空気予熱器(エアヒーター)とは?ボイラーでの目的・種類とエコノマイザとの違い

発電用ボイラーの煙道ダクトにつながる回転再生式空気予熱器の円筒ケーシング

空気予熱器(エアヒーター)とは、ボイラーに送る燃焼用の空気を、排ガスや蒸気の熱で温める熱交換器です。温まった空気で燃やすぶん、同じ蒸気を少ない燃料でつくれます。

排ガスを熱源にする場合は、煙道(排ガスの通り道)のエコノマイザ(節炭器)の下流、煙突の手前に置くのが一般的です。エコノマイザが給水を温めるのに対し、空気予熱器は空気を温めます。

この記事では、空気予熱器の位置とエコノマイザとの違い、設置する4つの目的、熱交換式・蒸気式・回転再生式(ユングストローム式)の仕組みの順に整理します。

目次

空気予熱器とは

排ガスで温める空気予熱器と、蒸気・温水で温める空気予熱器を通って燃焼用空気がボイラーに入る系統図

空気予熱器は、ボイラーに送る燃焼用の空気を加熱する熱交換器のことで、現場ではエアヒーターとも呼ばれます。

似た役割の機器にエコノマイザがあり、エコノマイザはボイラー給水と排ガスを熱交換させるのに対し、空気予熱器は燃焼用の空気と熱交換させます。熱源は排ガスに限りません。主な熱源は次の3つで、どれを使うかはプラントによって異なります。

  • ボイラーの排ガス
  • プラント内の廃温水などの排熱
  • 蒸気タービンからの抽気蒸気

排ガスを熱源にする場合、空気予熱器は煙道の後ろのほうに置かれます。ボイラー本体とエコノマイザで熱を取ったあとの排ガスから、さらに熱を回収するためです。

図1:空気予熱器はボイラーのどこに付くか

排ガスは右へ流れて煙突へ、空気は送風機から空気予熱器で温まり、ボイラーの炉へ入ります。

ボイラーエコノマイザ空気予熱器煙突排ガス温まった空気燃焼用空気(送風機)

※点線の矢印が排ガス、灰色の線が燃焼用空気の流れです。両者は伝熱管の壁やセクタープレートで仕切られ、混ざりません(回転再生式では一部の空気が排ガス側へ漏れます)。

空気の側は、押込送風機(燃焼用の空気を送り込むファン)から空気予熱器を通り、バーナーや炉へ入ります。排ガスの流れと空気の流れが、空気予熱器の中ですれ違う形です。

環境共創イニシアチブ(SII)の省エネ設備の用語集は、排ガスの熱を回収する装置としてエコノマイザと空気予熱器を並べます。そのうえで、大型ボイラーでは併用が有効という位置づけです。

図2:エコノマイザ(節炭器)と空気予熱器の違い

どちらも排ガスの熱を回収しますが、熱を渡す相手が給水か燃焼用の空気かで分かれます。

エコノマイザ(節炭器)
空気予熱器
熱を渡す相手
ボイラー給水
燃焼用の空気
熱源
ボイラーの排ガス
排ガスのほか、蒸気・廃温水など
煙道での位置
ボイラー本体の出口側
エコノマイザの下流(二次側)が多い
ねらい
給水を温め、蒸気にするための燃料を減らす
燃焼効率を上げ、燃料を減らす。すすの発生も防ぐ
注意点
管の表面が酸露点を下回ると低温腐食
空気側の圧力損失(送風機の能力)、NOxの増加

※空気予熱器の注意点は、環境省の対策メニュー(ボイラー排ガスによる燃焼空気予熱)の留意事項によります。

エコノマイザの仕組みや燃料削減の計算方法は、エコノマイザ(節炭器)とはで詳しく解説しています。

空気予熱器の目的

空気予熱器を設置する主な理由は次の4つで、どれが当てはまるかは、熱源と燃料によって変わります。

図3:空気予熱器の4つの目的

同じ空気予熱器でも、前提となる熱源や燃料が目的ごとに違います。

ボイラー効率の向上排ガスが熱源のガス式。煙突から捨てる熱を減らす
腐食防止硫黄分を含む燃料。蒸気式を前に置き、ガス式を守る
排熱の回収廃温水や他の排ガスなど、プラント内の余った熱を使う
失火の防止バイオマスなど高水分の燃料。予熱した空気で燃焼を助ける

