ポンプの吐出圧力が低下する・上がらない原因は?現象と調べ方・対策

遠心ポンプの吐出配管に付いた圧力計と弁

ポンプの吐出圧力が低下する・上がらない原因は、大きく4つに分けられます。液が足りない、使う量が多い、ポンプの力が落ちた、配管が塞がったのどれかです。

修理をメーカーに頼んでも、すぐ来てもらえるとは限りませんが、電流値・場所ごとの圧力・流量計の3つを見れば、現場でも原因の候補をかなり絞れます。

この記事では、圧力低下で起きること、確かめる3点、4つの原因、見落としやすい別原因の順に整理します。渦巻ポンプを前提にしています(加圧の原理が違うポンプでは現象が変わります)。

目次

ポンプの圧力が低下するとどうなるか

吐出圧力は、ポンプの出口で液を押し出している圧力で、ポンプが液に与えるエネルギーを高さで表したものを揚程と呼び、水なら揚程10mがおよそ0.1MPaに当たります。

換算の考え方は揚程と圧力の換算で詳しく扱っており、この圧力が下がると、使う側では次のような困りごとが出ます。

  • 蛇口や使用先から出る液の勢いが弱くなり、必要な量を出すのに時間がかかる
  • 上の階へ押し上げる圧力が足りず、液が届かない
  • 遠くへ送る場合、配管の圧力損失に負けて液が送られない
  • 水量が足りず、ほかの場所でもみんなが弁を全開にするので、ますます圧力が下がる

こうした症状が出たら、ポンプの圧力低下を疑ってください。

ポンプの圧力低下を確認する方法

原因を探るには、ポンプの周りの情報も集めますが、その前に、吐出し弁・吸込み弁が開いているかだけは先に確かめてください。弁の閉め忘れは意外に多く、メーカーの点検表でも最初の項目です(後述)。

計器の値は、ふだんの値と比べてはじめて意味を持ち、メーカーの取扱説明書も、圧力・電流・振動などを運転日誌に残すことを勧めています。

比べるときは、運転台数や弁の開度、測った位置をそろえ、圧力計のコックは測定時以外は閉じておくのが基本なので、読むときに開け忘れていないかも見ます。

図1:最初に確かめる3点

まず今の値を記録し、運転日誌のふだんの値と比べます。

00前提をそろえる弁の開閉、運転台数、日時を記録。圧力計のコックが開いているか、計器自体が壊れていないかも確認
01電流値ふだんより高いか、低いか。変わっていないか
02場所ごとの圧力吸込側、ポンプ直後、使用先のどこから下がっているか
03流量計実際の使用量と比べて多いか、合っているか

※この3点は「何が変わったか」を集める段階です。原因の候補は、次の章で値の組み合わせから考えます。

ポンプの電流値がいつもより高い/低いか

運転中のポンプの電流値が、いつもより高いか低いかを確かめてください。銘板の定格電流と比べるだけでなく、同じ運転条件のときのふだんの値と比べると変化がわかります。

電流値が何で決まるかは、ポンプの電流値が上がる・下がる原因で詳しく解説しています。

送り出す側の圧力はどこから下がっているか

圧力は場所によって高い・低いがあるので、場所と圧力をセットで確かめてください。ポンプの直後は圧があるのに、使用先では低い場合があります。

見る場所は、吸込側・ポンプ直後・使用先の3か所で、吸込側は大気圧より低くなることがあるため、連成計が付いていることが多くあります。

蒸気や高温の液の配管では、圧力計の手前にサイフォン管が入っていることもあり、計器の値がおかしいときは、計器側の詰まりも疑います。

図2:圧力の下がり方で場所を絞る

どこから圧力が下がっているかで、原因の候補を絞り込めます。

吸込側の圧力から低いポンプに入る前の問題。液が足りない、吸込側の弁・ストレーナの詰まり、空気の吸込みなど
吸込側は正常
ポンプ直後の圧力が低いポンプの力が落ちた(逆回転・摩耗・回転数の低下)、または使う量が多すぎる
ポンプ直後も正常
使用先だけ圧力が低いポンプと使用先の間の問題。配管の詰まり、途中の弁、漏れなど

