不具合は、見つかるのが後の工程になるほど、対策の手間と費用が大きくなるといわれます。そのため品質保証・品質管理の仕事は、製品を大量につくり始める前から始まり、お客様の手に渡ったあとまで続きます。
設計段階で品質の目標を決め、量産中はデータで製造の状態を見守り、出荷後は不具合への対応と再発防止を担います。量産後に見つかった不具合は、金型(製品をつくる型)や設備の改修、出荷済み製品の回収にまで広がりかねません。
この記事では、品質保証・品質管理の仕事の流れを、量産前・量産中・出荷後の3つの段階に分け、工程ごとに使う道具や書類、関わる人、よくある失敗という順で整理します。
品質保証・品質管理の仕事の全体像

品質保証・品質管理の仕事は、製品のライフサイクルに沿って、次のような流れで進みます。
品質計画 → 設計審査・リスク評価 → 量産移行の判定 → 受入検査 → 工程内の品質管理 → 出荷検査 → 不具合対応・再発防止 → 品質監査・改善
量産前、量産中、出荷後の3つの段階に分かれます。
※会社や製品によって工程の名前や分け方は異なります。量産中と出荷後の仕事は並行して進みます。
量産前は「品質をつくり込む」、量産中は「品質を守る」、出荷後は「品質を立て直し、次に生かす」段階と考えるとわかりやすいでしょう。順に見ていきます。
量産前:品質をつくり込む

量産前の段階では、まだ製品が1つもできていないか、試作品しかない状態です。ここで手を打つほど、後の不良やクレームを少なく抑えられます。
一般に、不具合は発見が後の工程になるほど、対策にかかる手間と費用が大きくなるといわれます。図面の段階なら線を1本直せば済むことが、量産後には金型や設備の改修、出荷済み製品の回収にまで広がりかねません。
品質の仕事は上流ほど効き目が大きいと覚えておくとよいでしょう。
品質計画
新製品の開発が決まると、まずお客様の要求や法規制、過去の不具合を確認し、品質の目標を決めます。どの特性を重要な項目として扱い、いつ、どの方法で確認するかを品質計画書にまとめます。
関わるのは設計、生産技術、営業などです。お客様の要求を社内の言葉に翻訳するのがこの工程の役割といえます。要求の読み違いは後で大きな手戻りになるため、あいまいな点はこの段階で確認しておきます。
品質計画では、試作や評価をいつ行うか、どの段階で誰が承認するかといった日程も決めます。開発の日程表と品質の確認ポイントを重ねておくことで、確認の抜けや後回しを防ぎやすくなります。
設計審査・リスク評価
図面や試作品ができると、設計審査(デザインレビュー)で品質面から意見を出します。FMEA(故障モード影響解析)などの手法で、どこが壊れやすいか、壊れたら何が起きるかを洗い出し、対策の優先順位をつけます。
品質保証の担当者に期待されるのは、過去の不具合やクレームの経験を持ち込むことです。よくある失敗は、FMEAが書類づくりで終わってしまうことで、実際の対策と試験に結びつけて初めて意味があると考えておく必要があります。
設計審査では、設計者が「問題ない」と考えている点にも、あえて質問を投げかけます。耳の痛い指摘をすることもありますが、量産後に不具合が出たときの損失に比べれば、この段階で議論するほうがはるかに負担は小さく済みます。
量産移行の判定
量産の準備が整ったら、試作・初回生産の製品を測定し、工程が安定して規格内の製品をつくれるかを確かめます。あわせて、次のような書類がそろっているかも確認します。
- 工程能力指数(Cpk)などの指標
- 検査基準書
- QC工程表
自動車部品などでは、これらをまとめてお客様の承認を得てから量産に入ります。日程に追われて確認が不十分なまま量産に入ると、立ち上がり直後に不良が集中しやすくなるため、判定の基準をあらかじめ決めておくことが大切です。
量産移行の判定では、設計・生産技術・製造・品質の各部門が集まり、残っている課題とその対応を一つずつ確認します。品質保証はその場の進行役や、最終的な判断を下す立場を担うこともあります。
課題が残ったまま量産に入る場合は、どの項目をいつまでに解決するかを決め、その間は検査を強化するなどの条件をつけます。条件つきで進める判断も、実務ではよく行われます。
量産中:品質を守る

