電子機器のEMC試験で不合格になる原因は、どこで生まれるのか。EMC試験は、機器がノイズ(余計な電気信号や電磁波)を出しすぎないか、外からのノイズで誤動作しないかを確かめる試験です。
結果を大きく左右するのは、試験より前の設計段階の判断です。基板(部品を載せて配線する板)での電流の戻り道、電源まわりの配置、ケーブルの出入り口の処理などがそれにあたります。
不合格になってから対策部品を足すと効くこともありますが、原因が基板の中にあると費用と時間がかさみます。
この記事では、EMC試験で起きやすい症状、ノイズ問題が起きる仕組み、関係する規格の見取り図を整理します。続いて、基板と筐体での対策、設計レビューでの確認項目の例、不合格になったときの切り分け方を順に見ていきます。
EMC試験で起きること|よくある不合格の症状
EMC(電磁両立性)は、自分がノイズを出しすぎないことと、外から来るノイズで誤動作しないことの両方を指す言葉です。
ロームの技術解説では、前者をEMI(電磁干渉、エミッション)、後者をEMS(電磁感受性、イミュニティ)と呼んでいます。EMCはこの2つに大きく分けられる、という説明です。
さらに、ノイズが伝わる経路によって「伝導」と「放射」に分かれます。電源線や信号線などの導体を伝わるのが伝導、空間を電磁波として飛ぶのが放射です。出す側・受ける側と組み合わせると、考える対象は4つになります。
出す側か受ける側か、導体を伝わるか空間を飛ぶかで整理します。
(EMI・出す側)
(EMS・受ける側)
※分類と略語はローム「TechWeb」の解説にもとづきます。静電気放電のように、筐体や操作部へ直接加える試験もあります。
試験で見つかる症状も、この4つに沿って現れます。エミッション側では、特定の周波数で限度値を超える鋭いピークが出る、ケーブルをつなぐと全体にレベルが上がる、といった形です。
イミュニティ側では、静電気を加えるとマイコンがリセットする、バーストノイズで通信エラーが続く、表示が乱れるなどが典型です。どの試験でどんな症状が出たかが、原因を絞り込む最初の手がかりになります。
EMC試験は、電気・電子設計の仕事の流れでいえば試作・評価の段階で受けます。ここで不合格になると基板の作り直しに戻ることもあるため、上流の設計でどこまで織り込めるかが日程を左右します。
ノイズ問題が起きる仕組み|発生源・経路・被害者
村田製作所の「ノイズ対策基礎講座」は、ノイズ障害をノイズの加害者、被害者、伝搬経路の3者がそろったときに起きるものと説明しています。裏を返せば、3つのうちどれか1つを取り除けば障害はなくなります。
発生源、経路、被害者のどこで断つかを決めてから、部品を選びます。
※村田製作所「ノイズ対策基礎講座」第1章の説明をもとに編集部で図にしました。発生源で抑えるほど、後段の対策は軽くなります。
同講座は、空間を伝わるノイズにはシールド、導体を伝わるノイズにはフィルタを使う、と手段を整理しています。ただし実機では、導体を伝わったノイズがケーブルから放射されるというように、2つの経路が途中で入れ替わります。
ノイズの発生源は信号・電源・サージ
村田製作所は発生源を「信号」「電源」「サージ」の3つに分けています。デジタル信号は0と1の切り替わりがごく短時間で行われ、その切り替わりの部分にきわめて広い周波数成分が含まれるため、加害者になりやすいと説明されています。
電源も発生源です。電圧は安定して見えても、回路を動かすための高周波電流が大量に流れていることがあります。とくにスイッチング電源では、電流を断続する箇所で高周波のエネルギーが生じます。
サージは、リレーやスイッチの開閉で回路のインダクタンスに一過性の高電圧が生じる現象です。このとき流れる減衰振動電流にも高周波成分が含まれ、周囲に電波を放射します。
ノーマルモードとコモンモード
導体を伝わるノイズには2つの流れ方があります。行きと帰りの線で逆向きに同じ大きさの電流が流れるのがノーマルモード(ディファレンシャルモード)、複数の線に同じ向きで流れるのがコモンモードです。
同じケーブルを流れていても、放射のしやすさと効く部品が異なります。
※村田製作所「ノイズ対策基礎講座」第5章をもとに編集部で整理しました。
このため同講座は、放射を減らすにはコモンモードの電流を抑えることが重要だとしています。
