自動弁のリミットスイッチとは、バルブが指令どおり開いた・閉じたかを機械的に検出し、接点の信号で制御室や制御盤に返す機器です。開閉の指令と、開閉の確認は別の信号です。確認の側を受け持つのがリミットスイッチです。
この記事では、リミットスイッチの役割、バルブが開かない原因、手動弁のインターロックへの使い方、開側・閉側の付け方を順に整理します。後半では、バルブへの取り付け方と、電動弁のトルクスイッチ(過トルク)との違いも扱います。
リミットスイッチとは?
リミットスイッチは、自動弁などに開閉信号を送ったときに、バルブが機械的に動いたかどうかを確認するための機器で、機械的にスイッチを押せば接点が入る仕組みです。
中身は、小さな接点のスイッチ(マイクロスイッチ)を金属や樹脂のケースに封入したものです。オムロンの技術解説では、外力・水・油・ガス・塵埃から内蔵スイッチを守り、機械的な強さと耐環境性が要る場所に使うスイッチと説明されています。
制御室が出すのは「開け」「閉めろ」の指令だけです。弁が動いたかは、リミットスイッチが別の線で返します。
※指令の線だけでは、弁が固着していても制御室からは分かりません。確認の線があって初めて「動いた」と言えます。
リミットスイッチがなければ、自動弁に開閉信号を送っていても、本当に開いたかどうかは現場に行かないと分かりません。
ただし、スイッチが見ているのはアクチュエータ(弁を動かす駆動部)の軸の位置です。配管の中を流体が流れているかまでは分からないので、流れを確かめたいときは流量計など別の計器と組み合わせます。
電気的な信号を出しているにもかかわらず、バルブが開かない原因は次のようなものが考えられます。
- バルブが固着している。
- 電線が断線している。
- 計装エアや電源が来ていない。
- 結線が間違っている。
どれも制御室の画面だけでは区別できません。リミットスイッチは「開かなかった」ことを知らせる入口になります。
空気で動く自動弁では、エアの圧力不足や水分・油分の混入も動作不良につながります。計装エアの品質と供給の考え方は、計装空気(計装エア)の品質基準の記事で整理しています。
そこそこの規模のプラントになると、リミットスイッチからの接点信号をDCSに取り込み、モニター画面で開閉を確認することが多いです。DCS(分散制御システム)の役割や長所・短所は、エネ管.comのDCSとは何かを解説した記事で説明しています。
リミットスイッチの用途
リミットスイッチの用途は次の2つです。
- 自動弁、手動弁の開閉確認
- 接点を利用した自動運転のインターロック
リミットスイッチの使い方は、自動弁の開閉確認の他に手動弁に利用する場合もあります。例えば、自動運転を始める前に必ず閉弁していないといけない手動バルブがあったとします。
手動バルブを閉めるとリミットスイッチが押し込まれるように施工しておき、そのうえで自動運転の条件にリミットスイッチの信号を組み込めば、開弁状態のまま自動運転がかかることはありません。
このようにリミットスイッチは、自動運転のインターロック回路の条件としても利用できます。回路図やブロック線図の作り方は、リンク先で正逆転回路の例とあわせて解説しています。
ただ、このような使い方をする場合、手動バルブはボールバルブなどの機械的に回転できるようなバルブに限ります。
リミットスイッチには、1方向にのみ設置して「開いた時」だけスイッチを叩くものと、「開いた時、閉じた時」の両方に設置するものがあります。開も閉もスイッチを取ると安全は増しますが、コストが上がります。どこまで重要な設備かによって、信号の数を検討します。
両方に付けると、開・閉それぞれの到達を確かめられます。信号の数とコストは増えます。
※「どちらもOFF」だけでは原因は特定できません。指令からの経過時間などと組み合わせて判断します。
開閉の両方を取っておくと、「開指令を出したのに一定時間たっても開の信号が来ない」といった異常を、閉の信号が切れたかどうかとあわせて見られます。何秒で異常とみなすかは、弁の作動時間に合わせて制御側で決めます。
