ポジショナーとは?原理と電空・空空の違い、弁位置のフィードバック制御

膜アクチュエータの側面にポジショナーと位置フィードバックレバーを備えた制御弁の構造イメージ

ポジショナーは、調節計から受けた開度指令と実際の弁位置を比べ、空気式アクチュエータへ送る空気圧を調整する機器です。信号を空気圧に変えるだけでなく、弁が指令の位置へ動いたかを確かめて修正する、位置のフィードバック制御を担っています。

電空ポジショナーは電流信号、空空ポジショナーは空気圧信号を受け取ります。どちらも弁を動かす動力には供給エアを使うため、信号の種類と動力源を分けて見ると、配線・配管の役割や機種選定の意味がつかみやすくなります。

目次

ポジショナーとは?

空気式制御弁は、ダイヤフラムやピストンに作用する空気圧によって弁軸を動かし、流路の開き具合を調節します。ポジショナーはその空気を給気・排気しながら、弁軸の直線位置や回転角が、調節計から要求された値になるように制御します。

ダイヤフラムは、圧力によって変位する薄い膜で、空気の力を弁軸へ伝える部分です。電流信号を受けるポジショナーでも、通常は小さな電流の力で直接弁体を押すわけではなく、圧縮空気を制御してアクチュエータの力を利用します。

指令と実位置を比べる、小さな制御ループ

調節計が開度50%を指令しても、パッキンの摩擦や弁に作用する流体力などにより、実際の位置がすぐに50%になるとは限りません。ポジショナーは弁位置を検出して指令との差を見ながら空気圧を変え、その差が小さくなる方向へ動作を修正します。

機械式では弁軸に連動するレバーやばねで位置を戻し、スマートポジショナーでは位置センサーの信号を使って制御する構成もあります。アズビルの技術解説でも、ステム位置を検出し、指定開度を維持するよう空気圧を調整することが基本の役割として説明されています。

図1:弁の実位置を戻して、指令に追従させる

調節計の出力は指令、計装空気は動力。弁軸から位置の情報がポジショナーへ戻ります。

図は横にスクロールできます。

調節計開度指令ポジショナー比較・給排気4〜20mA計装空気膜アクチュエータ弁位置のフィードバック弁体

※単動の膜アクチュエータを使った概念図。ばねの向き、空気を入れる側、入力と開閉方向の関係は実際の仕様で変わります。

この位置制御と、上位の調節計が行う流量・温度・圧力などのプロセス制御は、見ている量が違います。流量を目標に近づけるために調節計が弁開度を変え、その開度を実現するためにポジショナーが働く、と二つの役割に分けて理解できます。

電流から空気圧へ変える内部の原理

代表的なアナログ電空ポジショナーには、コイルへ流れる電流で磁界を生み、可動部にトルクを与えるトルクモータがあります。電流に応じた可動部のわずかな変位で、ノズルとフラッパのすき間が変わり、その背圧を受けるパイロット機構が働きます。

ノズルは空気の吹き出し口、フラッパはその前にある板で、すき間が空気の逃げやすさを変えます。この小さな背圧変化をパイロット機構へ伝えて給気・排気を調整し、アクチュエータを動かすための出力空気圧を変える仕組みです。

図2:ノズル前の小さなすき間で、空気の逃げ方が変わる

同じ供給側の絞り条件で比較したノズル・フラッパの概念断面。後段にはパイロット機構があります。

図は横にスクロールできます。

すき間が小さいすき間が大きい供給→絞り→ノズル供給→絞り→ノズル背圧が高くなる背圧が低くなる板板

※電流が増えたときにすき間がどちらへ変わるか、背圧が下がったときに出力圧がどう動くかは機構によります。この図だけで弁の開閉方向は決まりません。

SMCのIP8000取扱説明書では、入力電流による発生力と、弁の動きをレバーから戻したばねの力がつり合う位置で停止する原理が示されています。ここでのトルクモータは、可動部に小さな変位を与えるもので、一般的な回転モーターが連続回転して弁を駆動する構成とは異なります。

