定修(ていしゅう)は、24時間連続で運転しているプラント(大型の生産設備)を計画的に止め、機器を開けて点検・清掃・補修する期間です。法律で決められた検査の期限に合わせて、運転中には開けられない機器の中を確かめます。
止める間隔は原則1年に1回ですが、国の認定を受けた事業所では最長8年まで連続運転が認められます。何年に一度止めるかは、どの法律が適用され、事業所がどの認定を受けているかで変わります。
この記事では、定修とは何かを整理したうえで、周期を決める法定検査と連続運転を延ばせる認定制度を説明します。続いて、計画から再スタートまでの工程、発注者と協力会社の体制、人手不足や工期をめぐる課題と対応の順に見ていきます。
- 定修(ていしゅう)は「定期修理」の略。連続運転しているプラントを計画的に止め、運転中には開けられない機器を開放して点検・清掃・補修・更新する期間
- 周期は原則1年に1回。高圧ガス保安法の保安検査やボイラーの性能検査など、法定検査の期限で決まる。国の認定を受けた事業所は4年程度、最長8年まで連続運転できる
- 期間は装置の規模と工事量で変わる。年産60万トン級のエチレン製造装置の大規模定修(2017年度)では、工事期間が約2か月、外部作業員はピーク時で1日3千人にのぼった
- 主な作業は、塔槽・熱交換器の開放点検、ポンプ・圧縮機など回転機の分解整備、配管・弁の開放点検、計器の点検整備
- 人手不足と時間外労働の上限規制のもとで、定修時期の分散や、定修の作業を日常保全へ移す取り組みが進んでいる
プラントの定期修理(定修)とは

定期修理(定修)とは、24時間連続で運転しているプラントを計画的に止め、機器を開放して点検・清掃・補修・更新することです。
石油精製や石油化学のプラントでは、次に止めるまでの間、安全に動かし続けられる状態に戻すことが目的になります。現場ではシャットダウンメンテナンス(SDM)と呼ぶこともあります。
止める間隔は、原則として1年に1回です。ただし国の認定を受けた事業所では、4年程度、最長で8年まで連続運転が認められます。詳しい仕組みは次の章以降で整理します。
日々の巡回点検や小修理を行う日常保全と比べると、定修は短い期間に大量の工事が集中する点が大きく異なります。
動かしながら行う保全と、止めて行う保全で役割が分かれます。
※装置の一部だけを止める部分定修や、トラブル対応で臨時に止めるケースもあります。
石油化学工業協会などがまとめた定期修理研究会の報告書は、定修の主な作業を5つに整理しています。
塔槽や熱交換器といった静止機器の開放・点検・清掃、圧縮機やポンプなど回転機の分解整備、配管・弁の開放点検、計測器類の点検整備、そして準備や付帯の作業です。
規模の大きさも特徴です。同報告書によると、年産60万トン級のエチレン製造装置で2017年度に行われた大規模定修では、工事期間が約2か月、外部作業員はピーク時で1日3千人にのぼりました。
年産60万トン級の装置の定修で、これだけの人と費用が動きます。
※出典:定期修理研究会「今後の定期修理の在り方に関する報告」(2019年12月)。装置の規模や工事内容によって大きく変わります。
止めている間は製品をつくれないため、定修は費用がかかるうえに売上も立たない期間です。それでも止めるのは、次の章で見る法定検査があるからです。プラントをつくる側と運転する側の関係は、プラント業界の企業の種類と仕事の流れで整理しています。
定修の周期は法定検査で決まる
石油化学コンビナートで扱う原料や製品の多くは、高圧ガスや危険物に該当します。そのため高圧ガス保安法、消防法、労働安全衛生法、石油コンビナート等災害防止法という、いわゆる保安4法が適用されます。
このうち定修の時期に直結するのが、機器を止めて開放しなければ受けられない法定検査です。検査の期限が来る前に止める必要があるため、定修の周期は検査の周期に引っ張られます。
