エコノマイザ(節炭器)とは?ボイラーの仕組み・空気予熱器との違い・メリット計算

点検口を外したエコノマイザのフィン付き管群と保温された給水配管

エコノマイザ(節炭器)とは、ボイラーの排ガスの熱で、ボイラーに入る前の給水を温める熱交換器で、煙突から捨てていた熱を給水に戻すので、同じ量の蒸気を少ない燃料でつくれます。

取り付ける場所は、ボイラー本体を出たあとの煙道(排ガスの通り道)で、燃焼用の空気を温める空気予熱器を付ける場合は、その手前に置くのが一般的です。この記事では、エコノマイザの仕組みと設置場所、低温腐食の注意点、空気予熱器との違い、メリットとその計算方法、デメリットの順に整理します。

目次

エコノマイザとは?

ボイラーの排ガスとボイラー給水を熱交換するエコノマイザの系統図

エコノマイザは節炭器とも呼ばれ、ボイラーの排ガスと給水を熱交換させる熱交換器で、ボイラー給水の温度を上げることで、燃料代を減らせます。

節炭器と呼ばれるのは、以前は石炭焚きのボイラーが一般的だったため、石炭を節約する装置、という意味の名前が残っています。環境省の資料などでは「給水予熱器」と書かれることもあります。

最近の小型貫流ボイラーには、エコノマイザを組み込んだ機種もあり、高効率をうたう貫流ボイラーでは、高性能なエコノマイザを載せて排ガスの熱を回収するものが見られます。大型の水管ボイラーでは、排ガス量や給水温度を計算しながら、複数のユニットに分けて設置されることが多いです。

ボイラー効率の考え方は、ボイラー効率の計算方法(入出熱法・熱損失法)で詳しく整理しています。

エコノマイザの仕組みと設置場所

燃料を燃やした熱は、まずボイラー本体で水を蒸気に変えますが、それでも本体を出た排ガスには、まだ熱が残っています。環境省の試算例では、エコノマイザのない小型ボイラーの出口排ガスは263℃です。

エコノマイザは、この排ガスが煙突へ向かう途中に置かれ、排ガスは煙道の中を、給水はその中を通る管の中を流れます。

図1:エコノマイザは煙道のどこに付くか

排ガスはボイラー本体→エコノマイザ→空気予熱器→煙突の順に流れ、少しずつ熱を手放します。

排ガスの流れ

炉(燃焼室)燃料と空気を燃やす
排ガス
ボイラー本体水を蒸気に変える。出口の排ガスは例で約260℃
排ガス
エコノマイザ(節炭器)排ガスの熱で給水を温める。出口は例で約170℃
排ガス
空気予熱器(ある場合)残りの熱で燃焼用の空気を温める。出口は例で約110℃
排ガス
煙突大気へ出る

給水の流れ

給水タンク・脱気器ボイラーに送る水をためる
給水ポンプで送る
エコノマイザの管の中排ガスから熱を受け取って温度が上がる
温まった給水
ボイラー本体温まった分だけ、蒸気にするための燃料が少なくて済む

※温度は環境省の算定例(都市ガス焚き、給水25℃のボイラー)で、エコノマイザなし・あり・空気予熱器追加の各出口排ガス温度を並べたものです。燃料・負荷・機種で変わります。

熱の受け渡しは、管の壁を通して行われ、排ガスは管の外側を、給水は管の内側を流れ、両者は混ざりません。管は何本も束ねた「管群」になっていて、管の外側にひれ(フィン)を付けたものもあるのは、排ガスに触れる面積を増やし、限られた煙道の中でより多くの熱を取るためです。

図2:エコノマイザの仕組み

捨てていた熱を給水に戻すことで、ボイラー本体で足す熱が減ります。

01排ガスが管群の外を流れるボイラー本体を出た排ガスが、煙道の中の管の束に当たる
02管の中の給水が温まる管の壁を通して、排ガスの熱が給水へ移る。両者は混ざらない
03温まった給水がボイラーへ蒸気にするまでに足す熱が、温まった分だけ少なくなる
04燃料が減り、排ガスは冷える同じ蒸気量を少ない燃料でつくれる。煙突から出る熱も減る

エコノマイザの注意点

エコノマイザで注意すべきことの一つに、酸露点を下回ることで起きる低温腐食があります。硫黄を含む燃料を燃やすと、排ガスに硫黄酸化物(SO3など)が含まれます。

これが水分と結びつき、硫酸として結露し始める温度が酸露点(硫酸露点)です。ボイラー給水の温度が低いと、管の表面も冷たくなり、管の表面が酸露点を下回ると、そこに硫酸を含んだ水滴が付きます。

