PDFのテキストボックス・注釈がコピペで回転してしまう理由と対策

設計者の机に広げた機械図面と赤ペン、ノートPCと加工部品

PDFのテキストボックスや注釈をコピペすると90°回転してしまうのは、ページの表示の角度と、注釈が持っている角度が貼り先で合わなくなるためです。

CADから出力した図面と、紙をスキャンした図面は、画面では同じ横向きに見えても、PDFの中でのページの向きの基準が違うことがあります。承認図や仕様書にコメントを入れて別のPDFへ写すときに起きやすい現象です。

この記事では、回転する仕組み、Acrobat・JUST PDFでの対策、図面チェックで回転を防ぐ段取りを順に整理し、ページの向きを保存する「永続的な回転」の方法は、最後のよくある質問で答えます。

目次

PDFで注釈をコピペすると回転してしまう

PDFで注釈をコピペすると回転してしまう理由は、PDFを作成した際に向きが決まっているからです。例えば、CADのような図面作成ソフトで横向きのPDFを作成した場合は、横向きを基準として向きが決まります。

PC上で作成した横向きのPDFと注釈、向きの基準の図

一方、同じ横向きのPDFでも、紙をスキャンしてプリンター(複合機)で作成したものは、向きが変わっている場合があります。機種や設定にもよりますが、元々の読み込みが縦向きの場合は、次のように90°回転させて保存していても、上の図とは基準が90°ずれます。

スキャンで作成した縦向きのPDFを回転して保存したときの向きの基準の図

この状態で注釈をコピーすると、左のファイルでは270°から90°にかけて横に表示される注釈が、右のファイルでも270°から90°にかけて表示されます。その結果、注釈は縦になってしまいます。

横向きの注釈を回転して保存したPDFに貼ると縦になる様子の図

これが、同じ横向きのファイルでも注釈だけが回転してしまう理由で、PDFの仕組みに沿って補足します。

PDFのページには、ページそのものの向きと、それを何度回して表示するかという「回転の値」が別々に記録されます。PDFの規格(ISO 32000-1)では、この値は90の倍数で、表示・印刷のときにページを時計回りに回す角度です。

図1:見た目は同じ横向きでも、ページの元の向きは2通り

画面で同じに見える2つの図面PDFも、中身のページの向きと回転の値が違うことがあります。

CADから出力したPDF
紙をスキャンしたPDF
ページの元の向き
横向き
縦向き(読み込みが縦の場合)
回転の値
0°のことが多い
90°や270°で横に見せている
画面での見え方
横向き
横向き(左と区別できない)
注釈を貼ると
元のPDFと同じ基準なら、そのままの向き
基準が90°ずれ、注釈が縦になる

※スキャンしたPDFの向きは、複合機の機種や読み取りの設定によって変わります。

テキストボックス(PDFの用語ではフリーテキスト注釈)は、ページに対して反時計回りに何度回っているかという角度を、注釈ごとに持っています。AcrobatのJavaScriptの仕様書では、この角度は0・90・180・270°のどれかで、フリーテキスト注釈だけに意味がある値とされています。

Adobeコミュニティの専門家の説明では、Acrobatは注釈を置くとき、ページの回転の値を見て角度を付けて置きます。コピーするとこの角度も一緒に写るので、回転の値が違うページに貼ると90°ずれて見えます。

図2:注釈が回って見えるまでの流れ

注釈はコピーの際に角度ごと写ります。回るのは注釈ではなく、ページの基準の違いです。

元のPDF(CADから出力・回転の値0°)テキストボックスを置くと、ページに合わせた角度0°で記録される
コピー(角度0°も一緒に写る)
貼り先のPDF(スキャン・元は縦、90°回して表示)注釈は角度0°のまま、元の縦のページを基準に置かれる
画面に表示
ページと一緒に注釈も90°回して表示図面は横向きに見えるのに、注釈だけが横倒しになる

※角度の付け方の説明は、Adobeコミュニティの専門家の回答とAcrobatのJavaScriptの仕様書によります。ソフトやバージョンにより振る舞いが異なることがあります。

