インドに自動車部品工場が増える理由|豊田合成8拠点目で読む進出Q&A

樹脂部品工場の射出成形機と成形直後のバンパー

2026年9月24日、豊田合成はインドで8拠点目となる新工場を建てると発表しました。トヨタの新工場と同じ工業団地に建てるこの計画には、インドで日系の部品工場が増えている理由がよく表れています。

日系の部品メーカーによるインドへの投資の多くは、伸びる新車需要に応えるため、工場を増やす日系自動車メーカーの近くで部品を供給することを狙っています。

豊田合成もマハラシュトラ州の新工場で、2029年前半からバンパーやインストルメントパネル(運転席前の計器まわりの大型樹脂部品)を生産する計画です。

この記事では、豊田合成の新工場の中身、インドに工場が増える理由、進出した企業の業績と現地生産の難しさ、検討時に確かめたい点をQ&A形式で整理します。

先に答えをまとめると、市場と顧客の増産は追い風だが、進出や取引の判断は、顧客の計画と現地での調達・運営の実現性を確かめてから行うものです。

この記事の内容は、動画でも解説しています。

目次

Q1. 豊田合成はインドで何をつくるのか

豊田合成は2026年9月24日、インド中西部マハラシュトラ州のビドキン工業団地に新工場を建てると発表しました。

投資額は約57億5,800万ルピー(約93億円)です。2029年前半からバンパーやインストルメントパネル(インパネ、運転席前の計器まわりの大型樹脂部品)を生産する計画です。

内外装部品のほか、エアバッグやハンドルといったセーフティシステム製品、樹脂製のフューエルフィラーパイプ(給油口から燃料タンクへつながる管)も手がけます。

土地は約7万8,400m²、建屋は約2万9,200m²で、従業員は2030年時点で約570人を見込んでいます。

図1:豊田合成のインド新工場の概要

トヨタの新工場と同じ工業団地に、大型の内外装部品を中心とした工場を建てます。

WHAT何をつくるかバンパー、インパネなどの大型内外装部品。エアバッグ・ハンドル、樹脂フューエルフィラーパイプも
WHEREどこに建てるかマハラシュトラ州ビドキン工業団地。インドで同社8拠点目、南インド子会社の分工場
WHEN / SCALEいつ・どの規模で生産開始は2029年前半。投資約93億円、土地約7.8万m²、従業員約570人(2030年見込み)
同じ工業団地では、トヨタ・キルロスカ・モーター(TKM)の新工場も2029年前半の生産開始を予定している

※豊田合成ニュースリリース(2026年9月24日)をもとに作成。投資額は約57億5,800万ルピー。

インドで8拠点目、2026年に続く新工場

運営するのは、1998年にカルナタカ州で設立した子会社トヨダゴウセイ・サウスインディアです。従業員は2026年3月末時点で1,688人にのぼります。

同社は2024年9月にも、カルナタカ州ハロハリに約35億円で新工場を建て、2026年からエアバッグや内装部品を生産すると発表していました。2年ほどの間隔で新工場を続けて決めていることからも、インドを伸びる市場と見ていることが分かります。

Q2. なぜトヨタの新工場と同じ工業団地に建てるのか

専用ラックに並んだ塗装済みの自動車用バンパー

直接のきっかけは、トヨタが2026年5月11日に発表したインドの新工場です。子会社のTKMが同じビドキン工業団地に工場を建て、2029年前半から新型SUVを年10万台つくる計画で、豊田合成の発表でも背景として挙げられています。

豊田合成は新工場の目的を、主要顧客である日系カーメーカーの生産能力拡大への対応と説明しました。

どの車種にどの部品を納めるかまでは公表されていませんが、車両工場の稼働時期と部品工場の生産開始時期をそろえている点が、この投資の性格をよく表しています。

バンパーやインパネは「運ぶと割に合わない」部品

バンパーやインパネは大きくてかさばる一方、重さや単価のわりに輸送の場所を取ります。遠くの工場から運ぶとトラック1台に積める数が少なく、輸送費と保管場所が膨らみがちです。

塗装済みのバンパーは傷が付けば不良になるため、梱包や積み下ろしにも手間がかかります。こうした事情から、大型の内外装部品は車両工場の近くで成形・塗装し、短い距離で届けるのが一般的な形です。

順序納入が前提になる

車両工場では、色や仕様の違う車が1本のラインを順番に流れます。そこへ必要な部品を、車の生産順にそろえて届けるのが順序納入(シーケンス納入)です。ニュースイッチの報道によると、新工場は順序納入にも対応します。

