静流水とは、ある場所で観察した流れの状態が時間とともに変わらない水流で、脈動水とは圧力や流量が周期的に増減する水流を指します。静流水は止まっている水という意味ではなく、流れていても状態が安定している水として理解するのが出発点です。
バルブのカタログでは、同じ製品でも静流水と脈動水で最高許容圧力が分かれている場合があります。流れの定義を押さえたうえで、通常運転の圧力だけでなく変動の最大値や起動・停止時の状態を確認すると、使用条件を取り違えずに仕様を読めます。
静流水とは
静流水を考えるときは、配管内の一つの観測位置を固定し、そこでの流速や圧力が時間によって変わるかを見ます。流体力学でいう定常流の考え方に対応し、筑波大学の講義資料でも、各点の流速が時間によらない流れを定常流と説明しています。
たとえば、点Aの流速が最初に1.5m/sで、30秒後も60秒後も1.5m/sなら、測った範囲ではその点の流速は変わっていません。隣の点Bで別の流速が測られていても、それぞれの点で時間変化がなければ、場所による違いだけを理由に非定常とはしません。

管が細くなる場所では、同じ流量を通すために断面平均速度が上がることがありますが、これも場所に沿った変化です。細い管の一点に立って観察した速度がずっと同じであれば、空間的な速度差が存在していても定常な流れとして扱えます。
静流水の「静」という字から、タンクにためて動かない水や、圧力がゼロの水を思い浮かべると誤解につながります。静流水でも流速と圧力はあり、配管を流れることによる圧力損失も生じるため、流れが安定していることと、エネルギーを消費しないことは別です。
図1:観測する場所を固定して、時計だけを進める
AとBの速度を比べることと、同じAの時間変化を見ることを分けます。
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※局所の観測値を説明する例です。AとBの値が異なることと、Aの値が時間で変わることは別の条件です。
静流水・静止水・静圧は違う言葉
静止水は水そのものが動いていない状態ですが、静流水は流れの時間的な安定性についての言葉です。静圧は流れている流体にも存在する圧力なので、静圧計で測ったから静流水である、という判定もできません。
圧力の種類については、静圧・動圧・全圧の違いで整理しています。カタログの「静流水」という流体条件と、圧力測定で使う「静圧」を別に読むと、測定器の名前とバルブの使用区分を混同しにくくなります。
実際の配管では微小な乱れや計器のばらつきもあるため、数学上の完全な定常状態と現場の判断がそのまま一致するとは限りません。どの程度の圧力変動を許容するかを独自の一律基準で決めず、使用する製品の仕様やメーカーの条件に合わせて扱います。
脈動水とは
脈動水は、固定した場所で流量や圧力が周期的に増えたり減ったりする水流です。往復動ポンプが吸込と吐出を繰り返すような系統では、平均すれば一定量の水を送っていても、短い時間で見ると流れの強さが変動することがあります。
旧記事の自作図では、点Aの流速が0秒で1.5m/s、30秒で1.7m/s、60秒で1.0m/sと変わる例を示しています。この表から各点の時間変化は読み取れますが、三つの時刻だけでは繰り返しの周期までは分からないため、周期性の判定には継続した記録が必要です。

ここで注意したいのは、時間とともに変わる流れ全体を表す非定常流と、脈動する流れを同義にしないことです。ポンプを一度停止したときの過渡変化や、ゆっくり変わる運転条件も非定常に含まれますが、周期的な脈動とは分けて評価します。
水温が朝から昼にかけて変わる場合も、熱的には時間変化がある状態ですが、それだけで圧力や流量の脈動があるとはいえません。脈動水かどうかを確認する際は、使用条件に関係する圧力・流量の変動とその繰り返しを中心に調べ、温度条件は許容圧力を読む別の軸として記録します。
往復動ポンプで流れが増減する仕組み
一般的な単頭のダイヤフラムポンプでは、ダイヤフラムが引かれるとポンプ室へ液を吸い込み、押されると吐出側へ液を送ります。吐出し続ける動きではなく、吸入と吐出の行程が交互に現れるため、接続した配管にも流れの変動が伝わります。
タクミナの基礎講座では、往復運動の速度が一定ではなく、速くなったり遅くなったりすることも波形の理由として説明されています。流量の変動が配管の抵抗や慣性と組み合わさると圧力も変わるため、吐出量の平均値だけでは機器にかかる負荷を把握できません。
図2:単頭の往復動ポンプは、吸込と吐出を交互に行う
膜の前後運動と逆止弁の働きを簡略化した断面。実機の弁構造や配置は製品で異なります。
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※多連構造や専用機構で脈動を減らす製品もあります。「ダイヤフラムポンプだから必ず同じ大きさの脈動がある」とは判断しません。
一方で、複数のポンプヘッドの動きをずらしたり、専用のカム機構を使ったりして、吐出側の流れを均す製品もあります。ポンプの形式名だけで脈動の有無を決めず、実際の機種、運転速度、緩衝装置、配管条件を合わせて確認します。
