納入仕様書とは、発注契約のあとに受注側(メーカー)が出す、実際に納める機器の仕様と図面をまとめた書類です。承認図は、このうち発注側の承認を受ける図面です。
厳密には、承認を求めて出す段階を「承認用図」、承認して返した図面を「承認図」と呼び分け、返った図面で製作が始まります。ただし実務では、出した段階の図面も含めて「承認図」と呼ぶことが多くあります。
呼び方は会社や発注者で違い、納入仕様書を一式で承認して返す形もあります。この記事では、書類の流れ、見積仕様書・購買仕様書との違い、承認返却の前に確かめる点を順に整理し、完成図・納入図・仕様図との違いは後半で答えます。
納入仕様書とは
納入仕様書とは、発注契約後に受注側から提出される、実際に納入される機器の仕様や図面をまとめた資料です。購買仕様書の発行から機器の製作開始までの流れを図に表すと、次のようになります。

プラントの設計者は、計算で求めた性能を満たす機器の仕様を購買仕様書に書いて発行し、メーカーはそれに対し、自社の設計基準で選んだ機器の見積仕様書を出します。何度か書類をやり取りして仕様と金額が合意できれば、発注契約を結びます。
その後にメーカーから出てくるのが納入仕様書です。書類の名前は多いものの、並べると「見積の段階」「発注のあと」「製作から納入まで」の3つに分かれます。
納入仕様書は、発注のあと・製作の前に出す書類です。承認されて返ると、その図面が承認図になります。
※書類の呼び名と区切りは、会社・業界・発注者で違います。納入仕様書と承認図をまとめて出す形も、図面だけを承認図として出す形もあります。
納入仕様書には、主に次のような内容が書かれます。
- 機器の仕様、荷重条件、取合形状:基礎・配管の設計とつながるか
- 保証条件:保証する性能・期間が契約どおりか
- 組立図、部分詳細図:形と寸法、ノズルの位置と向き
- 付属品仕様、詳細図:計器・弁などが範囲に入っているか
- 能力計算書:購買仕様書の性能を満たす根拠
- 予備品、消耗品等:数量と、見積に含まれているか
- その他、工事要領、保温要領などの補足資料:現場で施工できるか
仕様は基本的に見積仕様書と同じですが、詳細設計が進まないと書けない内容や、付属品の詳細な図面が加わります。見積仕様書の目的は金額の合意でしたが、納入仕様書の目的は製作許可なので、図面までより細かく確かめる必要があります。
購買仕様書・見積仕様書・納入仕様書の違い
3つの仕様書の違いを表にまとめると、次のようになります。
作る人は発注側から受注側へ移り、目的は「伝える」「合意する」「製作の許可を得る」と進みます。
※所掌は、どちらが手配・施工するかの受け持ちのことです。
購買仕様書の書き方は購買仕様書とは何か、書く項目のチェック表で整理しています。
関連記事:見積仕様書とは?目的と書き方・記載例、購買仕様書との違い
納入仕様書の目的
納入仕様書の主な目的は、次の4つです。どれも承認返却の前に確かめておく点でもあります。
納入仕様書の中身を、手元の書類や関係部署と照らし合わせて確かめます。
組立図、付属品仕様の確認
納入仕様書には納入品図として、機器の詳細を示す組立図や、計器などの付属品の詳細図面が付きます。細かいノズルや計器の取付け位置を見ながら、実際の配置や使い方を想像し、最適な製品になるよう、オリエンテーション(向き・配置)の変更を依頼します。
例えば、圧力計が通路の反対側を向いていると、運転員が読めず、弁のハンドルが壁側にあると、操作も点検もしにくくなります。こうした向きの確認は、設計者だけでなく運転・保全の担当にも回すと抜けが減ります。
見積仕様書に対しては、契約金額が変わらない範囲で調整し、変更が出る場合は、追加費用で対応すべきかどうかの調整が必要です。型式・材質・付属品の範囲が、見積仕様書の最終版と同じかも照らし合わせます。
見積の段階で合意した相違点は、デビエーションリストの番号ごとに反映を確かめます。相違点の一覧の作り方はデビエーションリスト(デビクラ)の書き方で解説しています。
取合いの確認
機器には、水・電気・蒸気などのユーティリティや、他のプロセスとの取合い(接続部)がほとんどの場合あります。それぞれの機器や配管の取合い形状が合っているかを確かめます。
接続する前後の機器がある場合は、取合いの位置、形状、ボルト・ナット・パッキンなどの所掌を確認し、接続がおかしくならないように調整します。配管・電気・計装の設計担当に、それぞれの接続口を見てもらうのが確実です。
メーカーの機器と、工事側の配管・ケーブルがつながる境目が取合いです。
※相フランジ・ガスケット・ボルト・ナットをどちらが用意するかは、見積仕様書の所掌で決めた内容と照らし合わせます。電気の端子箱や計装の接続口も同じように確かめます。
フランジの規格や圧力の等級が違うと、ボルト穴が合いません。相手側のフランジの考え方は相フランジとは何かを解説した記事で整理しています。
取合い形状を間違えると、工事中に手直しが発生し、工程が遅れるおそれがあるため、最も注意が必要な確認です。ユーティリティとプロセスの区別はプロセスとユーティリティの違いで解説しています。
工事要領の確認
機器の工事所掌がメーカーでない場合は、工事要領書が提出されますが、これは工事で注意すべき項目や、溶接の方法などが書かれた書類です。これらの要領書を工事部門などと確認し、実際に無理なく工事ができるかを検討します。
据付図や基礎図があれば、基礎ボルトの位置と荷重を、基礎を設計する側とも突き合わせ、保温要領も、保温工事の業者と同じように確かめます。
製作許可
納入仕様書と納入品図の内容に問題がなければ、承認返却(受領返却)をすると、その図面での機器の製作が許可されます。そのため、納期から逆算した製作開始時期までに承認返却が必要です。
