ミニマムフローとは、ポンプが過熱や振動を起こさずに連続運転できる最小の流量(最小流量)のことです。
使用先の弁が閉じても、この流量だけは流し続けるために設ける戻り配管をミニマムフローラインと呼び、現場では「ミニフロー」「ミニマムライン」とも略されます。
ポンプをワンパスで使う系統では配管図面だけを見ていると忘れがちな配管のため、この記事では、ミニマムフローの意味と目安、無いと何が起こるか、配管サイズ、ミニマムフロー弁の方式の順に整理します。
ミニマムフローとは?

ミニマムフローとは、ポンプの過熱、騒音、振動などを生じることなく連続運転できる最小の吐出し量のことです。荏原製作所の取扱説明書でも「ミニマムフロー(最小運転流量)」と書かれています。
ミニマムフローを維持するために、流体を吐出側(二次側)から吸込側(一次側)へ戻す配管を引くことを「ミニマムフロー配管を設ける」といいます。上の図は簡略化したもので、実際の戻り先は吸込み元のタンクが基本です(配管サイズの章で説明します)。
配管の呼び名は職場や会社でまちまちで、次の呼び方は、どれも同じものを指すことが多いです。
- ミニマムフローライン、ミニマムフロー配管
- ミニフロー、ミニフローライン、ミニマムライン(略称)
- 最小流量バイパス、再循環ライン(リサーキュレーションライン)
ミニマムフローを設けると、ポンプの空回りや発停の繰り返し、過熱を防げるため、ポンプの寿命が延びます。
特にLNG(液化天然ガス)のような液化ガスでは注意が要り、主成分のメタンの液は、1 m3あたりの熱容量が水の約3分の1しかありません(NISTの物性値から計算)。
しかも沸点ぎりぎりの温度で扱うので、わずかな温度上昇でも気化しやすい液です。熱容量の考え方は熱容量とは(大きいものと小さいものの違い)で解説しています。
ミニマムフロー(最小流量)の目安
最小流量は、ポンプの機種・大きさ・液温で変わり、決めるのはポンプメーカーで、一律の設計基準はありません。
メーカーは、少ない流量で起こる次の問題を見て最小流量を決めます。温度で決まる下限と、振動など運転の安定で決まる下限があり、高いほうに合わせます。
流量を絞るほど、熱と流れの乱れの両方が問題になります。
※Almasi(2015)の整理による。どれが下限を決めるかはポンプごとに違います。
公開されている数字の例を並べると、ばらつきの大きさが分かります。どれもその機種・その条件での値で、ほかのポンプにそのまま当てはめることはできません。
何に対する割合か(定格流量か、最高効率点か)も資料ごとに違います。
※Grundfos の値は取扱説明書の図から読み取ったものです。実際の設計ではポンプの仕様書・性能曲線の値を使います。
最小流量は、ポンプの性能曲線や仕様書に書かれていることが多いです。見当たらないときは、型式を伝えてメーカーに確かめます。
ミニマムフローがないとどうなる?
先に言葉を分けておくと、流量が最小流量より少ない状態が低流量運転、吐出側の弁が閉じて流量が0の状態が締切運転です。
ミニマムフローがある場合とない場合の配管を見比べます。ある場合の配管は、前章の系統図のとおりで、吐出側の使用量が仮に0になっても、一部が吸込側へ戻るのでポンプの最低吐出量は保たれます。
ミニマムフロー配管に流れる量は流量調整バルブで調整し、オリフィスや専用のミニマムフロー弁で決める方式もあり、後の章で比べます。

ミニマムフローがなく、ワンパスでポンプを使う場合はどうでしょうか。使用先でバルブが閉まると、一時的に締切運転になります。
差が出るのは、使用先の弁が閉じた瞬間です。
締切運転になると、ポンプに入る動力の行き先がなくなって熱に変わり、ポンプ内部の温度が上がっていきます。液温が上がると蒸気圧も上がってポンプ内で液が気化し始め、これが過熱やキャビテーションにつながり、ポンプの突発故障のリスクを上げます。
熱がたまる経路と、流れが乱れる経路があります。どちらも保護がなければ損傷に進みます。
※実際の進み方は、液の種類・ポンプの構造・保護装置の有無で変わります。
締切運転の注意はメーカーの取扱説明書にも出てきて、荏原製作所のキャンドモータポンプでは、蒸気圧の高い液は「いかなる場合でも締切り運転はしない」とされています。
Grundfos の多段ポンプ(CRK・MTR)では、閉じた弁に対して約5分を超えて運転しないことが条件で、振動が気になる場合の測り方は、設備の振動診断の記事が参考になります。

