ポンプ効率とは、ポンプの軸に入った動力のうち、液体へ渡った水動力の割合です。水動力を軸動力で割って求めますが、モーターへ供給する電力を分母にすると、モーターの損失まで含む別の効率になります。
現場で確かめるには、流量・全揚程・運転中の軸動力をそろえ、その運転点に対応する効率を計算します。モーター銘板の定格出力をそのまま使ったり、吐出圧力だけを揚程に換算したりすると、比較する範囲がずれてしまいます。
ここでは、ポンプ単体とモーターを含む効率の違いから、計算式と単位換算、圧力を測る位置、数値を入れた計算例へ進みます。性能曲線の最高効率だけで判断せず、実際に使う流量で確認する方法を整理します。
ポンプ効率とは?
ポンプは、回転する軸から受け取った動力を液体に渡し、配管の抵抗に打ち勝って水などを運びます。液体が受け取るエネルギーには圧力だけでなく、速度や高さの変化も含まれ、それを毎秒の量で表したものが水動力です。
同じ流量と全揚程を出せるポンプなら、軸動力が小さいほうがポンプ効率は高くなります。ただし、カタログの効率はポンプ全体で一つの固定値ではなく、流量などの運転条件に対応する値として読みます。
ポンプ単体の入口は軸、モーターを含む入口は電源です。
スマートフォンでは図を横にスクロールできます。
※直結駆動で伝達損失を無視した概念図。インバータがある設備では、電力を測る位置によって含める損失も変わります。
モーター効率とポンプ効率は分けて考える
モーター効率は、電気入力のうち軸出力へ変わった割合で、ポンプ効率は、その軸出力のうち水動力へ変わった割合です。電源から水までを評価するときは両者を掛け合わせますが、ポンプ単体の効率にモーター損失を含めません。
たとえばポンプ効率70%とモーター効率90%の組合せなら、伝達損失を無視した総合効率は63%になります。ポンプの性能表と電力計の値を比較するときは、入力が軸なのか電気なのかを先にそろえましょう。
駆動源は電動機が一般的ですが、大型設備では蒸気タービンでポンプの軸を回す構成もあります。この場合も軸から先のポンプ効率は同じ定義で、駆動側の変換効率はタービン効率と熱落差として別に評価します。
水動力にならない損失はどこで生じる?
ポンプ内部では、羽根車から水へエネルギーを渡す過程で、流路の摩擦や流れの乱れによる損失が生じます。羽根車とケーシングのすき間を通って内部を戻る水もあるため、投入した動力のすべてが吐出流量の水動力にはなりません。
軸受や軸封の摩擦、羽根車の側面と液体の摩擦も動力を消費するので、損失の場所は水の通り道だけに限りません。効率が低下した際は、流量の変化によるものか、摩耗や機械部分の不調によるものかを分けて調べます。
液体の流れ、内部の戻り流れ、軸まわりを別々に見ます。
※構造を簡略化した説明図です。破線はポンプ内部を戻る流れで、外部への漏水を示していません。
性能曲線のピークと実際の運転点
渦巻ポンプの効率曲線は、一般に流量に対して山形になり、その頂点を最高効率点、BEPと呼びます。機種や回転速度などで曲線が変わるため、「このポンプは何%」という説明だけでは実際の使い方に合っているか判断できません。
まず必要流量と配管系の条件から運転点を求め、その流量の位置で効率曲線を読みます。運転点と最高効率点の関係は、ポンプの性能曲線・H-Q曲線の読み方と一緒に確認すると、揚程曲線との取り違えを防げます。
曲線の最大値だけでなく、使用する流量に対応する効率を読みます。
※実機データではない概念図。BEPから離れてよい範囲や最小流量は、各機種のメーカー指定で確認します。
流量が時間で変わる設備では、最大流量だけでなく、長時間使う負荷の位置も確認しましょう。回転数に関わるモーターの極数が違う資料を混ぜると、同じ形のポンプでも曲線が一致しません。
最高効率点へ近づけるためだけに弁を操作するのではなく、必要な流量と揚程を満たすことが前提です。余分な水を送っている設備では、ポンプ単体の効率がよくても電力を無駄に使うので、必要量そのものと制御方法を見直します。
ポンプ効率の計算方法
ポンプ効率は、水動力と軸動力を同じ単位にそろえ、次の式で求めます。計算結果は小数で出るため、百分率で表示する場合は100を掛けますが、逆算に使うときは70%を0.70として代入してください。
水動力の式と流量単位の換算
水動力は、液体の密度、重力加速度、ポンプの全揚程、吐出流量から求められます。次の基本式の流量はm³/sなので、流量計や仕様書がm³/minやm³/hなら、秒あたりへ換算してから代入します。
