
コイルは直列、コンデンサは分岐で働く
コイルを線の途中へ直列に入れると、電流の急な変化を妨げる働きを利用できます。理想コイルのリアクタンスは周波数に比例するため、高周波ほど通りにくくなります。基本的な性質はインダクタンスの考え方につながります。
コンデンサは、ノイズを別の経路へ流すために並列に接続します。理想コンデンサのリアクタンスは、周波数が高いほど小さくなります。コイルもコンデンサも高周波で同じように抵抗が増える、という理解では、回路の働きを説明できません。
電源用では、線間のコンデンサをCX、線と接地側の間をCYと記す例があります。商用電源では、接続箇所に適したX/Yの安全クラスや定格を満たす安全規格認定品を使います。容量が同じ一般部品への交換や、図を基にした商用電源回路の自作は避けます。
単相用の構成例。製品の端子配置や安全配線を指示する施工図ではない。
接続点は丸印、白い切れ目のある交差は非接続。主にチョークとCYがCMへ、CXと漏れインダクタンスがDMへ働く例。実製品には放電抵抗などもある。
コモンモードチョークは、同じ磁性体に二つの巻線を設けた構造です。理想的には通常の往復電流が作る磁束が打ち消され、コモンモード電流による磁束は強め合います。この違いを使い、通常の電力供給を保ちながら同相成分へ大きなインピーダンスを与えます。
実際の巻線には抵抗や漏れインダクタンスもあります。そのため通常電流への影響が完全にゼロになるわけではなく、電圧降下や発熱、差動側の特性も確認します。磁束の基本を知りたい場合は、自己インダクタンスも役立ちます。
周波数による違いを数値で確かめる
理想部品の説明例として、Lを100μH、Cを10nFとします。コイルのリアクタンスXLは、1kHzで約0.628Ω、100kHzで約62.8Ωです。一方、コンデンサのリアクタンスXCは、同じ順に約15.9kΩ、約159Ωとなります。
さらに1MHzでは、XLは約628Ω、XCは約15.9Ωです。直列のLは通りにくく、並列のCは分岐へ流れやすくなる傾向が分かります。この例は理想式の確認であり、制御盤へ取り付ける部品値を推奨するものではありません。
現物のコイルには寄生容量が、コンデンサには寄生インダクタンスがあります。高い周波数まで理想式どおりに変化し続けるとは限りません。必要な帯域が決まったら、部品単体の値だけでなく、メーカーが示す周波数特性を読みます。
LとCを組み合わせた段を増やすと、減衰を強められる場合があります。ただしサイズ、価格、漏洩電流、電圧降下も変わります。段数が多い製品ならあらゆる装置で優れるとはいえず、実機の電源側と負荷側の条件を合わせて評価します。
フェライトコアは高周波の損失を利用する
フェライトは、酸化物を主成分とする磁性材料です。コアへケーブルを通した部分のインピーダンスは、抵抗成分Rとリアクタンス成分Xを使い、Z=R+jXと表せます。jは虚数単位で、Rに対応する磁気損失がノイズのエネルギーの一部を熱へ変えます。
ケーブルに後付けできる分割型や、あらかじめケーブルを通すリング型があります。二線をまとめて同じコアへ通すと、往復する通常電流の磁束が打ち消し合い、コモンモードへ作用する構成になります。どの線を通すかで働くモードが変わる点が重要です。
二本の導体をまとめて通した断面の模式図。ケースを閉じ、コア同士を適切に合わせて使う。
導体の太さや磁束は説明用。接地線の扱いなどは装置と部品の指定に従い、外観だけで通線方法を決めない。
コアの材質、寸法、ケーブルの通し方によって、効きやすい周波数は変わります。大きさや重さだけでなく、カタログのインピーダンス曲線と、実際に問題となる周波数帯を突き合わせます。RとXの割合も、材質と周波数によって変化します。
分割型では、コアの合わせ面に隙間が残ると特性が変わります。ケーブルの太さに合う穴径を選び、ケースを確実に閉じ、取扱説明書の固定方法を守ります。閉じにくい部品を無理に押し込んで被覆を傷めると、ノイズ以前に配線の信頼性を損ないます。
同じコアで磁路と透磁率が一定、磁気飽和や寄生容量の影響を無視できれば、インダクタンスは巻数の二乗に比例します。巻き増すと線間の寄生容量を通り、高周波が入口から出口へ回り込む場合があります。巻数を変えた結果を測り、対象帯域での改善を確かめます。
ノイズフィルターが必要な理由
制御盤では、電力を大きく変換する回路と、小さな信号を扱う回路が近接します。スイッチング電源やインバータは、半導体を高速に切り替えて電力を制御します。その急な電圧・電流の変化が、配線や浮遊容量を通るノイズの原因になります。