Texas Instruments(TI)のアプリケーションレポートも、ケーブルのコモンモードノイズについて指摘しています。その指摘によれば、原因はケーブルではなく、基板側の接続がつくる共通インピーダンスにあります。
つまり、ケーブルにフェライトコアを付けるのは出口での対処であり、根本は基板のグラウンドと配線の設計にあります。この見方が、後で述べる対策の順番の土台になります。

どの規格で試験されるか|仕向地と製品で決まる

EMCの規格は数が多く、初めて見ると全体像がつかみにくい分野です。押さえておきたいのは、どの規格が適用されるかは製品の種類と、販売する国・地域で決まるという点です。設計の初期に試験所や認証機関へ確認しておくと、後の手戻りが減ります。
エミッションの規格と各地域の制度
エミッションの国際規格は、CISPR(国際無線障害特別委員会)が製品群ごとに作成しています。パソコンや通信機器、AV機器などのマルチメディア機器はCISPR 32、工業・科学・医療用の機器はCISPR 11が代表です。
VCCI協会の会報によると、情報技術装置のCISPR 22と放送受信機のCISPR 13はCISPR 32に統合され、2017年3月に廃止されました。
イミュニティ側でも、CISPR 24とCISPR 20を統合したCISPR 35がつくられています。古い資料を読むときは、規格番号の読み替えに注意が必要です。
同じ製品でも、売る場所が変わると枠組みと規格が変わります。
※VCCI協会、経済産業省・JET、欧州委員会、FCC規則、IECの公開情報をもとに編集部で整理しました。実際の適用は製品と仕向地ごとに試験所・認証機関へ確認してください。
日本の電気用品安全法では、2025年8月31日に技術基準の解釈が改正されました。
電気安全環境研究所(JET)の案内によると、従来の別表第十(雑音の強さ)は、国際規格に準拠した整合規格に一本化されました。
J55014-1やJ55032などがこれにあたり、猶予期間は2028年8月30日までです。
多くのエミッション規格には、使う環境に応じたクラス分けがあります。
FCC規則(47 CFR 15.3)は、商業・工業・業務環境向けに販売するデジタル機器をクラスA、住宅環境向けに販売するデジタル機器をクラスBと定義しています。
一般消費者向けや家庭での使用を意図した機器は、クラスAには含まれません。VCCI協会も、住宅環境での使用を意図するものはクラスBとするよう求めています。
クラスBのほうが限度値は厳しくなります。OKIエンジニアリングが公開している限度値の例を見てみます。
CISPR 32の放射エミッション(測定距離10m、準尖頭値)は、30〜230MHzでクラスAが40dBµV/m、クラスBが30dBµV/mです。
10dBの差は、電界強度(振幅)の比でおよそ3倍の違いにあたります。電力の比でいえば10倍です。
イミュニティ試験はIEC 61000-4シリーズ
イミュニティの試験方法は、IEC 61000-4シリーズに現象ごとに定められています。製品規格や共通規格(IEC 61000-6シリーズ)が、このうちどの試験を、どのレベルで行うかを指定する構造です。
それぞれ、現場で実際に起きる現象を模擬しています。数値は基本規格が示す試験レベルの例です。
IEC 61000-4-2
IEC 61000-4-3
IEC 61000-4-4
IEC 61000-4-5
IEC 61000-4-6
※試験レベルは基本規格が示す範囲の例で、ノイズ研究所の規格概要(-4-2は第2版、-4-4は第3版、-4-5は第3版、-4-6は第5版にもとづく解説)などで確認しました。-4-2は2025年に第3版が発行されており、レベルの値は第2版と同じと解説されていますが、最新の内容は規格で確認してください。実際に適用されるレベルは製品規格で決まります。
EFT/バーストは、リレーや電磁接触器のように誘導性の負荷を接点で切るときに出るノイズを想定した試験です。PLCのまわりにこうした負荷が並ぶ環境で使う機器には、関係の深い項目です。
2026年9月時点でIECのウェブストアに掲載されている版は次のとおりです。IEC 61000-4-2が2025年発行の第3版、-4-3が2020年の第4版、-4-4が2012年の第3版です。
-4-5は2014年の第3版に2017年の追補が出ており、-4-6は2023年の第5版です。