すべてのポジショナーが同じ内部構造というわけではなく、スマート形ではセンサーと演算回路を用いて位置を制御します。共通するのは、入力指令を受け、供給エアを使って操作部を動かし、実位置の情報を戻して調整するという役割です。

電空変換器との違いは、何をフィードバックするか

電空変換器は、電流信号を対応する空気圧信号へ変換する機器で、出力圧力を作ることが役割です。スリーエスのTEシリーズを例にすると、入力4〜20mAに対して出力20〜100kPaという仕様がありますが、それだけでは弁軸の位置を直接見ていることにはなりません。

ポジショナーは実位置も見ているので、同じ開度を維持するために必要なら出力空気圧を変えます。このため、入力12mAならポジショナーの出力圧も必ず範囲の真ん中になる、という読み方はできず、入力の開度指令とアクチュエータの圧力を分けて確認します。

図3:圧力信号を作ることと、弁位置を合わせることは別

同じ空気式操作部でも、位置の情報を戻す経路の有無に注目します。

図は横にスクロールできます。

電空変換器電流→圧力ポジショナー指令と位置を比較操作部操作部空気圧空気圧電流信号電流信号圧力を変換するだけでは、実位置は分からない位置を戻す

※比較のため操作部を簡略化。電空変換器と空空ポジショナーを組み合わせて位置制御する構成もあります。

信号電流については4〜20mAを使う理由と信号の読み方も参考になります。指令が届いていること、空気圧が出ていること、弁が所定位置にあることはそれぞれ別の確認なので、一つを見ただけで全体が正常とは決められません。

例題:12mAの指令と実位置30%を比べる

説明用に、4〜20mAを弁開度0〜100%へ直線的に割り付け、電流が増えるほど開度が増える設定を考えます。この条件なら12mAは中間の50%指令ですが、逆動作やスプリットレンジ、非線形の特性設定では対応が変わるため、実機でも同じとは限りません。

標準レンジを直線的に割り付けた説明用の開度指令
xSP = I − 420 − 4 × 100
xSP = 12 − 416 × 100 = 50%
e = xSP − xPV = 50 − 30
e = 20パーセントポイント
I:入力電流[mA] xSP:開度指令[%] xPV:検出した実位置[%] e:指令と実位置の差[パーセントポイント]。相対的な増減率20%とは区別します。

実位置が30%なら、指令50%との間に20パーセントポイントの差があり、ポジショナーはこの差を小さくする方向へ働きます。40mmの全ストロークを同じ基準で0〜100%に対応させた例なら、指令位置は20mm、実位置は12mmで、位置の差は8mmです。

全ストローク40mmとした仮定例
LSP = 40 × 50100 = 20mm
LPV = 40 × 30100 = 12mm
ΔL = 20 − 12 = 8mm
LSP,LPV:同じ基準点からの指令位置・実位置[mm]。40mmは説明用の仮定値で、製品の標準ストロークを指定するものではありません。

図4:電流値から指令を求め、実位置との差を確認する

入力信号を測っただけでは、最後の実位置までは確認できません。

① 入力を読む4〜20mAのレンジで
入力電流12mA指令50%
② 実位置を読む位置センサー/レバーで
検出値30%差20ポイント
③ 変位で確かめる全ストローク40mmなら
20mm−12mm位置の差8mm

※この仮定例の結果です。指令と実位置の比較は、弁の設定・機械的な基準点がそろっていることを前提にします。

開度が50%になっても、流量が最大の50%になるとは限りません。弁固有の流量特性と前後差圧が関係するため、位置制御が合っていることと流量が目標どおりであることを分け、イコールパーセント特性とリニア特性も合わせて確認します。