送風機でも風量が少なすぎるとサージングによる振動が起こるため、送風機にもミニマムフローが必要です。
関連記事:サージングとは?ポンプ・送風機で起こる現象と条件・対策、キャビテーションとの違い
締切運転で液温はどれだけ上がるか
ポンプに入る動力のうち、液を押し上げる仕事にならなかった分は熱になって液に残ります。流れているときの1回通過の温度上昇は、次の式で見積もれます。
水(cp=4,186 J/(kg·K))で全揚程100 mの例では、定格付近で効率0.75なら約0.08 K、小流量で効率0.30まで落ちると約0.55 Kになります。
流量が減るほど効率は下がり、流量0の締切では効率が0になって式が成り立たなくなります。流れが止まると熱の逃げ場がなくなる、という意味です。
締切運転のときは、ポンプ内にとどまった液がどれだけの速さで温まるかを考えます。目安は次の式です。
この式は、ケーシングの金属や外への放熱を無視した上限の目安です。実機の温度を予測する式ではありませんが、小さなポンプほど短時間で熱くなることが分かります。
最小流量で回しているあいだも温度は上がり、Schroedahl の資料では、高圧の給水ポンプで最小流量点の温度上昇を10〜20℃とし、戻り配管の設計で考えるよう求めています。
ミニマムフローの配管サイズは?
配管を決める道筋は、最小流量を確かめる、方式を選ぶ、管径と減圧のしかたを決める、の順で、方式は次の章で比べます。
ミニマムフローの配管サイズは、最低吐出量を流したときの流速に合わせて設計します。まずは選んだポンプのミニマムフローがいくらかを確認し、その流量に合う配管サイズを選定します。流速の求め方は配管流速の計算方法で解説しています。
流す量が少ないので、メイン配管より数サイズ小さい配管にすることが多いです。ただし、管径だけでは戻る量は決まらず、吐出側の高い圧力を戻り先の低い圧力まで下げる役目は、オリフィスや弁が受け持ちます。
ポンプの吐出から分かれた細い配管が、減圧部を通って吸込み元のタンクへ戻ります。
メインの流れ
ミニマムフローライン
※配置は一例です。逆止弁と分岐の順番、減圧部の位置は方式や設計条件で変わります。
戻り先は、ポンプの吸込み配管ではなく吸込み元のタンクが基本で、吸込み配管に直接戻すと、温まった液がすぐポンプに戻り、熱がたまっていくためです。
温度の上がった液を減圧すると、戻り配管の中で気化(フラッシング)しやすくなります。Schroedahl の資料では、減圧部をタンクのできるだけ近くに置き、その下流の配管を1サイズ大きくするよう勧めています。
高い差圧を1枚のオリフィスで受けると、キャビテーションで削られやすくなります。差圧が大きい系統では、多段のオリフィスや多段減圧の弁を使います。
ミニマムフローラインの方式とミニマムフロー弁
最小流量を確保する方法は、大きく3つに分かれます。いちばん単純なのは、オリフィスで決めた量を常に戻し続ける常時バイパスで、2つ目は、流量計の信号で戻り側の制御弁を開け閉めする方式です。3つ目が、ミニマムフロー弁とも呼ばれる自動再循環弁(ARV)です。
保護の確実さ、制御の手間、ムダになる動力の3点で違いが出ます。
※Schroedahl「Engineering Letter Pump Protection」の分類をもとに整理。
常時バイパスは、使用先が必要としている間も最小流量を戻し続けるため、その分だけポンプを大きめに選ぶ必要があり、動力も余分にかかります。Schroedahl の資料には、高圧の注入ポンプで余分な動力が950 kWになる例が載っています。ムダな動力の考え方は工場の省エネの記事でも整理しています。
自動再循環弁は、ポンプの吐出口に直接取り付けるのが基本で、主流量が増えると戻す量が自動で減り、一定の流量で戻り側が閉じます。
ボイラー給水ポンプでは、ミニマムフローを脱気器(デアレーター)へ戻す構成がよく使われるのは、脱気器が、給水ポンプの吸込み元のタンクにあたるためです。
図面で確かめるときは、P&ID(配管計装図)でポンプ吐出の分岐、減圧部、逆止弁、戻り先の順に追います。記号の読み方はP&IDの読み方の記事が参考になります。
方式が決まれば、前章の考え方で戻り配管のサイズと減圧の段数を決めます。吸込側の圧力は連成計で見ることが多く、運転中の確認にも使えます。
ミニマムフローのよくある質問
ミニフロー・ミニマムラインとは何ですか?