エミッション側は、CISPR 32が2015年の第2版に2019年の追補を加えた版、CISPR 11が2024年の第7版です。規格は改定されるため、試験を依頼する時点の適用版を確認してください。
イミュニティ試験の合否は、性能判定基準で決まります。
基準Aについては、試験機関Elementが共通規格IEC 61000-6-2の解説で説明しています。試験中も、製造者が定めた水準を下回る性能の低下や機能の喪失がないことです。
基準Bは一時的に低下しても試験後に自力で復帰すること、基準Cは操作や電源の入れ直しで復帰すればよいことです。
どの試験にどの基準が当てはまるかは、製品規格と試験項目によって変わります。「何が起きたら不合格か」を自社製品の機能に即して事前に決めておくことが、試験当日の判断を早くします。
基板設計で効く対策|リターン経路から考える

対策部品を選ぶ前に、基板の上で電流がどこを通って戻るのかを確認します。
TIのアプリケーションレポートによると、ノイズ電流はインピーダンスの最も低い経路を通って発生した場所へ戻ります。そのため、リターン経路の形とインピーダンスを管理することが対策の要になると述べています。
いずれも「電流のループを小さくする」という同じ考え方から出ています。
※TIおよび村田製作所、ロームの技術資料をもとに編集部で整理しました。
リターン経路とグラウンドプレーン
信号線を流れた電流は、必ずどこかを通って送信側へ戻ります。村田製作所の解説では、グラウンド上の戻り電流は信号線の直下に強く流れます。行きと帰りが近ければ、互いの磁界が打ち消し合い、放射は小さくなります。
問題は、グラウンドにスリット(切れ目)がある場合です。戻り電流は信号線の直下を通れず、スリットを迂回します。行きと帰りの距離が離れると打ち消しが弱まり、磁界が強くなると同講座は説明しています。
TIのレポートでも、配線がどこを通っても直下に戻り道を与える点が、4層基板のグラウンドプレーンの利点とされます。そのうえで、プレーンの穴や切り欠きはループ面積を増やすので、長いスロットをつくらないよう注意を促しています。
層構成も効きます。村田製作所のシミュレーションでは、基板が薄く、信号とグラウンドの距離が近いほど放射エミッションは減りました。
TIがDC-DCコンバータの評価基板で行った実測では、2層から、信号層のすぐ隣にグラウンド層を置く4層へ変えることで、放射が4〜10dB下がっています。
配線の長さの目安として「波長の何分の1」という経験則を耳にすることがあります。
1999年発行のTIのレポートには、FCCの限度値では配線長が波長の10分の1を超えると影響が出はじめるという記述があります。軍用規格では、20分の1〜30分の1が目安になるとされています。
ただし、これは同資料が想定した条件での目安です。一律の設計ルールとして扱わず、自社の製品と周波数に照らして判断するのが安全です。
デカップリングコンデンサの配置
ICの電源端子のそばに置くデカップリングコンデンサ(バイパスコンデンサ)には、2つの役割があります。ICが瞬間的に必要とする電流を近くから供給することと、ノイズをグラウンドへ逃がすローパスフィルタとして働くことです。
村田製作所は、最初に見直すべき点として、ICの電源端子・コンデンサ・グラウンド端子を結ぶ経路のインピーダンスを最小にすることを挙げています。コンデンサを取り付けるパターンは太く短くする、というのが基本です。
実際のコンデンサは内部に等価直列インダクタンス(ESL)を持ち、自己共振周波数より高い周波数ではインピーダンスが上がっていきます。容量を大きくすれば高い周波数まで効く、というわけではありません。
同講座は、複数のコンデンサを並べてインピーダンスを下げる方法や、ESLの小さい3端子コンデンサを使う方法を紹介しています。ここで使われる部品の中心は積層セラミックコンデンサ(MLCC)です。
スイッチング電源のループ面積
DC-DCコンバータなどのスイッチング電源では、スイッチの切り替えのたびに電流の流れる経路が急に変わります。
ロームは同期整流型の降圧DC-DCコンバータを例に、配線には一般に1mmあたり1nHほどの寄生インダクタンスがあると説明しています。これらの寄生成分によって、スイッチノードに100〜300MHzのリンギングが発生します。
対策の中心は、電流が断続するループの面積を小さくすることです。入力コンデンサをスイッチング素子のすぐ近くに置き、配線を短くします。