※原因の「候補」を絞る図です。流量・電流と合わせて判断してください。

流量計の値が使用量と比べて多い/一致しているか

実際の使用量と流量計の値が、おおよそ合っているかを確かめてください。流量計が使用量より大きく多ければ、使っていないところへ液が逃げている可能性があります。

ただし、流量計より下流に分岐がある、計器の精度が粗いといった条件でもずれは出るため、漏れは「確かめる候補」として扱い、配管の外観などで裏を取ります。

推定される物理的原因

集めた値をもとに、圧力が下がる原因を物理的に考えますが、この記事では、液の通り道に沿って原因を4つに分けています。

  • 送り出す液体が少ない:ポンプに入る前(吸込側)で液が足りない
  • 送り出した側の使用量が多すぎる:ポンプの能力を超えて液が使われている
  • 送り出すための力が足りない:ポンプ本体や電源の問題で、押し出す力が落ちた
  • 送り出す道が塞がっている:ポンプから使用先までの配管が狭くなった

図3:4つのパターンと計器のサイン

ふだんの値と比べてどう変わったかで、次に確かめることが決まります。

吸込側の圧力
電流値
次に確かめること
液が少ない
ふだんより低い
下がりやすい
吸込弁、ストレーナ、液面、空気だまり、異音
使用量が多い
大きくは変わらない(やや下がることも)
上がりやすい
流量計、生産量の変化、配管・軸封部の漏れ
力が足りない
正常
原因で上下する
回転方向、電源電圧・周波数、羽根車の異物・摩耗
道が塞がっている
正常
下がる傾向
ポンプ直後と使用先の圧力差、途中の弁、配管の詰まり

※傾向の目安で、判定表ではありません。電流の変わり方はポンプの種類や運転点で変わります。

送り出す液体が少ない

ポンプに入る手前の時点で液体が足りていないことがあるため、ポンプの入口側の圧力が、いつもより小さすぎないか確かめてください。

入口の圧力が低ければ、ポンプに入る液の量も減っています。流量が減り、空気が混じれば液も軽くなるので、電流値は下がる傾向があります。

まず疑うのは、吸込側の弁が閉まっていないか、配管が閉塞していないかで、メーカーの故障表では、次の項目もこのグループに入ります。

  • 吸込側のストレーナやフート弁に、ごみが詰まっている
  • 呼び水が足りない、またはポンプ内に空気がたまっている(エア噛み)
  • 吸込配管の継手や軸封部から空気を吸い込んでいる
  • 吸込管の先が液面より十分下に沈んでいない

空気がたまったポンプは、液を押し出す力がうまく出ません。始めは水が出るのにすぐ出なくなるときは、呼び水不足や吸込配管の空気だまりを疑います(荏原の取扱説明書)。

キャビテーションが原因で空転していることもあるため、現地で異音がないかも確かめてください。吸込揚程が高すぎる、液温が高いといった条件で、羽根車の入口の圧力が下がりすぎると起こります。

キャビテーションを防ぐ考え方は、流入水頭の計算方法とキャビテーションの防ぎ方で整理しています。

送り出した側の使用量が多すぎる

液体の使用量が多く、ポンプの吐出可能量のスペックを上回ってしまうと、圧力を維持できなくなります。

渦巻ポンプは、流量が増えるほど揚程(圧力)が下がる性質を持っています。そのため使う量が増えると、運転点が性能曲線の右へ動き、吐出圧力が下がります。

性能曲線の読み方はポンプの性能曲線(HQ曲線)の見方で確かめられます。生産量が以前より増えた、屋外の配管が破損して漏れている、といった変化も原因になります。

パッキンが劣化して、ポンプの軸の部分からの漏れが多すぎることも原因になり、吐出側の圧力が下がっていれば、これらの原因が疑われます。

このパターンでは電流値は上がる側に出やすく、メーカーの故障表でも、吐出し量が多すぎることは過負荷(過電流)の原因とされ、吐出し弁を絞って規定水量にするよう書かれています。

流量が大きすぎる運転は、キャビテーションを招くこともあり、振動や音が出て規定の圧力が出ないときは、吐出し側の仕切弁を絞って流量を減らすよう、荏原の取扱説明書は案内しています。