見た目が同じ横向きでも、2つのPDFの回転の値が同じとは限りません。画面だけでは区別できないので、PDFの出どころ(CADから出力したか、紙をスキャンしたか)を確かめるのが手がかりになります。本番のコメントを写す前に、テキストボックスを1つだけ貼って向きを見ておくと確実です。

PDFで注釈をコピペすると回転してしまう時の対策

注釈をコピペした際に回転させないようにする対策は、次の4つです。上の2つが基本で、下の2つは図面のやり取りで使いやすい方法です。

  • 同じ向きのPDFファイルを用意する。
  • テキストの内容のみコピーして再度注釈を作り直す。
  • ノート注釈(付箋)でコメントを付ける。
  • 元のCADデータからPDFを出し直してもらう。

1つ目は、貼り先を元と同じ作り方のPDFにする方法です。例えば、同じCADから出力した旧版と新版の間なら、向きの基準がそろいやすくなります。

2つ目は、テキストボックスの中の文字だけをコピーし、貼り先で新しいテキストボックスを作って貼る方法です。新しく作った注釈は、貼り先のページに合わせた角度で置かれます。

3つ目のノート注釈は、PDFの規格で「ページと一緒に回転しない」と決められている種類で、アイコンをクリックすると、コメントの文字が別の窓で開きます。ただし、アイコンの位置や窓の見え方はソフトやバージョンで異なるため、相手の環境でも読めるか、試し貼りで確かめてから使います。

4つ目は、スキャンした図面を送ってきた相手に、CADから出力したPDFを頼む方法です。同じ相手と何度も図面をやり取りするなら、最も手戻りが少ない方法です。

図3:4つの対策の比べ方

手間と、相手に頼むことの有無で選びます。

手間
向く場面
注意点
同じ向きのPDFを用意
小さい(ファイルを選ぶだけ)
同じCADから出した版どうしで写すとき
スキャン版しかないと使えない
文字だけ写して作り直す
コメントの数だけかかる
コメントが数個のとき、すぐ直したいとき
位置・色・枠の設定は作り直しになる
ノート注釈を使う
小さい(最初から付箋で書く)
短い指摘を多数付けるとき
開かないと中身が見えない。見え方はソフトで異なる
CADから出し直してもらう相手に頼む
相手の作業が要る
同じ相手と承認図を何度も往復するとき
相手が元データを出せない場合がある

※操作の名前や表示は、ソフトとバージョンにより異なります。

PDF作成編集ソフトでPDFを回転させて保存しても、現象は改善されません。ページを回すと、ページの上の注釈も一緒に回るため、ページと注釈の角度の差がそのまま残るからです。

Acrobatの標準の画面操作で、貼り付けたテキストボックスだけを90°回す方法は見当たりません。Adobeコミュニティでも、専門家は画面操作ではなくスクリプトで回す方法を案内しています(2016年の回答)。

スクリプトで角度を変える方法はありますが、上級者向けです。PDFの注釈は図面の上に重ねるメモの仕組みなので、向きのそろったPDFで使うのが前提と考えておくと安全です。

図面チェックでコメントの回転を防ぐ段取り

前の章の対策は、回ってしまったあとの直し方で、ここでは、承認図や仕様書にコメントを入れて返す前に、回転そのものを起こさない段取りをまとめます。起きやすいのは、例えば次の場面です。

  • 機械設計:メーカーから届いたスキャンの承認図に、社内の検図コメントを写す
  • 購買:仕様書の旧版に付けた指摘を、新版のPDFへ写して発注先に返す
  • 技術営業:顧客から返ってきた赤入れの図面のコメントを、自社の最新版へ写す

承認図のやり取りが設計のどの段階で発生するかは、機械設計の仕事の流れで整理しています。

図4:コメントを入れる前の4ステップ

数分の確認で、コメントの打ち直しを防げます。

01PDFの出どころを確かめるCADから出力したものか、紙をスキャンしたものか。分からなければ送り主に聞く
02写し先のPDFを決める元と同じ作り方のPDFに写す。スキャン版しかなければ、出力版を頼むか検討する
031つだけ試し貼りするテキストボックスを1つ貼り、向きがそろうかを見る。回ったら一括のコピペはやめる
04回ったときの代わりを決める文字だけ写して作り直すか、ノート注釈で付けるか。コメントの数で選ぶ

