窯業・セラミックスの上場企業を売上高で並べると、首位は京セラの2兆702億円(2026年3月期)です。AGCの2兆588億円(2025年12月期)が続き、この2社が頭一つ抜けています。
上位には、電子部品で知られる京セラや、自動車部品を手がける日本特殊陶業、衛生陶器のTOTOなど、セラミックスの技術を土台に多様な事業を展開する企業が並びます。
京セラの売上高の半分以上は複合機や通信機器などの事業で、売上高だけでは各社の姿は見えてきません。
この記事では、窯業・セラミックス業界の主要企業を、売上高ランキング、分野別の主要企業、各社の特徴と強み、海外企業との比較、再編・M&Aの動き、就職・転職で企業を見るときのポイントという順で整理します。
この記事の内容は、動画でも解説しています。
窯業・セラミックス業界の売上高ランキング
窯業・セラミックスを主な事業とする上場企業を、最新の通期決算の連結売上高で並べると次のようになります。2兆円を超える京セラとAGCが頭一つ抜けた規模で、その後を7,000億〜9,000億円規模の企業が追う構図です。
各社の最新通期決算の連結売上高です。
※各社の決算短信・決算資料などをもとに作成。連結売上高(売上収益)で、窯業・セラミックス以外の事業も含みます。NGKは2026年4月に日本ガイシから社名変更。
ただし、このランキングは事業の範囲が異なる企業を同じ物差しで並べたものである点に注意が必要です。たとえば京セラの売上高のうち、複合機や通信機器などを含むソリューション事業が1兆709億円と半分以上を占めます。
AGCも、ガラスのほか化学品や電子材料、ライフサイエンスなどの事業を持ち、2025年12月期の建築ガラス事業の売上高は4,411億円です。窯業・セラミックスの事業だけを比べたい場合は、各社のセグメント別の売上高を確認する必要があります。
また、決算期がそろっていない点にも注意が必要です。3月期決算の会社が多い一方、AGCと日本電気硝子は12月期決算のため、比べている期間が3か月ずれています。UBE三菱セメントのような非上場の大手は、このランキングに含めていません。
分野別の主要企業
「業界とは」の記事で紹介した分類ごとに、代表的な企業を整理すると次のようになります。同じ業界でも、分野ごとに顔ぶれはほとんど重なりません。
分野によって、競争相手も取引先も異なります。
※企業によっては複数の分野にまたがって事業を展開しています。
ガラスとセメントは、大型設備を持つ少数の大手が中心の分野です。一方、ファインセラミックスは大手に加えて特定の部材に強みを持つ中堅企業も多く、分野によって勢力図の形そのものが違うと言えます。
耐火物では、黒崎播磨や品川リフラクトリーズが主要な企業として知られます。品川リフラクトリーズは2009年にJFE炉材を吸収合併して現在の社名となっており、鉄鋼業との関係の深さがうかがえます。
衛生陶器・タイルでは、TOTOとLIXILが住宅設備メーカーとして事業を展開しています。いずれも陶器そのものだけでなく、水まわりの設備全体を提案する形で市場を競っています。
主要企業の特徴と強み
ここでは、売上高の上位を中心に、主要企業の事業の中身と強みを見ていきます。数値は各社の最新の通期決算によるものです。同じ窯業・セラミックスの企業でも、稼ぎ方や海外との関わり方は大きく異なります。
京セラ
京セラは、ファインセラミックスの部品から始まり、電子部品、複合機、通信機器まで事業を広げてきた企業です。2026年3月期の売上高は2兆702億円、営業利益は1,181億円で前期の約4.3倍に増えました。
半導体パッケージなどを含むコアコンポーネント事業の売上高は6,534億円で、前期比10.4%増と伸びています。海外売上高の比率は約71%で、世界の電子・半導体産業を顧客に持つ企業です。
AGC
AGCは、2018年に旭硝子から社名を変えた国内最大手のガラスメーカーです。建築用・自動車用のガラスに加え、ディスプレイ用ガラス、電子材料、化学品、ライフサイエンスと事業の幅が広いのが特徴です。
2025年12月期の売上高は2兆588億円、営業利益は1,275億円でした。建築ガラスは欧米での価格政策の効果などで増収増益となっており、世界各地に生産拠点を持つグローバル企業と言えます。