密度1000kg/m³の水を扱う場合は、式の密度と1000が打ち消し合い、流量単位に応じた次の形も使えます。係数だけを暗記すると単位を取り違えやすいため、手元の流量が何分・何時間あたりかを式の横に書き添えましょう。
水以外の液体や高温の水では密度が変わるので、水専用の係数をそのまま当てはめないでください。効率や軸動力を逆算する式の使い分けは、ポンプ軸動力の計算方法でも、流量単位と一緒に整理しています。
水動力のkWは毎秒の仕事の大きさであり、運転時間を掛けたkWhとは意味が異なります。年間の電気料金まで見積もる場合は電気入力を使い、単位の関係はワットとジュールの違い・変換方法で確認してください。
入口・出口圧力から全揚程を求める条件
ポンプの全揚程は、入口と出口での液体のエネルギーの差を、液柱の高さに換算した値です。出口の圧力だけでなく入口の圧力も測り、測定位置の高低差と、入口・出口の流速の違いも合わせて扱います。
同じ管径・同じ高さなら補正項が消え、圧力差から簡略計算できます。
※圧力取出し断面の高さを使います。導圧配管で計器の高さを変える場合は、液柱による指示差も補正します。
同じ高さで同じ内径の配管なら、流速差と高さの差はゼロとなり、圧力差をρgで割れば全揚程を求められます。入口が負圧のときは負号も含めて差し引くので、吐出圧だけを使うより大きな揚程になる場合があります。
水柱10mによる圧力は、密度1000kg/m³、g=9.8なら98kPaで、概算では約100kPaと扱えます。したがって100kPaは約10.2mですが、この対応は水の密度を前提としており、液体が変われば同じ圧力でも揚程は変わります。
入口と出口の管径が違う場合は、同じ流量でも流速が変わるため、圧力差だけの換算では補正が残ります。静圧と速度によるエネルギーの違いは、静圧と動圧の違いと照らし合わせると理解しやすくなります。
銘板の定格出力を運転中の軸動力にしない
モーター銘板のkWは定格出力を示すため、その時点でポンプへ渡している軸動力とは限りません。7.5kWのモーターを使っていても、実際の負荷が小さければ軸出力は定格を下回り、定格値を分母にした効率は実態とずれます。
軸動力は、トルクと回転速度を測って求める方法や、電気入力と、その負荷に対応するモーター効率から推定する方法があります。後者で定格効率しか分からない場合は、負荷に応じた効率の変化を含む推定値として記録しましょう。
電力計を使う場合は、測定点がインバータの入力側か、モーター端子側かも控えておくと比較が明確になります。電流値だけを見てkWとみなすことは避け、使用する電源と波形に対応した計器で有効電力を確認してください。
性能曲線から軸動力を読み取る方法もありますが、その値を使って計算した効率は、実機を独立に測定した効率ではありません。劣化診断が目的なら、流量や圧力だけでなく入力側も実測し、どの値を推定したかを報告書に残します。
計算例:流量60m³/h・全揚程30mの場合
説明用に、水の流量60m³/h、全揚程30m、実際の軸動力7.00kWという条件を考えます。密度は1000kg/m³、重力加速度は9.8m/s²とし、モーター効率を90%と仮定して、単体効率と総合効率を求めます。
この全揚程を圧力計から求めるなら、同高・同径の測定断面で、入口−0.0196MPa、出口0.2744MPaという組合せが対応します。両側の圧力基準をそろえると、その差は0.294MPaとなり、次の換算で30mを得られます。
次に、モーターへ入る電力は軸動力をモーター効率で割って求め、水動力をその電力で割れば総合効率になります。軸から水までの損失と、電源から軸までの損失が足し合わさるため、総合効率は単体効率より低い値です。
説明例の数値を、比較する入口と出口で整理しました。
※総合効率は丸め前の電力で算出。製品の効率比較でも、同じ入口・出口の定義かを確認します。
効率改善を電気代へ換算するときの前提
効率改善の効果は、同じ水動力を確保したまま軸動力がどれだけ減るかで計算できます。上の水動力4.90kWを維持して効率が60%から70%へ変わる仮定なら、軸動力は約8.17kWから7.00kWへ減少します。
モーター効率90%が両条件で一定なら、電気入力の差は約1.30kWで、年間4000時間の運転では約5185kWhの削減です。電力量単価を20円/kWhと仮定すると約10.4万円になりますが、いずれも説明用の条件に基づく試算です。
実際の更新比較では、流量や揚程も変わっていないか、モーター効率が負荷で変わらないかを確認してください。省エネの判断は単体効率だけで終えず、工場の省エネとエネルギー管理として、運転時間と必要水量も含めて評価します。
ポンプ効率のよくある質問
ポンプ効率の目安は何%ですか?
