誘電率とは、物質に電界をかけたときに、物質の中で電荷がかたより(分極し)、どれだけ電荷をためられるかを表す量です。単位は F/m(ファラド毎メートル)で、記号は ε(イプシロン)を使います。
透磁率は、物質が磁束をどれだけ通しやすいかを表す量で、単位は H/m(ヘンリー毎メートル)ですが、漢字は似ていても、誘電率は電気、透磁率は磁気の性質を表します。
この記事では、誘電率と比誘電率、透磁率と比透磁率、真空の値と単位、2つの関係式 ε0μ0=1/c2、導電率との違いの順に整理します。
電界に対して電荷のたまり方を決めるのが誘電率、磁界に対して磁束の通り方を決めるのが透磁率です。
※D:電束密度[C/m2]、E:電界の強さ[V/m]、B:磁束密度[T]、H:磁界の強さ[A/m]。真空の値は CODATA 2022(NIST)。
こちらの記事は動画でも解説しているので、動画の方がいい方はこちらもどうぞ。
誘電率とは
誘電率は、絶縁体(誘電体)が電界の中でどれだけ電荷をためられるかを表す量です。誘電率が大きい物質ほど、同じ電圧でも多くの電荷をためられます。
物質の誘電率 ε は、真空の誘電率 ε0 の何倍かを表す比誘電率 εr を使って、次のように書けます。
もう少し詳しく見ていきます。絶縁体に電界をかけると物質の中の電荷が正と負にかたより、この現象を分極と呼び、分極の起こりやすさを表すのが誘電率です。
電界をかけると、分子の中の+と−が極板の電荷に引かれて向きをそろえます。
※分子の+−の向きがそろうと、極板の近くに反対の電荷が並び、その分だけ極板に多くの電荷を集められます。これがコンデンサに誘電体を入れると容量が増える理由です。
極板の面積 S、極板の間隔 d のコンデンサを考えると、電気容量 C(電荷をためる能力)は次の式で表せます。
極板の面積を間隔で割った値にかかる係数が、誘電率 ε です。極板の間の電界とコンデンサの関係は、コンデンサと電界の関係で詳しく解説しています。
真空中の誘電率を ε0 で表し、ほかの物質が真空と比べて何倍電荷をためやすいかを表す指標が、比誘電率 εr です。
同じ単位どうしの比なので、比誘電率には単位がありません。代表的な物質の比誘電率は、空気はほぼ1、樹脂やゴムは2〜7程度、ガラスは5〜10です。
真空を1として、何倍電荷をためやすいかを並べました。材料によって3桁以上の差があります。
※チタン酸バリウム以外は 20℃ の値(HyperPhysics の表、Sears・Zemansky・Young より)。チタン酸バリウムは室温の値(JST 事後評価報告書)。周波数や温度でも値は変わります。
コンデンサに使われるチタン酸バリウムは、室温で約1,500〜3,000と桁違いに大きな比誘電率を持ちます。小さな部品で大きな容量が得られる理由は、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の製造工程で紹介しています。
形が同じコンデンサで、極板の間の材料だけを変えると、容量は比誘電率に比例して変わるので、数字で確かめてみます。
形と大きさは固定し、極板の間に入れる材料だけを変えて C=εrε0S/d を計算します。
※1 pF=10−12 F、1 nF=10−9 F。ε0=8.854×10−12 F/m で計算。端の電界の広がりは無視しています。
業務の場面では、誘電率そのものより比誘電率の方がよく使われ、材料のカタログや部品の仕様書でも、多くは比誘電率で書かれています。
透磁率とは
透磁率は、物質が磁束をどれだけ通しやすいかを表す指標です。磁界の中に置いたとき、どれだけ磁化されやすいかと言いかえることもできます。
どんな物質も、磁界の中に置くと多かれ少なかれ磁化の影響を受け、その度合いを数値にしたものが透磁率です。
磁石を鉄にくっつけてしばらくおくと、離した後も鉄が磁力を持つことがありますが、これは残留磁化という別の性質で、透磁率そのものとは分けて考えます。
磁束密度 B(その場所を通る磁束の密度)と、磁界の強さ H の関係を表したのが次の式です。
このときのμ を透磁率と呼び、真空の透磁率を μ0 としたとき、物質の透磁率 μ が真空の何倍かを表す数値が比透磁率 μr です。
真空の透磁率は、2019年の SI 改定までは 4π×10−7 H/m と決められていました。いまは測定で決まる値ですが、相対的な差は10−10の桁なので、計算では 4π×10−7 を使っても困りません。
比透磁率は、水や空気でほぼ1であり、磁化しにくいアルミニウムや銅もほぼ1で、鉄やニッケルのような強磁性体だけが桁違いに大きくなります。
強磁性体の値は、純度・熱処理・磁界の強さで大きく変わります。「最大」は磁界を変えたときの最大値です。
※HyperPhysics「Magnetic Properties of Solids」の表より。純度99.95%の鉄を水素中で焼なますと最大200,000にもなります。
透磁率の大きい鉄心をコイルに入れると、同じ電流でも多くの磁束が通ります。モーターや変圧器の鉄心に鉄が使われるのはこのためで、コイルの性質はインダクタンスとインピーダンスの違いで解説しています。
透磁率と磁力線・磁束の本数の関係は、磁力線と磁束の違いで計算例つきで整理しています。
誘電率と透磁率の関係
誘電率と透磁率は、電気と磁気で同じ役割をもつ量です。電界 E から電束密度 D を決めるのが ε、磁界 H から磁束密度 B を決めるのが μで、式の形もそろっています。
真空の誘電率と真空の透磁率のあいだには、次の関係があります。
c は電磁波の速さを表し、電磁気学の研究の中でマクスウェルの方程式から導かれた関係式で、c は光の速さと同じでした。つまり光は電磁波の一種だと分かったのです。
