製造現場のOJTの教え方|新人が一人立ちできる4段階の指導手順

卓上ボール盤の前で新人に手元を示して作業を教える先輩

厚生労働省の調査では、正社員に計画的なOJT(仕事をしながら行う教育)を実施している製造業の事業所は64.8%でした。裏を返すと、3割強の事業所は、計画を立てたOJTを正社員に行っていません。

教える側が手順を踏まないと、教えたつもりでも、作業のやり方は相手に身につきません。教え方には戦後の日本の工場で広く使われてきた型があり、準備と4つの段階に分けて進めると、教える人による差が小さくなります。

この記事では、製造現場のOJTの現状を統計で確認したうえで、教える前の準備、教え方の4段階、一人立ちの判断、法令で決まっている教育との関係、よくある失敗の順に整理します。

目次

製造現場のOJTで起きていること

OJT(On-the-Job Training)は、日常の業務に就きながら行う教育訓練です。これに対して、通常の仕事を一時的に離れて行う研修をOff-JTと呼びます。

厚生労働省の「能力開発基本調査」は、OJTのうち教育担当者、対象者、期間、内容を具体的に定めて段階的・継続的に行うものを「計画的なOJT」と定義しています。

ライン長が教育訓練計画に基づいて部下に作業方法を指導する、といった形が例に挙げられています。

令和7年度の同調査の事業所調査(常用労働者30人以上の事業所が対象、令和6年度の実績)では、正社員に計画的なOJTを実施した事業所は全産業で60.6%でした。製造業は64.8%(報告書の産業別グラフの値)で、全産業をやや上回ります。

裏を返すと、製造業でも3割強の事業所は、計画を立てたOJTを正社員に行っていないことになります。企業規模別では30~49人の事業所が44.4%、1,000人以上が78.4%で、規模が小さいほど計画的なOJTの実施率が低い傾向があります。

図1:数字で見るOJTの現状

計画を立てて教えている事業所は6割台で、多くの事業所が教える人の不足を挙げています。

製造業・正社員64.8%が計画的なOJTを実施全産業は60.6%。新入社員に実施した事業所は全産業で52.3%
全産業80.1%が人材育成に問題あり能力開発や人材育成に何らかの問題があるとした事業所の割合
全産業・問題の内訳59.5%が指導する人材の不足次いで「育成しても辞めてしまう」51.6%、「時間がない」45.5%(複数回答)

※厚生労働省「令和7年度能力開発基本調査」事業所調査(常用労働者30人以上、有効回答率54.2%)。計画的なOJTは令和6年度の実績。

同じ令和7年度調査(事業所調査)で、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとした事業所は80.1%にのぼります。

内訳は「指導する人材が不足している」が59.5%で最も多く、「人材を育成しても辞めてしまう」51.6%、「人材育成を行う時間がない」45.5%が続きます。

製造業に絞った数字は、2026年版ものづくり白書が1年前の調査(令和6年度調査、2025年6月公表)をもとに示しています。

問題があるとした製造業の事業所のうち、62.8%が「指導する人材が不足している」と答えており、全産業と同じ順で課題が並びます。

調査年度が異なるため、上の令和7年度の数字とは並べて比べないよう注意してください。

教える人も時間も足りないのであれば、必要なのは長い時間をかけることではありません。短い時間で確実に伝わる教え方を、教える側がそろえておくことです。

なお、ベテランの技能をどう引き継ぐか、OJTとOff-JTをどう組み合わせるかといった全体像は、次の記事で扱っています。本記事は、その中の「現場で作業を教える場面」に絞って掘り下げます。

教え方の型「TWI-JI(仕事の教え方)」とは

現場での教え方の型として、日本の製造業で長く使われてきたのがTWI(Training Within Industry)です。職場で人を預かる監督者を対象にした企業内訓練で、第二次世界大戦期の米国で開発されました。

熟練工が不足する中で、経験の浅い人を短期間で戦力にする必要があったことが背景にあります。

日本には戦後の1950年(昭和25年)に米国から当時の労働省へ紹介され、以降、労働省が全国への普及を支援しました。現在は1955年設立の日本産業訓練協会などが講座を開いています。

