2026年3月27日、積水化学工業は、薄くて曲がるフィルム型ペロブスカイト太陽電池「SOLAFIL」の事業開始を決めたと発表しました。2026年度は今ある設備での限定的な生産で、新しい量産ラインの稼働はこれからです。
ペロブスカイト太陽電池は軽くて曲げられるため、重いシリコン系のパネルを載せられなかった屋根や壁にも付けられると期待されています。同社は2027年度に新しい生産ラインを立ち上げ、2030年にはさらに大きな規模の生産体制をつくる計画です。
この記事では、量産が今どこまで来ているのかを先に示します。そのうえで、注目される背景、製造工程、量産を難しくしている課題、国内メーカーの計画、国の支援策と海外の動き、製造業の仕事との関わりの順に整理します。
ペロブスカイト太陽電池の量産は今どの段階か
先に現在地を示すと、国内では積水化学工業が事業化を始め、ほかの各社は量産技術の開発と実証を進めている段階です。
積水化学工業と子会社の積水ソーラーフィルムは2026年3月27日、フィルム型ペロブスカイト太陽電池「SOLAFIL」の事業開始を決定したと発表しました。同時に、顧客への供給に向けた具体的な協議を始めたとしています。
新しい量産ラインが動き出したという意味ではありません。
同社の発表では、2026年度は現有設備による限定的な生産量にとどまり、100MW規模の生産ラインの立ち上げは2027年度の予定です。
2024年12月の発表では、2030年にGW級の製造ライン構築を目指すとしています。MW(メガワット)とGW(ギガワット)は発電設備の出力を表す単位で、1GWは1,000MWにあたります。
国の計画も同じ時間軸で組まれています。経済産業省の官民協議会が2024年11月にまとめた「次世代型太陽電池戦略」は、生産体制と発電コストの目標を短期・中期・長期の3段階で示しました。
そのうえで、2040年に約20GWの導入を目指すとしています。
生産体制を広げながら、価格(発電コスト)を段階的に下げていく計画です。
※経済産業省「次世代型太陽電池戦略」(2024年11月)の「進め方(イメージ)」をもとに作成。いずれも目標であり、実績ではありません。
つまり「量産はいつか」という問いへの答えは、会社と規模によって変わります。限定的な生産による事業化はすでに始まっており、100MW級は2027年度、GW級は2030年前後というのが、2026年9月時点で公表されている計画の全体像です。
なぜ今ペロブスカイト太陽電池なのか

ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を持つ材料を発電層に使う太陽電池の総称です。
経済産業省の資料では、3種類のイオン(代表的には有機アンモニウム、鉛、ヨウ素)がABX3という形で並ぶ構造と説明されています。日本の研究者が開発した日本発の技術です。
注目される理由の一つは、設置場所の制約です。資源エネルギー庁によると、現在普及している太陽電池の95%はシリコン系で、重さがあるため置ける場所が限られます。
日本は平地面積あたりの太陽光発電の導入量がすでに主要国で最大級であり、新たな適地が少なくなっています。
ペロブスカイト太陽電池は小さな結晶の集まりが膜になっているため、折り曲げやゆがみに強く、軽くできます。
耐荷重の小さい工場や体育館の屋根、ビルの壁面など、これまで太陽電池を載せられなかった場所が候補になります。工場の脱炭素・カーボンニュートラルの手段としても、自家消費型の選択肢が広がる可能性があります。
もう一つの理由は原料です。主原料のヨウ素は、日本の生産量が世界シェアの約3割を占め、チリに次ぐ世界第2位です(資源エネルギー庁、2024年2月時点の記事)。原料を海外に頼らずに確保できる点が、経済安全保障の面からも評価されています。
背景には過去の反省もあります。経済産業省の戦略は、日本の太陽電池が2000年頃に世界シェアの50%を占めながら、直近では1%未満に落ちた経緯を振り返っています。
原因として挙げられたのは、拡大する市場に対して生産体制への投資の規模とスピードが足りなかったことでした。
フィルム型・ガラス型・タンデム型の違い