量産が始まると、毎日同じ品質の製品をつくり続けることが目標になります。検査は大きく、受入・工程内・出荷の3つの場面で行われます。
この段階の主役は製造現場ですが、品質保証・品質管理の担当者は、検査の基準を決め、集まったデータを分析し、異常があれば関係部署を動かす役割を担います。
それぞれの場面で、確かめる対象と目的が異なります。
受入検査
仕入先から届いた部品や材料について、仕様書や検査成績書と照らし合わせ、寸法や外観、材質などを確認します。すべてを検査するのではなく、ロットから抜き取って確認する方法が一般的です。
品質の実績が安定している仕入先は検査を簡略化し、問題の多い仕入先は検査を強化するといったように、仕入先ごとに検査の重みを変えるのが実務的なやり方です。調達部門と情報を共有し、必要に応じて仕入先への指導も行います。
受入検査で不良が見つかった場合は、ロットを保留にして仕入先に連絡し、選別や作り直しを依頼します。原因と対策の報告を求め、次回以降の納入品で対策が効いているかを確認するまでが一連の流れです。
工程内の品質管理
製造の途中では、作業者や検査員が決められた項目を測定し、記録します。品質管理の担当者はそのデータを管理図などで見える化し、ばらつきや傾向の変化を監視します。
異常が見つかれば製造や生産技術の担当者と一緒に原因を調べ、設備や作業手順を見直します。よくある失敗は、記録をつけるだけで誰も見ていない状態になることです。データを見て判断するまでが品質管理だと意識しておきましょう。
工程を変えるときの管理も重要です。設備や材料、作業者、作業方法が変わると、品質も変わる可能性があります。こうした変化点を事前に把握し、変更の前後で品質を確かめることで、思わぬ不良を防ぎます。
工程内で気づいた問題は、製造現場の班長やリーダーと相談しながら解決していきます。製造・オペレーションの担当者と日ごろから顔を合わせ、小さな異常でも気軽に相談してもらえる関係をつくっておくと、問題の早期発見につながります。
近年は、カメラとAIを使った外観検査や、設備のセンサーから品質データを自動で集める取り組みも広がっています。関連する技術はAI・画像検査やセンサー・計測のページでも紹介しています。
出荷検査
完成した製品を、お客様と取り決めた基準で最終確認します。寸法や外観、機能試験に加え、ラベルや数量、梱包の状態なども確認の対象です。
抜き取りで確認するか全数を確認するかは、製品の重要度や過去の不良の状況によって決めます。安全に関わる特性や、お客様から指定された項目は全数検査とすることが多く、その判断基準を検査規格として定めておくのも品質管理の仕事です。
出荷検査は品質を確かめる最後の関門ですが、ここに頼りすぎると検査の負担が増えるうえ、見逃しも起こります。不良は本来、工程内で止めるべきものです。出荷検査で見つかった不良は、工程のどこで防げたのかまでさかのぼって考えます。
出荷検査の記録は、あとで不具合が起きたときに、その製品がどんな状態で出荷されたかを示す証拠にもなります。検査成績書をお客様に提出する取引も多く、記録を正確に残すことも出荷検査の大事な役割です。
出荷後:品質を立て直し、次に生かす

製品がお客様の手に渡ったあとも、品質保証の仕事は続きます。むしろ、ここでの対応がお客様からの信頼を大きく左右します。
出荷後の情報は、不具合の連絡だけではありません。お客様からの問い合わせや、市場での使われ方に関する情報も、次の製品の品質を高めるための大切な材料になります。
不具合対応・再発防止
お客様から不具合の連絡が入ると、まず現物と製造記録を確認し、影響の範囲を見極めます。同じ時期につくった製品に問題がないかを調べ、必要であれば出荷を止め、在庫の選別を行います。
次に、特性要因図やなぜなぜ分析で原因を掘り下げ、「なぜ起きたか」と「なぜ流出したか」の両面から対策を立てます。調査の結果と対策は報告書にまとめてお客様に説明し、対策の効果を確認するまでが一連の仕事です。
不具合の連絡を受けてから最初の報告を出すまでの期限を、お客様と取り決めていることも少なくありません。初動で影響の範囲と暫定対策をすばやく示すことが、信頼を失わないための鍵になります。
対策を一時的なものにしないための考え方です。
よくある失敗は、原因を「作業者の不注意」で片づけてしまうことです。人の注意に頼る対策は長続きしないため、治具や設備、手順の仕組みで防ぐ方向を考えるのが基本です。
調査には、製造記録や検査記録、設備の稼働データなど、さまざまな記録が必要になります。日ごろから記録が整理されていれば原因の特定も早まるため、不具合対応の速さは普段の管理の質を映す鏡ともいえます。
品質監査・改善
日常の品質を支える仕組みが機能しているかを、定期的に点検するのが品質監査です。ISO 9001に基づく内部監査で社内の各部門を確認するほか、仕入先の工場を訪問して工程や記録を確認する監査も行います。
監査で見つかった課題や、1年間の不良・クレームのデータは、経営層を交えた会議で共有し、翌年の品質目標や改善テーマに反映させます。出荷後の情報を次の製品の品質計画に戻すことで、仕事の流れが一周します。
仕入先の監査では、工程を実際に歩いて作業や記録を確認し、気になった点を改善の依頼として伝えます。購買・調達の担当者と同行し、取引を続けるかどうかの判断材料を集めることもあります。