TWIは、監督者に必要な条件として、仕事の知識、職責の知識、改善する技能、人を扱う技能、教える技能の5つを挙げます。

このうち「教える技能」を訓練するのがJI(Job Instruction:仕事の教え方)です。改善の仕方(JM)、人の扱い方(JR)と並ぶ柱の一つです。

JIの考え方は、厚生労働省の手引を引用した資料で紹介されている次の一文に集約されます。「相手が覚えていないのは、自分が教えなかったのだ」。覚えられないことを相手の能力や意欲のせいにせず、教え方の側を見直すという立場です。

中身は、教える前の4つの用意と、教えるときの4段階でできています。4段階のほうが有名ですが、JIは教える前の準備を同じくらい重く見ている点が実務では効いてきます。

図2:TWI-JIの全体像

教える前の用意と、教え方の4段階を続けて行います。

教える前:用意の仕方訓練予定表を作る/作業を分解する/すべてのものを用意する/作業場を整備する
準備ができたら教える
教え方の4段階第1段階 習う準備をさせる → 第2段階 作業を説明する → 第3段階 やらせてみる → 第4段階 教えたあとをみる
仕事につかせたあとも続く
一人立ちの確認と予定表の更新たびたび調べ、だんだん指導を減らす。できる作業が増えたら訓練予定表に反映する

※項目と段階の名称は、厚生労働省職業能力開発局『TWI活用の手引(改訂増補版)仕事の教え方』の表現を、同書を引用した稲田・山口(中上)論文(病院安全教育 Vol.9 No.5)から孫引きしたものです。最下段は本記事での整理です。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば人は動かじ」という言葉を思い出す方もいるでしょう。山本五十六の言葉として広く知られており、やって見せる、説明する、やらせるという順序はJIと重なります。

JIはそこに、教える前の作業分解と、教えたあとの確認を加え、誰が教えても同じ手順になるよう細目まで決めています。個人の心がけではなく、現場の共通ルールとして使えるところが違いです。

教える前の準備

作業台に置いた作業分解シートとセンターポンチなどの工具

忙しい現場ほど、準備を飛ばしてその場で教え始めてしまいがちです。JIは、教える前に行うことを4つ挙げています。訓練予定表を作る、作業を分解する、すべてのものを用意する、作業場を整備する、の順です。

訓練予定表を作る

訓練予定表は、「誰を」「どの作業に」「いつまでに」訓練するかを決めて書き出したものです。能力開発基本調査がいう「計画的なOJT」の、計画にあたる部分といえます。

作業者と作業名を縦横に並べた一覧にしておくと、その作業をできる人が1人しかいない箇所や、退職・異動で穴があく箇所が見えてきます。新人をどの作業から教えるかも、生産計画と照らして決めやすくなります。

図3:訓練予定表の想定例

作業ごとに、いまできる人と、誰をいつまでに訓練するかを書き出します。

作業
いまできる人
誰を・いつまでに
ボール盤での穴あけ
Aさん、Bさん
Cさん(新人)を10月第2週までに
タップ立て
Aさん、Bさん
Cさんを10月第4週までに
外観検査
Aさん
Bさんを10月末、Cさんを11月第2週までに
段取り替え
Aさんのみ
Bさんを12月末までに(Aさんの異動に備える)

※架空の職場を想定した例です。期限は生産計画や本人の習熟に合わせて決め、見直します。

職場全体の力量を一覧にして育成計画につなげる方法は、スキルマップ(力量表)の作り方で詳しく扱っています。訓練予定表は、その中で「次に誰へ何を教えるか」を期限つきで切り出したものと考えると使い分けやすくなります。

作業を分解する

作業分解は、教える作業を「主なステップ」に区切り、それぞれの「急所」を取り出す準備です。主なステップは作業を前に進める手順の区切りで、急所はそのステップを正しく行うために特に心得ておくべき点を指します。

急所にあたるのは、仕事の成否を左右すること、安全にかかわること、仕事をやりやすくすることの3つです。手引は「安全は常に急所」としており、けがにつながる点は必ず急所として書き出します。

ベテランは手順を体で覚えているため、急所を言葉にせずにやって見せてしまうことが多くあります。教える前に紙に書き出すことで、説明の抜けと、人による言い方の違いを減らせます。