ペロブスカイト太陽電池は、何の上に発電層を作るかによって3つのタイプに分かれます。用途も開発の進み具合も異なるため、各社の計画を読むときは、どのタイプの話なのかを最初に確認すると混乱しません。
基材と構造の違いで、狙う市場が分かれます。
※「次世代型太陽電池戦略」(2024年11月)の整理をもとに作成。
製造面でシリコン太陽電池と比べると、違いがよりはっきりします。シリコンは1,400℃以上の高温工程が必要ですが、フィルム型のペロブスカイトは150℃程度で作れます。製造日数も、シリコンの3日以上に対して1日程度を目指すとされています。
低温・短時間で作れる一方、製造ノウハウへの依存度が高い技術です。
※経済産業省「次世代型太陽電池戦略」(2024年11月)の比較表と廃棄・リサイクルの資料をもとに作成。
表のなかで実務上の意味が大きいのは「製造工程の性格」の行です。シリコン太陽電池は、最先端の製造装置を買えば誰でも大量生産できる状況になり、日本企業は優位性を失いました。
ペロブスカイトでは、材料の調合や塗り方、温度・湿度の管理といった装置に置き換えにくいノウハウが性能を左右します。そこを競争力の源泉にしようというのが、国の戦略の考え方です。
製造工程は「塗る・刻む・封じる」
ペロブスカイト太陽電池が低コストで作れると期待されるのは、材料を溶かしたインクを基材に塗布・印刷して作れるからです。
まずセルの断面を見ると、透明電極の上に電子輸送層、ペロブスカイト層、正孔輸送層、対向電極(裏面電極)が重なった構造をしています。
光は基材と透明電極の側から入り、発電層で電気に変わります。
※リコーの技術解説にある層構成をもとに作成。電子輸送層と正孔輸送層の順序が逆の構造もあり、材料や厚みは各社で異なります。
製造の流れは、大きく「塗る」「刻む」「封じる」の3つに分けて考えると理解しやすくなります。各層を塗って乾かし、レーザーで溝を刻んでセルを直列につなぎ、最後に水分から守るために封止します。
成膜とレーザー加工を交互に繰り返し、最後に封止します。
※P1〜P3の区分は産業技術総合研究所の解説による。前後の工程は、薄膜太陽電池で一般的な集積化の流れを補って示したものです。工程の順序や方式は各社で異なり、全層をインクジェットで印刷してレーザー加工を不要にする方式もあります。
塗布方式は各社で異なる
「塗る」工程のやり方は、各社が最も力を入れて差別化している部分です。国のグリーンイノベーション基金(GI基金)に採択された企業だけを見ても、方式が分かれています。
同じ「塗る」でも、装置の考え方が異なります。
※資源エネルギー庁の記事(2024年2月)、各社のニュースリリース・技術解説(2025〜2026年)をもとに作成。
ロール・ツー・ロールは、複数のロールでフィルムを送りながら塗布や印刷を行う方法です。新聞の輪転機のように止めずに作れるため、量産時の生産性が高くなります。
資源エネルギー庁の記事(2024年2月)は、積水化学工業の成果を紹介しています。30cm幅のロール・ツー・ロール製造プロセスで、耐久性10年相当・発電効率15%の製造に成功しました。
インクジェットは、プリンターと同じ原理で必要な場所にだけインクを置く方式です。
リコーは全機能層をインクジェットでパターン印刷することで、レーザー加工や真空中での成膜の工程を不要にする技術を公表しています。
パナソニック ホールディングスは、インクジェット塗布製法とレーザー加工技術を組み合わせ、サイズや透過性の自由度が高いガラス型を開発しています。
レーザースクライブとデッドエリア
「刻む」工程は、大きな面積の膜を細長いセルに分け、基板の上で直列につなぐために行います。1枚の大きなセルのままでは電気抵抗による損失が大きくなるためです。
産業技術総合研究所の解説では、透明電極を刻むP1、発電層と輸送層を刻むP2、裏面電極を刻むP3の3回のパターニングで構成されます。
このとき、溝の部分は発電に寄与しません。これをデッドエリアと呼び、溝を細く、正確に入れるほどモジュール全体の効率が上がります。
熱で周囲の膜を傷めないことも求められるため、レーザー加工装置は量産の要になる装置です。国は、レーザー加工装置の生産体制づくりも支援の対象にしています。
封止とバリアフィルム
