静圧と動圧の違いとは?全圧との関係・測り方とポンプ選定

ダクト測定用のピトー管と角形ダクト

静圧は流体そのものの圧力、動圧は流速に対応する運動エネルギーを圧力の単位で表した量です。流れている水や空気にも静圧はあり、流れが止まっているかどうかだけで二つを分けることはできません。

密度が一定とみなせる流れでは、静圧と動圧を足した量を全圧として扱います。配管の壁面で測る圧力と、流れを正面から受け止めて測る圧力が違う理由も、この関係から整理できます。

目次

動圧とは

動圧とは、流体の流速に対応する圧力の大きさで、密度と流速の2乗から求めます。うちわで起こした風が板や手に当たる場面のように、流れを受け止めたときの圧力上昇を考える際に使う量です。

うちわが空気を動かすと、その空気は流れの向きに運動エネルギーを持ちます。前に置いた板の近くで流れが減速すると静圧が上がるため、板を押す力が生まれることと結び付けて理解できます。

図1:うちわの風を板で受け止めるときの圧力

動く空気が板の前で減速し、よどみ点に近い場所で静圧が上がります。

図は横にスクロールできます。

うちわ流速を持つ空気板の前で減速静圧が上がる流れは横へ動圧 q=ρv²/2

※うちわの風は実際には非定常です。ここでは動圧の意味をつかむ場面として示し、板全体の力が必ずq×面積に等しいとはしていません。

動圧の式
q = ρv22
q:動圧[Pa] ρ:流体密度[kg/m³] v:流速[m/s]。質量当たりの運動エネルギーv²/2に密度を掛け、体積当たりのエネルギーを圧力と同じ単位で表します。

動圧は速度に関係する量なので、流れを止める物体がなければ存在しない、という意味ではありません。流れている状態に対してqを定義でき、流れをせき止める測定を使うと圧力差として読み取れます。

流体密度が同じなら、流速が2倍になると動圧は4倍になります。風速や配管流速の変化を読むときは、動圧が流速に単純比例しないことを押さえると、測定値の変化を見誤らずに済みます。

空気と水で動圧を比べる

動圧は流速だけでなく密度にも比例するので、空気と水で同じ速さを与えても圧力の値は異なります。例えば説明用に空気の密度を1.2kg/m³、水を1,000kg/m³とすれば、水のほうが大きな動圧を持ちます。

空気の密度は温度や圧力で変わるため、1.2kg/m³をどの空気にも共通する固定値として使わないようにします。計算には対象の状態に応じた密度を選び、仮定値で概算した場合はその条件も記録します。

また空気の速度が高く、密度変化を無視できない流れでは、全圧と静圧の差を単純にρv²/2とする扱いを見直します。この記事の計算例は低速で密度一定とみなす流れに限り、高速ノズルの計算へそのまま広げません。

静圧とは

静圧とは、流体そのものが持つ圧力で、流れの運動エネルギーに対応する動圧と区別して呼ぶものです。静圧という名前でも、動いている流体の中に存在するため、流れが止まったとき専用の圧力ではありません。

配管の壁面に、流れを正面から受け止めないように取出口を設けて測る圧力は静圧です。一般的な配管の圧力計を読むときも、どこにどの向きの取出口があるかで、測っている値の意味を確認します。

壁面の取出口で静圧を、流れに正対する取入口で全圧を取り出せば、その差から動圧を求められます。

図2:ピトー静圧管は正面孔と側面孔を分けている

流れを正面で止める孔は全圧、流れに沿う側面の孔は静圧を取り出し、差圧計で二つの差を読みます。

Δp気流正面孔:全圧側面孔:静圧内部の経路を分離実線:全圧側点線:静圧側差圧=動圧

※理解のため内部経路を強調した模式図で、実際の製品構造や縮尺を示すものではありません。孔を流れに正しく向け、詰まりや漏れを避ける必要があります。

圧力計と差圧計で何が違うか

一つの圧力取出口を大気圧などの基準と比較して読むのが、通常の圧力計の使い方です。全圧と静圧の二つを取り出して差圧計へつなぐ測定では、全圧側と静圧側の差を一つの値として読み取ります。

測定器の名前だけで静圧か全圧かが決まるのではなく、圧力を取り出す孔と流れの関係が重要です。流れに向いた孔へ接続した計器なら全圧を読むため、「圧力計は必ず静圧だけを測る」とは言い切れません。

大気圧を基準にした静圧は、吸込側のダクトや配管で負の値になることもあります。これは静圧がない意味ではなく、基準の大気圧より低い状態を示しており、動圧が負になることとは区別します。

正圧と負圧の両方を読む計器については、旧記事からの関連記事である連成計と圧力計・真空計の違いも参照してください。目盛のゼロが何を基準にしているかを確認する習慣が役立ちます。

動圧と静圧はどんな時に必要?