例えばAC100Vから直流を作る電源でも、入力に含まれる高周波が出力側へ結合したり、電源内部で発生したノイズが入力側へ戻ったりします。直流へ変換してもノイズがすべてなくなるわけではなく、出力側に残るリップルと対筐体の成分を分けて見ます。
計測値が揺れたときも、原因が電源とは限りません。センサ配線の誘導、接地電位差、信号線の引き回しなども候補です。電源へフィルターを足す前に、シールド線の接続や動力線との距離を確認すると、原因の切り分けが進みます。
機器が出す妨害と、受けたときの耐性は別に見る
EMCは、周囲へ過度な妨害を与えず、その環境でも必要な動作を保つことを扱います。機器から出る妨害を評価するエミッションと、外から受ける妨害への耐性を評価するイミュニティは、別の確認です。動作が安定しているだけでは、外への放出が小さい証明にはなりません。
どの規格や法令が適用されるかは、製品の種類、用途、販売する市場などで変わります。すべての電気製品へ同じ外付けフィルターを付ける義務がある、という意味ではありません。必要な限度値と試験条件は、装置としての適用規格から確認します。
フィルター単体が安全規格に対応していても、完成装置全体のEMC適合が自動的に決まるわけではありません。配線長、筐体、接地、ケーブル出口が変われば測定結果も変わります。部品の認証と、完成品の妨害評価を分けて管理します。
必要なのは、症状と経路に合った対策
対策の入口は、発生源を弱くする、伝わる経路を変える、受け側の耐性を高める、という三つの観点です。フィルターは主に伝わる経路へ働きます。発生源のすぐ近くで抑えるのか、盤の出入口で外へ出る成分を抑えるのかを、対策目的から選びます。
信号の絶縁や接地電位差への対応が目的なら、アイソレータが候補になることもあります。ただしアイソレータにも伝送帯域や絶縁の仕様があります。電源用フィルターを付ければ、すべての信号障害まで解決するとは考えません。
PLCが停止した場合には、電源断、入力信号の変化、通信異常を区別します。PLCの入出力と動作を踏まえ、診断情報や電源の状態を時系列で照合します。停止したという結果だけで、電源ノイズが原因と決めないことが調査の出発点です。
停電や長い電圧低下は、一般的な受動フィルターが電力を補って解決する現象ではありません。雷などの大きなサージには、目的に合った保護部品との協調が必要です。高周波ノイズ、電源品質、過電圧保護を分けると、必要な機器を選びやすくなります。
ノイズフィルターの使用例
ACアダプタや制御盤の電源で使う
身近な例は、ACアダプタやスイッチング電源の入力側に設けるフィルターです。内部のスイッチングによるノイズが電源線を通って広がることを抑えます。製品によって内部構成は異なり、銘板の規格表示だけで、コイルやコンデンサの配置までは判定できません。
出力ケーブルの途中にある膨らみには、フェライトコアを収めたものがあります。材質や性能は外観だけでは分からないため、仕様書やメーカーの情報を確認します。既存品を交換するときも、対象周波数での特性を比較して選びます。

制御盤では、受電部や電源装置の近くへ専用のフィルターを設置する例があります。配置は、盤外へ出るノイズを抑えるのか、外部から電源へ入るノイズを抑えるのかに合わせます。設計全体は制御盤設計の進め方と併せて考えます。
減衰量のdBは、同じ条件での電圧比を読む
カタログには、横軸が周波数、縦軸が減衰量のグラフが載っています。ノイズの周波数を決めずに最大値だけを比べても、必要な帯域の性能は分かりません。さらにノーマルモードとコモンモードの曲線を分け、測定回路の条件も読みます。
電圧による減衰量は、フィルターを入れない場合の電圧U0と、入れた場合の電圧U1の比で表せます。例えば同じ測定系で1Vが0.1Vになれば20dB、0.01Vになれば40dBです。どちらも説明用の数値で、特定製品の実測性能ではありません。
同じ周波数・同じ測定回路で比較した仮定例。グラフの横幅は電圧に比例させている。
同じインピーダンスなら、電力比はそれぞれ1/100、1/10000。実機へ同じ減衰量を保証する図ではない。
COSELの技術資料では、静特性を入出力50Ωの測定系で比較しています。実際の電源や負荷のインピーダンスは、その値とは限らず、周波数によっても変わります。カタログで40dBの製品なら実機でも必ず40dB下がる、という読み方はできません。
二つのフィルターを直列にしても、カタログのdBを単純に足した効果が得られるとは限りません。相互のインピーダンスや共振、配線の回り込みが影響します。段を増やす前に、現在の製品が狙う帯域と、取付け状態での効果を確かめます。
定格と漏洩電流を先に確認する
選定ではまず、電源の相数、電圧、周波数、最大負荷電流を整理します。定格電流は、装置の平均的な消費電流だけで判断しません。起動時や運転モードの違い、周囲温度による電流の低減条件まで、製品仕様と突き合わせます。