この硫酸で管が腐食し、穴あきなどのトラブルを起こすことを低温腐食と呼び、ポイントは、排ガス全体の温度ではなく、排ガスが触れる管の表面の温度です。

図3:低温腐食が起きる流れと対策

燃料の硫黄分から腐食までの流れと、各段階でとれる対策を並べました。

01燃料に硫黄分がある重油・石炭などを燃やすと、排ガスに硫黄酸化物が出る対策:硫黄分の少ない燃料
02管の表面が酸露点を下回る冷たい給水が流れると、管の表面も冷える対策:給水を昇温してから入れる
03硫酸が結露して腐食管の表面に硫酸を含む水滴が付き、穴あきにつながる対策:腐食に強い材質
給水温度が低いほど回収できる熱は増えますが、低すぎると管の表面が酸露点を下回ります。熱回収と耐久性の兼ね合いで、給水温度を決めます。

防ぐ方法は、次の3つです。

  • ボイラー給水を酸露点以上まで昇温させる
  • 硫黄分の少ない燃料を使用する
  • 伝熱面を低温腐食に強い材質に変更する

大型ボイラーの場合は、脱気器の圧力でボイラー給水の温度が決まるため、脱気器の圧力を上げたり、もとの原因である燃料中の硫黄分を取り除いたりする対策があります。A重油焚きの貫流ボイラーでは、エコノマイザに入れる給水を60℃に温める例があります。

日本産業機械工業会が公開した受賞装置の資料では、そのための温水装置を足すのが一般的だったと説明されています。伝熱面を低温腐食に強い材質に変える方法も、初期コストは上がりますが有効で、ステンレス鋼でも腐食が防げない場合があり、耐硫酸露点腐食鋼のほうが腐食を抑えられることもあります。

伝熱面をフッ素樹脂で覆い、酸露点付近まで熱を回収できるとする耐酸性の熱交換器も、ボイラー給水の予熱向けに製品化されています。酸露点や腐食の仕組みは、低温腐食と高温腐食の違いで詳しく解説しています。

エコノマイザと空気予熱器の違い

排ガスと燃焼用空気を熱交換する空気予熱器の系統図

ボイラー効率を上げる装置には、空気予熱器もあります。エコノマイザが排ガスとボイラー給水を熱交換させるのに対し、空気予熱器は燃料を燃やすときの空気と熱交換させます。

ガスの流れでは、空気予熱器はエコノマイザの二次側(下流)に置くことが多く、エコノマイザを出た排ガスから、さらに熱を取りたいときに使います。燃焼用の空気温度が上がれば燃焼効率が上がり、燃料の使用量を減らせるほか、不完全燃焼によるすすの発生を防ぐ効果もあります。

上の図のように、排ガスで温める予熱器の手前に、蒸気や温水で空気を温める予熱器を組み合わせる例もあります。

図4:エコノマイザと空気予熱器の違い

どちらも排ガスの熱を回収しますが、熱を渡す相手と注意点が違います。

エコノマイザ(節炭器)
空気予熱器
熱を渡す相手
ボイラー給水
燃焼用の空気
煙道での位置
ボイラー本体の出口側
エコノマイザの下流(二次側)が多い
ねらい
給水を温め、蒸気にするための燃料を減らす
燃焼効率を上げ、燃料を減らす。すすの発生も防ぐ
注意点
管の表面が酸露点を下回ると低温腐食
空気側の圧力損失(送風機の能力)、空気温度の上昇によるNOxの増加

※空気予熱器の注意点は、環境省の対策メニュー(ボイラー排ガスによる燃焼空気予熱)の留意事項によります。

環境省の試算例では、エコノマイザ付きのボイラーに空気予熱器を足すと、出口の排ガス温度が168℃から108℃に下がります。熱効率は92.6%から95.5%に上がる計算で、空気予熱器の種類や目的は、空気予熱器(エアヒーター)とはで詳しく解説しています。

エコノマイザのメリット

エコノマイザのメリットは、排ガスの熱を給水で回収することで、ボイラー効率が上がることです。ボイラー効率は、投入した燃料の何%が有効な熱として使われたかを表す指標です。