ラインの順番に合わせて届けるには、生産計画の変更にすぐ追従できる距離にいることが重要です。部品の在庫を車両工場側に多く持たないトヨタ生産方式の考え方とも重なります。

部品メーカーの階層やカーメーカーとの関係は、自動車業界のサプライチェーンと商流で詳しく整理しています。

図2:車両工場の近くに部品工場を置く理由

大きな部品ほど、近くで作って生産順に届けるほうが効率的です。

車両工場(TKMの新工場)プレス・溶接・塗装・組立。新型SUVを年10万台、2029年前半から
生産順に納入(順序納入)
部品工場(豊田合成の新工場)同じビドキン工業団地。大型成形・塗装から出荷まで
近くで作るメリット
輸送費かさばる部品を短距離で運べる
在庫計画変更に追従し、置き場を減らす
品質塗装面の傷や変形のリスクを抑える

※供給する車種・部品の組み合わせは公表されていません。メリットは大型部品の一般的な考え方です。

Q3. インドの自動車市場はどれくらい伸びているのか

需要の側から見ると、インドの乗用車市場は拡大が続いています。ジェトロによると、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の乗用車の国内販売は464万3,439台で、前年度比7.9%増でした。4年連続で過去最高を更新しています。

図3:数字で見るインドの乗用車市場(2025年度)

国内販売・生産・輸出がそろって過去最高水準にあり、販売の3分の2がSUVなどのUVです。

生産インド国内での乗用車生産
553.9万台(+9.4%)
国内販売インド国内向けの販売
464.3万台(+7.9%)
輸出インドからの乗用車輸出
90.5万台(+17.5%)
67%国内販売に占めるUV(SUVなど多目的車)の割合。前年度は65%
49.0%日系メーカー合計の国内販売シェア。マルチ・スズキが39.3%、TKMが7.9%

※集計期間は2025年4月〜2026年3月。かっこ内は前年度比。ジェトロ「2025年度インド乗用車市場は過去最高」(2026年6月19日)をもとに作成。

減税と所得の伸びが販売を押し上げた

2025年9月22日には物品・サービス税(GST)の改革が施行され、小型のガソリン車などの税率が28%から18%に下がりました。ジェトロは、減税や金融緩和に加え、所得の向上や上位車種への乗り換え需要が拡大を支えたと分析しています。

暦年でみても、インドの新車市場は中国、米国に次ぐ世界3位の規模で、4年続けて日本を上回っています。日本国内の生産が伸び悩む局面とは対照的で、2026年8月の国内自動車生産の減少と並べると、需要がどこで増えているかがよく見えます。

伸びの中心はSUV

市場の中身で目立つのがSUVの伸びです。UV(多目的車)の販売は310万5,025台で、乗用車全体の67%を占めました。

車体が大きいSUVほど、バンパーやインパネも大きく、部品の数も増えやすいため、内外装部品メーカーにとっては単価と物量の両面で追い風になります。

豊田合成も発表の中で、インドではコンパクトカーに加えてSUVの人気が高まっている点を挙げています。世界の自動車市場の推移と比べたい方は、自動車業界の市場規模と今後の見通しもあわせて参考にしてください。

輸出拠点としての役割も

乗用車の輸出も90万5,200台と過去最高でした。マルチ・スズキだけで44万台を超えて輸出しています。トヨタも新工場について、インド国内だけでなく周辺地域の顧客にも供給すると説明しています。

内需に加えて輸出の拠点にもなるなら、車両工場の稼働率は国内景気だけに左右されにくくなります。部品メーカーにとっても、現地の需要が一時的に落ち込んだときの支えになる要素です。

Q4. 日系カーメーカーの増産は部品メーカーに何をもたらすのか

SUVの車体が流れる自動車の最終組立ライン

市場の伸びを受けて、インドで大きなシェアを持つ日系カーメーカーは生産能力を引き上げています。代表的なのがトヨタとスズキです。

トヨタ:4カ所目の工場で年10万台

TKMはこれまでカルナタカ州ビダディに工場を構え、3つ目の工場(年10万台)の建設も進めてきました。ビドキンの新工場はインドで4カ所目となり、年10万台、従業員は約2,800人の計画です。