日本特殊陶業
日本特殊陶業は、自動車のスパークプラグや排ガス用の酸素センサーで知られる企業です。英文社名をNiterraとし、世界各地で事業を展開しています。
2026年3月期の売上収益は7,312億円、営業利益は1,382億円でした。新車向けだけでなく、交換用として繰り返し売れる補修用製品を持つ点が強みで、営業利益率は約19%と、業界の中でも高い水準です(同社の売上収益と営業利益から算出)。
NGK(旧:日本ガイシ)
NGKは、送電用のがいしを祖業とし、自動車の排ガス浄化用ハニカム構造体や、半導体製造装置用のセラミックス部品などを手がける企業です。2026年4月1日に、日本ガイシから社名を変更しました。
2026年3月期の売上高は6,701億円、営業利益は950億円で、ともに前期から増えました。社名変更には、祖業から成長分野への事業転換を加速するという狙いが込められています。
TOTO
TOTOは、衛生陶器や温水洗浄便座などの住宅設備で国内トップクラスの企業です。2026年3月期の売上高は7,374億円、営業利益は538億円でした。
注目されるのが、半導体製造装置向けの静電チャックなどを手がけるセラミック事業です。売上高は674億円(前期比34%増)、営業利益は289億円に伸び、衛生陶器で培った技術が成長分野の稼ぎ頭になっています。
太平洋セメント
太平洋セメントは、1998年に秩父小野田と日本セメントが合併して誕生した、国内最大のセメント会社です。2025年度(2026年3月期)の売上高は8,984億円、営業利益は746億円でした。
米国でのセメント販売量は728.9万tにのぼり、海外子会社の売上高は3,312億円と国内セメント事業に並ぶ規模です。資源や環境事業も持ち、国内外でセメントの周辺まで手がける総合力が強みです。
日本電気硝子
日本電気硝子は、液晶ディスプレイ用の基板ガラスや、ガラス繊維などの特殊ガラスを手がける企業です。建築や自動車向けの板ガラスが中心の会社とは異なり、電子分野の比重が高いのが特徴です。
2025年12月期の売上高は3,114億円、営業利益は341億円で、前期から大きく回復しました。日本以外の地域の売上高が約7割を占め(地域別売上高から算出)、海外のディスプレイ・電子産業と結びつきの強い企業です。
海外の主要企業との比較
世界に目を向けると、分野ごとに欧米の大手企業が存在感を持っています。日本企業は、分野によって世界の大手と並ぶ立ち位置にあるものと、国内中心のものに分かれます。
分野によって、日本企業の立ち位置は異なります。
※ファインセラミックスの世界シェアは日本ファインセラミックス協会(2024年度)による。
ガラスでは、日本板硝子が2006年に英国のピルキントンを買収し、世界の大手の一角に加わりました。同社の売上高のうち日本の比率は約17%にとどまり、売上の8割以上を海外で稼ぐ企業になっています(2026年3月期、地域別売上高から算出)。
ファインセラミックスでは、日本企業が世界市場で約40%のシェアを持つとされ、国際的にも競争力の高い分野です。
京セラのように、海外売上の比率が約7割に達する企業もあり、世界の電子・半導体産業と直接取引しています。
一方、セメントは重く輸送に向かないため、各国の市場で現地の大手と競う形になり、世界規模の企業と比べると日本勢の規模はまだ小さいと言えます。
海外の大手と比べる際は、売上高の規模だけでなく、どの地域や用途に強いかを見ることが大切です。日本企業は、高い品質が求められる用途に強みを持つことが多く、規模で劣る分野でも特定の製品で存在感を示しています。
再編・M&Aの動き
窯業・セラミックス業界では、国内需要の変化に合わせて、合併や事業統合、海外企業の買収が繰り返されてきました。主な動きを年代順に整理します。
統合と海外進出、再編と社名変更、事業転換の3つの段階に分けて見ます。
※各社の公表資料などで確認できた主な動きのみを掲載しています。
セメントでは、1990年代の大型合併と2022年のUBE三菱セメントの発足によって、国内の生産は少数の大手に集約されてきました。国内需要の減少が続くなか、設備の効率化を目的とした再編は今後も続く可能性があります。