送り出すための力が足りない

ポンプそのものの力が下がっていることがあります。例えばインペラー(羽根車)が破損したり、ゴミが絡まったりしていると、押し出す能力が下がります。

また、ライナーリングが摩耗すると羽根車の吸込み側と吐出側の隙間が大きくなり、加圧されずに吸込側へ抜けていく水量が増えるため、圧力が出なくなります。

荏原のS型の取扱説明書では、ライナリングは直径で1mmくらい摩耗していたら交換するよう書かれていますが、基準は機種ごとに違うので、手元の取扱説明書で確かめてください。

ポンプの手前の圧力が正常で、流量計の値におかしい点がない場合は、このパターンを疑ってください。見落としやすいのは次の3つです。

  • 逆回転:モーターの配線を替えたあとなどに起こる。三相なら3本のうち2本の線を入れ替えて直す
  • 回転速度の低下:電源電圧が下がっている、極数の違うモーターが付いている
  • 周波数の取り違え:50Hzの地域で60Hz用のポンプを使っている

逆回転は、出典に挙げたメーカー2社の取扱説明書と工業会の点検表のすべてで、「回るのに規定の吐出量・揚程が出ない」原因に挙がっています。回転方向の理屈はポンプの回転方向が逆になる理由で解説しています。

回転速度が下がると、揚程は回転速度の2乗に比例して下がります(ポンプの相似則)。60Hz用を50Hzで回すと回転速度は6分の5になり、揚程は約7割まで下がる計算です(効率が変わらないとした目安)。

電流値は、原因によって上がるケースと下がるケースがあり、異物が噛み込むと電流値が上がることがあり、メーカーの点検表でも過負荷の点検項目です。電流だけで原因を決めず、圧力・流量と合わせて考えます。

電力が足りない事態も、まれですが起こりえますが、自家発電や、大型装置の起動で電圧が変動するような場所では、電源電圧も確かめてください。

送り出す道が塞がっている

ゴミやサビで、配管の流路が小さくなっていることが原因で、外から異物が入った(虫など)、配管の内側のスケールが剥がれて流れた、といった事象がないか探ってください。

この場合、ポンプ吐出側の直近の圧力は高く、液体の使用側では圧力が下がっています。渦巻ポンプは流量が減るほど軸動力が小さくなるため、電流値も下がる傾向があり、工業会の点検表でも、渦巻ポンプが過負荷のときは吐出し量を絞るよう書かれています。

このように現象別に分けていくと、メーカーや修理業者に来てもらう必要があるのは、主にポンプ本体の摩耗・破損だとわかりますが、作業の中身によって任せる範囲は変わります。

図4:現場で確かめること・メーカーに頼むこと

原因の場所よりも、作業の中身で任せる範囲を分けます。

STEP 1外から確かめる弁の開閉、計器の値、異音・振動、配管や軸封部の漏れ、液面の高さ運転したまま見られる範囲。値は記録に残す
STEP 2手順に沿って操作する空気抜き、呼び水、ストレーナの清掃、弁の調整設備の作業手順に沿う。配管を開ける作業は止めて圧を抜いてから
STEP 3止めて相談する逆回転の配線直し、羽根車・ライナリングの点検・交換、モーターの不具合電気工事の資格や分解の知識が要る。メーカー・専門業者へ

※取扱説明書でも、分解点検・部品交換は専門業者やメーカーへの依頼が求められています。

ストレーナの清掃のように配管を開ける作業は、ポンプを止め、弁を閉じて圧を抜いてから行い、電源を切って誤起動を防ぐ手順はロックアウト・タグアウト(LOTO)の考え方が基本です。

全く別原因のケース

上記のほかに、「誰かがバルブを閉めて、開け忘れていた」というケースがよくあり、基本的なところから疑い、考えられる原因を一つずつ潰していきましょう。

日本産業機械工業会の汎用ポンプ委員会(荏原製作所・川本製作所・テラルなどメーカー9社)がまとめた点検表でも、最初の項目は「吐出し弁が閉じていないか」です。

点検表は、弁・呼び水・回転方向・空気といった、外から確かめやすい項目から始まり、摩耗やキャビテーション、計画の揚程の見直しはそのあとで、それでも直らなければメーカーや専門業者に相談する流れです。

