極数とは、モーターの中にできるN極とS極の磁極の数で、2極を「2P」、4極を「4P」と呼び、交流モーターは極数が多いほど回転が遅くなります。
たとえば50Hzの電源なら、4Pの同期速度は1,500min−1で、実際の回転速度は、すべりの分だけこれより少し遅くなります。
この記事では、極数の意味、交流モーターの回転数の計算式と2P・4P・6Pの違い、直流モーターの場合を順に整理します。後半では、ポンプのモーターの極数を銘板で見分ける方法と、極対数などのよくある質問に答えます。
この記事の内容は動画でも解説しています。
極数とは
ポンプにつながっているモーターの断面図をイメージしてください。内部には回転子と呼ばれる、軸とつながった部品があり、その外側には固定子があって、そこに磁極ができます。磁極はS極とN極が隣り合わせになるように並んでいます。
この磁極の数のことを極数と呼び、下図のように極数は2ずつ増えていき、2極や2Pなどと呼びます。Pはpole(極)という意味で、「ポール数」も極数と同じものを指します。

N極とS極は必ず1組で現れるので、極数は2、4、6、8…と偶数になります。N極とS極の組の数を「極対数」と呼び、極数の半分です。
磁極のまわりの磁界は、N極から出てS極に入る磁力線で表せます。
呼び方は3つあっても、数えているのは同じ磁極です。極対数だけは「組」で数えるので半分になります。
※同期速度の式は、極数で書くと Ns=120f/P、極対数で書くと Ns=60f/p です。どちらも同じ値になります。
この構造は直流モーターでも交流モーターでも同じですが、モーターによって、回転子と固定子が電磁石だったり永久磁石だったりと異なります。ただし、極数にはどちらも関係ありません。
ポンプやファンに多い三相誘導電動機では、固定子に巻いたコイルに交流を流して磁極を作ります。コイルの巻き方(配置)で、何極のモーターになるかが決まります。
極数を変えるとどうなる?(交流)
交流モーターの同期速度(回転磁界の速さ)は、次の式で表され、周波数に比例し、極数に反比例することがわかります。
たとえば50Hzの4Pなら、次のように1,500min−1です。
Ns=120f/P で求めた「回転磁界の速さ」です。実際の回転速度は、すべりの分だけこの値より数%低くなります。
※同じモーターでも、東日本(50Hz)と西日本(60Hz)では同期速度が2割違います(3,600÷3,000=1.2)。
誘導電動機は「すべり」があるため、実際の回転数は同期速度より数%低くなります。すべりは、同期速度に対して回転子がどれだけ遅れているかの割合です。
回転子が回転磁界と同じ速さで回ると、回転子の導体は磁界を横切らなくなります。すると誘導電流が流れず、トルクが生まれないので、少し遅れて回ることで回り続けます。
電源の周波数と極数で回転磁界の速さ(同期速度)が決まり、回転子はそれより少し遅く回ってポンプを動かします。
※ポンプとモーターを直結している場合、ポンプの回転数はモーターの回転数と同じです。差 Ns−N の割合がすべり s です。
定格で回しているときのすべりは数%です。日立産機システムのプレミアム効率モータ(3.7kW、200V)では、4Pの定格回転速度が50Hzで1,460min−1、60Hzで1,750min−1です。
2P・4P・6Pで同じ出力のモーターを比べると違いがはっきりし、極数が多いほど回転は遅く、その分トルクは大きくなります。
出力Pout[W]、回転速度N[min−1]のときのトルクTは、次の式で求められます。
同じ3.7kWでも、4Pは2Pの約半分の速さで回り、約2倍のトルクを出します。数字は「50Hz/60Hz」の順です。
※定格回転速度は日立産機システム「トップランナーモータ〈プレミアム効率:IE3相当〉」カタログ(SM-484Y)の3.7kW・200V級の値。すべりとトルクはその値から計算。定格回転速度はメーカー・出力・効率クラスで変わります。
このような原理のため、モーターの回転速度を下げるために、固定子巻線を切り替えることで極数を変化させる方法があり、極数変換モーター(極数切替モーター)と呼ばれます。
1つの巻線の結線を切り替える代表的な方式(ダーランダ結線)では、速度比が1:2になります。50Hzなら4Pと8Pを切り替えて、1,500と750min−1(同期速度)の2段にします。
巻線を2組以上持たせれば、ほかの速度比や3段・4段にもできますが、どれも段階的な切り替えで、途中の速さには調整できません。
そのため実際にはあまり多くないようで、インバータ制御と呼ばれる周波数を変化させる方法がよく採用されています。インバータなら、式の f を変えて回転数を連続的に変えられます。
使い分けとしては、速い回転が求められるファンやコンプレッサーなどには2Pや4Pが用いられ、大きなトルクが求められる装置には6P以上が採用されることが多いです。
極数を変えるとどうなる?(直流)
直流モーターの回転数は、電源の周波数ではなく、電機子に加える電圧と界磁の強さで決まります。極数と周波数で回転数が決まる交流モーターとは、考え方が違う点に注意しましょう。
回転速度を変えるときは、電機子電圧を変えるか、界磁(電磁石)に流す電流を増減させて磁界の強さを変えます。
式のとおり、電機子電圧を上げると速くなり、界磁電流を減らして磁界を弱めても速くなります。モーターごとの方式の違いはモーターの種類と違いで比べています。