原則の周期は1年。延ばせる仕組みは法令ごとに別々に用意されています。
保安検査
性能検査(ボイラー・第一種圧力容器)
定期点検
屋外タンクの保安検査・内部点検
※周期は設備の種類や条件で変わります。実際の受検時期は、事業所ごとの許可・認定の内容で決まります。
高圧ガス保安法の保安検査
一定規模以上の高圧ガスを製造し、都道府県知事の許可を受けている事業者を第一種製造者といいます。第一種製造者は、高圧ガス保安法第35条により、爆発などの災害が起きるおそれのある施設(特定施設)について、定期に保安検査を受けなければなりません。
検査を行うのは都道府県知事のほか、高圧ガス保安協会(KHK)や指定保安検査機関です。
頻度は、コンビナート地域の事業所に適用されるコンビナート等保安規則の第34条で、1年に1回と定められています。
それ以外の事業所に適用される一般高圧ガス保安規則の第79条も同じ頻度です(経済産業大臣が別に期間を定めた施設を除く)。これが「プラントは原則として年に一度止める」と言われる理由です。
ボイラー・第一種圧力容器の性能検査
労働安全衛生法の対象になるボイラーと第一種圧力容器は、検査証の有効期間が1年です(ボイラー及び圧力容器安全規則 第37条・第72条)。有効期間を更新するには、登録性能検査機関による性能検査を受ける必要があります。
性能検査は、機器を冷却して掃除し、開放した状態で行うのが原則です(同規則 第40条・第75条)。ただし、通達で定める要件を満たして所轄の労働基準監督署長の認定を受けると、開放検査の周期を2年、4年、6年、8年、12年のいずれかに延ばせます。
ここで誤解されやすいのは、延びるのは「開放して検査する周期」であり、性能検査そのものがなくなるわけではない点です。開放しない年も、運転時検査または停止時検査という形で検査は受けます。
12年周期は、2021年3月の厚生労働省通達で新たに加わった区分です。
消防法の定期点検と保安検査
危険物を扱う施設には、消防法第14条の3の2による定期点検があります。指定数量の10倍以上を扱う製造所や一般取扱所、200倍以上の屋外タンク貯蔵所などが対象で、原則1年に1回以上、事業者が自ら点検して記録を残します。
大型の屋外タンクには、さらに長い周期の検査があります。容量1万kL以上のタンクは、市町村長等による保安検査を原則8年ごとに受けます。
1,000kL以上1万kL未満のタンクは、13年または15年ごとに底部の板厚や溶接部を調べる内部点検が必要です。
このように、1つの事業所の中でも機器ごとに適用される法令と周期が異なります。保全の計画では、それぞれの期限を一覧にして、どの停止のときにどの検査を受けるかを割り付けていく作業が欠かせません。
法令で周期が決まる設備の保全方式の考え方は、TBM(時間基準保全)とCBM(状態基準保全)の違いで詳しく扱っています。
連続運転を延ばせる認定制度
定修の話で「4年連続運転」「8年」という数字が出てきたら、それは高圧ガス保安法の認定制度の話です。
保安の体制が優れた事業所を国が認定し、事業者自身による検査と、1年を超える連続運転を認める仕組みで、2023年12月には新しい制度が始まりました。
「4年」「8年」は、認定の区分ごとに認められる連続運転の期間です。
認定事業所
スーパー認定事業所
B認定(認定高度保安実施者)
A認定(特定認定高度保安実施者)
※出典:高圧ガス保安協会、経済産業省の公表資料、高圧ガス保安法施行令第10条の2をもとに作成。
旧制度:認定事業所とスーパー認定事業所
従来の制度では、経済産業大臣の認定を受けた事業者が、完成検査や保安検査を自ら行えました。認定事業所は4年間などの大臣に認められた期間、2017年4月に始まったスーパー認定事業所は8年以下で事業者が設定した期間、連続して運転できます。
ただし認定のハードルは高く、定期修理研究会の報告書がその状況を示しています。