周囲温度が高い盤内では、同じ型番でも許容電流を下げる必要がある場合があります。フィルターを取り付けた位置の温度を見積もり、冷却や近接機器の発熱も確認します。銘板の電流値だけを見て余裕がある、と判断しないようにします。
接地側のコンデンサは、商用周波数でも電流を流します。一般に容量を増やすとコモンモード対策へ有利になる一方、漏洩電流も大きくなります。装置内の複数機器の合計や漏電保護との関係を確認し、ノイズ性能だけで容量を増やさないことが必要です。
漏電遮断器が動作するからといって、保護接地を外して対処してはいけません。漏洩電流を抑えた仕様や、装置に適合する対策を検討します。保護接地の役割を保ちながら、取扱説明書が指定する接続と保護方式を満たします。
巻線の直流抵抗による電圧降下や発熱も確認対象です。DC系では受け側機器の最低動作電圧に余裕があるかを見ます。定格電圧の表示が同じでも、AC/DCの使用可否や電源周波数、端子構造は製品ごとに確認します。
例えば定常電流だけでなく、複数負荷が同時に起動する条件も仕様へ書き出します。突入電流の大きさと継続時間を整理し、許容条件が不明ならメーカーへ確認します。短い突入を許容する例があっても、繰り返す過負荷まで同じ扱いにはできません。
選定一覧では、電源・負荷の条件と、対象ノイズのモード・周波数・必要な減衰量を対応させます。候補ごとに漏洩電流、寸法、接地方法も併記します。同じ表で比較すると、電流容量は足りても設置条件に合わない、といった不一致を見つけやすくなります。
入力線と出力線を近づけない
フィルターの前後の線を束ねると、高周波成分が線同士の結合によって回り込む場合があります。部品の内部で減衰させても、外部の配線が近道になるためです。入力側と出力側を物理的に分け、同じ配線ダクトで長く並走させない配置を考えます。
外へ出る伝導ノイズを抑える配置例。どこを境界にするかは、発生源と対策目的から決める。
ねじ止めしただけで必要な電気的接続が得られるとは限らない。塗装面の処理や接地方法は製品と装置の指定に従う。
接地線は、高周波に対するインピーダンスも小さくすることが必要です。長い配線ではインダクタンスの影響が増え、高周波での減衰が悪化する場合があります。メーカーの指定に従って短く適切に接続し、金属ケースと取付板の接触条件も確認します。
接地の導通が直流のテスターで確認できても、高周波で十分な接続とは限りません。逆に、ノイズ対策上都合のよい配線だけを優先し、保護接地の要求を崩すこともできません。安全上の接地と高周波の帰路を、同じ設計の中で両立させます。
LINEとLOADが指定されている製品は、基本的にその向きで使います。内部回路が対称なら方向差が小さい例もありますが、非対称な回路では減衰特性が変わります。端子表示を確かめ、逆向きでも同じと推測して接続しません。
盤内配線は、内線の基本を踏まえ、電力の経路と信号の経路を整理します。部品を追加するだけでなく、既存のダクト、盤の出入口、電源機器との距離を図面に戻して確認すると、回り込みを見つけやすくなります。
取り付け前後を同じ運転条件で測る
効果の確認では、対策前の症状と運転条件を先に記録します。インバータの運転周波数、負荷、接触器の動作、通信の状態など、症状が出る場面を整理します。再現条件が曖昧なまま部品を交換すると、偶然改善したのか判断できません。
測定点、ケーブル配置、測定器の帯域や設定をそろえ、対策前後を比較します。時間波形で短いパルスを見るのか、周波数ごとのレベルを見るのかも区別します。異なる測定方式で得た数値を、そのまま改善量として引き算しないようにします。
不具合の再現試験と、規格に基づく適合試験も目的が異なります。前者で症状が消えたことを確かめても、後者の全条件を満たした証明にはなりません。必要な試験について担当部門や試験機関と条件を共有し、変更後の評価範囲を決めます。
保守のためには、完成時の状態を写真と図面に残すと役立ちます。フィルターの型番だけでなく、端子方向、接地、入出力の経路、フェライトの位置と巻数を記録します。後の配線変更で状態が変わったとき、完成時との差を具体的に確認できます。
電源の商用電圧部分を扱う測定や配線変更には、適切な資格・設備・作業手順が必要です。一般の接地型オシロスコープの接地クリップを、確認せず活線へ接続すると短絡の危険があります。必要な絶縁や測定カテゴリに対応する機器と方法を選びます。
症状だけで原因を断定せず、測定と仕様を組み合わせて候補を確かめる。
| 困りごと | 先に確認するもの | 対策候補と見落とし |
|---|---|---|