最後の「封じる」工程は、寿命に直結します。ペロブスカイトの結晶は水分に弱く、わずかな湿気の侵入でも劣化が進むためです。
フィルム型では、ガラスの代わりに水蒸気を通しにくいバリアフィルムで挟み込む必要があり、このフィルム自体が重要な部材になっています。
経済産業省の資料は、ペロブスカイト太陽電池のサプライチェーンを次の区分で整理しています。「部素材・製造装置」「基盤・電極形成」「デバイス形成」「封止・コーティング」「セル・モジュール形成」です。
化学メーカーやフィルムメーカー、装置メーカーが関わる余地が大きい分野といえます。

量産を難しくしている4つの壁
塗って作れるなら簡単に量産できそうに見えますが、実際にはそうなっていません。資源エネルギー庁は課題として、寿命が短く耐久性が低いこと、大面積化が難しいこと、変換効率の向上を挙げています。
コストと鉛の扱いを加えると、量産の壁は次の4つに整理できます。
どれも、研究室では見えにくく、量産で表に出てくる課題です。
※資源エネルギー庁、産業技術総合研究所、経済産業省「次世代型太陽電池戦略」の記述をもとに作成。
耐久性
産業技術総合研究所は、ペロブスカイト結晶がイオン結晶であるため湿度に弱く、湿度・温度・光・酸素による劣化から守る必要があると説明しています。
太陽光発電は、事業用(10kW以上)の固定価格買取制度の買取期間が20年間であるように、長期の使用を前提とした設備です。寿命が短いと、その分だけ発電コストが割高になります。
公表されている数字では、積水化学工業の耐久性10年相当(2024年2月時点)が一つの目安です。国の目標は、タンデム型について2030年度までに耐久性20年が可能となる技術の確立を掲げています。
大面積での均一な成膜
研究室では、基板を回転させながら液を広げるスピンコートと、途中で別の溶媒を滴下して結晶化を促すアンチソルベント処理が主流です。ところが産業技術総合研究所によると、量産では大面積で連続成膜するため、この方法をそのまま使うのが難しくなります。
必要なのは、ピンホール(微小な穴)がなく、緻密で平滑な膜を広い面積で作る技術です。
乾燥のスピードや周囲の湿度がわずかに違うだけで結晶の出来が変わるため、塗工装置だけでなく乾燥炉や雰囲気の管理まで含めた工程設計が求められます。これは生産技術の仕事そのものです。
変換効率の数字の読み方
変換効率の数字は、何を測ったものかで大きく変わります。経済産業省の資料によると、ペロブスカイト太陽電池のセルの最高効率は、2009年の3〜4%から2024年11月時点で26.7%まで向上しました。
これは米国の国立研究所NLR(旧NREL)がまとめている研究用セルの記録チャートにもとづく数字です。
記録はその後も更新されており、同チャートのデータ(2026年8月14日更新)では、2026年2月に測定された28.0%が単接合セルの最高値になっています。
ただし、面積が約0.05cm²の小さな研究用セルでの値です。
一方、実際に製品サイズで作ったものの効率は、積水化学工業の30cm幅で15%(2024年2月時点)です。経済産業省の戦略(2024年11月)が挙げた海外企業のフィルム型も、12〜15%程度でした。
ニュースで高い数字を見たときは、小さな研究用セルなのか、製品サイズのモジュールなのかを確認する必要があります。
鉛の扱い
発電層には鉛が使われています。経済産業省の戦略は、1㎡あたり0.5g程度含まれる鉛について、適切な処理・回収を行う必要があるとしています。
リサイクル技術は開発段階です。鉛の環境影響評価を含む廃棄・リサイクルの仕組みの評価・検証が、2025年度からNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業で始まりました。
国内メーカーの量産計画

ここからは、各社が公式に発表している計画を、発表時点とあわせて整理します。「事業化を開始した会社」「量産ラインを建設している会社」「量産技術を開発・実証している会社」を分けて読むのがポイントです。
2026年9月時点で、各社や国の資料から確認できる内容です。