効率が上がるほど、同じ蒸気量を少ない燃料でつくれ、燃料が減ればCO2も減るので、工場の省エネとエネルギー管理の基本的な打ち手の一つになっています。

米国エネルギー省(DOE)の資料では、エコノマイザで燃料を5〜10%減らせることが多いとしており、効果に幅があるのは、条件によって上がる効率が変わるからです。

目安として、公的な試算例を一つ挙げると、環境省の資料では、エコノマイザも空気予熱器もないボイラーの効率は88%程度で、損失12%のほとんどが排ガスの熱だとしています。同じ資料には、条件をそろえた都市ガス焚きボイラーの算定例が2つあります。

比べると、エコノマイザありで出口の排ガス温度は263℃から168℃に下がり、効率は88%から92.6%に上がります。排ガス温度がおよそ20℃下がるごとに、効率が約1ポイント上がる計算で、DOEの資料も、排ガス温度40°F(約22℃)ごとに効率約1%を目安にしています。

今の給水温度が低いほど、排ガスから取れる熱が増え、メリットは大きくなります。逆に、蒸気で脱気して給水がすでに96℃程度まで上がっている場合は、熱回収の効果が限られます。効率がどこまで上がるかは、次の条件をボイラーメーカーに伝えれば計算してもらえます。

  • 燃料の種類と硫黄分
  • 現状の給水温度と排ガス温度
  • 蒸気量(負荷の変動も含む)
  • 年間の運転時間
  • 設置できるスペースと配管の取り回し

ただし硫黄分を含む重油などでは、給水温度が低すぎると酸が出るので注意します。給水が冷たいほど熱は多く取れますが、管の表面が酸露点を下回らない範囲に収めます。酸露点の仕組みは酸露点(さんろてん)とはで解説しています。

エコノマイザのメリット計算方法

ボイラー効率の上がり幅が分かれば、メリットを計算できます。ここでの計算は、同じ蒸気量・同じ燃料・同じ運転条件で、ボイラー効率だけが変わったと仮定した理論計算で、実際の削減量は、負荷の変動や運転の仕方で前後します。

例えば、ボイラー効率が80%の状態でエコノマイザを設置し、90%まで上がったと仮定すると、100の燃料を投入したとき、有効に伝わる熱量は80から90に増えます。必要な蒸気量は一定なので、もともと100の燃料でつくっていた蒸気と同じ量をつくるのに必要な燃料は、次の計算で求められます。

100 × 8090 ≒ 89
効率80%で燃料100を使っていた蒸気を、効率90%でつくるのに必要な燃料

つまり、ボイラー効率が10ポイント(80%→90%)上がると、燃料代は11%減ります。同じように、ボイラー効率が80%から85%に上がったと仮定すると、次の式から6%の燃料代削減になることが分かります。

100 × 8085 ≒ 94
効率80%で燃料100を使っていた蒸気を、効率85%でつくるのに必要な燃料

2つの式は、どちらも「燃料は効率に反比例する」という関係から来ていて、一般の形で書くと、次のようになります。

燃料の削減率 = 1 − η1η2
(例)1 − 0.800.90 = 0.111 → 約11%
η1:エコノマイザ設置前のボイラー効率 η2:設置後のボイラー効率

図5:効率の上がり幅と燃料の削減率

燃料の削減率は、効率の上がり幅(ポイント)より少し大きくなります。

80→85%
5.9%
88→92.6%
5.0%
80→90%
11.1%

※削減率=1−η1/η2 で計算。88→92.6%は環境省の試算例(エコノマイザなし→あり)の効率です。

年間の燃料代に削減率を掛ければ、年間のメリットになります。仮に年間の燃料代が3,000万円で、効率が80%から90%に上がるなら、削減額は約333万円です。

投資の判断では、導入費を「年間の削減額から保守費を引いた額」で割ると、何年で元が取れるかの目安になります。削減率が大きくても、年間の稼働時間が短ければ、採算の面で付けないほうがよい場合もあります。

大事なのは、ボイラー効率の上がり幅(ポイント)よりも、燃料の削減率のほうが少し大きくなることです。削減率の分母が、改善後の効率(100%より小さい値)になるためです。

エコノマイザのデメリット

エコノマイザは燃料代の削減に効く装置ですが、導入と維持にはいくつかの負担があり、主なデメリットは次の4つです。

図6:エコノマイザの4つのデメリットと打ち手

どれも導入前に見積もり、計画に織り込んでおける負担です。

初期コストの高さ装置・据付・配管改造の費用。年間の削減額と保守費から回収年数を見る
メンテナンスの手間伝熱面の汚れ・スケールで効率が落ちる。清掃と点検を保全計画に入れる
腐食と劣化のリスク管の減肉や穴あきで交換が必要になる。給水温度と燃料の管理、肉厚の点検
設置スペースの制約後付けでは煙道の改造と置き場所が課題。更新時に組み込み済みの機種を選ぶ