機種・容量・流量などで変わるため、すべてのポンプに共通する合格値は設定できません。メーカーの性能曲線で使用点の値を確かめ、実測と比較する際も、液体の条件や回転速度、羽根車径をそろえて判断しましょう。
電力計のkWだけでポンプ効率は分かりますか?
水動力を求める流量と全揚程も必要で、電力計の値だけでは効率を計算できません。水動力を電気入力で割るとモーターなどを含む効率になるため、ポンプ単体を調べるには運転中の軸動力も把握してください。
弁を絞るとポンプ効率は必ず下がりますか?
効率曲線のどこからどこへ運転点が移るかによって変わるため、絞れば必ず単体効率が下がるとは限りません。ただし絞り弁で失う揚程と電力の問題は残るので、必要流量への調整では回転数制御なども比較します。
効率が以前より低いときは何を確認しますか?
まず流量・圧力・入力を同じ運転状態で測り、単位換算や計器の異常、以前との回転数の違いを点検します。条件をそろえても差が残るときは摩耗や内部漏れなどを調べ、異音を伴う場合はポンプの騒音値と測定方法も参考になります。
並列運転では最高効率も同じように読めますか?
各ポンプの効率は、それぞれが分担する流量に対応する曲線で読むため、合計流量を単機の曲線へ直接当てはめません。運転台数が変わると各台の運転点も変わるので、渦巻ポンプの並列運転の注意点を確認しましょう。
まとめ
- ポンプ単体効率は水動力を軸動力で割り、電気入力を使う総合効率と区別する
- 水動力はρgHQ/1000で求め、流量Qはm³/sに換算して使う
- 全揚程には入口・出口の静圧差だけでなく、流速と高さの差も含む
- モーター銘板の定格出力を、運転中の軸動力と取り違えない
- モーターとポンプの損失を分け、性能曲線では実際に使う流量の効率を確かめる
ポンプを選ぶときは、最大効率の数字とともに、実際の運転点で必要な流量と揚程を確保できるかを確認してください。運転条件と測定範囲をそろえて記録すれば、更新前後の効率や運転方法の違いも比較しやすくなります。
周辺の計算や機器の違いは、旧サイトのポンプ記事一覧からも参照できます。今回の式では説明を省いた配管抵抗や吸込条件についても、用途に応じて機種の資料と照合しましょう。
出典
出典・参考資料(6件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 効率の範囲と損失:KSB「Efficiency」、「Pump efficiency」
- 水動力・軸入力:KSB「Pump power output」、「Power input」
- 全揚程と測定断面:KSB「Head」
- 効率曲線と運転点:Grundfos「Pump curves」
- 実負荷・電力の評価と保全:米国エネルギー省・Hydraulic Institute「Improving Pumping System Performance」第2版(2006年)
- 機器効率と効率的運転:荏原製作所「インバータ内蔵PMモータ搭載ポンプ カーボンニュートラルへの取り組み」
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