ポンプを動かすモーターの極数を銘板で確かめる
「ポンプの極数」と言うときは、ポンプを動かすモーターの極数を指します。銘板に極数がなくても、周波数と回転速度から見分けられます。
定格回転速度は同期速度より数%遅いので、「すぐ上の同期速度」を探せば極数が分かります。
※インバータで運転しているときは、実際の周波数が銘板と違うので、この方法は銘板の定格値で使います。ギヤードモーターは減速後の出力軸ではなく、モーター軸の回転速度で判断します。
同じポンプでも、周波数が変わると回転数が変わって性能も変わるのは、流量は回転数に比例し、揚程は2乗、軸動力は3乗で変わる関係(相似則)があるためです。
4Pを50Hz(1,460min−1)から60Hz(1,750min−1)で回すと、回転数は約1.2倍です。流量は約1.2倍、揚程は約1.44倍、軸動力は約1.72倍になり、モーターが過負荷になるおそれがあります。
回転数を変えたときの運転点の動きはポンプの性能曲線の見方で、軸動力と電流の関係はポンプの電流値は何で決まるかで解説しています。実際の影響は、そのポンプの性能曲線と運転範囲で確かめます。
モーターを高効率品に替えるときも、回転速度に注意し、損失を抑えたモーターはすべりが小さいため、標準品より回転が少し速くなることがあります。
三菱電機のカタログには、5.5kW・4P(200V/50Hz)の置き換え例があり、他社のIE1クラスが1,458min−1、同社のSF-PR形が1,467min−1です。
ポンプや送風機では回転が上がった分だけ出力が増えるため、消費電力が増える場合がある、と日立産機システムのカタログも注意しています。
反対に、インバータで回転を下げて小流量で使うときは、別の確認が要ります。サージングが起こる条件に近づかないか、ミニマムフローを下回らないかを見ておきます。
モーターの極数のよくある質問
極対数とは?
極対数とは、N極とS極の組の数で、極数の半分であり、4極(4P)のモーターなら極対数は2です。
式の「p」は極数?極対数?
資料によって違います。Ns=120f/p なら p は極数、Ns=60f/p なら p は極対数です。係数が120か60かで見分けると、取り違えを防げます。
2Pと4Pのモーターはどちらを選ぶ?
同じ出力なら、2Pは回転が速くトルクが小さく、4Pは回転が約半分でトルクが約2倍です。ポンプの揚程は回転数と羽根車の径の積の2乗にほぼ比例するので、回転の速い2Pなら同じ揚程を小さめの羽根車で出せます。
実際に荏原製作所のFS型渦巻ポンプは2極形と4極形をそろえ、両方で選べる範囲では2極形を優先して選ぶよう案内しています。
一方で、回転が速いほど軸受や振動の面では厳しくなり、三菱電機のカタログも、2Pを60Hz以上で回すと異常振動が出る場合があること、回転が速いと軸受の寿命が短くなることを注意しています。
振動の見方は設備の振動診断の基本で紹介しており、4Pと6Pで迷うときも同じ考え方で、必要な回転数とトルクから選びます。
50Hzのモーターを60Hzで使うとどうなる?
同期速度が1.2倍になってモーターは速く回り、ポンプやファンでは軸動力が大きく増えるので、モーターの出力が足りるかを確かめます。
電源電圧の条件もモーターの仕様で決まっているため、50Hz・60Hzの両方で使える定格かどうかを、銘板とカタログで確認してから使います。
まとめ
- 極数とは、モーターの中にできるN極・S極の磁極の数。2P=2極で、ポール数も同じ意味
- 極対数はN極とS極の組の数で、極数の半分
- 交流モーターの同期速度は Ns=120f/P(50Hzの4Pなら1,500min−1、60Hzなら1,800min−1)
- 誘導電動機は、すべりの分だけ同期速度より数%遅く回る。同じ出力なら、極数を増やすと回転速度が下がりトルクが上がる
- 直流モーターの回転数は、極数ではなく電機子電圧と界磁の強さで決まる
基礎的な内容ですが、銘板の読み方やポンプの選定で何度も出てくる考え方なので、ぜひ復習してみてください。
回転数を下げて電力を減らす考え方は、工場の省エネとエネルギー管理の基本にまとめています。
出典
出典・参考資料(7件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 同期回転速度の式:三菱電機 FA よくある質問「同期回転速度の求め方」
- すべりの定義:ニデック「2-3-3 誘導モータの特性」
- 定格回転速度とプレミアム効率モータの注意:日立産機システム「日立三相モータ トップランナーモータ〈プレミアム効率:IE3相当〉」カタログ(SM-484Y)
- 置き換え例・2極機の注意:三菱電機「三菱電機三相モータ(総合カタログ)」
- 極数変換モーター:ATEK Drive Solutions「Pole-switchable motors」
- 2極形と4極形の選定範囲:荏原製作所「FS型片吸込渦巻ポンプ」ハンドブック(50Hz)
- 直流モーターの回転速度の式:IIT Roorkee Virtual Lab「Speed control of DC motor by field resistance control」
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