図4:作業分解シートの想定例(卓上ボール盤での穴あけ)

主なステップごとに、急所とその理由を書き出します。

主なステップ
急所
急所の理由
1 保護具と服装を整える
保護めがねをかける。手袋は外す。袖口のボタンを留め、髪は作業帽に収める
切りくずが目に入るのを防ぐ。手袋や袖、髪は回転するドリルに巻き込まれる
2 材料を固定する
手で押さえず、バイスやクランプで固定する
ドリルが抜ける瞬間に材料が振り回されるのを防ぐ
3 ドリルを取り付ける
奥まで差し込んで締める。チャックハンドルは必ず抜く
ドリルの振れを防ぐ。ハンドルを付けたまま回すと飛ぶ
4 穴をあける
ポンチの位置に刃先を合わせる。抜け際は送りを弱める
穴位置のずれを防ぐ。食い込みによるドリルの折損を防ぐ
5 止めて切りくずを除く
回転が完全に止まってから、手ではなくブラシで払う
回転部に触れない。切りくずで手を切らない

※説明のための想定例です。実際の急所は設備、材料、自社の作業標準によって変わります。ボール盤など回転する刃物に手が巻き込まれるおそれがある作業での手袋の使用は、労働安全衛生規則第111条で禁止されています。頭髪や被服が巻き込まれるおそれのある機械では、作業帽・作業服の着用が同規則第110条で求められています。

区切りの大きさは、習う人に合わせて調節します。一度に覚えられる分量には限りがあるため、主なステップが多くなりすぎる作業は、2回に分けて教えるほうが確実です。

急所を「注意する」「しっかり締める」のようなあいまいな言葉で終わらせないこともポイントです。どこを見て、どの状態になればよいかまで書くと、教わる側が自分で確かめられます。

道具・材料をそろえ、作業場を整える

3つ目と4つ目の用意は、正しい設備・道具・材料をそろえることと、作業場を整備することです。間に合わせの工具で教えたり、教えている途中で材料を取りに行ったりすると、相手はそれを普段のやり方として覚えてしまいます。

作業場も同じで、作業者が常に守ることになっている状態に整えてから教えるのが原則です。教える人自身が手本を見せる場だからです。

作業分解の内容が自社の作業標準書と食い違っていないかも、この時点で確かめておきます。標準書のほうが現場の実態に合っていない場合の直し方は、作業標準書が守られない原因と対策で整理しています。

教え方の4段階

ボール盤のバイスに材料を固定する新人の手元と指導者の手

準備ができたら、4つの段階を順に踏んで教えます。各段階には細目が決まっており、ここでは手引の表現に沿って紹介します(手引の原本ではなく、手引を引用した論文の表によります)。

図5:教え方の4段階

説明して終わりにせず、やらせて確かめ、仕事につかせたあとも見に行きます。

第1段階 習う準備をさせる気楽にさせ、何の作業をやるかを話す。知っている程度を確かめ、正しい位置につかせる
第2段階 作業を説明する主なステップを1つずつ言って聞かせ、やって見せ、かいて見せる。急所を強調する
第3段階 やらせてみるやらせてみて間違いを直す。やらせながら作業を説明させ、急所を言わせる
第4段階 教えたあとをみる仕事につかせる。聞く人を決めておき、たびたび調べ、だんだん指導を減らしていく

※段階の名称と細目は、厚生労働省職業能力開発局『TWI活用の手引(改訂増補版)仕事の教え方』(雇用問題研究会)の表現を、同書を引用した稲田・山口(中上)論文(病院安全教育 Vol.9 No.5)から孫引きしたものです。4段階の名称は日本産業訓練協会の講座案内の表記とも一致します。

第1段階:習う準備をさせる

  • 気楽にさせる
  • 何の作業をやるかを話す
  • その作業について知っている程度を確かめる
  • 作業を覚えたい気持ちにさせる
  • 正しい位置につかせる

最初の段階は、作業そのものではなく、習う側の状態を整えることに使います。緊張したままでは説明が頭に入らないため、まず気楽にさせ、これから何の作業を教えるのかを伝えます。