※社内でルールにしておくと、担当が替わっても同じ手順で回せます。

スキャン図面を送ってくる取引先が多いなら、発注や問い合わせの段階で「CADから出力したPDFでの提出」を頼んでおくと、後の手間が減ります。購買の担当者が仕入先とやり取りする流れは、購買・調達の仕事の流れにまとめています。

版の違う図面PDFが増えると、どれが最新でどこにコメントを付けたかも分かりにくくなります。図面データの管理の仕組みは、PDMとPLMの違いが参考になります。

PDFの注釈の回転についてよくある質問

Acrobatでテキストボックスだけを回転できますか?

標準の画面操作では、貼り付けたテキストボックスだけを90°回す項目は見当たりません(バージョンにより表示が異なります)。

AcrobatのJavaScriptには、フリーテキスト注釈の角度(rotate)を0・90・180・270°で変える仕組みがあります。Adobeコミュニティでも、専門家がスクリプトで回す方法を案内しています。

ただし、スクリプトの実行は社内のルールで制限されていることがあります。数個のコメントなら、文字だけコピーして作り直すほうが早く確実です。

JUST PDFで注釈が回転するときはどうすればよいですか?

JUST PDFのテキストボックスも、ページに「フリーテキストの注釈」を追加する機能です(JUST PDF 6 基本操作ガイド)。向きの基準が違うPDFに貼れば、同じ仕組みで回ると考えられます。

基本操作ガイドには、注釈だけを回す操作は載っていません。記載がないことは機能がないこととは限らないので、使っているバージョンのヘルプも確かめてください。

対策は、本文の4つがそのまま使えます。JUST PDFのノート注釈は、紙に付箋を貼る感覚でコメントを付ける機能です。

PDFのページを永続的に回転させるにはどうしますか?

Acrobatでは、「すべてのツール」の「ページを整理」でページを選び、左か右に90°ずつ回転して保存します。「表示」メニューの「回転表示」(表示を右回転・表示を左回転)は一時的で、次にPDFを開くと元の向きに戻ります。

JUST PDFでは、[ページ編集]の[ページの回転]、[左へ90°回転]、[右へ90°回転]で回せます。どちらもメニューの名前や場所はバージョンにより異なります。

図5:「回転表示」と「ページを回転」の違い(Acrobat)

保存したいならページを回転。どちらも注釈コピペの回転は直りません。

回転表示
ページを回転
操作の場所
表示 > 回転表示
すべてのツール > ページを整理
保存されるか
されない。次に開くと元に戻る
される(保存したあと)
注釈は
画面の上でページと一緒に回る
ページと一緒に回る
使う場面
その場で読みやすくしたいとき
相手に正しい向きで渡したいとき

※メニューの名前は2025年11月更新のAcrobatデスクトップ版ヘルプによります。バージョンにより異なります。

ページを回転して保存しても直らないのはなぜですか?

ページを回転すると、ページの回転の値が変わり、ページの上の注釈もページと一緒に回ります。ページと注釈の角度の差は変わらないので、注釈は横倒しのままですから、直すには、本文の対策のように、注釈の側を貼り先のページに合わせて作り直します。

まとめ

この記事のまとめ
  • PDFで注釈をコピペすると回転してしまうのは、PDFの向きが決まっているから
  • 見た目が同じ横向きでも、CAD出力とスキャンではページの元の向きと回転の値が違うことがある
  • PDFの向きを合わせるか、注釈を再度作成する必要がある
  • ノート注釈を使う、CADから出し直してもらうのも有効。ページを回して保存しても直らない
  • 図面チェックでは、出どころの確認と1つの試し貼りを先に行う

注釈で複雑な内容のファイルを作ると、向きの違うPDFへ移すたびに手間がかかります。図面のやり取りが多い相手とは、PDFの出し方と注釈の種類を先に決めておくと安心です。

図面そのものの見方は機械図面の読み方でつまずく疑問、図面の種類は製作図・計画図・承認図の違い、メーカーから届く書類は納入仕様書の確認ポイントで解説しています。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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