電空ポジショナーと空空ポジショナーの使い分け

電空と空空の違いは、ポジショナーへ入る指令信号が電流か空気圧かという点です。たとえば電空には4〜20mA、空空には20〜100kPaという入力範囲の製品がありますが、どちらの値もアクチュエータへ供給する動力用エアの圧力とは別に読みます。

スリーエスの空空XPシリーズでは、標準入力20〜100kPaと供給空気圧0.14〜0.70MPaが別々の仕様欄に示されています。信号用の圧力が低いからといって供給エアも同じ圧力にするのではなく、ポジショナーとアクチュエータ双方の必要条件へ合わせます。

図5:入力信号の種類と、動力・機能の条件を分けて選ぶ

スマート形は内部制御や診断機能の分類で、電空と並ぶ別の信号源とは限りません。

表は横にスクロールできます。

確認する項目電空ポジショナー空空ポジショナー
入力信号の例4〜20mA20〜100kPa
弁を動かす動力供給される圧縮空気供給される圧縮空気
実位置の検出レバー・位置センサーなど、機種で確認レバーなどの機械的な検出を確認
設置環境電気部の認証・配線・温度条件など使用環境と付属機器を含む条件
選定時の共通項目直線/回転、単動/複動、ストローク、供給空気、失陥時動作、取付条件

※入力範囲は代表的な製品例であり、全機種共通の仕様ではありません。スマート形の通信・診断機能も機種ごとに異なります。

危険場所では、信号形式だけで適合を決めない

電空ポジショナーを可燃性雰囲気のある場所へ設置する際は、設置場所と対象ガスなどの条件に適合した防爆仕様を確認します。同じシリーズ名でも構造、認証、周囲温度範囲や配線の引込み条件が異なる場合があり、「防爆形」という呼び名だけでは選定を終えられません。

空空は電流入力を使いませんが、それだけであらゆる危険場所へ無条件に設置できるとは判断しません。実際にXPの公式仕様にもハウジング構造は標準非防爆と記載されているため、付属するスイッチや位置発信器も含め、製品と現場の適合条件をメーカーへ確認します。

ポジショナーを弁から離して設置する場合は、実位置を戻す機構や検出方法、空気配管の応答などの条件が変わります。分離設置に対応した製品を選び、検出部との接続方法や配管条件をメーカー資料で確認して、取付位置を検討します。

単動・複動と、信号断・空気断の動きを合わせる

単動アクチュエータでは空気の力とばねなどの復帰力を組み合わせ、複動では二つの室への空気圧を使って動かす構成があります。ポジショナーの出力も操作部に合わせて選び、出力ポートや設定が合わなければ指令どおりの動作にはなりません。

入力電流を失った場合と、供給空気を失った場合では、弁を動かすために残っているエネルギーの条件が違います。空気式なら必ず閉じる、電流が切れたらその場で止まる、と一律に決めず、アクチュエータの構造と付属回路を含めた失陥時動作を確認します。

正動作・逆動作の設定と、設備として必要な安全側の開閉方向も、同じ言葉でまとめずに整理します。制御弁の正動作・逆動作と制御弁が動く仕組みを参照し、信号が増えたときとエネルギーが失われたときの両方を確かめてください。

計装エアの品質と、必要な空気量を確認する

ポジショナーの内部には細い空気通路があるため、供給空気中の水分、油分、異物が作動不良の原因になります。SMCの取扱説明書でも除湿・除塵された清浄な空気が指定されており、設定圧力だけを合わせてエア品質を確認しない使い方は避けます。

供給圧が足りていても、大きな操作部を速く動かすための空気量が足りなければ、目標の応答が得られない場合があります。配管径や長さ、パイロットの流量特性、必要ならブースターの適合も製品条件で検討し、圧力の数字と流量の数字を分けて確認します。

計装用エアの管理は、計装空気と雑用空気の違いでも説明しています。また、機種によってはノズルから常時空気を逃がす正常な消費があるため、音がするだけで異常な漏れとは決めず、仕様範囲と通常状態からの変化を確認します。