次に、その作業をどの程度知っているかを聞きます。前の職場で似た機械を扱っていた人と、工具に触るのが初めての人とでは、説明の細かさを変える必要があるからです。

覚えたい気持ちにさせるには、その作業が製品のどこに効いているか、後工程で何に使われるかを一言添えるのが有効です。最後に、手元がよく見える位置に立ってもらいます。向かい合わせでは左右が逆に見えるため、横に並ぶのが基本です。

第2段階:作業を説明する

  • 主なステップを1つずつ言って聞かせ、やって見せ、かいて見せる
  • 急所を強調する
  • はっきりと、ぬかりなく、根気よく
  • 理解する能力以上に強いない

第2段階では、作業分解で書き出した主なステップと急所を使います。一度に全部を話すのではなく、繰り返しながら少しずつ深めていくのが進め方です。

まず「この作業には主なステップが5つあります」と全体を示し、1回目は主なステップだけを言いながらやって見せます。2回目は同じ作業をやりながら急所を加え、3回目に急所の理由まで説明します。

理由を伝えるのは、手順を丸暗記にしないためです。なぜ手袋を外すのか、なぜ抜け際に送りを弱めるのかが分かっていれば、材料や機械が変わったときにも同じ判断ができます。

「理解する能力以上に強いない」は、教える側の都合で詰め込まないという意味です。相手の様子を見て、区切りを小さくする、日を分けるといった調整をします。

第3段階:やらせてみる

  • やらせてみて、間違いを直す
  • やらせながら、作業を説明させる
  • もう一度やらせながら、急所を言わせる
  • わかったとわかるまで確かめる

第3段階も、全体から細部へ進みます。最初は黙って一通りやってもらい、間違えそうになったらその場で止めて直します。誤った動きを繰り返すと、そのまま癖になるためです。

次に、作業をしながら主なステップを本人の口から言ってもらいます。さらにもう一度、今度は急所を言いながらやってもらいます。手が動くことと、急所を言葉で言えることの両方を確かめるのが、この段階の要点です。

「わかりましたか」と聞いて「はい」と返ってきただけでは、確かめたことになりません。本人にやらせ、言わせて、教える側が「わかった」と確信できるまで続けます。

間違いを直すときは、作業のどこがどう違ったかを具体的に伝えます。人柄や能力を責める言い方は、質問しにくい空気をつくり、次の段階での確認を難しくします。

第4段階:教えたあとをみる

  • 仕事につかせる
  • わからぬときに聞く人を決めておく
  • たびたび調べる
  • 質問するように仕向ける
  • だんだん指導を減らしていく

教えた直後にできていても、一人で続けるうちに手順が抜けたり、自己流に変わったりします。第4段階は、実際の仕事につかせたあとの確認です。

まず、分からないときに誰に聞けばよいかを決めて本人に伝えます。教えた人が別の工程や別の直にいる場合は、その時間帯の担当を決めておきます。

そのうえで、初めのうちは短い間隔で見に行き、質問が出やすいよう声をかけます。できていることが確認できたら、見に行く回数を少しずつ減らしていきます。

一人立ちの判断と、その後のフォロー

「だんだん指導を減らしていく」を実行するには、どの状態になったら一人で任せるのかを、先に決めておく必要があります。基準がないと、教える人の感覚で早すぎたり遅すぎたりします。

基準は職場によって異なりますが、現場で確かめやすい観点としては次のようなものがあります。

  • 安全:保護具や禁止事項を、声をかけられなくても守れている
  • 品質:作業標準どおりの手順で、決められた検査に合格する品物を続けて作れる
  • 時間:標準の作業時間の範囲で作業できる
  • 異常時:いつもと違うと感じたときに作業を止め、決められた相手に報告できる

このうち見落とされやすいのが異常時の行動です。手順どおりに作れることと、手順から外れた事態に自分で手を出さず、止めて報告できることは別の力であり、後者まで確かめてから任せるほうが安全です。

図6:教えたあとの見に行き方(想定例)

初めは間隔を短く取り、確認できたことに応じて減らしていきます。

教えた当日始めの数個と区切りごとに見る手順と急所が守れているかを横で確認。聞く相手をもう一度伝える
最初の1週間1日に数回見に行く品物と作業時間を確認。困っていることがないかを尋ねる
その後基準を満たしたら任せる一人立ちを記録し、次の作業の訓練に進む。定期の確認は続ける