報告書がまとめられた2019年当時、認定を受けていた製造事業所は94事業所、全国の高圧ガス事業所の0.3%にとどまっていました。多くの事業所にとって、定修は今も毎年の行事です。
新制度:認定高度保安実施者制度
2022年6月に公布された改正法により、2023年12月21日から認定高度保安実施者制度が始まりました。テクノロジーを活用しながら自立的に高度な保安を確保できる事業者を認定し、その保安力に応じて手続きや検査を合理化する制度です。
認定の要件は4つあります。経営トップのコミットメント、高度なリスク管理体制、テクノロジーの活用、そしてサイバーセキュリティなど関連リスクへの対応です。IoT機器などの活用が前提になるため、サイバーセキュリティ対策も要件に入っています。
認定には2つの区分があります。B認定(認定高度保安実施者)は4年程度、A認定(特定認定高度保安実施者)は最長8年の連続運転が可能です。
どちらも完成検査と保安検査を自ら行え、検査記録を都道府県知事へ届け出る必要がなくなりました(記録の保存は必要です)。
なお、4年・8年は連続運転できる期間で、認定そのものの有効期間とは別の数字です。認定の有効期間はB認定が5年、A認定が7年で(高圧ガス保安法施行令第10条の2)、期間ごとに更新を受けます。
認定を受けた事業所の一覧は、高圧ガス保安協会のウェブサイトで公開されています。
A認定ではさらに、設備の劣化状況から適切な時期を判断し、運転を止めずに保安検査を行うことも可能です。運転中のデータで設備の状態を見張る技術は、プラントの故障予兆監視で紹介しています。
「4年」「8年」を読むときの注意
これらの年数は、認定を受けた事業所に認められる連続運転の期間であり、すべてのプラントが4年や8年ごとに止めているわけではありません。定期修理研究会の報告書に登場する化学会社の例でも、定修のサイクルはおよそ2〜4年でした。
また高圧ガス保安法の認定を受けても、ボイラーや圧力容器の開放検査周期の認定は別の手続きです。複数の法令の期限がそろってはじめて、装置全体の連続運転が延ばせます。
定修の工程|計画から再スタートまで

定修は、止めている期間だけの仕事ではありません。工事の中身を決めて発注する準備の段階、実際に止めて開ける段階、そして運転を再開する段階に分かれます。
準備、停止中、再開の3つの段階で進みます。
※一般的な流れを示したものです。装置の種類や事業所のルールによって、順序や呼び方は異なります。
準備:工事範囲を決めて早めに発注する
定修の出来は、止める前にほぼ決まります。法定検査の対象機器、前回の定修で先送りした補修、運転中に見つかった不具合を突き合わせ、今回やる工事を確定させます。
工事範囲が固まらないと、協力会社は人を手配できません。
定期修理研究会の報告書では、早期発注の捉え方の違いが紹介されています。元請け側が「定修開始の半年から1年前まで」の発注を早期発注と考えているのに対し、発注側は「1か月前まで」と捉えている例です。この認識のずれが、人員確保を難しくする一因です。
停止・開放:エネルギーと内容物を確実に遮断する
装置を止めたら、温度と圧力を下げ、内部の流体を抜きます。
可燃性ガスや有害物が残っていると、開放したときに火災や中毒につながるため、窒素や蒸気などで内部を置換し、配管を仕切って作業範囲を隔離するのが一般的な流れです。
労働安全衛生規則第275条も、化学設備を分解したり内部で作業したりするときの措置を定めています。その内容は、バルブやコックを二重に閉めるか、閉止板(仕切板)を入れたうえで、施錠や表示などをすることです。
窒素などで置換した機器の中は酸素が足りない状態になるため、人が入る前に空気に入れ替えて換気し、酸素や可燃性ガス、有害ガスの濃度を測って安全を確かめます。