TIはこのループを「ホットループ」と呼び、レイアウトの見直しだけで放射が最大10dB程度変わった評価例を示しています。
スイッチングの速い素子ほど、切り替わりに含まれる高周波成分は増えます。SiCやGaNのパワー半導体を使う電源では、レイアウトへの配慮がいっそう重要になります。
クロックの立ち上がりとスペクトラム拡散
クロックは、基板の中で最も規則正しく動き続ける信号です。TIのアプリケーションノートは、25MHzのクロックであれば25MHz、50MHz、75MHzと、整数倍の周波数にノイズのピークが並ぶ例を挙げています。
同ノートが紹介する手段は3つあります。差動信号にして2本の線を近づけて配線すること、スルーレート(電圧の変化の速さ)を必要な範囲で遅くすること、そしてスペクトラム拡散クロック(SSC)を使うことです。
SSCは、クロックの周波数をわずかに揺らし、エネルギーを周波数軸の上に分散させてピークを下げる方法です。時間軸で見た振幅は変わらないため、ノイズの総量を減らす手段ではない点は理解しておく必要があります。
SSCの有効・無効や拡散幅を設定で切り替えられるデバイスでは、ファームウェアの担当者との連携が必要になります。組込みエンジニアの仕事の流れでいう実機評価の段階で、通信やタイミングへの影響とあわせて確認します。
フィルタ・ケーブル・筐体での対策

基板の中でノイズを抑えたうえで、外との出入り口を固めます。TIのレポートは、フィルタを入れる優先順位の筆頭に「筐体の外へ出ていく信号」を挙げています。ケーブルは、ノイズが出ていく道であると同時に、入ってくる道でもあるからです。
フィルタ部品の使い分け
ノイズ対策に使うフィルタの多くは、低い周波数を通して高い周波数を減らすローパスフィルタです。効果は挿入損失で表され、村田製作所の説明では、ノイズを10分の1にする性能が20dB、100分の1にする性能が40dBにあたります。
つなぎ方と、効くノイズのモードで選びます。
※村田製作所「ノイズ対策基礎講座」第2部をもとに編集部で整理しました。ケーブルをフェライトコアに通すことも、コモンモードチョークコイルの一種として働きます。
村田製作所は、DC-DCコンバータとデジタル回路を載せた評価基板で放射エミッションを測定しています。この例では、DC電源ケーブルにフェライトコアを付けるとピークで10dB以上下がりました。ケーブルが強い放射源になっていたことを示す結果です。
ただし同じ資料は、基板本体からもノイズが出ているため、さらに抑えるにはノイズ源である回路そのものの対策が必要だとまとめています。出口のフィルタと発生源の対策は、どちらか一方では足りません。
ケーブルとコネクタのシールド処理
シールドケーブルを使っていても、端末の処理が悪いと効果は大きく落ちます。シールドの編組をより合わせて1本の線にし、グラウンドへつなぐ方法は「ピッグテール」と呼ばれます。
村田製作所のシミュレーションでは、ピッグテール接続は開口部からノイズが漏れて放射エミッションが増えました。シールドはコネクタの金属シェルに、すきまなく面で接続する必要があるとされています。
基板のグラウンドと筐体の金属をつなぐ場合も同じ考え方です。同講座では、金属スペーサによる低インピーダンスの接続では放射が改善し、細いワイヤでの接続では逆効果になる例が示されています。
筐体シールドと開口
金属の筐体は、内部のノイズを閉じ込めるシールドとして働きます。TIのレポートは、シールドされた箱からノイズが出ていく道を2つに絞っています。出入りするケーブルと、箱に開けた穴やスロットです。
とくに注意が必要なのは、筐体の継ぎ目にできる細長いすきまです。同レポートは、これがスロットアンテナとして効率よく電波を放射すると説明しています。
そのうえで勧めているのが、継ぎ目の接触を確実にすること、換気には長いスリットではなく小さな丸穴を使うことです。
あわせて、「筐体のシールド効果に頼るより、箱の中のノイズを減らすほうが常によい」とも書かれています。シールドは最後の手段であり、最初の手段ではありません。樹脂筐体の製品では、この考え方がそのまま設計の前提になります。
ESD保護素子の置き方
静電気放電(ESD)への対策では、コネクタや操作部の近くにTVSダイオードなどの保護素子を置き、放電電流をグラウンドへ逃がします。ここでも効くのは、部品の性能より配置です。