バルブに付けるリミットスイッチの形
空気作動のボールバルブやバタフライバルブでは、リミットスイッチを箱に収めた「スイッチボックス」をアクチュエータの上に載せる形がよく使われます。弁の軸と一緒に箱の中の軸が回り、カムがスイッチを押す仕組みです。
日本アスコのスイッチボックス(TXPシリーズ)の例では、開側と閉側に機械式のスイッチを1個ずつ、または2個ずつ内蔵しています。上面の表示器が緑なら開、赤なら閉で、現場でも開閉を目で確かめられます。
アクチュエータとの取り合いは、NAMURと呼ばれる形状の軸で合わせる製品が多く、日本アスコの例でも、NAMUR形状の軸で取り付けやすい設計としています。検出の方式は、接点を押す機械式と、触れずに検出する近接式に分かれます。
弁の軸の位置を、接点を押して取るか、触れずに取るかの違いです。
※特長はオムロン技術解説(リミットスイッチ・近接センサ)による。具体的な仕様は製品ごとに確かめてください。
近接式は、オムロンの技術解説でもリミットスイッチのような接触式の代わりとして位置づけられています。工場の自動機で使う近接センサの選び方は、近接センサと光電センサの違いで比べています。
可燃性のガスや蒸気がある場所では防爆形を選び、アズビルのLX700やVCX-7000のように、屋外のプラント向けにガス・蒸気防爆の構造を持つリミットスイッチもあります。
スイッチの接点は、制御盤やDCSのデジタル入力(DI)で受けます。DIの受け方や信号の向きは、DI/DO・AI/AO・PI/POの違いの記事で整理しています。機械式の接点は電圧を持たない「無電圧接点」として渡すことが多く、違いは無電圧接点と有電圧接点の違いで比べています。
開・閉の2点ではなく、途中の開度まで知りたいときは、開度を連続した信号で返す発信器を付けます。4-20mAで送る例が多く、その理由は制御機器に4-20mAを使う理由で説明しています。
発注するときは、次の項目を仕様書で確かめておくと手戻りが減ります。
- 開側・閉側それぞれのスイッチの数と接点の形式
- 受ける側(制御盤・DCS)の入力の電圧と方式
- 防爆の要否と保護等級(屋外・洗浄のある場所か)
- アクチュエータとの取付軸の形
電動弁のリミットスイッチとトルクスイッチの違い
モーターで動かす電動弁では、リミットスイッチが開閉を知らせるだけでなく、モーターを止める役も持ちます。開端・閉端に来たらスイッチが切れて、モーターの電源を切る使い方です。
電動弁には、もう1つトルクスイッチが付くことがあり、弁の軸を回す力(トルク)が設定値を超えたときに働くスイッチです。
端で止める方法は、位置で止める方法とトルクで止める方法があり、機種と設定によって変わります。ドイツのアクチュエータメーカーAUMAの取扱説明書では、どちらで止めるかはバルブメーカーが決めるとしています。
国内の西部電機のバルブアクチュエータ(Semflex VMシリーズ)のカタログでも、位置リミットとトルクリミットを設定する仕組みです。トルクの計測・制御は、バルブとアクチュエータを守る基本と説明されています。
リミットスイッチは「どこまで動いたか」、トルクスイッチは「どれだけ力がかかったか」を見ます。
※AUMA SG 05.1〜12.1 の取扱説明書、西部電機 Semflex VM カタログによる。端をどちらで止めるかは、機種と設定(バルブメーカーの指定)で変わります。
同じ説明書によると、トルクスイッチはストローク全体で過負荷の保護として働き、位置で止める場合も同じです。設定トルクは弁に合わせ、バルブメーカーの同意なしに変えてはいけません。
開閉の表示と、モーターの停止を同じ接点でまかなわない工夫もあります。AUMAの例では、2つの接点が少しずれて動くタンデムスイッチを使い、先に動く接点を表示用、後の接点をモーター停止用に分けます。
空気式と電動式の駆動部の違いや選び方は、油圧・空圧・電動アクチュエータの違いで比べています。
リミットスイッチのよくある質問
電磁弁にもリミットスイッチは付けますか?