脈動とウォーターハンマーを分けて確認する
脈動は繰り返し変動する流れですが、ウォーターハンマーは流速の急変に伴って圧力波や衝撃が生じる現象です。弁の急閉やポンプ停止をきっかけとする水撃は、一度の操作でも起こり得るため、周期的な脈動が見られない設備でも検討が必要です。
アピステの技術解説では、急な流速変化による圧力の上昇・下降に加え、ポンプ停止後の水柱分離と再結合も説明されています。通常運転の圧力変動と、停止時に短時間だけ現れるピークを同じデータ処理で平均化すると、問題となる状態を見落とすおそれがあります。
対策も、ポンプによる周期的な吐出変動を緩衝することと、急停止・急閉時の過渡圧力を抑えることでは検討内容が違います。バルブの脈動水側の最高許容圧力を選んだだけで水撃対策が完了したとせず、運転操作と配管系統を含めて原因を確認してください。
バルブの使用圧力で「静流水」「脈動水」が分かれる理由
静流水では圧力が安定しているのに対し、脈動水では圧力の増減に合わせて機器にかかる力も繰り返し変化します。バルブの選定では、単に一度の圧力に耐えることだけでなく、使用温度、材料、構造やシールの条件に合うかを確認します。
イワキの解説でも、脈動による振動がポンプや配管を傷めたり、溶接部やねじ接合部への負荷につながったりすることが説明されています。ただし、静流水と脈動水の許容圧力の比率を、すべてのバルブに共通する疲労計算の係数として使うことはできません。
図3:弁箱と接続部にかかる荷重も、圧力とともに変動する
バルブ本体を切った概念図。流体圧力による荷重と、配管振動などの外力を区別して確認します。
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※特定製品の設計図ではありません。弁箱の耐圧、弁座を隔てた差圧、外力、繰返し回数の扱いは実機の仕様で確認します。
メーカーの温度条件と流体区分を同時に読む
具体例として、大和バルブのF10KCEは、カウンターウェイト付の鋳鉄10Kフランジ形スイング逆止め弁です。公式製品ページでは、80℃以下の静流水に対する最大許容圧力が1.4MPa、80℃以下の油・脈動水では1.0MPaと分けて示されています。
| 製品例 | 流体・温度の条件 | 最大許容圧力 |
|---|---|---|
| 大和バルブF10KCE | 80℃以下の静流水 | 1.4MPa |
| 同じ製品 | 80℃以下の脈動水 | 1.0MPa |
これは特定製品での数値であり、10Kと書かれたバルブならすべて同じ条件で使えるという意味ではありません。呼び圧力は製品を区分する表示なので、実際の上限は製品記号、材料、呼び径、温度、流体条件をそろえた仕様欄で確認します。
旧記事で挙げた東洋バルヴのJ10K型ゲートバルブについては、旧例の製品仕様ページも参照できます。ここでは直接確認できるメーカー公式のF10KCEを主例としており、異なる製品へ許容圧力を転用することはしません。
平均圧力が低くても、ピークが上限を超える場合がある
圧力の平均値が0.8MPaでも、その周りに0.3MPaの振幅で変動するなら、最大値は1.1MPaになります。先ほどの製品例で脈動水の上限1.0MPaと比べると、平均値だけなら低く見えても、ピークを含む条件では上限を超えるため、そのまま適合とは判断できません。
図4:平均0.8MPaという情報だけでは、上限との照合ができない
周期的な圧力変動の例。最大値1.1MPaは、例示製品の脈動水側1.0MPaを超えます。
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※上限付近の詳細は実製品の仕様に従います。非対称な波形では平均±振幅で最大最小を決めず、記録したピークを使います。
実際の波形が非対称であったり、周期の途中に鋭いピークが重なったりする場合は、平均値に一つの振幅を足すモデルだけでは足りません。圧力センサーの応答、記録の時間間隔、表示器の平均化設定も確認し、変動の速さに対して適切な測定方法を選びます。
最大値だけでなく、最低圧力がどこまで下がるか、弁の前後で差圧がどれだけ変わるかも使用条件に関わります。同じ上流圧力でも下流の状態が違えば弁体に作用する差圧は異なるため、カタログの本体耐圧と操作可能差圧を同じ上限として扱わないようにします。
ポンプの仕様書にある全揚程は、ポンプが流体へ与えるエネルギーを水頭で表した値なので、配管の各位置の圧力とは区別します。水頭から圧力へ換算する考え方はポンプの揚程と圧力の関係を確認し、観測した弁入口の圧力と混ぜずに整理してください。
脈動緩衝装置があっても、設置後の状態を確認する
エアチャンバーは容器内の気体の伸縮を使い、吐出量が多い瞬間には液を受け入れ、吐出が少ない間には液を押し出して流れを均します。このような装置で変動を減らせますが、装置の有無だけを見て下流を静流水と決めるのではなく、実際の運転状態で効果を確認します。