図5:メーカーの点検表の順番

「ポンプは回るが水が出ない、または水が少ない」ときに確かめる順番です。

01吐出し弁が閉じていないか閉じていれば開く
02呼び水は十分か受水槽の水、フート弁の漏れ、押込みなら吸込み弁
03逆回転していないか三相のうち2相の線を入れ替えて正回転に
04ポンプ内に空気がたまっていないか空気抜きコックで抜く。吸込配管の勾配・継手・軸封部も
05ポンプや配管に異物が詰まっていないか異物を取り除く
06ポンプ内が摩耗していないか修理・部品交換。ライナリングなどの隙間を正常に
07キャビテーションが起きていないか液面・据付位置、吸込側の弁やストレーナの絞り
08必要な揚程が計画より高すぎないか吐出し管の抵抗を減らす、合うポンプにする

※日本産業機械工業会 汎用ポンプ委員会「汎用ポンプのトラブルシューティング」(2022年)の陸上ポンプの項を要約。直らなければメーカーまたは専門業者に相談します。

弁は、ポンプ周りだけでなく、使用先までの途中にあるものも見て回り、点検や工事のあとは、開け忘れが特に起きやすいタイミングです。

ポンプの吐出圧力低下でよくある質問

自分で確かめてよいのはどこまで?

弁の開閉、計器の値、音・振動・漏れといった、外から見られる範囲は運転員でも確かめられ、空気抜きやストレーナの清掃は、職場の作業手順に沿って行います。

配線を入れ替える逆回転の直しや、羽根車・ライナリングの分解点検は、資格や専門の知識が要る作業で、取扱説明書でも、分解点検は専門業者やメーカーに頼むよう求めています。

吐出弁を絞れば圧力は上がる?

渦巻ポンプでは、吐出弁を絞って流量を減らすと、ポンプ直後の圧力は上がりますが、使用先に届く量は減るので、使う側の困りごとが解決するとは限りません。

弁を閉め切ったまま長く回すと、ポンプ内の液温が上がって故障の原因になるため、小流量で運転する設備には、ミニマムフローの戻り配管が付いていることがあります。

圧力計の針が振れるのはなぜ?

空気の吸込みやキャビテーションでは、流れが乱れて圧力計の針が振れることがあり、小流量の運転で圧力と流量が周期的に大きく振れるなら、サージングも疑います。

振れ方だけでは原因を決められないため、音や振動を合わせて記録しておくと、設備の振動診断やメーカーへの相談で役立ちます。

運転を止めて相談したほうがいい目安は?

圧力・電流・振動・騒音がふだんと極端に違うときは、事故の前兆として早めに手を打つよう、メーカーの取扱説明書は書いています。

特に電流値が定格電流を超えているときは、モーターが焼損するおそれがあり、異音や軸受の過熱が続くときも、運転を止めてメーカーや専門業者に相談してください。

まとめ

この記事のまとめ
  • ポンプの圧力低下の原因は、液が少ない・使用量が多い・力が足りない・道が塞がっている、の4つのパターンに分けられる
  • まず弁の開閉を確かめ、電流値・場所ごとの圧力・流量計をふだんの値と比べる
  • エア噛み、逆回転、ストレーナの詰まり、50Hz・60Hzの取り違えは見落としやすい
  • メーカーの点検表は、弁・呼び水・逆回転・空気など確かめやすい項目から始まる
  • 分解や配線の作業はメーカー・専門業者に任せ、原因の特定が早期解決につながる

ほかのサイトでは原因別の対処方法が多かったので、この記事では調べる側の観点からまとめました。お仕事の参考になればと思います。

ポンプの基本は、静圧と動圧の違い、入出の流量と圧力の関係、ポンプの騒音値もあわせて読むと整理しやすくなります。

設備を守る仕事の全体像は、設備保全の仕事内容で紹介しています。ポンプの記事はエネ管.comのポンプのカテゴリにまとめています。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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