空気作動の自動弁に付く電磁弁は、アクチュエータへ送るエアの流れを切り替える役です。アズビルの資料でも、3方電磁弁は制御弁や緊急遮断弁のオンオフのために供給空気の流路を切り替えるものとして紹介されています。
電磁弁が切り替わっても弁が動いたとは限らず、開閉の確認は、弁側(アクチュエータの上)のリミットスイッチで取ります。
弁を測定値の上下限で開閉するオンオフ制御の考え方は、二位置制御(2位置制御)で解説しています。
キッツのFAQでは、電磁弁はソレノイドの電磁力でバルブを動かすもの、電動式自動弁はモーターと歯車で動かすものと区別しています。電磁弁そのもので流体を開閉する場合は、位置を検出する機能の有無が製品で違うため、仕様書で確かめます。
過トルクとは何ですか?
電動弁で、弁の軸を回す力が設定値を超えた状態です。トルクスイッチが働いてモーターを止め、弁やアクチュエータが壊れるのを防ぎます。
端に届く前の途中で過トルクになったときは、固着や異物のかみ込みが原因の候補になります。西部電機のカタログでも、中間位置でのトルクトリップをバルブのアラームとして扱い、障害物のかみ込みを検知する機能を挙げています。
トルクスイッチの信号も接点で出せるので、盤に取り込めば異常の知らせに使えます。原因は1つに決まらないため、弁や配管の状態とあわせて確かめます。
機械式と近接式はどちらを選べばよいですか?
比べる軸は、寿命・設置環境・盤側の入力の3つで、図4のとおり、近接式は接点がすり減らず、水や油のかかる場所にも向きます。
一方で近接式は半導体の出力なので、盤側の入力がその出力方式に合うかを先に確かめます。防爆が要る場所では、その方式の防爆品があるかも条件になります。
開閉の信号が来ないときは、どこから確かめますか?
現場の弁から制御室の入力へ、信号の流れに沿って順に見ると、原因を絞り込みやすくなります。たとえば次の順です。
- 現場の表示器や指針で、弁が実際に動いたかを見る
- 動いていれば、アクチュエータの軸とスイッチボックスの軸がずれていないかを見る
- スイッチの接点が切り替わっているかを確かめる
- 端子のゆるみや断線がないかを確かめる
- 制御盤・DCSの入力が正しく受けているかを確かめる
弁が動いていなければ、図2の原因(固着・断線・エアや電源・結線)に戻ります。現場で弁を動かして確かめるときは、運転側と連絡を取り、プロセスへの影響がない状態で行います。
まとめ
- リミットスイッチはバルブの開閉を機械的に確認するもの
- 現場と制御室が離れている場合などに必要になる
- 手動バルブなどにも利用でき、自動運転のインターロックの条件になる
- 開側だけか開閉両方かは、設備の重要度とコストで決める
- 電動弁では、位置で止めるリミットスイッチと、過トルクで止めるトルクスイッチを使い分ける
電気は便利ですが、機器が指令どおりに動いたかどうかを確かめるすべを持っていません。そんな場合に、リミットスイッチのように機械の動きを電気信号として返す機器が重要になるわけです。
信号のつながりを図面で追うときは、P&ID(配管計装図)の読み方も参考になります。自動弁の選び方は、次の記事もあわせてどうぞ。
出典
出典・参考資料(6件)を開く出典・参考資料を閉じる
- リミットスイッチの定義・構造・用語:オムロン 技術解説「リミットスイッチ 概要」、同「用語解説」
- 近接センサの特長:オムロン 技術解説「近接センサ 概要」
- バルブ用スイッチボックスの構成・表示器・NAMUR軸:日本アスコ「防爆形スイッチボックス TXP/TXS」リーフレット(2019年3月)
- 電動アクチュエータのリミットスイッチ・トルクスイッチ:AUMA「Electric part-turn actuators SG 05.1 – SG 12.1 Operation instructions」、西部電機「インテリジェントバルブアクチュエータ Semflex VMシリーズ」カタログ
- 防爆形リミットスイッチ:アズビル「Explosion-Proof Switches」
- 電磁弁の役割:アズビル「Auxiliary Equipments for Control Valves」、キッツ「よくあるご質問 自動弁」
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