※各社のニュースリリース、NEDOの発表、経済産業省 官民協議会(2026年5月20日)の資料をもとに作成。エネコートテクノロジーズ、パナソニック ホールディングス、リコーの3社は、2030年度に年間200〜300MW以上の量産構想を持つ企業として採択されています。計画は発表時点のもので、変更される可能性があります。
積水化学工業・積水ソーラーフィルム
最も先行しているのが積水化学工業です。
同社は2024年12月26日の取締役会で量産化を決議しました。大阪府堺市にあるシャープ本社工場の建物や電源設備、冷却設備などを譲り受けて、製造設備を導入すると発表しています。
事業会社として2025年1月に設立された積水ソーラーフィルムの株主は、この発表の時点で積水化学工業が86%、日本政策投資銀行が14%です。
同日の発表によると、建物購入費と100MW製造設備を合わせた投資総額は補助金込みで900億円、設備の稼働開始は2027年4月の予定です。
また、経済産業省のGXサプライチェーン構築支援事業に採択されており、1GW級の生産能力に向けた補助対象経費は総額3,145億円、補助率は2分の1です。
2026年3月27日には、製品名「SOLAFIL」での事業開始の決定を発表しました。現有設備による製造技術が確立し、金属屋根を対象とした製品と設置仕様の準備が整ったためです。
環境省の導入支援事業に採択されたさいたま市、滋賀県、西日本高速道路、福岡県、福岡市が対象です。東京都の都有施設への先行導入事業も含め、供給に向けた協議を始めたとしています。
同年9月14日には、より軽く安価にした「シート仕様」の実証実験を鹿児島県志布志市で始めたことも公表しました。製品を出しながら、施工方法と仕様の改良を並行して進めている段階です。
エネコートテクノロジーズ
京都大学発のスタートアップであるエネコートテクノロジーズは、2025年9月にGI基金の実証事業に採択されました。
経済産業省の資料によると、日揮、KDDI、豊田合成、YKK AP、京都大学、青山学院大学が委託先として関わっています。協力先としては、トヨタ自動車やINPEXなどが加わっています。
2026年9月には新工場の動きも報じられました。日本経済新聞と時事通信の報道によると、同社は9月26日に京都府宇治市で新工場の竣工記念式典を開き、2028年にも量産に向けて本格稼働する予定です。
日本経済新聞は、建物は4階建てで延べ床面積は約5,000㎡、本格稼働すれば年間十数MWを生産できる見通しと伝えています。この工場について、同社の公式発表は本記事の執筆時点で確認できていません。
パナソニック ホールディングス
パナソニック ホールディングスは、建物の窓や壁に使うガラス型に絞っています。
2025年11月14日には、GI基金の実証事業に採択された「ガラス型ペロブスカイト太陽電池の量産技術開発とフィールド実証」に着手すると発表しました。AGC、パナソニック環境エンジニアリングとともに進める事業です。
事業期間は2025年度から2029年度までの最大5年間です。
2026年に入ってからは実証が続いています。
3月2日には、大阪府門真市の自社技術部門の新棟の窓に実装して長期実証を始めると発表しました。9月24日には、神戸市の遊覧船ターミナルに縦900mm・横1,300mmのパネルを8枚設置する実証を発表しています。
いずれも量産技術の確立と、実際の建物での施工・性能の検証という位置づけです。
リコー・アイシン・東芝
リコーは、自社の有機感光体技術とインクジェット技術を応用しています。大和ハウス工業が施工技術、NTTアノードエナジーが電装設計技術を担当するコンソーシアムで、2025年9月にGI基金に採択されました。
アイシンは2026年8月21日、GI基金の「次世代型単接合太陽電池実証事業」に採択されたと発表しました。
独自のスプレー塗布工法を使い、実用サイズのモジュールを300mm角から最大500mm角へ大型化する計画です。中部国際空港とインドネシアの自社拠点で実証を行い、米国での実証も計画しています。
東芝は、GI基金の実用化事業(2025年度で終了)で、メニスカス塗布法によるフィルム型の開発に取り組みました。
カネカ・長州産業(タンデム型)
タンデム型では、NEDOが2026年2月6日にカネカと長州産業の2社を量産技術実証事業に採択しました。経済産業省の資料は、この2社を「2030年度までに500MW以上の規模の量産化構想を有する」企業としています。