初期コストの高さ

エコノマイザの導入には、まとまった初期投資が必要で、装置自体の価格に加え、設置工事費や配管の改造費がかかります。特に既存のボイラーに後付けする場合は、工事が複雑になり、コストが増えることがあります。

長期の燃料削減と初期投資を比べて判断します。省エネ設備の導入では、製造業で使える補助金が使えるかも確かめておくとよいでしょう。

メンテナンスの手間

効率を保つには、定期的なメンテナンスが欠かせず、伝熱面に付いた汚れやスケールを除去しないと、効率が下がり燃料が増えてしまいます。

管の外側に付く煤や灰は、スートブロワで吹き飛ばす方法があります。点検の周期は、時間基準(TBM)と状態基準(CBM)のどちらで決めるかも考えどころです。専門知識が要る作業も多く、技術者の確保や教育にもコストがかかります。

腐食と劣化のリスク

エコノマイザは排ガスに常にさらされるため、腐食や劣化のリスクがあり、前述の低温腐食が進むと管が薄くなり、性能が落ちます。

最悪の場合は、管や装置そのものの交換が必要になります。耐酸性の高い材料を選ぶこと、燃料の選定に注意することが求められ、運転開始後も管の肉厚を定期的に確かめます。

設置スペースの制約

エコノマイザには設置スペースが要り、既存の設備に足す場合は、置き場所の確保が課題です。狭い工場では、他の設備や配管と干渉しない場所が見つからず、導入が現実的でないこともあります。

エコノマイザのよくある質問

給水温度は何℃にすればよい?

決め手は、燃料の硫黄分で、硫黄分が多いほど酸露点が上がるので、管の表面がそれを下回らない給水温度にします。A重油焚きでは、60℃に温めてから入れる例があります。

一方、環境省の都市ガス焚きの試算例では、給水25℃のままエコノマイザで熱を回収しています。具体的な温度は、燃料とボイラーの条件をもとにメーカーと決めます。

潜熱回収型ボイラーとの違いは?

一般的なエコノマイザは、排ガスの温度(顕熱)を回収する装置です。潜熱回収型ボイラーは、排ガスを100℃以下まで冷やし、水蒸気が水に戻るときの熱(潜熱)まで回収します。

その分だけ効率は高く、環境省の資料では熱効率95%を超える温水ボイラーが市販されているとしています。ただし凝縮水が出るので、燃料に硫黄分があると硫酸による腐食に注意が必要です。

空調や冷凍機の「エコノマイザー」とは別物?

別物で、同じ「エコノマイザー」という言葉が、ボイラー以外の分野でも省エネの装置や制御を指して使われています。

空調では、外気が涼しいときに外気を取り込んで冷房を減らす仕組み(外気冷房)を指します。冷凍機では、冷媒の一部を中間の圧力まで下げて圧縮機に戻し、冷凍能力を上げるサイクルを指します。

まとめ

この記事のまとめ
  • エコノマイザ(節炭器)は、ボイラーの排ガスと給水を熱交換させるもの
  • ボイラー本体の出口側の煙道に付き、排ガスの熱で給水を温めて燃料を減らす
  • 管の表面が酸露点を下回ると低温腐食が起きるので、給水温度と燃料の硫黄分に注意する
  • 空気予熱器は、排ガスと燃焼用の空気を熱交換させるもの。エコノマイザの下流に置くことが多い
  • 燃料の削減率は 1−η1/η2。効率80%→90%なら燃料は約11%減る

小型ボイラーでも、エコノマイザが組み込まれた機種と付いていない機種があり、今の設備に付いているかは、仕様書で確かめておきましょう。

費用対効果が大きいので、ボイラーを新しく買うならエコノマイザ付きを前提に考えてよいでしょう。環境省の資料でも、設備を更新するなら廃熱回収装置が付いた設備を選ぶことが望ましいとしています。

ボイラーの省エネは、エネルギー管理士試験でもよく出るテーマで、工場での役割は製造業のエネルギー管理士の仕事で紹介しました。その他のボイラーに関する記事は、ボイラーとは何かにまとめています。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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