TIのレイアウトガイドは、保護素子を放電の入口であるコネクタにできるだけ近づけ、そこからグラウンドまでのインダクタンスを最小にするよう求めています。
8kVの接触放電では電流の変化がきわめて速く、0.25nHのインダクタンスでも約10Vの電圧が上乗せされるという試算もあります。
同ガイドは、放電の入口と保護素子の間にビアを置くのは一般に不利であること、保護素子までの枝分かれ配線(スタブ)をつくらないことも挙げています。回路図では同じに見えても、レイアウトで保護の効き方が変わる典型例です。
設計レビューでの確認項目の例(編集部整理)
ここまでの内容を、設計レビューで確認する項目の例としてまとめました。メーカー各社の技術資料をもとに編集部で整理したもので、特定の規格や企業のチェックリストではありません。
設計の段階ごとに、図面の上で確かめられる項目を並べています。
※すべてを満たしても、試験の合格が保証されるわけではありません。製品の構成に合わせて項目を足し引きして使ってください。
項目03は見落とされやすい点です。試験で問題が出てからフィルタを足そうとしても、基板に部品を載せる場所がなければ、基板の改版が必要になります。
TIのレポートは、まず入出力の各線にフィルタを入れて設計し、試作機の測定で部品を1つずつ外して要否を見極める進め方を紹介しています。
項目10と11は、試験所に持ち込む前の準備です。どのケーブルを何本つなぎ、どの機能を動かした状態で測るかによって、結果は変わります。実際の使用状態に近い構成を、試験所と相談して決めておきます。
想定例で見る|放射エミッションが超過したときの切り分け

最後に、不合格になったときの考え方を、架空の製品を使った想定例で見ていきます。実在の製品や試験結果ではなく、説明のために編集部が設定したものです。
想定するのは、直流電源で動き、通信ケーブルとセンサ用のケーブルが出ている小型の産業用コントローラです。放射エミッションの試験で、いくつかの周波数に限度値を超えるピークが出たとします。
ケーブルを外して変化を見る
最初に確かめるのは、ノイズがどこから放射されているかです。ケーブルを1本ずつ外す、あるいはフェライトコアを付けて、ピークが下がるかを見ます。
特定のケーブルで大きく変われば、そのケーブルにコモンモードノイズが乗って放射している可能性が高いと考えられます。変わらなければ、基板や筐体のすきまからの放射を疑います。
周波数から発生源を推定する
次に、ピークの周波数を見ます。ある周波数の整数倍にピークが等間隔で並んでいれば、その周波数で動くクロックや通信が候補になります。
スイッチング電源のリンギングが原因であれば、ロームが降圧コンバータの例で挙げる100〜300MHzのあたりに現れることがあります。
回路設計の段階で発生源の周波数を一覧にしておくと、この突き合わせがすぐにできます。OKIエンジニアリングは対策時の助言として、ノイズの周波数から波長を計算し、放射源になっていそうな筐体やケーブルの寸法と照らすことを挙げています。
発生源の側から順に手を打つ
原因の見当がついたら、発生源に近いところから対策します。クロックであれば、スルーレートの見直しやスペクトラム拡散の設定、配線直下のグラウンドの確認です。電源であれば、ループの面積と入力コンデンサの位置を見直します。
そのうえで、ケーブルの出口にコモンモードチョークコイルやフェライトビーズを追加します。出口だけをふさいでも、別のケーブルや筐体のすきまから出てくることがあるため、順番を逆にしないことが大切です。
こうした切り分けを試験所の限られた時間の中で行うのは負担が大きいものです。試作の段階で、近傍界プローブなどを使って基板上のノイズの強い場所を把握しておくと、当日の判断が早くなります。
まとめ
- EMCは、ノイズを出さないこと(エミッション)と、ノイズに耐えること(イミュニティ)の両方を指す
- ノイズ障害は発生源・経路・被害者がそろうと起きる。放射ではコモンモードが主役になりやすい
- 適用される規格は製品と仕向地で決まる。設計の初期に試験所・認証機関へ確認する
- 基板ではリターン経路、デカップリング、電源のループ、クロックの順に電流のループを小さくする
- フィルタとシールドは出入り口の仕上げ。部品の実装場所を基板に用意しておくと手戻りが減る