カネカの方式は、自社で生産するヘテロ接合型結晶シリコン太陽電池の上にペロブスカイト太陽電池を重ねる構造です。
同社は2028年度に製品販売を開始する計画を示しており、2026年3月18日からは、さいたま市の本庁舎敷地内で屋外実証を実施中です。
国の支援策と海外勢の動き
各社の計画の多くは、国の支援を前提に組まれています。経済産業省の戦略は、量産技術の確立、生産体制の整備、需要の創出の3つを同時に進める方針を掲げました。支援の柱は次のとおりです。
- 量産技術の確立:GI基金「次世代型太陽電池の開発」プロジェクト。予算規模は1,051億円(2026年5月時点の経済産業省資料)
- 生産体制の整備:GXサプライチェーン構築支援事業。フィルム型ペロブスカイト太陽電池やレーザー加工装置の設備投資を支援
- 需要の創出:導入支援を2025年9月4日に開始。福岡県、福岡市、滋賀県、さいたま市、西日本高速道路が採択済み
自治体も独自の目標を掲げ始めました。経済産業省の資料によると、東京都は2040年に約2GW、愛知県は2040年に1.2GW、大阪府は2035年に530MWの導入目標を定めています。
設備投資に使える制度全般については、製造業で使える補助金の記事でも整理しました。
国が量産の立ち上げまで踏み込んで支援する構図は、半導体のラピダスの2nm量産計画と共通しています。技術で先行しても、量産投資の規模とスピードで負ければ市場を失うという、過去の経験を踏まえた政策です。
海外勢はガラス型・タンデム型で量産へ
海外の動きも速くなっています。
経済産業省の戦略(2024年11月)によると、中国では2015年頃からスタートアップが複数設立されました。ガラス型を中心にタンデム型を含めて、各社が量産に向けて動いていると整理されています。
同資料には、100MW〜200MW級の生産能力を持ち、GW級のラインを建設中とする中国企業が複数挙げられています。
変換効率の記録でも中国企業の発表が目立ちます。
太陽電池大手のLONGi(隆基緑能科技)は2026年7月14日、結晶シリコンとペロブスカイトを重ねたタンデムセルで、変換効率35.5%を達成したと発表しました。
同社によると、欧州の試験機関ESTIの認証を受けた数字です。発表文にセルの面積は書かれていません。
ただし、これは企業自身の発表による研究用セルの記録で、量産品の性能ではありません。
NLRのチャートのデータ(2026年8月14日更新)に載っている同社の記録は、約1cm²のセルで測定された35.2%(2026年2月)です。
国の戦略は、海外でガラス基板のタンデム型の大量生産が進むことを前提に、動向を注視するとしています。日本はフィルム型で先行しつつ、タンデム型でも追うという二段構えです。
製造業の仕事にどう関わるか

ペロブスカイト太陽電池は、太陽電池メーカーだけの話ではありません。
国の戦略は、ヨウ素などの原材料、フィルムなどの部素材、レーザー加工装置などの製造装置について、国内で強い生産体制を作る方針を示しています。関わりが生まれやすい領域を挙げると、次のようになります。
- 材料:ヨウ素、ペロブスカイト原料、輸送層の材料、電極材料
- 部素材:基材フィルム、透明導電膜、バリアフィルム、封止材
- 製造装置:塗工・印刷装置、乾燥炉、レーザー加工装置、検査装置
- 施工・建材:屋根材や壁材との一体化、取り付け金具、配線・電装
各社の体制を見ると、この広がりがよく分かります。
パナソニック ホールディングスはガラスメーカーのAGCと、リコーは住宅メーカーの大和ハウス工業と組んでいます。エネコートテクノロジーズは、エンジニアリング会社や自動車部品メーカーと組んでいます。
作る技術と同じくらい、取り付ける技術と使う側の協力が重視されているのが特徴です。
社内の職種でいえば、研究室で得られた性能を大きな面積で再現するスケールアップが中心的な課題です。研究開発の仕事の流れでいう量産移管の段階にあたり、材料の知識と塗工・乾燥のプロセス技術の両方が分かる人材が求められます。
取引先として関わる場合は、相手がどの段階にいるかで話の進め方が変わります。事業化済みの企業には安定供給とコストが、開発・実証中の企業には試作対応の速さと評価への協力が求められやすくなります。
