オクタン価とセタン価の違いとは?意味・決め方と日本の規格値

分析室のステンレス台に並ぶガソリンと軽油の試料瓶

オクタン価はガソリンの「自己着火のしにくさ」、セタン価は軽油の「自己着火のしやすさ」を表す数字です。どちらも燃料の質を表す代表的な指標で、それぞれのエンジンにとっては高いほど良い数字ですが、着火のしやすさで見ると向きは逆です。

火花で火をつけるガソリンエンジンと、圧縮の熱で火をつけるディーゼルエンジンでは、燃料に求める性質が反対になるからです。エネルギー管理士試験でもよく問われるので、理由ごと押さえておきましょう。

この記事では、オクタン価とセタン価それぞれの意味と決め方、日本の規格値、2つの違いの順に整理します。

この記事は動画でも解説しています。

目次

オクタン価

オクタン価は、自動車などに使うガソリンの質を表す指標です。オクタン価が高いほどエンジンの中で自己着火しにくく、ノッキングを起こしにくい良質なガソリンとされます。

数字は、性質の分かっている2つの物質を基準に決め、ノッキングしにくいイソオクタンを100、ノッキングしやすいノルマルヘプタンを0とします。

この2つを混ぜた標準燃料と試料のガソリンを、試験用エンジンで比べ、ノックの強さが同じになった標準燃料のイソオクタンの割合が、そのガソリンのオクタン価です。

① オクタン価の決め方
オクタン価 = 標準燃料の
イソオクタンの体積[%]
(標準燃料=イソオクタンとノルマルヘプタンの混合物。試料と同じノックの強さになったもの)例:イソオクタン90%+ノルマルヘプタン10%の標準燃料と同じノックの強さなら
オクタン価 = 90
イソオクタン(2,2,4-トリメチルペンタン):オクタン価100と定める ノルマルヘプタン:オクタン価0と定める

図1:オクタン価の決め方

試料の成分を分析するのではなく、標準燃料とノックの起こりやすさを比べて決めます。

01試料のノックを測る圧縮比を変えられる単気筒の試験用エンジンで、試料のガソリンを燃やしてノックの強さを測る
02標準燃料と比べるイソオクタン(100)とノルマルヘプタン(0)の割合を変えた標準燃料で、同じ条件のノックを測る
03同じ強さの割合を読む試料と同じノックの強さになった標準燃料のイソオクタンの体積%がオクタン価

※日本ではリサーチ法(JIS K 2280-1)とモータ法(JIS K 2280-2)があり、エンジンの運転条件が違います。

注意したいのは、オクタン価は「ガソリンに含まれるオクタンの量」ではないことです。標準燃料と比べたときの燃えにくさの目盛りなので、成分がまったく違う燃料でも同じ物差しで比べられます。

石油精製プラントでは、原油を蒸留して取り出したナフサ(ガソリンのもとになる留分)を、そのまま使うわけではなく、分子の形を変える装置を通して、オクタン価を上げた基材をつくります。

たとえば接触改質装置では、触媒を使ってナフサの一部を芳香族炭化水素に変え、異性化では、まっすぐな鎖の分子を枝分かれした形に変えます。

こうしてできた性質の違う基材を混ぜて、製品のオクタン価を合わせます。ガソリンをつくる製油所がいま水素の拠点にもなっている例は、千葉製油所の液化水素の取り組みで紹介しています。

日本では、自動車ガソリンの日本産業規格 JIS K 2202 で、オクタン価の目安が次のように決められています。

  • オクタン価89以上:レギュラーガソリン(JIS K 2202 の2号)
  • オクタン価96以上:ハイオクガソリン(JIS K 2202 の1号)

この値はリサーチ法で測ったオクタン価です。法律(揮発油等の品質の確保等に関する法律)の上では、オクタン価は「標準規格」に入っており、鉛や硫黄分のように、満たさないと販売できない「強制規格」とは別の扱いです。

海外の数字と比べるときは、測り方の違いに注意が要ります。米国の給油機に出ている「レギュラー87」は、リサーチ法とモータ法の平均で表した値です。

② 米国の給油機のオクタン価表示
表示値 = R + M2
例(説明用の仮の値):R=95、M=85 のガソリンなら
表示値 = 95 + 852 = 90
R:リサーチ法オクタン価(RON) M:モータ法オクタン価(MON)

図2:日本と米国のオクタン価の表示

日本の「89」と米国の「87」は、測り方が違うのでそのまま比べられません。

日本
米国
表示の数え方
リサーチ法オクタン価(RON)
RONとMONの平均(R+M)/2
レギュラー
89以上(JIS K 2202 の2号)
一般に87
ハイオク・プレミアム
96以上(JIS K 2202 の1号)
一般に91〜94
決まり方
JIS と品確法の標準規格
給油機に(R+M)/2 で表示