工程はプレス、溶接、塗装、組立をすべて持つ一貫工場です。

スズキ:2030年代に年400万台体制

スズキは2026年7月、ハリヤナ州のカルコダ工場(年50万台)の開所式を行い、インドの四輪車生産能力は265万台になりました。

さらにグジャラート州サナンドに新工場を建て、2029年までの稼働を目指しています。2030年代に年400万台体制を掲げています。

図4:インドでの日系2社の増産計画

どちらも2029年前後に新工場の稼働を予定しています。

トヨタ(TKM)
スズキ(マルチ・スズキ)
新工場の場所
マハラシュトラ州ビドキン工業団地
グジャラート州サナンド
生産開始
2029年前半
2029年までの稼働を目指す
能力・規模
年10万台、従業員約2,800人。新型SUVを生産
第1ラインは年25万台。最大100万台まで拡張できる用地
インド全体
4カ所目の工場。周辺地域にも供給
現在265万台。2030年代に年400万台体制を目指す
国内販売シェア
7.9%(2025年度)
39.3%(2025年度)

※トヨタ(2026年5月11日)、スズキ(2026年3月24日・7月2日)の発表、ジェトロの統計をもとに作成。

部品メーカーに広がる「付いていく投資」

カーメーカーが新工場を建てると、その周辺にTier1(カーメーカーに直接納める部品メーカー)の工場ができます。さらに、Tier2の材料・部品、金型、設備の需要が生まれます。豊田合成の新工場も、まさにこの流れの1つです。

日本の部品メーカーにとっては、現地に出るか、日本や第三国から供給するか、現地企業と組むかを考える機会になります。米国の関税で生産地の見直しが進んでいることもあり、地域ごとに供給網を組み直す動きは今後も続くとみられます。

Q5. 調査から見ると、進出した日系企業はもうかっているのか

需要が伸びていても、利益が出なければ投資は続きません。ジェトロの海外進出日系企業実態調査を見ると、インドに進出した日系企業は黒字の割合が高く、事業を広げる意欲も強いことが分かります。

図5:調査で見るインド進出日系企業の業績と意欲

黒字の割合は高い一方、新しく進出した企業ほど黒字化に時間がかかっています。

75.5%2025年の営業利益を「黒字」と見込む企業の割合(全業種)。過去2番目の高さ
81.5%今後1〜2年で事業を「拡大」する企業の割合。国・地域別で最も高い
83.1%製造業の黒字見込みの割合(2024年度調査)。過去10年で最高
約5割2020年以降に設立した製造業の黒字割合。2004年以前の設立では9割超

※上段はジェトロ2025年度調査(2025年8〜9月実施)、下段は2024年度調査の製造業の集計。個別企業や品目の採算を示すものではありません。

黒字は7〜8割、拡大意欲は国別トップ

2025年度の調査では、インドの日系企業の75.5%が2025年の営業利益を黒字と見込みました。前年より2.2ポイント下がったものの、過去2番目の高さです。

事業を拡大すると答えた割合は81.5%で、調査対象の20カ国・地域の中で最も高い値でした。

拡大する理由では「現地市場のニーズの拡大」が88.1%に達します。製造業が拡大する機能では、生産(汎用品)が52.7%、生産(高付加価値品)が50.3%で、新しい工場の建設など大きな投資の声もあったとされています。

ただし新しく出た企業の黒字は5割

一方で、ジェトロの分析では設立年によって差が大きく出ています。2004年以前に設立した製造業は9割超が黒字なのに対し、2020年以降に設立した企業では黒字は5割程度にとどまります。

この数字は、全体の黒字比率が高くても、進出してすぐに利益が出るわけではないことを示しています。調査は業種をまとめた集計で、自動車部品や特定品目の採算をそのまま表すものではありません。

立ち上げから黒字化までの年数を見込んだ計画を前提に考える必要があります。

Q6. 現地生産では何が難しいのか

樹脂製インパネの表面をライトで検査する手元

インドで工場を動かすうえでの難しさは、大きく「調達と品質」「税務と行政手続き」「人件費と人材」の3つに分けられます。どれも量産立ち上げの段階で表に出やすい課題です。

図6:インドでの現地生産、3つの壁

調査に表れた数字を、課題の種類ごとに整理しました。

現地調達率48.5%
調達・品質製造業の原材料・部品のうち現地からの調達は48.5%、日本からが29.4%(2025年度)
品質・技術力不足76.4%
調達・品質現地調達を増やすうえでの課題として、現地サプライヤーの品質・技術力を挙げた割合(2024年度)
税制・税務の煩雑さ57.5%
税務・手続き製造業が挙げる投資環境リスクの1位(2024年度)
行政手続きの煩雑さ52.1%
税務・手続き許認可などの手続き。工場の新設や設備の増設で、計画どおりに進まない原因になりやすい
ベースアップ率9%台
人件費・人材基本給の昇給率(名目、全業種)。2025年は9.4%で、中国の3.3%、タイの3.9%を大きく上回る
人材の競合に日系37.4%
人件費・人材人材獲得で競争が激しい相手として日系企業を挙げた割合。地場企業の54.5%に次ぐ