動圧と静圧の区別は、ポンプのカタログの全揚程や、送風機の静圧特性を読むときに必要です。とくに入口と出口の配管径が違う設備では、静圧の差だけをポンプの能力として扱うと速度の影響が抜けます。

密度が一定とみなせる流れでは、静圧psと動圧qを足した量が全圧ptです。流れを正面で受けて停止させるとき、損失を無視できれば、元の静圧より動圧分だけ高い圧力を取り出せます。

全圧・静圧・動圧の関係(非圧縮性の扱い)
pt = ps + q = ps + ρv22
q = pt − ps
pt:全圧[Pa] ps:静圧[Pa] q:動圧[Pa]。ptとpsは同じ圧力基準で比較します。

全圧が一定になるのは条件付き

全圧が同じ流線に沿って一定になるのは、定常で密度変化や粘性損失を無視でき、外から仕事や熱を加えず、高さの差も無視できる場合です。ベルヌーイの関係を使うときは、この前提と比較する場所をそろえます。

その条件で流速が上がる部分では動圧が増え、合計を保つように静圧が下がります。流速と静圧の関係は同じ流れに沿った条件付きの比較であり、別の配管や運転条件の圧力を無条件に比べる法則ではありません。

図3:流路が細くなると静圧と動圧の配分が変わる

同じ高さ・損失なし・空気密度1.2kg/m³と仮定すると、全圧300Paのまま流速5→10m/sで静圧285→240Paへ下がります。

A:5m/sB:10m/s静圧285Pa静圧240PaAB動圧15Pa動圧60Pa淡色:静圧 + 青:動圧 = 全圧300Pa

※実測値ではなく説明用の仮定です。管径や図形の寸法は模式的で、実際の絞りでは摩擦・はく離による全圧損失も生じます。

実際の配管では摩擦や弁でエネルギーが失われるので、流れの下流ほど全圧が下がる部分があります。反対にポンプやファンを通ると外から仕事が加わるため、その前後まで全圧一定と置くことはできません。

また上下に離れた測定点を比べる場合は、位置エネルギーに対応するρgzの項も必要です。高さの違いによる圧力変化を、動圧の変化や損失と混同しないようにします。

ポンプの全揚程は出入口の差で考える

ポンプの全揚程は、ポンプが液体に加えるエネルギーを、重さ当たりの高さで表したものです。同じ高さの入口と出口で比べるなら、全揚程をρgで圧力に換算した値は、出入口の全圧差に相当します。

したがって吐出側一か所の静圧計の値を、そのまま全揚程の換算値とみなすことはできません。吸込静圧も差し引き、配管径で変わる流速の差を合わせて、ポンプの入口と出口の状態を比較します。

同じ高さのポンプ出入口
ρgH = (psd−pss) + ρ(vd2−vs2)2
H:全揚程[m] ρ:液体密度[kg/m³] g:重力加速度[m/s²] v:各断面の平均流速[m/s] z:共通基準からの高さ[m]。定常・非圧縮性で速度分布を一様とみなす扱いです。添字d:吐出側、s:吸込側。psd・pssは各側の静圧[Pa]。測定点の高さが違う場合は右辺にρg(zd−zs)を加えます。

例えば密度1,000kg/m³の水が、吸込側で2m/s、吐出側で4m/sなら、動圧は2,000Paから8,000Paへ増えます。この差6,000Paを静圧差へ加えたものが、同じ高さでの全圧差です。

全圧差が98,000Paなら、この条件の静圧差は92,000Paとなります。出口の流速が速いほど静圧差が全圧差より小さくなる計算は、ポンプの揚程と吐出圧力の関係の記事で、吸込圧力を含めて解いています。