業界・会社による違い

ここまでの流れは多くの製造業に共通しますが、つくる製品や会社の規模によって、力点の置き方は大きく変わります。
求人を見るときや転職を考えるときは、その会社が量産品と受注生産品のどちらを主に扱っているか、品質部門が何人くらいでどんな分担をしているかを確かめておくと、入社後の働き方を具体的に想像しやすくなります。
つくる数が違うと、品質の守り方も変わります。
※同じ会社の中でも、製品によって両方の進め方が混在することがあります。
量産品と受注生産品
自動車業界のように同じ製品を大量につくる分野では、工程を安定させることが品質の中心になります。統計的な手法で工程を管理し、わずかな不良率の変化も見逃さないことが求められます。
一方、産業機械業界のような受注生産では、1台ごとに仕様が異なります。完成品の試験や立会検査、検査記録の作成に多くの時間を使い、お客様と個別に品質を確認していくのが特徴です。
業界によって求められる規格も異なります。ISO 9001に業界独自の要求を加えた規格として、次のようなものがあります。
- 自動車向け:IATF 16949
- 航空宇宙向け:JIS Q 9100
- 医療機器向け:ISO 13485
取引先の業界によって仕事の細かさが変わる点は押さえておきたいところです。
大手と中小
大手企業では、品質保証部の中で、顧客品質、工程品質、仕入先品質、品質システムといった担当が分かれていることが多く、特定の領域を深く担当します。
たとえば顧客品質の担当はお客様との窓口と不具合対応を、仕入先品質の担当は仕入先の監査と指導を受け持ちます。担当を順に経験しながら、品質の仕事の全体像を少しずつ広げていく育て方も一般的です。
中小企業では、少人数の品質担当が検査から顧客対応、ISOの事務局までを一通り受け持つのが一般的です。担当範囲が広い分、仕事の流れ全体を早い時期から経験できるのが特徴といえます。
会社の規模によって、担当範囲と身につく力が変わります。
※同じ規模でも、会社の方針や製品によって体制はさまざまです。
どちらが良いというより、身につく力の方向が異なります。専門性を深めたいのか、全体を広く経験したいのかによって、選ぶ会社も変わってくるでしょう。
まとめ
- 品質保証・品質管理の仕事は、量産前・量産中・出荷後の3つの段階で進む
- 量産前は品質計画と設計審査で、不具合の芽を早い段階でつぶす
- 量産中は受入・工程内・出荷の検査とデータ管理で品質を守る
- 出荷後は不具合の原因を突き止め、仕組みで再発を防ぎ、次の製品に生かす
- 量産品か受注生産か、大手か中小かで、力点や担当範囲が変わる
品質保証・品質管理がどんな職種かは品質保証・品質管理とはで、必要なスキルや資格、キャリアは品質保証・品質管理に必要なスキル・資格とキャリアパスで解説しています。
工程づくりを担う生産技術の仕事もあわせて知っておくと、流れがより立体的に見えてきます。
品質保証・品質管理については、品質保証・品質管理の職種ページから関連記事もあわせてご覧ください。
出典
出典・参考資料(2件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 仕事内容(生産・品質管理技術者):厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「生産・品質管理技術者」
- 仕事内容(検査工):厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「検査工(工業製品)」
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