交換・不調時は、信号と位置と空気を別々に記録する

弁が指令へ追従しないときは、入力信号、実位置、供給圧と出力圧を同じ時刻で記録すると、どこで変化が止まっているか整理できます。ポジショナーの不良と決め付ける前に、空気源、配管、フィードバックの取付状態、弁自体の摩擦や引っ掛かりも検討します。

アナログ形からスマート形へ替える際も、取り付けばそのまま同じ設定で動くとは限りません。アズビルの技術報告は、演算回路の最低駆動電流や入力・実位置・目盛の一致を確認する必要を説明しており、既設の信号範囲と校正条件を合わせて見直します。

調整や分解は、動作中の弁のそばで試しに行う作業ではなく、設備の安全を確保して製品の手順に従って行います。ポジショナーは故障した弁体や不足した操作力まで解消できる機器ではないので、制御設定だけで機械的な異常を補おうとしないことも大切です。

SMCの取扱説明書では、取外しや部品交換に先立ち供給圧力を止め、アクチュエータや配管内の残圧を抜くよう指定しています。危険場所で通電中に端子カバーを取り外すことも禁じているため、圧力と電気の両方について、作業前の安全条件を確認してください。

よくある質問

ポジショナーは必ず取り付けるものですか?

すべての空気式弁に必ず必要というわけではなく、要求する位置精度や応答、操作部と制御方式に応じて採用します。オンオフ操作だけの弁と連続的に開度を調節する弁では条件が異なるので、必要な動作と機器構成を先に決めて選定します。

電空ポジショナーは電気だけで動かせますか?

ここで扱う空気式アクチュエータ用の電空形には、電流指令とは別に圧縮空気の供給が必要です。電動アクチュエータで弁を動かす方式とは異なるため、電動式と空動式の制御弁の違いも合わせて確認してください。

12mAなら流量は半分になりますか?

標準的な直線割付けなら開度指令が50%になるだけで、流量が50%になるとは限りません。流量は弁の特性、Cv値、前後の差圧などに左右されるため、Cv値の選定方法と位置制御の条件を分けて考えます。

スマート形なら位置のずれは起きませんか?

センサーや診断機能があっても、取付基準や設定が合っていなければ、検出した位置と弁の実際の状態がずれることがあります。アズビルの報告でも目盛・入力・検出位置を合わせることが説明されており、機能の有無だけで正常を保証するものではありません。

空気の出力圧が上がれば弁は開きますか?

空気圧が増えたときの開閉方向は、操作部と弁の構造、配管、ポジショナーの設定で変わります。圧力だけを見て開き側と決めず、製品の動作図と実位置の表示を対応させ、入力増加時と空気喪失時の動作も確認します。

まとめ

ポジショナーは、調節計の指令を受けてアクチュエータの空気圧を調整し、実際の弁位置を指令へ追従させる機器です。電流から圧力への変換だけで説明を終えず、位置を戻す経路を見ると、電空変換器との違いとポジショナーの必要性が分かります。

電空・空空を選ぶ際は信号形式に加え、取付方式、操作部、エア品質と流量、設置環境、失陥時の動作をそろえて確認します。関連する主題は制御弁の記事一覧にもまとめていますので、弁本体と制御機器を組み合わせて理解してください。

出典・参考資料

NEWSLETTER

選んだ職種・業種に合わせた記事を、週1回メールで

週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。

実際に届くメールの例を見る

件名:今週のあなた向け記事|週刊MONOSCOPE 10/9号
登録内容:生産技術 × 自動車・輸送機器

週刊MONOSCOPEの見本(生産技術 × 自動車・輸送機器)

職種3本・業種3本・製造業で働くすべての方へ2本・今週よく読まれた記事3本が届きます。記事は毎週入れ替わります。ほかの見本を見る

職種・業種を選んで登録へ ›

無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。

WEEKLY NEWS

今週の製造業ニュース10選

メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。

LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

▶ お仕事のご依頼はこちら

コメント

コメントする

目次