全圧差を使えば流速の影響を整理できますが、ポンプ選定で確認する量は全圧だけではありません。必要流量と運転範囲、軸動力、吸込性能を表すNPSHなども合わせて確認します。

空調の風量―静圧特性を読む

換気扇や装置冷却用のファンでは、横軸に風量、縦軸に静圧を取った特性図が使われます。ポンプの全揚程のグラフと同じ感覚で数値を拾う前に、縦軸が静圧か全圧かを確認することが必要です。

オリエンタルモーターの説明では、最大風量は吸込口と吐出口が開放されて風を遮るものがない条件です。最大静圧は風量がゼロの条件であり、二つの最大値を同時に出せる運転点として使うものではありません。

同社が掲載するMRSシリーズの50Hzの例では、最大風量13.2m³/min、最大静圧221Paを別々の端点として示しています。装置へ付けたときの風量は、この特性と装置側の抵抗を合わせて読む必要があります。

フィルターやダクトを足すと抵抗が増えるため、カタログの最大風量だけでは冷却に必要な風量を判断できません。ポンプ側の運転点の考え方は、性能曲線と配管特性の交点と比較するとつかみやすくなります。

動圧の計算例と差圧からの流速の求め方

空気密度を1.2kg/m³、風速を10m/sとして動圧を計算します。密度は説明用の仮定で、単位はkg/m³とm/sにそろえ、式の分子に密度と流速の2乗を入れてから2で割ります。

空気の動圧を計算する例
q = ρv22 = 1.2×1022
= 60Pa
ρ=1.2kg/m³、v=10m/s。全圧や静圧の絶対的な値ではなく、両者の差に相当する動圧を求めています。

同じ空気密度で風速5m/sなら15Pa、20m/sなら240Paになるので、速度を半分にすると動圧は4分の1です。低流速では差圧が小さくなるため、計算式が正しくても計器で十分な精度が得られるとは限りません。

図4:流速が2倍になると動圧は4倍になる

空気密度1.2kg/m³の計算例。棒の長さは動圧に比例しています。

5m/s15Pa
10m/s60Pa
20m/s240Pa

※q=ρv²/2の計算値で、実在のファンの性能を示すグラフではありません。静圧がこれと同じ割合で変わるという意味でもありません。

逆に全圧と静圧の差が分かっていれば、式を変形して流速を計算できます。ピトー静圧管で差圧60Pa、密度1.2kg/m³と測定条件がそろった場合、平方根を取ると10m/sに戻ります。

全圧と静圧の差から流速を逆算
v = √2(pt−ps)ρ
v = √2×601.2 = √100 = 10m/s
pt:全圧[Pa] ps:静圧[Pa] ρ:密度[kg/m³] v:流速[m/s]。根号は分数全体に掛かります。実際のプローブでは校正係数や使用条件をメーカーの指示に合わせます。

例えば差圧をPaでなくkPaのまま入れれば、流速も大きく違う結果になります。差圧の単位に加えて全圧側と静圧側の接続を確認し、負の値が出たからと絶対値に直す前に原因を調べます。

一つの点で求めた流速が、そのままダクト全体の平均流速とは限らないことにも注意します。曲がりや分岐の近くでは分布が偏るので、風量を評価する測定位置や測点の取り方は、適用する手順に従います。

測定値を取り違えないための確認手順

静圧や全圧の値が予想と違う場合は、式を変える前に何を測ったかを整理します。圧力孔の向きと二つの接続先が分からないまま計算すると、全圧の値を動圧として流速を求めるような誤りが生じます。

図5:圧力の種類と測定条件を照合する

計器の数字だけでなく、孔の向き・圧力基準・密度・測定点を一緒に記録します。

何の圧力か壁面の孔は静圧、流れに正対する孔は全圧。差圧計の二つの接続先を記録する。
比較の基準Pa/kPaをそろえ、ゲージ圧か絶対圧かをそろえる。
計算の条件使用状態の密度、低速・非圧縮とみなせる範囲、計器の校正条件を確認する。
測定点の位置取出口の高さ、曲がりや分岐、ポンプ・ファンの前後を区別する。
値が不自然なら孔や導圧管の詰まり、漏れ、向き違い、ゼロ点と測定範囲を確かめる。