一方、近年の社名変更には、祖業のイメージから離れ、成長分野の企業として認知を広げたいという狙いが見られます。AGCやNGKの社名変更は、事業の中身が変わってきたことの表れとも言えます。
再編の動きは、働く人にとっても無関係ではありません。統合によって工場や部署の役割が見直されたり、海外企業の買収によって海外拠点と一緒に働く機会が増えたりします。
企業研究の際は、過去の再編の経緯と現在の事業の柱をあわせて確認しておくと、会社の方向性が見えやすくなります。
就職・転職で企業を見るときのポイント
窯業・セラミックス業界の企業を比べるときは、売上高の大きさだけでなく、次の3つの視点をあわせて見ると、各社の姿がより立体的に見えてきます。
売上高の順位と、利益率の順位は一致しません。
※図1と同じ決算期の連結売上高と営業利益から算出。
利益率を見る
売上高が大きくても、利益率が高いとは限りません。最新の決算では、日本特殊陶業やNGKの営業利益率が10%を超える一方、売上高が上位の京セラやAGCは5〜6%台でした。
幅広い事業を持つ企業ほど、利益率の低い事業も含むため、全社の数字だけで判断しないことが大切です。
利益率は、製品の付加価値や価格交渉力を映す指標です。利益を生む事業に投資できる余力があるかどうかは、将来の働く環境にも関わります。
海外比率を見る
海外売上高の比率は、会社によって大きく異なります(2026年3月期)。
- 日本板硝子:8割以上を海外で売り上げる
- 京セラ:約7割を海外で売り上げる
- TOTO:日本の比率が65.1%と国内が中心
海外比率が高い企業では、語学力や海外拠点での勤務経験が評価されやすくなります。国内中心の企業では、地域に根ざした長いキャリアを描きやすいと言えます。
事業の集中度を見る
特定の分野に集中する企業は、その分野の景気に業績が左右されやすい反面、専門性を深く磨けます。複数の事業を持つ企業は、事業ごとの浮き沈みを互いに補い合える点が強みです。
志望する企業がどの事業で稼いでいるかは、決算資料のセグメント情報で確認できます。自分が関わりたい事業が会社の中でどんな位置づけかを知っておくと、入社後のギャップを減らせます。
まとめ
- 売上高では京セラとAGCが2兆円を超え、7,000億〜9,000億円規模の企業が続く
- ランキングは事業範囲の違いを含むため、セグメント別の売上高もあわせて確認したい
- ガラス・セメントは少数の大手、ファインセラミックスは大手と中堅が競う構図
- 合併や海外買収、社名変更を通じて、各社は事業の中身を変えてきた
- 企業選びでは売上高に加え、利益率・海外比率・事業の集中度を見ることが大切
業界の基本は窯業・セラミックス業界とは、市場の動きは窯業・セラミックス業界の市場規模と動向、企業どうしの関係は窯業・セラミックス業界の構造で解説しています。職種では研究開発や技術営業・FAEもあわせてご覧ください。
窯業・セラミックス業界の関連記事は、窯業・セラミックスの業種ページからまとめてご覧いただけます。
出典
出典・参考資料(6件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 京セラの売上高・セグメント・海外比率:京セラ「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」
- AGC・日本板硝子・日本特殊陶業・NGK・日本電気硝子・住友大阪セメントの売上高・営業利益:The社史「AGC(5201)業績ハイライト」(各社の同サイト企業ページを参照)
- TOTOの業績・セラミック事業:NetIB-News「TOTO、26年3月期決算 増収増益、半導体向けセラミック好調」
- 太平洋セメントの業績・米国事業:太平洋セメント「2025年度決算説明資料」(2026年5月12日)
- NGKの社名変更:NGK「第159期定時株主総会で商号変更が承認 2026年4月1日から『NGK株式会社』へ」
- UBE三菱セメントの発足:Wikipedia「UBE三菱セメント」
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