※ジェトロ「海外進出日系企業実態調査」2024年度・2025年度、および「在インド日系製造業のいま」(2025年2月)をもとに作成。

現地調達率が上がらない

インドの日系製造業の68.1%が現地調達を増やしたいと答えている一方で、現地調達率は10年ほどほぼ横ばいだとジェトロは指摘しています。最大の理由は、現地サプライヤーの品質・技術力の不足(76.4%)です。

樹脂部品で考えると、課題は量産立ち上げのいくつかの場面で表れます。試作では樹脂材料のロット差で寸法や外観がばらつき、工程監査では金型の保全や塗装の管理が基準に届かないといったことが起こりがちです。

量産後も、材料や工程の変更が事前に知らされないまま品質が変わる「変更管理」の問題が残ります。

そのため、当面は日本や第三国から材料や部品を持ち込みつつ、現地の仕入先を育てる二本立てになりやすくなります。輸入に頼る分だけ、為替や物流の影響も受けます。

仕入先の評価や育成の考え方は、購買・調達の仕事とサプライヤー管理の記事も参考になります。

税務・行政手続きの煩雑さ

投資環境のリスクとして製造業が最も多く挙げたのは、税制・税務手続きの煩雑さ(57.5%)でした。行政手続きの煩雑さ(52.1%)、労働争議・訴訟(30.8%)が続きます。

これは工場の現場とも無関係ではありません。輸入する材料の通関や税の扱い、工場の新設・増設の許認可が想定より長引くと、量産開始の日程そのものがずれるおそれがあります。顧客の車両工場の稼働日は動かないため、部品側の遅れは許されにくい構造です。

人件費の上昇と人材の取り合い

インドの賃金水準は、まだASEANの一部や中国の大都市より低い地域が多くあります。たとえば製造業の作業員の基本給(月額平均)は、カルナータカ州で418ドル、タミル・ナドゥ州で341ドルで、上海の957ドルを大きく下回ります。

ただし、ベースアップ率は2025年に9.4%(2026年見込みは9.2%)と高く、人件費は年々上がっていきます。人材の取り合いでは、日系企業同士が競合する割合も37.4%と高めです。

日系企業が同じ地域に集まるほど、経験者の引き抜きや離職への備えが必要になります。

Q7. 新工場の設備で対応できる課題はどこまでか

豊田合成の新工場には、こうした課題の一部を設備の側で抑えようとする工夫が見られます。ただし、設備で対応できるのは主に工場の中の課題で、調達や税務は別の手当てが必要です。両者を分けて見ていきます。

図7:新工場の設備で対応できる課題、できない課題

自動化は人手と工程のばらつきに効きますが、調達や制度の課題は別に手を打つ必要があります。

課題
新工場の設備での対応
設備以外に必要な手当て
人件費・人材
協働ロボットとからくりを組み合わせた自動化、AGV(無人搬送車)で人手のかかる作業を減らす
作業者・保全要員の採用と育成、定着のための処遇
工程の品質
金型の自動段取り替えができる大型電動成形機、IoTによる生産管理でばらつきを抑える
品質基準を現地のスタッフが運用できる教育と監査
塗装品質・コスト
塗着効率を高めた高品位のバンパー塗装ブース
塗料など材料の安定調達
調達・品質
(設備だけでは対応しにくい)
現地仕入先の評価・育成、日本や第三国からの供給との併用
税務・手続き
(設備だけでは対応しにくい)
現地の専門家の活用、許認可の日程に余裕を持った計画

※設備は豊田合成の発表とニュースイッチの報道による。右列は一般的な対応の例です。

人に頼りすぎない自動化

新工場では、タイで開発した低コストの自動化を取り入れます。協働ロボット(安全柵なしで人の近くで動かせるロボット)と、からくり(ばねやてこ、重力など電気を使わない仕組みで動かす装置)を組み合わせる方式です。