厚生労働省の「化学設備の非定常作業における安全衛生対策のためのガイドライン」は、槽内の常時換気を求めています。保つべき値は、酸素濃度18%以上、可燃性ガス濃度は爆発下限界の5分の1以下、硫化水素濃度は10ppm以下です。
定修では、多くの会社の作業員が同じ装置に同時に入ります。誰かが作業している機器のバルブや電源が誤って操作されないよう、錠と札で固定する手順が欠かせません。具体的な進め方はロックアウト・タグアウト(LOTO)の6ステップを参照してください。
点検・補修:多くの職種がリレーする
機器1基を開けて閉じるだけでも、多くの職種が順番に関わります。報告書は、開放・点検・清掃の作業を次の流れで説明しています。
- 鳶(とび)による足場の設置
- 重量鳶によるフランジの開放
- 設備内部の清掃
- 非破壊検査会社による検査
- 必要に応じた補修工事と仕上げ
- 装置を保有する会社による検査・確認
- マンホール閉め、フランジの塗装、保温工事
- 足場の解体
前の作業が終わらないと次の職種が入れないため、1つの遅れが後ろの工程すべてに波及します。開けてみてはじめて分かる劣化や、突発の補修が工期を左右するのも定修の難しさです。
報告書も、高経年化による材質劣化の事例が増え、補修は新設工事より難易度が高いと指摘しています。
復旧・スタートアップ:再開時がいちばん気を使う
補修が終わったら、機器を閉じて漏れがないかを確認し、保温と塗装を戻して足場を解体します。その後、段階的に温度と圧力を上げて運転を再開するのが一般的な流れです。
報告書は、人員が足りないまま定修が重なると、定修中のトラブルや再スタート時の不具合が実際に起きていると述べています。停止・再開は普段と違う操作が続く場面であり、作業前の危険の洗い出しにはリスクアセスメントの進め方が役立ちます。
定修を支える体制|発注者・元請け・協力会社

定修の工事は、プラントを持つ会社の社員だけでは到底こなせません。メンテナンス会社が元請けとなり、その下に専門工事会社が連なる形で人を集めます。
発注者から専門工事会社まで、層をなして工事を分担します。
※報告書で紹介された化学会社の例では、元請け4社の下に合計20社以上の下請けが入る構造でした。
日本メンテナンス工業会の実態調査(2016年版)を引用した報告書によると、メンテナンス会社の売上は9,652億円でした。工事別では、定期修理が37%の3,520億円を占めて最大です。定修は、メンテナンス業界にとっても事業の柱です。
同じ報告書によると、メンテナンスの要員は全体で約4万5千人。このうちメンテナンス会社の社員は約2万5千人で、残りの約2万人は外注に頼っています。
会社の規模では従業員50名以下が全体の74%を占め、大手が元請けになって中小の会社を起用する形が一般的です。
特定の地域だけでは人が足りないため、他の地域からの出張応援が前提になっています。塔槽などの静機器の工事は外注の比率が高い一方、ポンプや圧縮機といった回転機は専門性が高く、対応できる作業員の取り合いが起きやすいとされます。

定修が抱える課題|人手不足・工期・残業規制

定修は今、続け方そのものが問われています。
石油化学工業協会は2019年、定期修理研究会を立ち上げ、課題を整理しました。協力を得たのは、石油連盟、日本化学工業協会、日本メンテナンス工業会、日本非破壊検査工業会、日本プラスチック工業連盟の5団体と有識者です。
4つが重なり合って、人の確保と工期の維持を難しくしています。
※出典:定期修理研究会「今後の定期修理の在り方に関する報告」(2019年12月)。数字は報告書がまとめた当時のものです。
時期の集中と工期の長期化
定修は、屋外で作業しやすい春と秋に集中します。報告書でも、夏に定修を組むと作業効率の低下や熱中症対策の負担が増えることが懸念点に挙げられています。各社が同じ時期を選ぶ結果、全国を移動して働く作業員やクレーンなどの資機材が足りなくなります。
加えて、装置の高経年化で1回あたりの工事量が増えています。