ボイラー効率の向上

ボイラー効率は、燃料などで投入した入熱と、排出された廃熱の割合で決まります。排ガスの熱を取るガス式空気予熱器を付ければ、ボイラーからの廃熱が減り、ボイラー効率の向上につながります。

環境省の試算例では、エコノマイザのない小型ボイラーに空気予熱器を付けると、出口の排ガス温度が263℃から108℃に下がります。このとき熱効率は88%から95.5%に上がり、燃料は約7%減る計算です。

エコノマイザ付きのボイラーに足す場合は、排ガス温度が168℃から108℃、熱効率が92.6%から95.5%で、先にエコノマイザで熱を取っているぶん、燃料の削減は約3%と小さくなります。

どちらも都市ガス13A、給水25℃、蒸気2.5t/hの条件で計算した一例で、燃料・負荷・機種によって結果は変わります。

排ガス温度の下限は燃料の組成で決まり、硫黄分の少ない天然ガス(LNG)やプロパン(LPG)などの気体燃料なら、100℃以下まで下げることもできます。

効率の求め方はボイラー効率の計算方法(入出熱法・熱損失法)で、省エネの進め方は工場の省エネとエネルギー管理で解説しています。

二次側空気予熱器の腐食防止

この目的が関係するのは、石炭や重油など硫黄分を含む燃料を、ガス式空気予熱器で熱回収する場合です。硫黄分を含む燃料を燃やすと、排ガスに硫黄酸化物(SO3など)が含まれ、これが水蒸気と結びつき、硫酸として結露し始める温度が酸露点です。

ガス式空気予熱器(GAH:ガスエアヒーター)に常温の空気を供給すると、伝熱面の温度が酸露点を下回ることがあり、硫酸が結露すると、低温腐食につながります。

特に冷えやすいのは、冷たい空気が入ってくる側の低温部です。燃料の硫黄分が多いほど酸露点は高くなるので、低温部の金属の温度をそれより上に保つことが要点になります。

そこで、ガス式空気予熱器の一次側に、蒸気などを熱源とした蒸気式空気予熱器(SAH:スチームエアヒーター)を入れる場合があります。ここでいう一次側・二次側は、空気の流れで見た上流・下流のことです。

このときの蒸気式空気予熱器の目的は、二次側のガス式空気予熱器の腐食防止で、空気を先に温めておき、ガス式の伝熱面が酸露点を下回らないようにします。

図4:蒸気式とガス式を直列にする理由

空気を蒸気で先に温めてから、排ガスで温めるガス式に入れます。

外気(常温の燃焼用空気)押込送風機で送る。冷たいままガス式に入れると、伝熱面が冷える
空気
一次側:蒸気式空気予熱器(SAH)蒸気の熱で空気を温める。蒸気量を調節して、空気の温度を決めた値にする
温まった空気
二次側:ガス式空気予熱器(GAH)排ガスの熱でさらに温める。低温部の金属温度が酸露点を下回りにくい
高温の空気
バーナー・炉予熱した空気で燃料を燃やす
燃料の硫黄分が多いほど酸露点は高くなります。低温部の金属温度を酸露点より上に保てるかが、腐食を防ぐ分かれ目です。

蒸気式空気予熱器の温度制御を扱った実用新案(1987年公告)も、蒸気式は排ガス式と併用されることが多いと説明しています。蒸気量を調節して、排ガス式の低温部の金属温度を所定の値に保つ仕組みです。

酸露点の仕組みは酸露点(さんろてん)とはで、腐食の種類は低温腐食と高温腐食の違いで解説しています。

排熱の回収

空気予熱器の熱源は、燃焼空気より温度が高いものであれば使えます。プラント内に廃温水や高温の排ガスなどの熱源があれば、廃熱回収に利用できます。燃焼空気を予熱しておけばボイラーの燃料を減らせるので、プラント全体のエネルギー効率が上がります。