※プローブの設置や取外しは、設備と計器の取扱説明書および現場の作業手順に従います。

ピトー管の孔や導圧管が詰まると、外部の流れと異なる圧力が計器へ伝わる場合があります。NASAの解説でも詰まりや管のつぶれが測定誤りの原因として挙げられており、計算以前の確認事項です。

また低流速の差圧は小さいので、計器のゼロ点のずれが結果に占める割合も大きくなります。測定対象の圧力に合う範囲と精度の計器を使い、仕様書にある条件を超えた桁数で流速を断定しないようにします。

ポンプの軸動力まで計算する場合も、どの圧力差を使うかをそろえる必要があります。全揚程の換算と静圧差の補正を確かめてから、流量・揚程からの軸動力計算につなげると、機器選定の条件が一続きになります。

差圧から風量へ進むときの注意点

風速から風量へ直すときは、流路の断面積に断面平均流速を掛けます。例えば断面積0.10m²で平均流速10m/sという仮定なら、風量は1.0m³/sとなり、毎分へ直すと60m³/minです。

ここで使う10m/sが、差圧から求めた一点の流速なのか、断面全体の平均値なのかを区別します。中央の一点だけが速い流れでその値を面積全体へ掛けると、風量を多く見積もる場合があるためです。

また静圧が高いことと、必要な風量が流れていることも同じではありません。ダクトの抵抗が増えて風量が減った運転状態でも、場所によっては静圧の絶対値が大きくなるため、圧力計の値だけで換気量を判断しないようにします。

同じダクトで過去の値と比較する場合は、測定位置と孔の向き、ファン回転数、フィルターの状態を合わせて記録します。前回と条件が違うまま動圧だけを比べると、設備の変化と測定条件の変化を切り分けられません。

動圧は常に非負の量です。静圧や全圧は基準の選び方で正負が変わります。

測定結果の共有では「圧力60Pa」だけで済ませず、全圧と静圧の差60Paから流速を求めた、と書くと意味が明確です。密度と取出口の位置も併記しておけば、後から計算をやり直す人も同じ条件で確認できます。

静圧・動圧・全圧のよくある質問

静圧は流れがないときの圧力ですか?

流れがあるときにも静圧は存在するため、流れがないときだけの圧力ではありません。流速ゼロなら動圧がゼロになり全圧と静圧が一致しますが、これを静圧の定義と取り違えないことが大切です。

圧力計を付ければ動圧も読めますか?

壁面の静圧取出口へ付けただけでは、動圧を直接読むことにはなりません。全圧と静圧をそれぞれ取り出し、両者の差を測るか、密度と流速からq=ρv²/2で計算する方法を使います。

動圧が上がれば静圧は必ず下がりますか?

同じ高さで損失や外からの仕事を無視でき、同じ流線に沿う場合には、全圧一定の関係から静圧が下がります。ポンプを通過した場合や運転条件が違う場合まで、無条件にこの関係を当てはめることはできません。

ファンの最大静圧と最大風量は同時に出ますか?

通常の風量―静圧特性の両端を表す値なので、二つが同時に得られる意味ではありません。装置に必要な風量と抵抗を確認し、特性曲線上の運転点で使えるかを判断します。

動圧と圧力損失は同じものですか?

動圧は流速に対応するエネルギーの大きさで、圧力損失は摩擦などで失われるエネルギーを圧力で表したものです。管を細くして静圧が下がった場合も、そのすべてが損失になったとは限らず、速度の増加分を分けて考えます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 静圧は流体そのものの圧力で、流れている流体にも存在する
  • 動圧q=ρv²/2は流速に対応する量で、速度2倍なら4倍になる
  • 非圧縮性の扱いでは全圧=静圧+動圧で、差から流速を求められる
  • 全圧一定には損失・外からの仕事・高さなどの前提がある
  • ポンプの全揚程は出入口のエネルギー差で、吐出静圧だけでは表せない

圧力の種類を区別すると、配管径や取出口を変えたときに測定値が変わる理由を追いやすくなります。カタログと現場の計器を比べる際は、静圧・全圧のどちらの値かと、入口・出口の測定条件をセットで確認してください。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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