※期間と頻度は説明のための想定例です。作業の難しさや危険の度合いに応じて決めます。

一人立ちを確認できたら、訓練予定表や力量表に日付を入れて記録します。記録があれば、次に教える作業を決めやすくなり、本人にとっても自分ができるようになったことが目に見えます。

教える人が替わるときの引き継ぎにも、この記録が使えます。どの作業をどこまで教え、何を確認済みなのかが残っていれば、同じ説明の繰り返しや教え漏れを減らせます。

安全に関わる教育はOJT任せにしない

朝の安全ミーティングで班長の話を聞く作業者たちの後ろ姿

OJTは進め方を会社が決められる教育ですが、安全衛生に関する教育の一部は法令で実施が義務づけられています。日々のOJTの中で済ませたことにして省くことはできません。

労働安全衛生法第59条は、労働者を雇い入れたときと作業内容を変更したときに、従事する業務に関する安全または衛生のための教育を行うよう事業者に求めています。

内容は労働安全衛生規則第35条に定められており、機械や原材料の危険性と取扱い方法、安全装置や保護具の取扱い方法、作業手順、作業開始時の点検などが並びます。

省略できるのは、その事項について十分な知識と技能を持っていると認められる労働者に限られます。忙しいから、経験がありそうに見えるから、という理由では省けません。

配置転換などで別の作業に就く場合も、作業内容を変更したときにあたる点に注意が必要です。

図7:OJTと重なる法定の安全衛生教育

現場で教える場面の多くは、法令で決められた教育と重なっています。

教育の種類
いつ・誰に
主な内容
雇入れ時・作業内容変更時の教育
雇い入れたとき、作業内容を変更したとき。対象の労働者全員
機械・原材料の危険性と取扱い、保護具、作業手順、作業開始時の点検、整理整頓、事故時の応急措置と退避など
特別教育
省令で定める危険・有害な業務につかせるとき
研削といしの取替え、動力プレスの金型の取付け、アーク溶接、最大荷重1トン未満のフォークリフトの運転など、業務ごとに定められた内容
職長等の教育
製造業(一部を除く)などで、新たに職長など作業者を直接指導・監督する立場についた人
作業手順の定め方、指導及び教育の方法、危険性又は有害性等の調査、異常時の措置など、合計12時間以上

※労働安全衛生法第59条・第60条、同施行令第19条、労働安全衛生規則第35条・第36条・第40条をもとに作成。特別教育の対象業務はここに挙げた以外にも多数あります。

同じ第59条は、危険または有害な業務に就かせるときの特別教育も定めています。研削といしの取替え、アーク溶接、最大荷重1トン未満のフォークリフトの運転などが対象で、この教育を受けていない人にその作業を教えて任せることはできません。

教える側に対する教育もあります。第60条は、製造業(一部の業種を除く)などで新たに職長など作業者を直接指導・監督する立場についた人に、教育を行うよう求めています。

項目には「指導及び教育の方法」が含まれており、教え方は法定教育でも扱われるテーマです。

JIで作る作業分解は、こうした教育の教材としても使えます。安全にかかわる点を急所として理由とともに書き出してあるからです。労働災害の傾向やリスクアセスメントの進め方は、製造業の職場環境と安全衛生でまとめています。

OJTでよくある失敗と対策

教え方の型を知っていても、現場では同じような失敗が繰り返されます。代表的なものを、起きることと対策に分けて整理します。

図8:OJTでよくある失敗と対策

多くは、準備と第3・第4段階を省いたことから起きています。

失敗
起きること
対策
一度に教えすぎる
後半の手順が抜ける。急所が記憶に残らない
主なステップを区切り、多い作業は回を分ける
やって見せるだけ
見た目の動きはまねできても、急所と理由が伝わらない
ステップ、急所、理由の順に3回説明する
人によって教え方が違う
どれが正しいのか分からず、自己流になる
作業分解を1枚にまとめ、教える人全員で同じものを使う
教えっぱなし
数日後に手順が変わっていても気づかない
聞く相手を決め、見に行く日時を予定に入れる
質問しにくい
分からないまま作業を続け、不良やけがにつながる
間違いは作業について具体的に直す。質問が出たら手を止めて答える