※MONはRONより厳しい条件(高い温度・高い回転)で測るため、同じガソリンでもMONの方が低く出ます。米国の数字は米国エネルギー情報局(EIA)の解説によります。

オクタン価が低いと、エンジンの中でピストンが混合気を圧縮したとき、火炎が届く前に燃え残りの混合気が自然に燃え出します。これがノッキングで、エンジンに大きなダメージを与えることがあります。

ノッキング(ノック)は、英語で扉をたたく意味の knock から来た言葉で、金属をたたくような「カリカリ」「キンキン」という音と、打撃的な振動が出ます。

図3:ガソリンエンジンでノッキングが起きるまで

正常な燃焼は、点火プラグから火炎が順に広がります。ノッキングはその途中で起きます。

01圧縮と点火ピストンが混合気を押し縮め、上死点の手前で点火プラグが火花を飛ばす正常
02火炎が広がる火炎が燃焼室の奥へ進むにつれ、まだ燃えていない混合気(末端ガス)がさらに押されて高温・高圧になる正常
03末端ガスの自己着火火炎が届く前に末端ガスが一気に燃え、圧力の波が壁をたたく。これがノッキングオクタン価が低いと起きやすい
オクタン価が高いガソリンほど、末端ガスが高温・高圧になっても自己着火しにくい

※点火プラグが火花を飛ばす前に混合気が燃え出す現象は「過早着火」と呼び、ノッキングとは分けて扱います。

ノッキングは、ガソリンエンジンの熱効率を上げるときの壁になります。圧縮比を上げるほど理論上の効率は上がりますが、末端ガスも高温になりノッキングしやすくなるからです。

日本化学会の触媒化学ディビジョンの資料では、レギュラーのオクタン価を90から95に上げると燃費が3〜4%よくなる、という報告が紹介されています。これは高いオクタン価に合わせてエンジンの圧縮比を上げる前提の話で、今の車にハイオクを入れれば燃費が上がるという意味ではありません。

ガソリンスタンドでレギュラーとハイオクの2種類が売られているのは、このためです。圧縮比を高くとって出力や効率を上げたエンジンは、ハイオクを前提に設計されています。オクタン価が高いほど発火遅れが長く、アンチノック性が高いです。

圧縮比と熱効率の関係は、オットーサイクルとは?P-v線図・T-s線図と理論熱効率の式・導出で式から整理しています。

セタン価

セタン価は、主にディーゼルエンジンの燃料に使う軽油の質を表す指標で、ディーゼルエンジンには、ガソリンエンジンのような火花による点火がありません。

空気だけを強く圧縮して高温にし、そこへ燃料を吹き込んで自然に燃やすので、吹き込んだ燃料がどれだけ速く自己着火できるかが重要になります。

セタン価もオクタン価と同じく、2つの基準物質を混ぜた標準燃料と比べて決めます。着火しやすいノルマルセタン(n-ヘキサデカン)を100、着火しにくいヘプタメチルノナン(HMN)を15とします。

③ セタン価の決め方(標準燃料の値)
セタン価 = C + 0.15 × H
例:ノルマルセタン40%+ヘプタメチルノナン60%の標準燃料なら
セタン価 = 40 + 0.15 × 60 = 49
試験用エンジンで、試料の軽油と着火の遅れが同じになった標準燃料の値が、その軽油のセタン価です。式は標準燃料の配合を表すもので、軽油の成分比ではありません。C:標準燃料のノルマルセタンの体積[%] H:標準燃料のヘプタメチルノナンの体積[%]
ノルマルセタン(n-ヘキサデカン):セタン価100と定める ヘプタメチルノナン(HMN):セタン価15と定める(0.15は「100%のときに15」になるための係数)

低い側の基準は、もとは1-メチルナフタレン(セタン価0)でした。品質のそろったものをつくりにくかったことなどから、1962年にヘプタメチルノナンへ置き換えられています。

よくある誤解ですが、セタン価は「軽油に含まれるセタンの割合」ではなく、標準燃料の中のノルマルセタンの割合で、着火のしやすさを表した目盛りです。

着火のしやすさは「着火遅れ」で比べます。着火遅れは、燃料を吹き込み始めてから、燃えて圧力が上がり始めるまでの時間です。

着火遅れが長いと、その間に吹き込んだ燃料が空気と混ざってたまり、着火した瞬間にまとめて燃えるので、圧力が急に上がり、大きな音や振動が出ます。これをディーゼルノックと呼びます。

図4:着火遅れとディーゼルノック

セタン価が低い軽油ほど着火が遅れ、燃料がたまってから一気に燃えます。

セタン価が高い軽油
セタン価が低い軽油
噴射から燃え始めるまで(着火遅れ)
短い。吹き込んですぐ燃え始める
長い。燃え始めるまでに時間がかかる
着火時にたまっている燃料
少ない
多い(空気と混ざった燃料がたまる)
燃え方
吹き込みに合わせて順に燃える
たまった燃料がまとめて燃える
圧力の上がり方
なだらか
急激(ディーゼルノック)