タクミナの解説では、液へ空気が溶け込んでチャンバー内の空気が減ると、脈動が再び大きくなることが示されています。導入時の状態がずっと保たれるとは限らないため、点検項目や保守条件をメーカーの取扱説明に合わせ、配管振動や圧力の記録にも変化がないか確認します。
緩衝装置自身にも最高使用圧力や材料の適合条件があり、配管へ追加すればすべて解決するわけではありません。運転中の高圧容器を自己判断で調整するのではなく、必要な対策と点検方法をポンプ・バルブ・緩衝装置のメーカーと合わせて検討します。
選定前にまとめる運転条件
最初に水の温度、通常の運転圧力、観測した最大・最小圧力をそろえ、どの位置で測った値なのかを配管図へ記します。次に、ポンプの形式と運転条件、弁の開閉動作、起動・停止の頻度を整理すると、変動の原因とカタログで照合すべき区分が見えてきます。
図5:カタログの低い数値を選ぶ前に、使用条件をそろえる
この手順は適合を保証する計算ではなく、メーカーへの確認に必要な情報を整理するものです。
測定位置、温度、圧力の最大/最小、変動の周期、定常時と起動停止時を区別。
製品記号、材質、呼び径、接続、シール材、使用する流体区分を確認。
温度に対応する許容圧力、差圧、操作条件、過渡圧力の扱いを確認。
脈動や水撃がある場合は波形・運転情報を示し、対策と選定をメーカーと検討。
※迷ったら脈動水側の低い圧力を選ぶだけでは、衝撃や特殊な繰返し条件への適合は確認できません。
選定時には通常運転だけでなく、停電によるポンプ停止や、下流側の弁が閉じる場面も確認の対象に含めます。短時間の異常ピークをいつでも記録できるとは限らないので、計器の履歴だけで判断せず、運転手順と系統の条件から想定すべき過渡を洗い出します。
仕様に記載のない波形や繰返し条件があるときは、低い許容圧力側に収まることだけで自己判断せず、メーカーへ条件を示して照会します。タンクによる変動の緩和を検討する場合は、バッファータンクの役割も参考になりますが、容量や設置位置は目的と対象の変動に合わせて決めます。
よくある質問
静流水ならポンプを使っていない水ですか?
ポンプを使っているかどうかだけでは決まりません。ポンプで連続送水していても観測点の状態が安定している場合があり、反対に運転切替や弁動作で状態が変わる場合もあるため、設備全体と測定した状態で判断します。
静流水と層流は同じですか?
静流水は時間的な安定性についての説明で、層流・乱流という流れ方の区分とは観点が異なります。見た目が滑らかだから必ず脈動がない、あるいは乱れがあるから必ず同じ脈動水条件になる、と一つの特徴だけで機器の仕様を決めないでください。
圧力計の針が止まっていれば静流水ですか?
計器の応答やダンパー、表示の平均化によって、速い変動が見えなくなることがあります。針が動かないという観察だけではピークがないと証明できないので、変動の速さに合う測定方法や、ポンプ・弁の動作履歴も併せて確認します。
脈動水側の上限以下なら、水撃があっても使えますか?
一般の脈動水に対する許容圧力だけでは、水撃を含むすべての過渡条件への適合を判断できません。衝撃の大きさや繰返し、負圧、弁の動作も関わるため、対象製品の扱いを確認し、必要に応じて系統の水撃対策も検討します。
古いカタログの数値をそのまま使えますか?
形式が似ていても材料、シール材、呼び径や仕様が異なる場合があるので、使用する製品に対応した資料で確認します。この記事の1.4MPaと1.0MPaは特定製品の条件付きの例であり、手元のバルブの許容圧力を示す数字ではありません。
まとめ
静流水と脈動水を見分ける基本は、水と一緒に移動するのではなく、観測位置を固定して時間変化を見ることです。場所による流速差と時間による増減を区別し、周期的な脈動と、起動・停止など一時的な過渡変化も分けて整理します。
バルブの許容圧力は、流体区分と温度、実際に使う製品の仕様をそろえて読みます。平均値が低いことや、脈動水側の低い数値を選んだことだけで判断を終えず、最大・最小圧力、差圧、繰返しや水撃を含む条件を確認して選定してください。
出典・参考資料
配管の機器を見直すときは、ラプチャーディスクと安全弁の違い、フランジのFF・RFの違いも関連記事として参照できます。異物による機器トラブルの確認には、ストレーナに差圧計を設ける理由とバケットストレーナーの構造、その他の主題は配管の記事一覧をご覧ください。
- 筑波大学・小野田講義資料「完全流体の運動」:各点の速度が時間によらない定常流と連続の式。
- タクミナ「2-1. 脈動 脈動とは」:往復動ポンプの吸込・吐出と流れの変化。
- タクミナ「5-1. スムーズフローポンプ」:専用機構で吐出変動を減らす例。
- タクミナ「4-1. エアチャンバーの原理」:緩衝の仕組みと空気減少による脈動の再発。
- イワキ「ポンプの脈動」:振動と配管・接合部への負荷。
- アピステ「配管のウォーターハンマーを防止する方法」:急な流速変化と水柱分離による水撃。
- 大和バルブ「F10KCE 製品詳細」:80℃以下の静流水と脈動水の最大許容圧力の例。
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