ノイズ対策は、特別な部品の知識よりも、電流がどこを通って戻るかを図面の上で追う習慣から始まります。回路、基板、筐体、ファームウェアの担当者が同じ見取り図を持つことが、試験での手戻りを減らす近道です。
関連する職種は電気・電子設計やソフトウェア・組込みです。業界の全体像は電機・精密機器の業種ページから関連記事もあわせてご覧ください。

出典
出典・参考資料(16件)を開く出典・参考資料を閉じる
- EMC・EMI・EMSの定義と4分類:ローム TechWeb「第9回 評価回路・基板(3) 電磁干渉(EMI)と電磁感受性(EMS)」
- ノイズ障害の3要素、発生源、ノーマルモードとコモンモード、フィルタとシールド:村田製作所「ノイズ対策基礎講座」(第1章、第2章、第5章、第6章)
- 基板のリターン電流とグラウンド、デカップリング、対策部品の使い分け、ケーブル接続部:村田製作所「ノイズ対策基礎講座」第2部(第1回、第4回、第5回、第6回、第7回)
- リターン経路、グラウンドプレーン、配線長の目安、ケーブル、筐体シールドとスロット:Texas Instruments「PCB Design Guidelines For Reduced EMI」(SZZA009、1999年)
- スイッチング電源のノイズとループ:ローム TechWeb「スイッチングノイズとは?スイッチング電源で発生するノイズと対策」、Texas Instruments「Layer Design for Reducing Radiated EMI of DC to DC Buck-Boost Converters」(SLVAEP5A)
- クロックの高調波、スルーレート、スペクトラム拡散クロック:Texas Instruments「EMI Reduction Strategies With Clocking Devices」(SNAA408、2025年)
- ESD保護素子のレイアウト:Texas Instruments「ESD Protection Layout Guide」(SLVA680)
- CISPR規格の統合の経緯、VCCIの技術基準、電気用品安全法との関係:VCCI協会「VCCIだより No.128 連載第12回 CISPRが作成するEMC製品群規格」、VCCI協会 FAQ(機器のクラス分け)、VCCI Council「How to Practice Voluntary Control」
- 電気用品安全法の別表第十の一本化:電気安全環境研究所(JET)「電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈別表第十(雑音の強さ)の改正に伴う適合性検査のお申込みの取扱いについて」
- EUのEMC指令:European Commission「Electromagnetic Compatibility (EMC) Directive」
- FCC規則のクラスA・クラスBの定義:eCFR「47 CFR § 15.3 Definitions」
- 規格の版(2026年9月時点):IEC Webstore(CISPR 32:2015+AMD1:2019、CISPR 11:2024、CISPR 35:2016、CISPR 25:2021、IEC 61000-4-2:2025、IEC 61000-4-3:2020、IEC 61000-4-4:2012、IEC 61000-4-5:2014+AMD1:2017、IEC 61000-4-6:2023、IEC 61000-6-2:2016)
- イミュニティ試験の概要と試験レベル:ノイズ研究所 規格情報(IEC 61000-4-2、IEC 61000-4-4、IEC 61000-4-5、IEC 61000-4-6)、KEC関西電子工業振興センター「民生・産業・医療・無線機器等」
- 車載のEMC(国連規則R10と引用規格):VCCI協会「VCCIだより No.138 連載第22回 自動車のEMC規制に関する国際的法規R10」
- 放射エミッションの限度値の例、クラス分類、対策時の助言:OKIエンジニアリング「EMC試験 放射妨害」
- イミュニティ試験の性能判定基準:Element「An Updated Guide to IEC/EN 61000-6-2」
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