報告書は2019年の時点で、2022年にはエチレン製造装置の半数以上が50年を経過するとの見通しを示しました。そのうえで、定修の日数が従来の25〜30日から50〜60日に延びていると指摘しています。
連続運転の期間が延びるほど、1回の定修に工事が集まりやすくなる面もあります。
担い手の不足と高齢化
メンテナンス業界では60歳台の作業員の比率が年々高まっています。定修の応援を担ってきた建設業の就業者も減っており、報告書は今後の応援は期待しにくいとの見方を示しています。
なかでも深刻とされるのが、現場を取り仕切る工事の監督者の不足です。作業員を集められても、工程と安全を管理できる人がいなければ工事は進められません。経験がものを言う仕事だけに、技能伝承と人材育成の仕組みを意識的につくる必要があります。
時間外労働の上限規制
時間外労働の上限規制は2019年4月から順次始まり、猶予されていた建設業にも2024年4月から適用されています。
臨時的な事情があっても年720時間以内、休日労働と合わせて月100時間未満、2〜6か月平均で80時間以内に収めなければなりません。
報告書がまとめた当時、定修期間中の社員や工事従事者の残業は2か月平均で80時間を超え、100時間を超える例もありました。短期間に残業で工事を押し込む従来のやり方は、制度上続けられなくなっています。
報告書は、発注者が請負契約を理由に責任を回避することは認められないとし、取引先や下請けに無理な発注をしないよう国が事業者団体に要請していることにも言及しました。
課題への対応|時期の分散と平準化、スマート保安
こうした課題に対し、業界全体、発注者と元請け、技術と制度という3つの層で対応が進められています。
誰が動くかによって、打ち手は3つの層に分かれます。
※定期修理研究会の報告書と、経済産業省の認定高度保安実施者制度の資料をもとに整理。
定修時期を分散する
定期修理研究会が最も効果が期待できるとしたのが、定修時期の分散です。各社の定修が重ならなければ、人員と資機材の取り合いが減り、工事品質と製品の安定供給の両方につながります。
同業他社どうしが日程を調整することになるため、石油化学工業協会は公正取引委員会と折衝し、定修の日程調整について了解を得ています。
報告書では、利害関係のない団体事務局や学識経験者による「定修会議」とガイドラインを設け、2023年以降の定修を調整の対象とする方針が示されました。
定修の仕事を日常保全へ移す
もう1つの方向が、仕事量のピークそのものを下げることです。報告書には製油所の試算が載っています。定修の中心である火気工事は41日間でピーク時1,900人を動員しますが、日常保全はピーク時でも650人です。
稼働中検査(OSI)などを取り入れて定修の工事の10%を日常保全に移すと、ピーク時の人員は1,900人から1,510人に減るとされています。運転中に状態を測れる範囲が広がれば、止めて開ける作業を絞り込めるという考え方です。
手続きと教育を共通化し、作業できる時間を増やす
定修では、入構の手続きや安全教育にも多くの時間がかかります。
報告書は、着工許可などの様式の統一、事業所をまたいで有効な安全教育の共通科目、作業員の資格や教育履歴をクラウドで共有する仕組みを提言しました。
安全教育を夏や冬の閑散期に済ませておけば、定修期間の作業時間を圧迫せずに済みます。
認定制度とスマート保安を活用する
2023年に始まった認定高度保安実施者制度は、保安人材の不足への対処を背景の1つとしています。センサーによる常時監視やデータ解析で設備の状態を把握できる事業所ほど、連続運転の期間や検査の時期を柔軟に決められる仕組みです。
定修の回数が減れば人手の需要は下がりますが、1回あたりの工事量は増えます。間隔を延ばすことと、1回の工事を無理なく終えることは、セットで考える必要があります。
定修と関わる人が押さえておきたいこと