※ディーゼルの「ノック」は、ガソリンエンジンの末端ガスの自己着火とは起き方が違います。どちらも急な圧力上昇が音と振動の原因です。

日本の軽油は、法律の強制規格で「セタン指数45以上」と決められています。セタン指数は、試験用エンジンを使わずに軽油の性状から計算で求める、セタン価の推定値です(JIS K 2280-5)。

セタン価が高いほど発火遅れが短く、アンチノック性が高いです。ここでいうノックは、着火遅れから起きるディーゼルノックのことです。

ディーゼルエンジンの熱サイクルは、ディーゼルサイクルとは?P-v線図・T-s線図と熱効率の式・導出で解説しています。

オクタン価とセタン価の違い

2つの違いは、オクタン価は「火がつきにくいほど良い」、セタン価は「火がつきやすいほど良い」という向きにあります。点火の仕方が違うエンジンに合わせた物差しだからです。

図5:オクタン価とセタン価の違い

どちらも自己着火のしやすさの目盛りですが、良いとされる向きが逆です。

オクタン価
セタン価
対象の燃料
ガソリン
軽油
エンジンと点火
ガソリンエンジン。火花で点火する
ディーゼルエンジン。圧縮の熱で自己着火する
高いと何が良いか
自己着火しにくく、ノッキングを防ぐ
すぐ自己着火し、ディーゼルノックを防ぐ
発火遅れ
高いほど長い
高いほど短い
基準の物質
イソオクタン=100、ノルマルヘプタン=0
ノルマルセタン=100、ヘプタメチルノナン=15
日本の規格
レギュラー89以上、ハイオク96以上(JIS K 2202、標準規格)
セタン指数45以上(品確法の強制規格)
求め方
リサーチ法・モータ法(JIS K 2280-1、-2)
セタン価(JIS K 2280-4)、セタン指数(JIS K 2280-5)

向きが逆になるのは、燃料の分子の形が着火のしやすさに大きく効くからです。まっすぐな鎖の炭化水素は自己着火しやすく、セタン価が高い一方でオクタン価は低い傾向があります。

枝分かれした炭化水素や芳香族炭化水素は、おおむねその逆で、そのためセタン価が高い燃料は、オクタン価が低い傾向になります。

基準の物質もこの関係どおりです。セタン価の基準のノルマルセタンも、オクタン価で0とされるノルマルヘプタンも、まっすぐな鎖の分子です。

オクタン価やセタン価は着火の性質の物差しで、燃料が持つ熱の量は表しません。熱量は、高位発熱量と低位発熱量の違いで整理している発熱量で比べます。

ガソリンエンジンもディーゼルエンジンも、シリンダーの中で燃料を燃やす内燃機関です。蒸気機関などとの違いは、外燃機関と内燃機関の違いにまとめています。

オクタン価とセタン価のよくある質問

オクタン価は100を超えることがある?

あります。イソオクタンより着火しにくい燃料もあるためです。リサーチ法オクタン価の規格(JIS K 2280-1)は、0〜120の範囲を求める方法を決めています。

セタン価とセタン指数の違いは?

セタン価は、試験用エンジンで着火遅れを測って求める値で、セタン指数は、エンジンを使わずに軽油の性状から計算で求める推定値です。

試験用エンジンを用意しにくいことなどから、日本を含む多くの国でセタン指数が使われています。日本の軽油の強制規格も、セタン指数で「45以上」と決めています。

日本のレギュラーガソリンのオクタン価は?

JIS K 2202 の2号(レギュラー)で、リサーチ法オクタン価89以上で、ハイオク(1号)は96以上です。

米国のレギュラー「87」は、リサーチ法とモータ法の平均で表した数字で、日本のレギュラーの方がオクタン価が低いわけではありません。

まとめ

この記事のまとめ
  • オクタン価はガソリンの質を表す指標
  • セタン価は軽油の質を表す指標
  • オクタン価は高いほど発火遅れが長く、アンチノック性が高い
  • セタン価は高いほど発火遅れが短く、アンチノック性が高い
  • 日本の規格はレギュラー89以上・ハイオク96以上(JIS K 2202)、軽油はセタン指数45以上

ガソリンエンジンとディーゼルエンジンで、どんなときにノッキングが起きるのかを理解すれば、取り違えることは少なくなります。ガソリンエンジンでは火花で点火する前後に勝手に燃え出さない方が良く、ディーゼルエンジンでは圧縮したときに速やかに自然発火した方が良い、という点が重要です。

資格試験と工場での仕事のつながりは、製造業のエネルギー管理士の仕事が参考になります。燃料とエンジンを使う側の産業は、自動車業界とはで全体像をまとめています。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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