実際に数字を入れて検算してみます。
2019年の SI 改定後は、光速 c が定義値で、μ0 は測定値です。ε0 はこの式 ε0=1/(μ0c2) から決まります。
電界と磁界そのものの違いは、電界と磁界の違いで整理しています。
誘電率と導電率の違い
誘電率とよく混同されるのが導電率で、導電率 σ(シグマ)は、電界をかけたときに電流がどれだけ流れやすいかを表し、単位は S/m(ジーメンス毎メートル)です。
誘電率は「電荷をためる」性質、導電率は「電流を流す」性質です。同じ電界 E をかけても、誘電率は電束密度 D を、導電率は電流密度 J を決めます。
誘電率・導電率・透磁率は、どれも「かけたもの」と「決まるもの」をつなぐ係数です。
※導電率と誘電率は別の性質なので、一方が大きくても他方が大きいとは限りません。
たとえば銅の導電率は約5.95×107 S/m で、電流をよく流します。ガラスは約10−13〜10−9 S/m とほとんど流さない一方で、比誘電率は5〜10あり、電荷はためられます。
絶縁材料を選ぶときは、電流を流さないこと(導電率が小さいこと)と、比誘電率の大きさを分けて見ます。液体の導電率の測り方は導電率とは?導電率計の原理で解説しています。
よくある質問
比誘電率の単位は?
比誘電率に単位はなく、物質の誘電率 ε[F/m]を真空の誘電率 ε0[F/m]で割った比なので、単位が打ち消し合います。
単位をもつのは誘電率 ε と ε0 の方で、どちらも F/m であり、比透磁率も同じく単位なしです。
真空の透磁率の単位は?
真空の透磁率 μ0 の単位は H/m(ヘンリー毎メートル)で、N/A2(ニュートン毎アンペア2乗)と書いても同じで、値は約1.257×10−6 H/m です。
H/m が N/A2 になるのは、H=Wb/A、Wb=V·s、V·A·s=J=N·m という関係をたどると確かめられます。
「透電率」「誘磁率」とは?
どちらも正式な用語ではなく、誘電率と透磁率の漢字が入れかわった言い間違いです。電気の性質は「誘電率」、磁気の性質は「透磁率」と書きます。
「電気を誘う(誘電)」「磁気を透す(透磁)」と、漢字の組み合わせで覚えると取り違えにくくなります。
permittivity と dielectric constant の違いは?
permittivity は誘電率 ε(単位 F/m)のことです。dielectric constant は、ふつう比誘電率 εr(単位なし)の意味で使われ、relative permittivity とも呼びます。
英語の資料で「dielectric constant 4.5」とあれば比誘電率が4.5という意味で、透磁率は permeability、比透磁率は relative permeability です。
まとめ
- 誘電率は、電界の中で分極して電荷をためられる度合いを表す(ε、F/m)
- 透磁率は、磁束の通しやすさ(磁化されやすさ)を表す(μ、H/m)
- 真空の値は ε0≒8.854×10−12 F/m、μ0≒1.257×10−6 H/m。比誘電率・比透磁率は単位なし
- 2つは ε0μ0=1/c2 でつながり、c は光の速さと一致する
- 導電率 σ(S/m)は電流の流れやすさで、誘電率とは別の性質
こうしてまとめてみると、漢字が近いだけで、まったく異なるものを表していることが分かります。英語でも誘電率は permittivity、透磁率は permeability と似ているので、英語圏の方も同じ悩みを持っているかもしれません。
コンデンサや絶縁材料を選ぶなら比誘電率、鉄心やコイルなら比透磁率、電線や接地なら導電率を見ます。試験勉強でも、どの量が「何をかけて何が決まるか」を押さえると式を取り違えにくくなります。
コンデンサとコイルで電流の位相がずれる理由は遅れ電流と進み電流の違いで解説しています。誘電体として使われるセラミックス材料は、ファインセラミックスの用途と種類もあわせてご覧ください。
出典
出典・参考資料(9件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 真空の誘電率:NIST「CODATA Value: vacuum electric permittivity」(CODATA 2022)
- 真空の透磁率:NIST「CODATA Value: vacuum magnetic permeability」(CODATA 2022)
- 真空中の光速:NIST「CODATA Value: speed of light in vacuum」
- SI 単位(F/m・H/m・S・H・F):NIST SP 811「Chapter 4: The Two Classes of SI Units and the SI Prefixes」
- 比誘電率の値:HyperPhysics(Georgia State University)「Dielectric Constants」
- 平行平板コンデンサの式:HyperPhysics「Parallel Plate Capacitor」
- チタン酸バリウムの比誘電率:JST 研究成果最適展開支援プログラム 事後評価報告書「酸化物ナノキューブ集積体セラミックスによる新規高性能誘電材料の開発」
- 比透磁率の値:HyperPhysics「Magnetic Properties of Solids」
- 抵抗率・導電率の値:HyperPhysics「Resistivity and Temperature Coefficient at 20 C」
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