返すときの判定は、会社で呼び方は違うものの「承認」「条件付き承認」「再提出」の3つに分かれるのが一般的で、条件付きなら、コメントを直す前提で製作を始められます。
条件付きの場合は、どの条件を誰がいつまでに直すかを返却文書に残し、修正版の図面で、条件が消えたことを確かめてから記録を閉じます。
承認したあとに変更が出たら、変更した箇所と理由を示して承認を取り直しますが、工場で検査に立ち会う場合は、承認図がその判定の基準になります。
検査の進め方はFAT・SAT(工場立会検査・現地受入検査)の違いと進め方で整理しており、承認返却の期限の決め方は承認図と図面の承認返却の流れで解説しています。
納入仕様書と承認図・完成図の違い
納入仕様書の近くには、承認図・完成図・納入図・仕様図など似た名前が並びますが、違いは「いつの時点の、どんな状態を表すか」です。
書類全体(納入仕様書)、承認された図面(承認図)、完成時点の記録(完成図)という違いです。
※呼び名と区切りは会社・発注者で違い、承認前の図面も含めて「承認図」と呼ぶことも多くあります。国の機器購入の仕様書では、契約後に出す詳細な仕様と外形図を「確認図書」と呼ぶ例もあります。
承認図との違い
納入仕様書は「何を納めるか」を示す書類の束で、仕様・計算書・図面が入ります。承認図は、そのうち発注側の承認を受ける図面を指す呼び名です。
厳密には、承認を求めて出す段階を「承認用図」、承認されて返ってきた段階を「承認図」と呼び分けます。製図用語の JIS(JIS Z 8114)を抜粋したメーカーの用語集でも、2つは別の用語として載っています。
防衛装備庁の提出要領では、承認を求める書類を「承認用図書」と呼び、図面だけでなく文書や写真も含めています。図面に限らず、仕様を書いた文書も承認の対象になる例です。
実務では、納入仕様書を一式で承認して返す形と、図面だけを承認図として返す形があり、どちらの形かは、購買仕様書や注文書の取り決めで確かめます。
完成図との違い
完成図は、完成した時点の状態を表す図面で、建築や設備の工事では、完成時の状態を表した図面を竣工図とも呼びます。納入仕様書と承認図は、これから作るものを決める製作前の書類で、製作や据付の途中で寸法や部品が変わったら、その結果は完成図に反映されます。
運転や保全、将来の改造で使うのは完成図で、機器では、取扱説明書や試験成績書と合わせて完成図書として納入時に出すことが多くあります。
納入図・仕様図とは
納入図には、規格で決まった定義が見当たりません。この記事の流れでは、納入品図とほぼ同じ意味の呼び名と考えると分かりやすく、納入仕様書に付く組立図・外形図・付属品の詳細図などを指します。
仕様図は、型式・寸法・性能などの仕様を図面にまとめたものです。標準品では、仕様と外形図を1枚にまとめた図面を「納入仕様図」などの名前で出すこともあります。呼び名が違っても発注側が確かめる中身は同じで、承認を求められている書類かどうかを、表紙や送付状で見分けます。
納入仕様書のよくある質問
購入仕様書と購買仕様書は同じですか?
同じ書類を指すことが多く、呼び方の違いですが、発注側が機器に求める性能・条件・規格を書いて、メーカーに渡す書類です。
納入仕様書と納品仕様書は同じですか?
どちらも、納める品物の仕様を示す書類の呼び名として使われることがありますが、決まった使い分けは見当たらないため、契約書や社内で使われている呼び名に合わせます。
納入仕様書は何部、どの形で出しますか?
部数・形式(紙かPDFか)・提出期限は、購買仕様書や注文書で取り決めるのが一般的です。国の機器購入の仕様書でも、納入時の図書の部数は特記仕様書に書くとしており、出し直すたびに版数と日付を更新すると、どれが最新版か分かります。
承認返却のあとに変更が出たらどうしますか?
変更した箇所と理由を示した改訂版を出し、改めて承認を受けてからその部分を作りますが、防衛装備庁の要領では、これを変更承認用図書と呼んでいます。発注側の都合の変更なら、追加費用や納期への影響もあわせて協議します。
まとめ
- 納入仕様書は、実際に納入する機器の仕様や図面を表す資料
- 納入品図で詳細な図面や取合いを確認する
- 製作開始時期までに承認返却を行う必要がある
- 承認図は、納入仕様書の図面のうち発注側の承認を受けるもの
- 完成図は、製作・据付が終わった状態を表す最終版の図面
仕様書や図面は、設計段階によって提出される内容が異なるため、仕様書ごとの目的を意識しながら確認するようにしましょう。
発注側の仕事の流れは購買・調達の仕事の流れ、書類を受け取る設計者の仕事はプラントエンジニアの仕事で読めます。業界の全体像はプラントエンジニアリングの業種ページにまとめています。
出典
出典・参考資料(5件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 承認用図書と承認図書の定義、承認後の製作着手、変更承認用図書:防衛装備庁「承認用図書及び承認用見本の作成並びに提出要領」
- 製図用語の承認用図と承認図、仕様図(コンポーネント仕様図):三木プーリ「製図-製図用語(JIS Z 8114:1999 抜粋)」
- JIS Z 8114 の規格名と適用範囲:日本規格協会「JIS Z 8114:1999 製図―製図用語」
- 契約後の確認図書、納入図書と部数:国土交通省「電気通信設備購入共通仕様書」(令和3年3月)
- 完成図(竣工図)の定義:島根県「島根県建築工事完成図取扱要領」
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