※TWI-JIの4段階と用意の仕方に照らして、本記事で整理したものです。

「教える時間がない」という声は、統計にも表れていました。ここで効くのが訓練予定表です。誰がいつ誰に教えるかを生産計画に組み込み、その時間は教えることを仕事として扱うと決めておかないと、教える時間は日々の生産に押し出されます。

教える人に負担が偏ることも課題です。作業分解を共有しておけば、特定のベテランだけでなく、その作業を一人でできるようになった人が次の人に教えられるようになります。

ベテランが若手に教えることを人事評価に組み込んだ企業の事例も、2026年版ものづくり白書で紹介されています。

もう一つ、教わる側の年代や経歴をひとくくりにして接しないことです。

能力開発基本調査でも、技能継承に問題があるとした事業所のうち25.7%が、教える側と教わる側の年代やレベルの差が開きすぎてコミュニケーションがうまくいかないことを挙げています。

第1段階で「知っている程度を確かめる」のは、相手を一人ひとり見るための手順です。

育成しても辞めてしまう、という悩みには、教え方だけでは応えきれません。配属後の受け入れや面談を含めた定着の打ち手は、製造業の離職率と若手の定着策で統計と事例をもとに扱っています。

なお、教える内容である作業のやり方そのものが決まっていなければ、どれだけ丁寧に教えても結果はそろいません。標準作業の考え方は、トヨタ生産方式とカイゼンの基本の中で説明しています。

教え方を学ぶ場と使える制度

JIは、本来は少人数で実演を繰り返しながら身につける訓練です。社内に経験者がいない場合は、外部の講座を使う方法があります。

  • 日本産業訓練協会:TWI-JI「仕事の教え方」の講座(2日間の一般コースや1日講座など)を各地で開催
  • 雇用問題研究会:TWIの手引や、作業分解シート・訓練予定表の用紙を頒布
  • 高齢・障害・求職者雇用支援機構(ポリテクセンターなど):在職者向けの生産性向上支援訓練に「効果的なOJTを実施するための指導法」などのコースがある

生産性向上支援訓練は、6~30時間の範囲で企業の課題に合わせて内容を組める訓練で、受講料は1人あたり3,300円~6,600円(税込)です。対象者の条件や開催時期は、最寄りのポリテクセンターで確認できます。

費用面では、厚生労働省の人材開発支援助成金があります。

2026年度(令和8年8月3日版の案内時点)の人材育成支援コースには、OJTとOff-JTを組み合わせた訓練を対象とするメニューがあり、新卒者などに行う認定実習併用職業訓練では、OJT実施助成として1人1コースあたり20万円(中小企業以外は11万円)が設定されています。

賃金要件等を満たす場合は25万円(同14万円)です。

ただし、日常のOJTがそのまま助成の対象になるわけではありません。訓練開始前の計画届、厚生労働大臣の認定、Off-JTとの組み合わせといった要件があります。

助成率や手続きは年度ごとに変わるため、申請前に都道府県労働局で最新の内容を確認してください。

まとめ

この記事のまとめ
  • 計画的なOJTを正社員に実施した製造業の事業所は64.8%。人材育成の問題では「指導する人材の不足」が最も多い
  • 教え方の型であるTWI-JIは、教える前の4つの用意と、教え方の4段階でできている
  • 準備では、訓練予定表で「誰を・どの作業に・いつまでに」を決め、作業分解で主なステップと急所を書き出す
  • 4段階は、習う準備をさせる、作業を説明する、やらせてみる、教えたあとをみる。やらせて言わせ、仕事につかせたあとも見に行く
  • 雇入れ時・作業内容変更時の教育、特別教育、職長等の教育は法令上の義務で、OJTの中で省略しない

教え方は、経験を積めば自然に身につくものと思われがちですが、実際には手順として学べる技能です。作業分解を1枚作り、4段階で1人に教えてみるところから始めると、自分の説明のどこが抜けていたかが見えてきます。

現場で教える立場になりやすい職種としては製造・オペレーションや工場長・マネジメントがあります。人材育成に関する記事は技能伝承・人材育成のカテゴリにまとめていますので、あわせてご覧ください。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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