| 電源線の妨害レベルが高い | 周波数、DM/CM、測定条件 | 電源用フィルター。カタログと実機のインピーダンス差を確認 |
| ケーブルからの放射が疑わしい | CM電流、ケーブル経路、筐体との帰路 | 適したフェライトや境界対策。巻数を増やせばよいとは限らない |
| アナログ測定値が揺れる | 電源、信号の誘導、接地電位差 | 配線・シールド・絶縁等も調べる。電源フィルターだけに絞らない |
| フィルター追加後に保護器が動作 | 漏洩電流の合計、接続、保護方式 | 適合する仕様へ見直す。保護接地を外して解決しない |
| 停電や電圧低下で停止する | 電源電圧の時間変化と機器の許容値 | 電源保持等を別途検討。一般的な受動フィルターは電力を補わない |
選定の入口を整理した表。個別の不具合原因を、この表だけで特定するものではない。
対策は一度に多く変えず、一項目ずつ評価すると根拠が残ります。型番、取付位置、接地方法、ケーブルの通し方、測定結果を記録します。効果が不足した場合も、何を変えるとどの帯域が動いたかが、次の判断材料になります。
最後はノイズの数値だけでなく、装置の動作、温度、保護機能も確認します。必要な信号を鈍らせたり、発熱や漏洩電流を増やしたりしていないかを見ます。全体の考え方は制御盤のEMC・ノイズ対策でも確認できます。
よくある質問
ノイズフィルターは付ければ必ず効果がありますか?
対象の周波数やモード、配線経路が合っていることが必要です。入力と出力が近接していると、ノイズがフィルターを回り込む場合があります。まず取り付け方を確認し、同じ測定条件で対策前後を比較します。
フェライトコアは何回巻けばよいですか?
適切な回数は材質、寸法、ケーブル、狙う周波数で変わるため、一律には決まりません。巻数を増やすと低い帯域へ有利になる場合がある一方、寄生容量で高周波の効果が落ちることもあるため、メーカーの特性と実測結果で決めます。
コモンモードノイズは誤動作を起こさないのですか?
起こさないとはいえません。ケーブルからの放射や、入力回路の許容範囲を超える影響があり、回路の非対称性によって差動成分へ変わる場合もあります。線間のノイズだけを見るのではなく、筐体との関係を含めて確認します。
電流容量が大きい製品ほどノイズ性能も高いですか?
定格電流は流せる電流の条件であり、ノイズの減衰量そのものではありません。必要な電流と温度条件を満たしたうえで、対象帯域の特性、漏洩電流、寸法、取付け方法を比較します。大容量という理由だけでは選べません。
電源の規格マークがあればフィルター内蔵と分かりますか?
表示だけで内部の回路構成までは分かりません。対応する要求や製品仕様は確認できますが、どの部品をどこへ配置しているかは別の情報です。メーカー資料で確認し、密閉されたACアダプタを開けて調べることは避けます。
信号線にも電源用フィルターを使えますか?
必要な信号の帯域や伝送方式に合わなければ、波形や応答を損ないます。高速差動信号では、周波数だけでなくモードを分けて抑える部品も使われます。電源用と同じ部品を流用せず、インターフェースの仕様に適した対策を選びます。
まとめ
ノイズフィルターは、必要な電力や信号を保ちながら、不要な成分を抑える部品です。電源用ではコイル、コンデンサ、フェライトなどを使い、周波数とモードに対する特性の違いを利用します。コモンモードの帰路まで考えると、部品の役割が分かりやすくなります。
選定は、対象のノイズ、定格、漏洩電流、温度、実際の配線条件を合わせて進めます。入力と出力を分離し、接地を適切に確保したうえで、同じ条件の測定によって効果を確かめます。部品を付けることではなく、装置として問題を解消できたことを確認するのが目的です。
出典
安全仕様は村田製作所のX/Y安全規格認定コンデンサの説明、測定時の接地はTektronixのプローブ技術資料も参照しました。部品の安全認定と、測定器・プローブの接地条件を本文の注意点に反映しています。
- 村田製作所「ノイズ対策の基礎」第3回(L/Cとローパスフィルター)
- 村田製作所「ノイズ対策の基礎」第6回(モードとチョーク)
- 村田製作所「ノイズ対策の基礎」第8回(フェライトと巻数)
- COSEL「ノイズフィルタ技術資料」(2022年7月21日版、基礎・選定・静特性・施工、技術資料2〜13頁)
- COSEL「ノイズフィルタの選定方法」
- Panasonic「コモンモードノイズフィルター基礎講座」(差動信号とモード)
- CEND「ノイズフィルターとは」岡谷電機産業執筆(構造・取付け)
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