図8のような段階の違いを押さえておくと、提案の的を絞りやすくなります。
まとめ
- 2026年9月時点で事業化を始めているのは積水化学工業で、2026年度は現有設備による限定生産にとどまる
- 同社の100MW規模のラインは2027年度、GW級は2030年が目標。国は2040年に約20GWの導入を目指している
- 製造は「塗る・刻む・封じる」が基本で、塗布方式は各社で異なる
- 量産の壁は耐久性、大面積での均一な成膜、発電コスト、鉛の管理の4つ
- パナソニックHD、リコー、アイシン、エネコートテクノロジーズ、カネカ、長州産業などは量産技術の開発・実証段階にある
ペロブスカイト太陽電池の量産は、材料、フィルム、装置、施工まで多くの業種が関わる取り組みです。業界の全体像は化学業界の記事が、関連する技術テーマは脱炭素・カーボンニュートラルの一覧が参考になります。
各社の計画は、国の支援や実証の結果によって変わる可能性があります。検討や提案に使うときは、各社の最新のニュースリリースと、経済産業省の官民協議会の資料で時点を確認することをおすすめします。
出典
出典・参考資料(21件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 国の戦略・目標:経済産業省「次世代型太陽電池戦略」(2024年11月)
- 戦略の進捗、各社の採択状況、自治体の目標:経済産業省 第10回 次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会(2026年5月20日)資料1
- 特徴、ヨウ素のシェア、課題:資源エネルギー庁「日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(前編)」
- 各社の開発内容、ロール・ツー・ロール:資源エネルギー庁「日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?(後編)」
- GI基金プロジェクトの概要:NEDO グリーンイノベーション基金事業「次世代型太陽電池の開発」
- 実証事業の採択(2025年9月):NEDO ニュースリリース(2025年9月10日)
- タンデム型の採択(2026年2月):NEDO「次世代型タンデム太陽電池量産技術実証事業」実施体制の決定
- 量産化の決議、投資額、新会社:積水化学工業「ペロブスカイト太陽電池の量産化に関するお知らせ」(2024年12月26日)
- SOLAFILの事業開始:積水化学工業・積水ソーラーフィルム ニュースリリース(2026年3月27日)
- シート仕様の実証:積水化学工業 ニュースリリース(2026年9月14日)
- エネコートテクノロジーズのGI基金採択:エネコートテクノロジーズ プレスリリース(2025年9月10日)
- エネコートテクノロジーズの新工場(報道):日本経済新聞(2026年9月26日)、時事通信(2026年9月28日配信)
- ガラス型のGI基金採択:パナソニック ホールディングス プレスリリース(2025年11月14日)
- ガラス型の実証:パナソニック ホールディングス プレスリリース(2026年3月2日)、同(2026年9月24日)
- インクジェット印刷の技術:リコー「インクジェット印刷ペロブスカイト太陽電池」
- スプレー塗布と大型化:アイシン ニュースリリース(2026年8月21日)
- タンデム型の採択と販売計画:カネカ ニュースリリース(2026年2月6日)、同(2026年3月18日)
- レーザースクライブ(P1〜P3):産業技術総合研究所 製造基盤技術研究部門
- 耐久性・成膜の課題:産業技術総合研究所 ペロブスカイト太陽電池研究チーム
- タンデムセルの変換効率:LONGi ニュースリリース(2026年7月14日)
- 研究用セルの変換効率の記録:NLR(旧NREL)Best Research-Cell Efficiency Chart(2026年8月14日更新)
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