からくりは日本の製造現場で受け継がれてきた手法で、トヨタ生産方式とカイゼンの取り組みの中でも広く使われています。

高価な設備を入れなくても運搬や取り出しの手間を減らせるため、賃金が上がっていく地域で、人手に頼る工程を少しずつ減らす手段になります。

段取り替えの自動化と電動成形機

バンパーやインパネは車種ごとに金型が違い、しかも金型が大きく重いため、段取り替え(金型や条件の切り替え)に時間と熟練が必要です。新工場では金型を自動で交換できる大型の電動射出成形機を入れ、IoTで生産状況を管理します。

切り替えを自動化すれば、作業者の経験によるばらつきが減り、車種の追加や生産順の変更にも対応しやすくなります。順序納入を求められる大型部品の工場では、段取り替えの速さが納入の安定に直結します。

Q8. 進出や取引を考える会社は、何から確かめればよいか

樹脂部品サンプルとノギスが置かれた打ち合わせ机

ここまでを踏まえると、インドへの進出や、インドの日系工場との取引を考える会社が最初に確かめたい点は、次の5つに整理できます。

図8:インド進出・取引の初期チェック5項目

需要の確からしさから順に、採算の前提までを確かめます。

需要を確かめる
01顧客の計画どの工場が、いつ、年何台を立ち上げるか。量産開始と増産の時期
02品目と品質要件自社の品目が現地で必要か。図面・規格・認定の要件は日本と同じか
供給体制を確かめる
03調達先材料・部品を現地で賄えるか。輸入に頼る比率と為替・物流の影響
04人材と運営現地の管理者・保全要員を確保できるか。日本からの支援体制
採算を確かめる
05投資と回収の前提稼働率の見込み、黒字化までの年数、手続きによる遅れの余裕

※自社拠点を持つ以外に、日本や第三国の拠点からの供給、現地企業との提携・技術供与という選択肢もあります。

顧客の計画と品目を先に確かめる

最初に見るべきは、顧客の車両工場がいつ、どの規模で立ち上がるかです。トヨタのビドキン工場やスズキのサナンド工場のように、発表から稼働までには3年前後あります。部品側は、顧客の量産開始から逆算して工場の立ち上げを間に合わせる必要があります。

あわせて、自社の品目が現地で必要とされているか、求められる品質や認定の要件が日本と同じかを確かめます。立ち上げの段取りは、生産技術の仕事の流れ(量産立ち上げまで)と同じ考え方で整理できます。

調達・人材・採算の前提をそろえる

次に、材料や部品をどこから調達するか、現地で誰が工場を回すかを詰めます。現地調達率が上がりにくい実情を考えると、立ち上げ当初は輸入を前提にし、仕入先の育成に合わせて切り替える計画が現実的です。

採算の面では、黒字化までに年数がかかる前提で、稼働率や回収期間を見積もります。全体の黒字比率の高さだけで判断せず、新しく進出した企業の黒字が5割程度にとどまる点も織り込んでおくと安全です。

自社拠点以外の選択肢も比べる

いきなり自社工場を建てるのではなく、日本やタイなど既存の拠点から供給する、現地企業と提携する、技術を供与するといった方法もあります。物量が小さいうちは輸出で対応し、受注が固まってから現地化するという段階的な進め方も考えられます。

一方、バンパーのように大きく、順序納入を求められる部品は、遠くからの供給が難しいため現地生産が前提になります。品目の大きさと納入条件によって、現地に出るべきかどうかの答えは変わるといえます。

電動化で必要な部品が変わっていく点も、品目を選ぶうえでの判断材料になります。

まとめ

この記事のまとめ
  • 豊田合成はトヨタの新工場と同じビドキン工業団地に、インド8拠点目の工場を建て、2029年前半から大型内外装部品を生産する
  • 大型でかさばり、順序納入が求められる部品は、車両工場の近くで作るのが一般的な形
  • インドの乗用車国内販売は2025年度に464万台と過去最高。SUVなどのUVが67%を占め、輸出も伸びている
  • 進出した日系企業は黒字の割合・拡大意欲ともに高いが、新しく出た企業の黒字は5割程度にとどまる
  • 現地調達と品質、税務・手続き、人件費と人材が主な壁。設備で対応できる範囲とそれ以外を分けて計画する

インドの自動車市場は、日系カーメーカーが半分近いシェアを持つ数少ない大市場です。カーメーカーの増産計画が先に決まり、部品メーカーがそれに合わせて立ち上げる流れは、今後もしばらく続くとみられます。

関連する職種としては購買・調達や生産技術、取引の窓口となる技術営業がこのテーマと深く関わります。

自動車産業の動向や関連記事は、自動車業界の業種ページからあわせてご覧ください。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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