失火の防止

バイオマスは化石燃料と違い、燃料に多くの水を含み、林野庁の資料も、燃やすにはまず水分を蒸発させる熱が要ると説明しています。こうした高水分の燃料では、燃焼用の空気を予熱しておくと、乾燥と燃焼を助けられます。

大型のボイラーは、一度失火すると再び立ち上げるまでに時間がかかり、燃焼を安定して続けることが、プラントの安定稼働の課題の一つです。この場合の空気予熱器の目的は、高水分燃料による失火の防止で、燃料の種類はバイオマスボイラとはで紹介しています。

空気予熱器の方式

空気予熱器は、熱の受け渡し方で大きく伝熱式(熱交換式)と再生式に分けられます。SIIの用語集でも、多管型・プレート型・ヒートパイプ型の熱交換式と、蓄熱式が挙げられています。

蒸気式・ガス式は、これとは別の「熱源」による呼び分けで、蒸気式空気予熱器も、熱の伝え方で見れば伝熱式(熱交換式)の一つです。

図5:空気予熱器の方式

熱の受け渡し方で、伝熱式(熱交換式)と再生式に分かれます。

伝熱式管式管の壁越しに熱を伝える。フィンチューブ型・ベアチューブ型(この記事で紹介)
伝熱式板式(プレート式)薄い板を重ね、板の両側に空気と熱源を交互に流す
伝熱式ヒートパイプ式中の作動液の蒸発と凝縮で、排ガス側から空気側へ熱を運ぶ
伝熱式(熱源で呼び分け)蒸気式・温水式熱源が蒸気や廃温水。管式(フィンチューブなど)で空気を温める
再生式回転再生式(ユングストローム式)蓄熱体を回し、排ガス側で温めて空気側で放熱。大型の発電用ボイラーで多い
再生式の注意点空気の漏れ(リーク)回すためのすき間から、空気の一部が排ガス側へ漏れる。シールで減らす
伝熱式/再生式は「熱の伝え方」、蒸気式/ガス式は「熱源」による分け方です。2つの軸は別なので、「ガス式の管式」「ガス式の回転再生式」のように組み合わさります。

伝熱式(熱交換式)は、管や板の壁をはさんで熱を伝える方式で、空気と熱源は壁で仕切られているので、ふだんの運転では混ざりません。

再生式は、蓄熱体(伝熱エレメント)に排ガスの熱をいったんためてから、空気に渡す方式です。代表が回転再生式で、考案者の名前からユングストローム式と呼ばれます。

考案したのは、スウェーデンの技術者フレドリック・ユングストロームで、1920年代初めに試験が行われ、最初の商用機は1922年にストックホルムの工場に納められました。

構造の中心は、ゆっくり回るロータです。ロータの中は放射状の仕切り板で区切られ、波形の薄い金属板を重ねた伝熱エレメントが、バスケットという枠に収まっています。

ロータの上下はセクタープレートで覆われ、排ガスの通る側と空気の通る側に分かれます。ロータが回ると、排ガス側で温まったエレメントが空気側へ移り、熱を空気に渡します。

図6:回転再生式(ユングストローム式)の仕組み

ロータを上から見た図です。エレメントが排ガス側と空気側を交互に通り、熱を運びます。

排ガス側エレメントが熱をためる空気側エレメントが空気に熱を渡すロータがゆっくり回る

※中央の太い線がセクタープレート(排ガス側と空気側の仕切り)、放射状の線がロータの仕切り板です。実機では2分割のほか、3分割・4分割の構成もあります。

再生式は、同じ役目の管式よりコンパクトです。Howden社の資料では、船のボイラーで管式から回転式に替え、必要なスペースが30%未満で済んだ例を挙げています。

大型の発電用ボイラーで多いのも回転再生式で、日立製作所の特許(1986年公開)も、大型ボイラーの排ガスの熱回収には通常、回転再生式を使うと説明しています。弱点は空気が排ガス側へ漏れることで、ロータを回すためのすき間があり、押込送風機で押し込んだ空気の一部が排ガス側に抜けます。