どちらも、ミニマムフローライン(ミニマムフロー配管)の略称として使われることが多い言葉で、ポンプの最小流量を確保するために、吐出側から吸込み元へ戻す配管を指します。
略し方は会社ごとに違うので、図面や仕様書では、ポンプの吐出側から分かれる細い配管かどうかで確かめると確実です。
締切運転は何分までなら大丈夫ですか?
許容時間はポンプごとに違うので取扱説明書で確かめ、書かれていなければ、型式を伝えてメーカーに聞くのが確実です。
上で紹介したとおり、蒸気圧の高い液のように短い時間でも締切運転を禁じている機種があり、時間で考えるより、締切運転にならない配管にしておくのが基本です。
吸込み弁も閉めたまま運転するとどうなりますか?
吐出側だけの締切とは別の、さらに危険な状態で、吐出締切では圧力が吸込み配管へ逃げますが、両方閉じると逃げ場がなくなります。
米国化学工学会(AIChE)の CCPS の事例では、両方の弁を閉じた遠心ポンプが約45分運転され、液温と圧力が上がってポンプが破壊されました。2.3 kg の破片が120 m以上先で見つかっています。
起動するポンプと操作する弁の指示をはっきり復唱すること、起動に立ち会うことなどが対策として挙げられています。ミニマムフローラインがあっても、吸込み弁が閉じていれば役に立ちません。
まとめ
- ミニマムフローは、ポンプが過熱や振動なく連続運転できる最小流量。確保するための戻り配管がミニマムフローライン(ミニフロー)
- 最小流量は機種・液温で大きく違う。値はポンプメーカーの仕様書・性能曲線で確かめる
- ミニマムフローがないと、使用先の弁が閉じたとき締切運転になり、液温が上がって突発故障のリスクが上がる
- 配管サイズは最小流量の流速で決め、減圧はオリフィスや弁で受け持つ。戻り先は吸込み元のタンクが基本
- 方式は常時バイパス・制御弁バイパス・自動再循環弁(ミニマムフロー弁)の3つ
ミニマムフロー配管は細い配管が多いですが、忘れると高価なポンプを故障させる危険があります。意味を理解して、図面を見るときに必ず探すようにしましょう。
ポンプの選定では、NPSH(有効吸込ヘッド)の考え方も欠かせません。ポンプを含む設備の日常管理は、設備保全の仕事の記事で全体像を紹介しています。
出典
出典・参考資料(9件)を開く出典・参考資料を閉じる
- ミニマムフロー(最小運転流量)・締切運転の注意:荏原製作所「エバラ ステンレス製キャンドモータポンプ 取扱説明書」
- 液温と最小流量・閉じた弁での運転時間:Grundfos「CRK, MTR Installation and operating instructions」
- 3つの方式・戻り先・温度上昇・フラッシング:Schroedahl(CIRCOR)「Engineering Letter Pump Protection」
- 最小流量と自動バイパス:シュレダール 渦巻ポンプ過熱防止用自動バイパスバルブ SUL シリーズ(カタログ)
- 最小流量を決める要因:Amin Almasi「Factors to determine minimum allowable flow rate in centrifugal pumps」Water Technology(2015)
- 吸込み元へのバイパス:J. A. Reynolds「Use minimum flow data to prolong centrifugal pump life」Chemical Engineering(1996、OSTI 抄録)
- 温度上昇の式:Wilfley「Keeping Temperature in Check in Centrifugal Pumps – Part 1」
- 吸込み・吐出とも閉じたポンプの事故:AIChE CCPS「Process Safety Beacon」2002年10月(日本語版)
- 液化メタンの密度・比熱:NIST Chemistry WebBook「Thermophysical Properties of Fluid Systems(Methane)」
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