定修は、プラントで働く人だけの話ではありません。立場ごとに、押さえておくと役立つ点を挙げます。
- 原料を仕入れる購買担当:仕入先の定修時期は、その期間の供給が止まる時期です。報告書でも、顧客業界から事前の在庫確保や、定修が重なったときの供給不安が課題に挙げられています
- プラントに設備や部品を納める営業担当:更新や改造の工事は定修に合わせて行われます。提案や納期の締め切りは、定修の日程から逆算して決まります
- 保全・製造部門の若手:自社の機器がどの法令の対象で、次の検査期限がいつかを一覧で把握しておくと、定修計画の意図が読めるようになります
- メンテナンス会社・工事会社への就職や転職を考える人:定修の時期は出張と繁忙が重なります。年間の仕事の波と、労働時間の管理の仕方を確認しておくと入社後のずれが減ります
定修の日程は、取引先との会話で早めに共有されることが多い情報です。「次の定修はいつで、何年周期か」を聞いておくだけでも、相手の設備投資や生産の計画が見えやすくなります。
まとめ
- 定修とは、連続運転のプラントを計画的に止め、機器を開放して点検・補修・更新を行うこと
- 周期は法定検査で決まる。高圧ガス保安法の保安検査は原則1年に1回で、ボイラーや危険物施設にも別の検査がある
- 認定を受けた事業所は、B認定で4年程度、A認定で最長8年の連続運転が可能。新制度は2023年12月に施行された
- 工程は準備、停止中、再開の3段階。開放後に見つかる補修が工期を左右する
- 春秋への集中、高経年化、担い手不足、残業規制が重なり、時期の分散と日常保全への移管が進められている
定修は、法令と設備の状態、そして人の確保という3つの条件の中で組み立てる仕事です。関わる職種は設備保全が中心で、業界の全体像はプラントエンジニアリングや化学・樹脂・ゴムの業種ページからたどれます。
運転を止めずに設備の状態をつかむ技術については、予知保全のテーマページの記事もあわせてご覧ください。
出典
出典・参考資料(9件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 定修の定義・規模・課題・提言:定期修理研究会「今後の定期修理の在り方に関する報告」(2019年12月25日)、同 簡略版
- 定期修理研究会の経緯:石油化学工業協会「事業環境の基盤整備」
- 保安検査:e-Gov法令検索「高圧ガス保安法」(第35条)、同「コンビナート等保安規則」(第34条)、同「一般高圧ガス保安規則」(第79条)
- 旧認定制度:高圧ガス保安協会「スーパー認定・自主保安認定」
- 認定高度保安実施者制度:経済産業省 高圧ガス保安室「高圧ガス保安法における新たな認定制度の運用について」(2024年3月26日、総務省消防庁サイト掲載)、高圧ガス保安協会「認定高度保安実施者 特定認定高度保安実施者」、e-Gov法令検索「高圧ガス保安法施行令」(第10条の2)
- ボイラー・第一種圧力容器の性能検査:e-Gov法令検索「ボイラー及び圧力容器安全規則」(第37条・第38条・第40条・第72条・第73条・第75条)、厚生労働省「ボイラー等の開放検査周期に係る認定制度について」(令和3年3月29日 基発0329第8号)
- 設備の開放・内部作業の安全対策:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」(第275条)、厚生労働省「化学設備の非定常作業における安全衛生対策のためのガイドライン」(平成20年2月28日 基発第0228001号)
- 危険物施設の定期点検・保安検査:総務省消防庁「危険物施設の保安検査及び定期点検の制度概要」
- 時間外労働の上限規制:厚生労働省 働き方改革特設サイト「建設業」
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