同じ特許では、従来の回転再生式で空気の5〜10%が漏れ、送風機の大型化と動力の増加につながるとしています。メーカーは、シール(すき間をふさぐ部品)の改良で漏れを減らしています。

工場の中小型ボイラーで多いのは伝熱式で、空気と熱媒を熱交換させるエア用の熱交換器が使われます。ここでは代表的な管式の2つを、伝熱管の形の違いとして紹介します。

フィンチューブ型

フィンチューブ型は、伝熱面にフィン(ひれ)を付けて伝熱面積を大きくした機器です。省スペースでも伝熱面積を確保できるため、一般的なエアヒーターによく使われます。フィンの間隔は、使う環境に合わせて決めます。

ベアチューブ型

ベアチューブ型は、フィン加工をしていないチューブを使います。フィン付きの管が作りにくい特殊な材質を使う場合や、フィンの間に灰やゴミが詰まるおそれがある場合に選ばれます。

1本のチューブで取れる伝熱面積が小さいため、同じ交換熱量ならフィンチューブ型より機器は大きくなります。その代わり、フィンの目詰まりが起きず、汚れの多い排ガスでも安定して使いやすいのが利点です。

どちらが適しているかは、利用環境などを購買仕様書に詳しく書き、過去の実績から検討します。書く項目は購買仕様書とはでまとめています。

空気予熱器のよくある質問

エコノマイザと空気予熱器は、どう組み合わせる?

両方を付けるときは、排ガスの流れでエコノマイザを上流、空気予熱器を下流(二次側)に置くことが多いです。ボイラー本体を出た排ガスで先に給水を温め、残りの熱で空気を温めます。

小型ボイラーでは、どちらか一方だけの場合もあり、環境省の試算例でも、エコノマイザのないボイラーに空気予熱器だけを付けるケースが計算されています。

空気予熱器を付けるときの注意点は?

導入前には、環境省の資料が挙げる次の2つを確かめます。

  • 空気予熱器の圧力損失が加わっても、押込送風機・誘引送風機の吐出圧力と動力が足りるか
  • 燃焼空気の温度が上がることで、排ガス中のNOx(窒素酸化物)の濃度が上がらないか

運転を始めてからは、伝熱面の汚れと空気の漏れが性能を下げ、排ガス側に付く灰や煤は、スートブロワで吹き飛ばします。

再生式では、汚れや腐食で傷んだ伝熱エレメントのバスケットとシールの交換も、保全の項目になります。出口の排ガス温度や通風損失の変化で傷み具合を見るなら、状態基準保全(CBM)の考え方が使えます。

ガスガスヒーター(GGH)とは違う?

回転再生式のガスガスヒーターなら仕組みは同じで、温める相手が違います。空気予熱器が燃焼用の空気を温めるのに対し、ガスガスヒーターは排ガスどうしで熱をやり取りします。

Howden社の資料では、脱硫装置を出て冷えた排ガスを温め直し、煙突から上がりやすくする用途を挙げます。ユングストローム式のメーカーも、空気予熱器とガスガスヒーターを並べて製品にしています。

まとめ

この記事のまとめ
  • 空気予熱器(エアヒーター)は、ボイラーの燃焼用の空気を予熱する熱交換器
  • エコノマイザは給水、空気予熱器は空気を温める。排ガス側ではエコノマイザの下流に置くことが多い
  • 熱源は排ガス・蒸気・廃温水などがある
  • 目的は効率の向上、低温腐食の防止、排熱の回収、失火の防止
  • 方式は伝熱式(管式・板式・ヒートパイプ式)と再生式(ユングストローム式)に分けられる

同じ用途に見える熱交換器でも、熱源や利用目的によって呼び方が変わるので、混同しないように注意しましょう。

空気予熱器と同じくプラントの熱効率を高める機器には、節炭器や給水加熱器があります。給水側の機器は給水加熱器とはで詳しく説明します。

ボイラーの省エネは、エネルギー管理士試験でもよく出るテーマで、工場での役割は製造業のエネルギー管理士の仕事で紹介します。その他のボイラーに関する記事は、ボイラーとは何かにまとめています。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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